2004.10.04

ジョンさまと呼ばれた男

この世の中には、自分に似た人が三人いるという。

幸いにも(?)僕には、自分と似た人を見た記憶が無い。

そう、三年前のあのときまでは・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・


その日、早めに家に帰った僕は、テレビでニュースをつけると、夕食をつくっていた。

つくりおえて出来た料理をテーブルに運んでいた僕は、チラリと見たテレビに映っていた画像に当惑した。

「あれ?オレ?いや、まさか・・・・」

そのニュースはすでに終わりで、すぐに次のニュースに変わったので、僕も次の料理をキッチンに取りに行った。

はて?確かに映っていたのは自分のようだったが・・・・・

しかし、夕方6時台のニュースで自分が映される訳もないし・・・

そう思いつつ、ニュースの続きを見ながら食事を終え、後かたづけをしようと立ち上がると、携帯が鳴った。

見てみると、かまやつの妹のぱるっちだ。

「ダメじゃないですか。ディズニーランドになんかいってちゃ」

なんの事だ?

かまやつが、ディズニーランド好きというのは聞いたことあるが・・・

かまやつに送るメールを、間違えて僕におくったのだろうか?

また携帯が鳴った。

今度はかまやつからだった。

「そんなにディズニーランドいきたいなら、一言いってくれればよかったのに。ディズニーランドならいつでも一緒にいってあげますよ。もちろん経費はそちら持ちでですけど(@_@)」

なんだ?

また姉妹そろって、何か新しいゲームでもはじめたのか?

その後、携帯は続け様に鳴った。

「いやーびっくし」

「円さん。初めてあった時からナニゲにカリスマ性があると思ってましたが、本当に高貴(?)な方のお身内だったんですね」

「ディズニーランドですか。意外ですが、今年円さんはほとんど中国でしたもんね。今でさえ帰ってきたばかりだし。そんなに帰ってきたらディズニー・シーに行きたかったんですか?」

何のことだか、まったくわからないメールばかりだ。

とまどう僕を導いてくれたのは、魔人ケンチからのメールだ。

「ダメじゃないですか。よりによって、ディズニーランドに行こうとして捕まったりしちゃ。それにしても円さんがあの国のプリンスだったとは!!ところで、黒のポロシャツは着てるの見たことがありますが、あの猟師みたいなチョッキ。どこで買ったんですか?教えて下さいよ」

まさかさっきのニュースかっ?

僕はあわてて、テレビのチャンネルをNHKに変えた。

丁度7時のニュースの時間だ。

映っている・・・・

しかし、これは・・・・

金正日の息子、金正男と言われている男は・・・・

確かにオレだっ!!

知らなかった!!

オレはあの国の王子(?)ジョンさまだったのかっ!!

注:当時は当然このようないい方はしておらず、日本語読みで呼んでいました。それはあまりにそっくりなんで、一緒にいた友人達も、朝鮮読みでは、マジ周囲の誤解を招くと思ったからです。ここでジョンさまとするのはネット大好きな親子の事。漢字表記や、カタカナ朝鮮読みにして検索にひっかかってしまい、「ちょっとつれてこいや!!みてみるから」などという展開を避ける為です。

そんな訳ねえ~っ(>_<)


でも、確かにジョンさまと僕はそっくりだった。

僕はとりあえずケンチにメールした。

「有難う。さっきぱるっちとかまやつからのメールから始まって、訳のわかんないメールばっかりが届いて、何事か?と思っていたんだよ。今NHKのニュースで見たけど、確かに似てる。六時台のニュースでもチラッと見て、「あれ?オレが映ってる」と思ってたんだけど。まさかというか、よりによって、かの国のジョンさまと私がそっくりだなんて・・・

数日後の飲み会

ケンチが言った。

「いや、びっくりするほど似てますね。まあ、この世の中には自分にそっくりな人が三人いるっていいますが、これほど似ている例は、僕も現実では見たことないです。細かくみていけば違うだろうけど、ぱっと見は、絶対円さんだっ!!って思いますよ」

「それにしても、よりによってディズニーランドに行きたかったなんて・・・お茶目なのか、バカなのかわかりませんよね」

かまやつが、僕の顔を食い入るように見つめながら言った。

「なんだよ!!」

「いや、もしかしたら、出国したジョンさまが替え玉で、今、私の目の前にいるのが本当のジョンさまかもと思って。バカといっても怒らないところを見ると、円さんに間違いないですね」

かまやつが笑いをかみしめながらいった。

「てめ~っ!!殺すっ!!マジ殺すッ!!」

「いや、それより円さん。僕があの、訳のわからないチョッキを買ってきますから、それ着て、一緒にディズニーランドいって、ビデオとりましょうよ。写真でもいいですけど。そいでもって、東スポに売り込みましょう!!「ジョンさま、実はまだ日本に!!ディズニーランドを満喫!!これでいいのか日本の入管システム!!」って記事になりますよ。」

「すっごい!!それを機会に、一気に時の人ですよ!!プリティ長島みたいに、いっぱいテレビのお仕事がきますよ!!プリンス・ジョンとして、たけし軍団にも入れるかも!!そうしたら絶対北野武映画に出れます!!ディズニーランド行くとき、私もつれていって下さい!!美人秘書の役で一緒にうつるから!!」

ゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラ

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)


もちろん無責任に盛り上がっていたのは、この二人だけではなかった。

なにやら母親が僕の顔を見ては、首をかしげていたのだ。

「何?」

「いや、なんか言いたい事があったんだけど思い出せなくて・・・」

数日して顔を合わせると、すっごく興奮した顔で言い出した。

「思い出した!!あんた、将軍様の息子って人に似てる!!」

もう一月前の話だろ(-_-;)

「ああ、なんてことっ!!せっかくウチの息子が有名人(?)のそっくりさんだっていうのに、よりによって、人の国に勝手に入ってきて国民拉致するは、喜び組なんていうキモチ悪い大奥みたいなのつくって豪遊するはの将軍様の息子じゃ、友達に自慢できやしない!!あげくの果てに、一国の国家元首の息子のくせに、ディズニーランドに遊びに来てつかまっちゃうんじゃ情けないにも程がある・・・せめて007みたいに北朝鮮で開発した怪しげな秘密兵器で日本の警察と激闘を繰り広げたすえ、捕まってくれれば・・・・」


友達に自慢する気だったのかよ(-_-;)


「それにしてもあんた!!私は母親として、十分いい男に産んだはずなのに、中国に五年間いって帰ってきたと思ったら、そんなに太っちゃって。太るだけならまだしも、よりによってジョンさまなんかとそっくりだなんてっ!!あんた本当に私の子なの?まさか中国にいるうちに、北のエージェントにすり替わられたんじゃないでしょうねっ!!

ゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラ


(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)


とどめをさしたのは、みゆちゃんだった

「それがさあ、俺、ジョンさまにそっくりなんだよね。自分で最初テレビに映ったジョンさま見たとき、「え?いつこんなのとられたんだ?」って思ったくらいだから」

僕がそういうと、みゆちゃんは下を向いて、笑いをこらえ、上目使いで僕をみながら言った。

「そうなのよ。私もニュースみて、「え?円君?」っておもったんだけど、さすがにそっくりの人物が人物でしょう?果たして本人に言っていいものかどうかと・・・」

そういうと、僕を疑わしそうな顔で見る。

「因みにいっておきますけど、父方の爺さんばあさんは共に加賀出身で、母方は祖父が薩摩。祖母が上州ですから。混じりっ気なしの100%日本人ですから」

「だったらいいんだけど。もしかして、本当は日本人じゃなかったりしたら悪いかなと思って・・・・」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

ゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラ

流石に僕も、このままではやばいと思った。

日本ではまだしも、中国に出張してるときに、間違われるかも。

というか、このままでは、中国から帰って来たときに、入管でジョンさまと間違えられる可能性だってある。

それにかの国が崩壊しそうになったら、拉致されてジョンさまの身代わりにされかねない。

ダイエットをしよう!!

もともと僕は高校生までは細身だった。

大学生になり、手足に総計10キロのウエイトをつけて突き蹴りのトレーニングをしはじめてから、骨太になり、筋肉がつき、卒業して就職してから太りだしたのだ。

そう、もう本来の自分の姿に戻る時だ。

幸か不幸か、その年の年末、中国から元気に帰ってきた僕は、二日後に歩けなくなった。心臓がやられていて、肺水腫をおこしていたのだ。

年が明けて減量もかねて、検査入院をすることになった。

病院の一日1600カロリーの食事を見て、意外に量があるのに驚き、これならダイエットできるじゃんと思った。

二週間で5キロ痩せ、(これは検査の為の絶食なんかもあったからだ)そのあと十二指腸潰瘍でさらに二週間入院して、5キロ痩せた。そのあと二年でさらに5キロ痩せ、今年の春までには計15キロ痩せた。

もうジョンさまとは似ていない。

すると魔人ケンチが言った

「確かに円さんは痩せたけど、あのあと一向に姿を見せないジョンさまも痩せてたらどうします?将軍様の御勘気に触れて、流石のジョンさまも痩せたかもしれないじゃないですか?そしたら、またそっくりですよ。」

確かに・・・・

こうなったら、ちょっとの心労では痩せないくらい痩せなければ!!

僕はこの二年半の間に学んだ、ビタミンやミネラル、食事療法、栄養学、いくつかのダイエット法から、自分なりの必勝ダイエット法を編み出していた。

いまこそ、その成果の如何を試すべき時!!

こうしてダイエットブログ「知的にダイエットー3ヶ月10キロ減に挑戦ー」がはじまった。


結果、僕の体は若き日の姿を取り戻した。
sepiabdey2.jpg

そして顔も・・・・View image

先週ジョンさまは突如北京に現れた。

全然似ていなかった。

努力は報われる。

だが・・・・

「おしいよなあ~。円が痩せてなけりゃ、北京の空港で、二人のジョンさまが鉢合わせってことになったかもしれないのに!!」

ほっとけっ!!


「ジョンさまと呼ばれた男」

-END-

来週は都合によりお休みさせていただきます。

see U !!

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2004.11.29

円海@日本鬼子裏天使

「日本人?適当におだてておいて、耳障りのいいことばっかりいっといて、あとはカラオケいって女抱かせておけば、大抵はなんとかなるっしょ」

まあ、業種にもよるかと思うが、中国で日本人相手に商売している中国人の日本人観はおおむねこんな感じだと思う。

だが、日本人と接触したことのない内陸部の中国人ともなると事情は違う。彼らの中にある日本人とは、テレビなんかで見る、何かというと「バカヤロ!!」といって、中国人をビンタして、虐め、銃殺やら、日本刀でばっさりやる、戦中の日本人である。

このような日本人を中国人は「日本鬼子」という。

まあ、戦前の日本における「鬼畜米英」と同じようなものだが、「南京大虐殺」とか、「731部隊」とか、鬼畜のような行為が100%現実とされている中国では、「鬼畜米英は誤解でした」と今では思っている日本人とは違い、「日本鬼子」はなかなかリアルな恐怖である。

それを思い知ったのは、合弁会社の工場をたてていた時である。

董事会という、中国側3名(董事長、董事、副社長)日本側4名(副董事、董事社長、董事、副社長)の計7名での経営最高会議の席上、工場の建築会社の社長が呼び出された。

工場の建築が遅れて、予定通りにはできないと言うのである。

当然の事ながら、日中を問わず、董事会の面々は一人残らずご立腹であった。

何故かというと、すでに鉄筋コンクリートの部分はできあがっていて、あとは、柱と柱の間に、煉瓦つみたてて、上から塗るくらいだからである。

建物は三階だが、二階、三階は来年、機械等設置する予定なので、一階だけ、きちんと仕上げ、あとは裸でいいというのが、我々の要求なのだ。

午前中、日本側の副董事に「どうなんだ?」ときかれた僕は、「煉瓦積む工員を倍にさせれば簡単でしょう。日本円にしたら1人200円くらいの日当ですから。やらないのはやる気がないからですよ。あるいは、建築資材が値下がりしそうなんで、それを待っているのか・・・」

「じゃあ、午後、建築会社の社長を呼び出しますが、日本側としては断固としてやらせるということで」

中国側も状況は似たりよったり。

建築会社を選ぶとき、日本側は当然入札を主張したが、中国側から、「中国では(当時)建築資材の値上がりは、建築会社のリスクでなく、施工主のリスクなので、意味がない」みたいな主張があり、市政府から建設会社を二件リストアップしてきた。

日本側はそこに、様々な事情を読み取ったものの、中国側に対して「では建築に関しては責任をもっていただけるのですね」ということで、譲歩したのである。

建物の品質はたてなければわからないが、期限までに立たないのは、中国側としてもまずい。

初年度が赤字経営になったとき、必ず建築が間に合わなかったからだと、言われてしまうからである。

建築会社の社長がやってきて、状況説明がはじまった。

建築会社の社長の右に僕。左に日本側の董事社長。

正面に日本側の副董事長。
右に日本側董事のウチのオヤジ。
左には通訳。

中国側は全員、両側に避難である。

このフォーメーションこそ、「日本側、やっちゃって下さいよ」のフォーメーション。

中国側の誰かが、この建設会社の社長をかばうつもりがあれば、必ず建設会社社長の隣に席をとる。

30分かけて、建設会社の社長が工事の状況を説明したときには、全員がキレはじめていた。

イライラがつのった僕は席を立ち、壁によりかかってタバコをふかした。

「で、結局のところ、工事はいつ終了するのですか」

日本側の董事社長が言うと、また、説明がはじまる。

「説明はいいですから、期限をいってください」

契約時に約束した期限の2ヶ月後という話だった。

これにはさすがに中国側もあきれた表情をした。

「あのね、もう、基礎の部分は全部出来たし、コンクリートも乾いてるでしょう?あとは、煉瓦積んで、上からコンクリ塗って壁つくって塗装するくらいでしょう?なんで4ヶ月もかかるかなあ?」

仕方なく、僕が言った。

「えっとですねえ、それはこの会社は、日本との合弁会社でして、内装もきれいにきれいに仕上げないといけないわけでして、一階の工場の床も大理石をひいて・・・・」

その瞬間、まだ、若かった僕の頭はブチッ!!と音がしてキレた。

自分がさっきまで座っていたパイプ椅子を蹴上ると、椅子は壁まで飛んでぐしゃっとおっこちた。

だが、それと同時に、元K田のキ○ガイといわれたオヤジもキレていた。

テーブルをバシッ!!とたたくと、日本語で、「工場の床大理石張りにする必要があるわけねーだろっ!!」と激怒していたのだ。

僕は建設会社社長の後ろをいったりきたりし、斜め正面にはキレたオヤジがすわっている。

そして壁際には、蹴りつけられて、壊れていそうなパイプ椅子。

会議室は一瞬で殺気に満ち、それまでヘラヘラしていた建設会社社長の顔は冗談抜きに血の気がうせ、唇まで青くなった。

それを見て日本側の副董事長が、不機嫌そうな顔はそのままで静かに言った。

「ここは一つ、契約通りにやっていただくってことで、頑張っていただけませんかね。我々も遊びで金出しているんじゃないんで」

通訳が中国語に訳すと、建設会社の社長は何度もうなずいた。

中国側の董事長が言った

「日本側の董事の言うとおり。床は水磨き石で十分でしょう。3日以内に、きちんとした建築スケジュールを持ってくるように」

会議後、夜の食事はこの話題で盛り上がった。

「いや~怖かったと思いますよ。あの建築会社社長、この前会社きたとき、今の日本人は礼儀正しいんですねとかいってましたから」

「それが机叩いて怒鳴られるは、椅子はいきなり壁に蹴上げられるは、まるで特攻警察の取り調べ室みたいですからな」

それを聞いていた知日派の董事長も笑いながら言った。

「いや、本当にテレビや、映画で見る、日本の軍人の取り調べかと思いました。彼、すごく怯えていましたよ。日本人は礼儀正しいけど、約束を守らない人間には厳しい。昔は日本人同士でも約束を守れないと、腹切りさせられるの聞いた事あるだろう?っていったら、何度もうなずいていました。まあ、期限通りにきちっとやると思いますね」

「唇まで、青くなってましたからね」と董事社長。

「でも、あれくらいで、あんな真っ青になることないのにねえ」

僕がそういうと、通訳が言った。

「だって中国人は、日本の軍人の怖さを、テレビや、映画、親なんかから聞かされて育っているんですよ。実際日本に行ったことがあったり、日本人と付き合いがあれば、今の日本人が、ああいうのとは違うってことがわかりますけれど、日本人と触れる機会がない大半の中国人にとっては、日本鬼子はまだ現実の話なんですから」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから何年かがすぎ・・・・

その年、僕は「80億の男」と仕事をしていた。

彼の工場に発注して、それをきちんと注文通り作るか確認し、つくれなければ作り方を指導して、それでもダメなら生産そのものを中止するのがお役目である。

80億の男。

それは最初、僕があつかっている製品の原料からはじめて成功し、それを担保に加工工場やら関係企業を銀行から
借金してガンガンたてているうちに、僕より一コ下にもかかわらず、資産が(日本円で)80億になってしまった(と同時に、銀行の借金も似たりよったりなんだけど)というアホである。

(注:ただしこの「アホ」といういい方には愛がこもっているので、誤解なきよう)

僕は「80億の男」が「8000万の男」くらいのときに、彼の噂を聞いていた。

「4億の男」くらいになったとき、初めて会ったが、僕の10年以上にわたる中国人との付き合いのなかで、初対面で、
個人的に好感を持てたのは、この「80億の男」の他には2人だけである。

それから4年がたち、一緒に仕事をすることになったのだが、彼も僕の事は「買収不可の△市の鬼日本人」として知っており、最初こそ、警戒していたが、知り合ううちに、残虐な性格だから「鬼」なんではなくてあらかじめ決めたルールを厳格に守るから「鬼」なのだとわかり、終業後、客がいないときは、毎日のように一緒に夕食を食べにいったりしていた。

僕が「80億の男」を気に入ったのは、彼が極めて短い期間で財をなしたことを自慢するわけでもなく、これは時流にのっただけで、自分にも、周囲の人間にも、これだけの事業を管理する能力はないのだとわかっているように見える事だった。

いつかは破綻するのはわかっている彼が、内心望んでいるのは、「破綻するまえに、オーストラリアにでも移住できたらいいなあ~。まあ、破綻しても銀行からの借金だから、殺されるわけではなし、たいした事ないっていえば、ないんだけどさあ」って事だったりする。

その、変に達観したスタンスはみていて面白かったし、一緒にいても疲れなかった。

社内ではもちろん、彼の住む街でも、彼は半ば伝説化したカリスマなのだったが、カリスマでいたくないときは、僕を呼び出し、二人でカラオケいったりマッサージにでかけたり、ホテルのコーヒーショップで馬鹿話したりしていた。

そんなある日、三階にもらった個室事務所で、生産の集計などを僕がしていると、中庭(といっても草木が植わってるわけではないが)が騒がしい。

廊下にでて、窓からのぞくと、一人の人間が地べたに正座させられて、まわりを20人くらいの警備員やら、工員が取り囲んでいた。

火事と喧嘩は江戸の華。

中国に来ていても、僕にとっては同じである。

僕は速攻で、駆け下りていった。

下に降りて見てみると、どうやら正座させられながらうずくまっている男が、警備員に尋問を受けているようだった。

すでにボコボコにされていて、唇は切れ、鼻からは血がでている。

僕に通訳としてついている女性がやってきて、「ああっ!!」と口を押さえたかと思うと、周囲に何事かと聞き始めた。

「原料を盗んでいるところを捕まえたそうです。XX省の人で、他にいた二人が逃げたので、今、尋問しています。」

軍隊あがりの警備員がボコっと腹を蹴って、盗っ人はうずくまった。

逃げた二人は、すでにバスかなんかに乗って街から出てしまい、彼が何を吐いても捕まらないだろう。

別に痛い思いしてなくてもなあ~

適当にゲロっちゃえばいいのに。

盗っ人とはいえ、かわいそうになあ~

中国人は省どころか、市が違えば、外国人みたいなもんで、容赦しないからな~

そう思って部屋に帰ろうかとすると、窓から80億の男がこちらを見ているのが見えた。

どうやら、僕の部屋にきて、僕がいないので、中庭を見たところらしかった。

80億の男はおりてくると僕の顔を見てニヤリと笑った。


うっ・・・激しくイヤな予感(-_-)


80億の男が警備員に尋ねた。

「二人逃げたんですが、こいつ、その二人の事を含めて全然吐きません。出身と名前言っただけで」

警備員が答えた。

「身分証は?」

「もっていません」

それをきくと80億の男はしゃがんで、盗っ人の髪をつかんで、顔をあげた。

「おい、二人がどこにいったか言え。言うまで、いためつけられるぞ」

「られる」かよっ(>_<)!!

盗っ人は返事をしない。

80億の男は、盗っ人をビンタした。

80億の男は180センチ以上の長身だが、細い。

盗っ人はやはり何もいわなかった。

「おまえもやれよ」

80億の男が僕を見て言った。

え?

イヤだよ。

西村寿光おすすめの、指とツメの間に串を差し込む拷問とか、平井和正のアダルトウルフガイシリーズで出てくる、指をペンチで一本ずつつぶす拷問とか、ノビー落合ご推薦の、頭に袋かぶせてフォークでモモなんかを刺すみたいな神経系にくる拷問かけられた奴ならば、殴ろうが蹴ろうが、急所はずせばまず死ぬことはない。

だけど、こんなボコボコにされた奴、すでに肋骨にヒビ入っていたりして軽くあばら蹴っても、肋骨折れて肺に突き刺さって死ぬかもしれないじゃん(-_-)

僕が乗り気でないのを見て取った80億の男は盗っ人の髪を再度つかんで言った

「おい、おまえ運が悪いな。ここにいるのが誰だかわかるか?うちのお客の日本人だ。ほれ」

僕の方を向いた盗っ人の左目は腫れていた。だが、右目は焦点を失っていたりはしなかった。

頑張りやさんの盗っ人だ。

「おまえが盗もうとしたのは、この日本人に渡す商品なんだよ。だからな、こいつは今、えらく怒ってるんだ。わかるか?」

いや、三人で盗めるくらいの原料がどうなろうと、オレは怒ってないよ・・・

日本についてからが、ウチのリスクだし・・・・

おまえだって、それくらい何ともないだろ!!80億の男なんだから!!

「おまえを、この日本人に渡してやる。どんなことになるか見物だな。おまえも本当の日本鬼子は見たことないだろ?よかったな。実体験できて」

おいっ!!

誰が日本鬼子じゃっ!!

っていうか、この盗っ人。さっきまでのふてくされた面構えがマジ怯えた顔になってるんですが・・・

「おい、おまえ」
80億の男が警備員を見て言った。

「こいつを日本人の言うとおりにしてやれ」

そういうと80億の男は自分の部屋に戻って行った。

ん?

僕が逃がしてやれといえば逃がすのか?

「どうしますか?」

警備員が言った。

だが、いつの間にか30人以上に増えた工員が僕等を取り囲んでいる。

全員が、激しく期待のこもった目で僕の事を見ていた。

やばい!!

とても逃がしてやれ!!といえた雰囲気じゃないぞ・・・

そんな事をしたら、工員の間には「あの日本人ヘタレだぜ・・・」という噂がひろまってしまう。

かといって、警備員に「好きにしろ」なんて言ったら最後、どうもこの工員共が好きなだけ殴る蹴るの暴行を加えそうだ。

まあ、僕的にはなんの関係もない奴だし、自分のモノ盗まれたわけではなし、しかもここまでボコボコにされても吐かない根性をたたえて、このまま生きた状態で公安に引き渡したいが・・・

その時僕の目に、原料倉庫のわきにある、ホースのついた蛇口が見えた。

これだ。

これしかない。

「うん。そうだな。おまえらのやり方じゃダメだ。」

とりあえず僕は言った。

「こいつに全部吐かせたいんだろう?じゃあ、速攻で吐く気になる方法を教えてやる。こいつの口にあそこの水道のホース突っ込め。喉までだぞ。そいでもって、肩をおさえつけて蛇口を開く。腹がふくれたら俺が思いっきり蹴るから。まあ、3回以上は耐えられんと思うけど、仲間を思う気持ちがあるならがんばれ」

シ~ン。

周囲は思いっきりドン引きになった。

日本人が空手か、柔道の技を使って、この盗っ人を更にボコボコにするのではないかと、期待に目をランランと輝かせていた連中も、「えぐっ(>_<)」って顔になった。

ホースを喉の奥までつっこんで、蛇口を開ける・・・

おぼれ死ぬよ・・・・

さらに腹がふくれたら、思いっきり蹴る・・・・・・

絶対苦しいよ・・・・

だがドン引きになるだけでは、すまない人もいた。

盗っ人本人である。

血だらけの顔が引きつっていた。

僕の心の中で、かつての建設会社社長の青くなった唇が思い浮かんだ。

あと一息で吐くな・・・・

僕は警備員にいった。

「連れて行けよ。ホースつっこめ。早く終わらせて飯喰いにいくんだから」

警備員は、まじまじと僕の顔を見た。

そして僕の真意を察したらしく、もう一人の警備員とともに盗っ人の腕をつかみ、手荒にひきずっていった。

盗っ人は何かいいながら、激しく抵抗した。

僕は無表情でそれを見ていた。

蛇口の所まで引っ張られると、盗っ人はついに泣き出した。

「全部話すっていってますけど。どうします?」

警備員が僕に尋ねた。

「だったらいいんじゃない?」

警備員が盗っ人を詰所に引っ立てていったが、盗人は自分の足で歩いていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僕と80億の男は、二人で食事をしていた。

フカヒレとアワビを含む数品を80億の男がオーダーしていた。

「さすがにこの二品入れると、みんなでって訳にはいかないからな」

80億の男にとっても贅沢は敵らしい。

「ところで、あの盗っ人、全部吐いたらしいな」

ニヤニヤと笑いながら80億の男が言った。

「そう?」

「おまえ、あの盗っ人にホースくわえさせて水を飲ませた上で、蹴り回そうっていったらしいな」

「まあね」

「みんな流石にやる気がなくなったって言ってたぞ」

「そう?」

「日本鬼子、日本鬼子、日本鬼子・・・・・」

「うるさいなっ!!やるまえに、全部吐いたんだからいいだろっ!!」

「それにしてもひどいことを考えつくな」

「おまえが処分するのめんどくさくなって、俺に振るからだろうがっ!!」

「それにしてもひどい」

「ひどいひどいいうなっ!!飯がまずくなるっ!!」

フカヒレを持って入ってきたウエイトレスに、僕は北京ダックを追加注文した。

「あっ!!おまえなんていうことをっ!!」

「いいじゃねーかっ!!フカヒレとアワビと青菜とチャーハンじゃ、肉がねーだろっ!!大体北京ダックなんて安いんだから」

北京ダックは何故か日本では高級料理だが、中国ではそんなに高いものではない。

フカヒレや、アワビに比べれば全然安い。

「それにしても、盗っ人が吐かなければ本当にやる気だったのか?」

「なんで、俺が自分のもの盗んでもいない奴、拷問せないかん!!」

「まあ、そうだと思ったが、話によるとあの盗っ人、頼むから日本鬼子には俺を渡さないでくれ!!と泣いていたそうだぞ」

「俺は、あの盗っ人がかわいそうだから、早く吐くように、わざとえぐいこと言ったの。お陰で奴はあれ以上殴られも蹴られもせずにすんだからいいじゃねーかっ。おまえは仏様が、悪人を立ち直らせるために、鬼の姿で現れる事があるのをしらんのか?」

「ふ~ん」

80億の男はそういった後、少し考えるようにすると、急に真顔になって言った。

「まあ、俺の前ではいつも仏様の方でいてくれ。おまえの考える事は時にエグすぎるからな。俺が悪人であっても、仏の顔でいてくれ。立ち直らせなくていいから」

僕はフカヒレをすする80億の男の顔を見た。

「まあ、地獄行きがきまった奴に鬼の顔見せてもしょうがないからな。恨まれるだけだし」

ウエイトレスが北京ダックを持ってきた。

一羽の皮だけを、ナイフでそぎ落として皿に盛り合わせる。

「うん。そんなことは意味がない。このアヒルも、焼かれている間、仏様の顔がずっと浮かんでいたら、それはそれで納得して幸せな気分で焼かれていたと思うぞ。」

食べ終わって、80億の男が自分のカードで決済しようとすると、すでに今月の限度額を超えていて決済できなかった。

僕が「俺が払おうか?」と言うと、彼は財布を出そうとする僕を遮り、ウエイトレスに別のカードを渡すと、携帯でどこかに電話をかけた。

店を出ると80億の男は「寒くなってきたな。サウナいこうぜ」といった。

「おまえ、金ないじゃん」

僕がそういうと80億の男は「あるよ。心配するな」といって、ベンツを走らせた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サウナにつくと、彼の会社のスタッフが札束を持って待っていた。

それを受け取ると、僕等はサウナルーム装備のVIP用個室にそれぞれ入った。

サウナにはいり、緊張に凝り固まった体をほぐしていると、担当の女の子がやってきた。

150センチちょっとの小柄な女の子だったが、力は強く、マッサージもうまかった。

「あのね、童話を話してあげる。昔々、小さなネズミと大きなゾウがいました・・・」

僕はまどろみながら、その話を聞いていた。

子供の頃、納得のできない事をされたと思っていても、大人になるとああしてもらってよかったと思える事がある。

目の前にいる人物が、仏の顔をした鬼なのか、鬼の顔をした仏なのか、それとも姿通りの存在なのか?

本当にそれがわかる時がくるとしたら、それは人生のすべてが終わったときなのだろう。

現実がどうあれ、その時が来るまでは結論は出さなくてもいい。


さして意味があるとは思えない童話は、今はまだ続いている。

僕にも。そして80億の男にも。

The End

NEXT 「僕とヘルニア友人とみゆちゃんと」

Uploads on coming monday!!
see you (^_-)

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2005.03.28

海は欲情する

実際あった話だが、どこまでが本当なのか、僕にもわからない物語

かつて我が友チヒロは伊豆某所にダイビングの為、足繁く通っていたことがある。

ある日、彼が通っているダイビングショップのクラブハウスで、すごいモノを見てしまったと電話してきた。

まだメールが普及する前の話だから電話だっただけで、電話である事に深い意味があったわけではない。

「あのな、『今日は面白いもの見せてやる』って言って、おっさん(ショップオーナー)がビデオ再生しはじめたのさ。正直期待したさ。でもさ、水中から立ち泳ぎしてる女性を撮っただけのビデオなの。しかも別にエロいアングルとかでもなく、普通にとっただけでさ」

「まあ、時々潜ってて顔あげると、ビキニの女性の首から下がみえててちょっと特した気分になることはあるけど、別にビデオに撮るほどのものじゃないじゃん」

僕は言った。

だいたいダイバーが潜る場所と海水浴客が泳ぐ場所はわけられている。

僕も200本くらい潜ったが、ふと顔を上げると頭上で女性が立ち泳ぎしていたという事は1回か2回だ。

それはそれでなかなかエロティックな姿なのだが、ビデオに撮って保管するほどでは・・・・

「まあまて、ビデオには続きがある。しばらくカメラは立ち泳ぎする女性をうつしていたのだが、突如イルカが現れたのだ。まあ、ドルフィンスイムだったのだな。で、イルカは女性の回りをグルグル回り始めた訳だ」

「めずらしいな。御蔵島のドルフィンいったけど、物珍しそうにのぞきに来ただけで、すぐ群れに戻っていったぞ」

「だろ?でも、そのイルカは、グルグル回りながら、ビキニの女性に体をすりつけはじめた訳だ」

「おねーちゃんは大喜びだな。かわいいイルカが体をすりよせて来てくれて。」

「俺もそう思う。まあ、水中から撮しているんで、喜ぶ声は聞こえなかったけどな。」

「なるほど。」

「でな、ここからがミソだ。そのイルカが何度か体をこすりつけているとだ、何がおこったと思う?」

「おねーちゃんのビキニの股間が濡れてきたとか?」

「おしいっ!!って、海の中で女性が濡れて来ても、わかんないだろ?」

「そうだった」

「なんとな、お前、腰抜かすなよ?」

「ぬかさね~よ」

「あのな、イルカのやつ、女性に体をこすりつけているうちに次第に勃起しはじめたんだよ」

「・・・・・」

「それまではかわいかったイルカが、思いっきり生殖器をいきりたたせて、人間の女性に、自分の体をすりつけているんだよ。もっとも、立ち泳ぎしている女性の方は、イルカが欲情して、生殖器をビンビンに勃起させてるなんてわかんないから喜んでいたと思うけどな。カワイイッ!!とか言って」

「・・・・・」

「おれはこのビデオ見たときに、『ああ、イルカは知的生命体だ』とつくずく思ったね。すくなくても人間の女性の色気とかを理解するセンスは持っている訳だよ。いやいや、イルカには手がなくて、ヒレだけでよかった。もし手があったら、絶対海でビキニはがれてイルカに犯されたって女の子が大量に出たっておもうね」

う~ん そうなのか。イルカも人間に欲情することがあるのか・・・

僕はまだ二十代前半の頃、中国のレストランできいた、イルカと船員達の話を思い出していた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

たまたま僕が、僕の日本の会社のお客さんとホテルのレストランで食事をしていると、僕の出向先の合弁会社の社長が一人でレストランに入ってきた。

僕の出向契約には、オフタイムには自身の日本法人の仕事をすることの許可がきっちりと入っているが、契約上問題がないからといって、あまりおおっぴらにやっていいというような事でもない。

今、レストランに入ってきた社長は、僕の上司として、僕の性格から何まで良く知っているので、ほかの会社に情報をタレ流しにするなどとは思わないが、そうでない奴だっているのである。

しかも今、僕の向かいに座っているお客さんは、社長の派遣されてきた会社のライバル企業の社員である。

気分の問題として、知られないに越したことはないのだが、ここでこそこそすると変に疑惑を招く可能性もあるし、何よりも、同じ日本人と食事しているのに、日本人の社長を無視し、一人で食事させるというのはいかがなものか?

僕はお客さんに状況を説明して許可をとると、側のウエイトレスに社長を呼ばせに言った。

「やや、お客さんでしたか?」

「はあ、本当はオヤジが今日の午後ついているはずだったのですが、夜中になるとかで、夕食をご一緒にといわれまして。XXのXXさんです」

「ほお~」

このお客さんは仮にMさんとしておこう。

社長は目を細めた。

そりゃそうだ。彼だって合弁会社の社長として出向してきているが、ライバル会社が、ここで何かを買いあさっているとなると、それなりに探りをいれて本社に報告しなければならない。

「どうぞご一緒に。Mさんも仕事ではないのでかまわないといってますんで」

僕等は青島ビールで乾杯して、前菜の盛り合わせ、老酒漬けのエビ焼きと食べていった。

会話はきわめて少ない。

今だったら「いいカラオケはありますか?」とか、「いいサウナはありますか?」などという、当たり障りもない会話もできるが、当時の中国にはサウナはまだないし、マッサージもないし、ナイトクラブはあってもカラオケはない。

もちろん上海や、北京は別として、地方都市では売春婦が現れるのはここから二年後だ。

相手も仕事をしに来ているし、こちらも仕事をしている。

仕事以外は何もない。

中国人を話題にするとしても、下手に愚痴をいえば、相手の本社に「合弁はうまくいってない模様」などと報告されてしまうのは目に見えている。

とりあえずエビの殻を剥き、ムシャムシャと食べていればしゃべらなくてもいいのだが。

「う~ん。やっぱりライバル会社同志だと、会話がはずまないものですかね?」

僕は単刀直入に言ってみた。

「まあ、しょうがないでしょ。そういうもんだから」

僕より7つ年上のMさんが面白そうに笑いながら言った。

その笑い顔を見た瞬間、社長の表情がいぶかしげにかわった。

「前に会いませんでしたか?」

僕はMさんの顔を見た。

「そうですかね?」

面白そうな顔をしたまま、Mさんはしゃらりと答えた。

社長はじっとMさんの顔を見ると「思い出した。たしか毛皮の帽子をかぶって北京大学の留学生とかいってましたね」と、ちょっと怖い顔をして言った。

「そういえば、そんなことも。合弁会社つくられる半年くらい前でしたかねえ。どうですか?調子は」

Mさんが茶目っ気たっぷりに答えた。

どうやらオヤジが一年ほど前に両者と一緒のテーブルで食事したのだが、Mさんがライバル会社の社員というのは流石に不味いと思い、ホテルで知り合った北京大学の留学生という事にしといたらしい。

「ひどいな」

社長はちょっとムッとした顔でいった。

そして、ウエイトレスを呼ぶと、紹興酒を頼んだ。

ウエイトレスが持ってきた小さなグラスを断り、コップを新しくもってこさせると、それを自分と、Mさんのコップにどぼどぼと注いで言った。

「とりあえず乾杯してもらいましょうか。」

二人の間にバチバチっ!!と火花が飛んだ。

紹興酒のコップ乾杯。

中国式のやや手荒な歓迎って奴だ。

とっても手荒なのはマオタイ酒などの白酒になる。

もっともこれをコップでやるやつは、南ではみたことがない。

北の人間はごく普通にコップで50度前後の白酒を飲んでいたりするけど。

二人がそれぞれの会社の意地とメンツをかけて、紹興酒のコップ乾杯を繰り返す間、僕はスープを飲み、平貝の蒸し物を食べた。

コップ三杯目の乾杯がすむと、双方顔が赤くなり、良くも悪くも饒舌になってきた。

僕はウエイトレスにウーロン茶をコップにいれて二人にもってくるよう言うと、平貝をすすめた。

平貝をはがしながら、酔っぱらったMさんがいった。

「円君、社長さんは遠洋の船内加工の方だから紳士だろうけど、ここの遠洋の甲板員はひどいんだよ。なんたってイルカをあげて、やっちゃうんだから」

え?

「そんなことは別にうちの会社だけじゃない!!そっちだってやっているだろ?」

え?

二人とも怒っているのか笑っているのかわからない表情をしている。

「あの~。言っている事がよくわからないんですけど、遠洋では、魚をレイプする人がいるってことでしょうか?」

「イルカはさかなじゃない!!ほ乳類だ!!」

いきなり二人が見事なまでにハモりつつ、僕をどなりつけた。

「す、すいません。確かにそうです。イルカは牛や、豚と同じほ乳類です」

「円君。キミの発言はイルカに失礼だぞ。イルカがほ乳類だからと言って、牛や豚と一緒にするな。グリーンピースにおこられるぞ」

「そうだ!!牛や豚とイルカは違う!!イルカは牛や豚などより人間に近いのだ!!」

Mさんがそういうと、二人は「グリーンピースに乾杯!!」と言って、またコップ紹興酒を開けた。4杯目だ。

ちょうどコップに入ったウーロン茶が来たので、僕は紹興酒を飲んでいたコップを下げさせた。

「あの~。それはそれとして、イルカは甲板でやられている間どうなんでしょう?」

二人の元遠洋漁船員は目を見合わせた。

「喜んでいるよなあ」
「ないて喜んでいますね」

本当かよっ(>_<)!!

丘にあげられて、苦しくてないてるんじゃないのかよっ!!

「円君、円君。くじらのペニスって見たことありますか?」

社長が言った。

「実物は見た事ないけど、テレビで見ました。人の背丈ほどの大きさがあったかと」

「そうなんですよ。その人の大きさほどもあるっていうのがミソ」

社長がそういうと、Mさんがなぜだかゲラゲラ笑った。

「遠洋で、男ばっかりでしょう?イルカがあがった時、やっちゃうなんていうのは、まだかわいいんですよ。本当の勇者になるとですね、鯨をあげると、鯨の膣に頭からつっこんでいくわけです」

ええ~っ!!

そんなバカなっ!!

っていうか、鯨の膣に頭から突っ込んで、気持いいか?

イルカをやっちゃうっていうのは、もしかしたら気持いいのかもって気がするけど。

僕がMさんの顔を見ると「本当ですよ」と大笑いのあとに言った。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいよ。それって、魚姦で、死姦で、スカルファックじゃないですかっ!!」

「鯨は魚じゃない!!ほ乳類!!」

またしてもライバル会社の二人は見事なハモりを見せ、それが面白かったのか大笑いした。

「そうでした。鯨もほ乳類。だから、魚姦ではなくて、獣姦です」

「わかればよろしい。グリーンピースに乾杯!!」

二人は酒でないのに気づいたが何にも言わなかった。

30分かそこいらの時間で、それぞれが紹興酒一本ずつくらい飲んでいるのだ。

僕はウエイトレスにウーロン茶をつがせた。

二人とも顔を赤くしたままそれを見ていた。

「そうそう。円君。うちは紳士だからやったって奴は見たことないけど、Mさんの会社はワイルドだからね。円君の好きな魚姦もやるそうですよ」

社長が思い出したように言った。

Mさんはとろ~んとした目をしている。

寝てはいないが気だるげだ。

「魚姦好きって・・・したことないですよ、僕は。っていうかイルカとやっちゃうなんて話も今聞いたばっかしだし。それに、そんなこといっても、魚は卵でしょ?できないんじゃないですか?」

「残念だね。エイをしってるかい?」

「しってますよエイくらい。カレイとヒラメの区別がつかなくてもエイくらいはわかります」

「エイのメスのね~。エイのメスの女性器は、人間の女性器そっくりなんだよ!!」

え?

それはないっしょ?

だって魚だよ?

なんで魚が人間そっくりの女性器もってるわけ?

「ほ、ほんとうですか?」

僕はMさんの顔を見た。

Mさんはとろ~んとした目でうなずいた。

「Mさん!!寝ないで下さいよ!!今、部屋につれていきますから。でも本当にエイとやっちゃった人いるんですか?」

「ん?まあな、近海の猟師の息子なんかは良く知ってる話だぞ。」

そ、そうなんだ・・・

信じられないけど・・・・

僕はなかば酔いつぶれたMさんを部屋につれていき、やはりつぶれかけていた社長をタクシーに乗せると、レストランに戻った。

タクシーに乗せたとき、社長は「XXの小僧潰れていましたか?ざまあみろ!!」と言っていた。

レストランでは、身長が僕より少しだけ高く、色白な女性のフロア主任が、僕の為に、コーヒーショップから隅のテーブルにチョコレートサンデーとコーヒーを取り寄せてくれていた。

「すごく楽しそうに話していたけど、何の話をしていたの?」

彼女はチョコレートサンデーを食べる僕にきいた。

「ん?まあ、なんというか・・・海の近くの女性は美人が多いって話。」

「ふ~ん」

彼女は僕の肩に軽く触れると、クレジットカードをもって、精算所へ行った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

イルカや鯨の話はともかくとして、エイの話はその後もずっと気になっていた。

ダイビングをはじめて、マンタ(オニイトマキエイ)を何度も間近で見る機会があったのだが、よくわからなかった。

だが、ある日雑誌で、どっかの風土記には、やはりエイの女性器は人間の女性器と酷似しており、猟師が思わずエイとやってしまったところ、猟師の男性器がキュウキュウと鳴きだしたという話がのっているという話を読んだ。

因みに「エイ 女性器」と検索すると、沖縄のエイ女房の話をはじめ、いくつかそのような話がヒットする。

魚のエイが、何故、人間そっくりの女性器をもっているのか?

それは僕の中では永遠の謎である。

The End

NEXT 「円海十番勝負ーその1ー」

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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2005.04.11

長老よっしーの受難(上)

本人の許可を得て書く、勇敢な昭和一桁世代の物語。

長老よっしー

70歳を越えて、現役ダイバー。現役シンクロナイズドスイマー。現役クロスカントリースキーヤーを貫く、日本一元気なばあさんである。

長老と知り合ったのは8年前のお盆。

一週間前に中国出張から戻った僕は、お盆休みと言っても何もすることがなかった。

そんなとき、ダイビングショップから「雲見いきませんか?」と連絡がはいったのだ。

その時一緒だったのが、長老よっしー。

お盆時なので前泊ででかけ、翌日牛着岩を潜ったぼくらはボートにピックアップを忘れられて、牛着岩の手前で漂流した。

漂流したといっても、目の前には海水浴場が見える。

何もしないガイドにしびれをきらし、長老が言った

「私、笛吹くわ」

ちょっとまて。それは恥ずかしすぎないか?

海水浴客の何人かは、こちらを見ているぞ?

確かにこれは漂流だが、10m程先には牛着岩があるし。

200m程泳げば岸につく。

時間は3時で日は高いし、何よりも僕等はBCジャケット装着だからおぼれ死ぬ事もない。

「自力で岸まで泳ぎましょう。そしてボート出したダイビングショップに強硬にクレームを入れ、今日と明日の分をタダにさせるんです!!」

「イヤよ。あんなとこまで泳ぐなんて」

「あなたシンクロナイズドスイマーでしょ。現役の」

「それだって60も後半なのよ(>_<)」

「関係ないだろっ!!400メートル10分で泳ぐってきいたぞ!!」

その時、僕等を運んできたのとは別のボートが近くを通った。

長老はいきなり笛をくわえると、リスのように頬をふくらませ、思いっきり吹いた。

「どうしました?」

近寄ってきたボートの船長がぼくらに言った。

「XX丸にピックアップ頼んであるのですが、忘れられているようです」

ガイドが言った。

「しょうがね~な。わかった呼んでくる」

5分後、僕等はボートにピックアップされ陸にあがった。

「ほらみなさい。私が笛をふかなければみんなまだ海の上にただよっていたのよ!!」

長老はいばっていったが、ボートのスタッフが缶ジュースを一人一本づつ配って終わりにしようとしているのを知って、不満そうな顔をした。

「ほら。私の言うとおり、自力で浜にあがれば文句の言い放題、要求の出来放題で少なくても今日の料金はタダにできたんですよ。長老が笛をふいたばっかりに、折角お客を海の上に放置するという大罪を犯したショップに制裁を加える機会を失したではないですか。」

「うるさいわね(>_<)」

「うるさくいわないから、文句いわないでください。ジュース一本で我慢するように。笛ふいた長老だけは」

「・・・・・・・」

こんな具合にして、長老と僕は仲良くなった。

気持の若い長老は、魔人ケンチとも、魔女系三姉妹とも仲良し。

アメリカにもたくさんの友人がいる長老に、メールの使い方を教えてあげると、最初は嫌がったが、海外電話料金がばっさりカットできるのがわかりメールを使いこなせる70代になった。

今では携帯メールを使いこなすようになり、女子高生並の早さで、ピコピコとメールをおくる事ができる。

僕と長老は、「アリー・マイ・ラブ」や「ER」を見ながら携帯メールのやりとりをする。

「カーターに無理チューしたい」
「あんたいくつですか?」
「歳はかんけいないでしょ。」
「そっちは関係なくても、向こうには大ありですから」
「カーターかっこいい!!」
「・・・・・・」

そのERの第10シーズンが始まるので、僕は長老にメールした。

「よかったですね。またカーターに会えて。今月末から再開です」

しかし、めずらしく長老から返事はなかった。

それから10日後。

3年ぶりくらいにそろう魔女系三姉妹と、魔女系ファンの若き友人を中華の会でひきあわせるべく外出の準備をしていると携帯にメールがはいった。長老からだ。

「入院した。今、検査をしているけど状況はかなり悲観的。あんたより先にいくわ」

悲観的ではあっても今夜がヤマとかではないらしい。

僕は中華の会が終わってから皆に言うことにして、出かけた。

だがあまりの楽しさに、言うのを忘れた(-_-)

帰ってから気がつき、各自の携帯にメールした。

「どういう事ですか?まだ70半ばでしょ?女性の平均寿命は80歳越えているんですよ」

いでっちからだ。

そんなこと言われても・・・・

結局の所、翌日会社の帰りに偵察してくることにした。

見舞いにいくと、長老は個室に入っていた。流石は米国プレイボーイ社の元副社長を友人にもつ女。

「関係ないわよ(>_<)お金が大変だから4人部屋に変えてって頼んでいるけど、アキがないんでここにいるのっ。あたしは年金暮らしなんだからね。一日2万円なんてホテルより高い!!」

「悲観的」な割には元気そうに長老が言った。

「今月に入って、急に歩くのがつらくなったのよ。最後にはポシェットすら重く感じられて、あっ!!これは円さんが入院したときと同じだ!!と思って、かかりつけの病院に電話して、救急車で収容してもらったってわけ。」

なるほど。確かに僕は三年ちょいまえに、いきなり歩けなくなって心不全と診断された。

もっとも利尿剤を飲んだだけで、翌日から元気に3階までの階段を上り下りできたのだが、「心臓の機能がこんなに低下していて、そんなことはありえない」と入院させられ、心臓カテーテルからMRIから、もう、ありとあらゆる検査をされたあげく、心臓の機能は30%しかないが、確かに普通に生活できるということが24時間心電図の検査で確認され(それまではウソをついて無理していると思われていた)6キロ痩せさせられて2週間後に退院させられたのだった。

「で、なんだったんですか?」

「胸水で、肺の大半が水浸しだった(-_-)」

「シンクロナイズドスイミングやったときに水飲んだのでは?」

「違うわよ!!病院で背中に針さされて胸水抜かれて、原因を調査したら・・・」

長老は急に口ごもった。

「心臓ですか?」

「違う」

「じゃあ、何?」

「卵巣ガン。それで、ここの病院に移されたの」

僕はマジマジと長老の顔を見た。

「でも痩せてないですよ(-_-;)」

一ヶ月前に長老とは寿司を食べにいったが、その時も痩せたという印象はうけなかったし、今も、その時とかわらない感じだ。ガンなら、痩せるだろ?普通。

「検査したら、肝臓、大腸、胃、十二指腸には転移してないんだって。消化器が無事なんで痩せなかったらしいの。逆にお腹がぽこっと出てきたんで太ったかと・・・・」

「よかったじゃないですか。卵巣だけで。去年とった、私の胆嚢以上にいらないところで。転移してないなら、外科的に卵巣きっちゃって終わりでしょ?まあ、胸水があっちゃ、麻酔医が嫌がるから、これが直ってからだろうけど。全然悲観的じゃないじゃないですか。」

「そ、そうかしら?」

「わからないけど、うちのおじいちゃんは肺ガンで死んだけど、末期のときはガリガリでしたよ。長老の今の状態みると、顔色も悪くないし、痩せてないし、もうすぐ死ぬ人にはみえないですけど。」

「でも絶対末期なのよ!!」

「そっかなあ~。すくなくとも半年は生きると思いますけど。」

「明日MRI検査をするの。で、日曜日か土曜日に先生が状況の説明と、今後の治療方針を説明するって。」

「んじゃ、検査の結果でたら連絡下さいよ。みんなには私が連絡しといてあげますから。」

「そう?じゃあ、お願いしようかしら」

「みんなに言いふらしてあげますよ。長老卵巣ガン。70すぎて三股メル友罪で、天国の旦那が卵巣をガン化」

長老はふてくされた。

この大魔女は、最近生意気にもモテはじめ、沖縄、新潟、東京にメル友をつくって、浮かれていたのだ。

しかし、年齢的に茶飲み友達を求めていたのに、東京のボーイフレンドならぬジジイフレンドは体を求めてきたので、別れたという。

東京のジジイフレンドと付き合いはじめた頃、僕と魔人ケンチは真剣に話し合った。

「長老に妊娠しないようにコンドームあげたほうがいいかな?」
「円さん。長老はとっくに妊娠しなくなってると思いますよ」
「うわっ!!ってことは生で楽しみ放題?」
「っていうか、あの歳で、濡れるのですかね?」

確かに!!70すぎの女性が性的に興奮すると濡れるのかどうかは疑問だ。

「やっぱ痛い思いをしないように、あげるならコンドームじゃなくて潤滑ジェルとかじゃないですかね?」
「うむ。さすがは魔人と言われた男。潤滑ジェルか。でもさあ、男の方はやりたがるのかな?」
「やりたいんじゃないですか?ずっと連れ添った女房ならもういいやって感じでしょうけど、つきあったらやりたいでしょう?」
「そうなのかなあ~。70歳越えてるんだよ?女性の方は」
「そんな事いったって、円さんだって何年か前、長老とプールいって、意外とハリのある太股だったっていってたじゃないですか。だったらやりたいでしょ」
「相手は68だからなあ~。男の方はたたないんじゃない?」
「バイアグラがありますよ。イヤでも立つって」

結局のところ、僕等が潤滑ジェルを長老に送る前に、ジジイフレンドは長老にせまり、振られたのだった。

「いい年して何を考えているのかしらねえ~」
「立つならしょうがないでしょ」
「知らないわよそんなの。しかも、私が『今後のおつきあいはお断りします』っていったらなんていったと思う?」
「知らないですよ」
「他に男がいるんだろ!!っていったのよ」
「はあ・・・・」
「ええ、一杯いますよっていってやったわよ。フン!!」

68の爺さんが、73のばあさんに「他に男がいるんだろ?」ですか。

すげ~な高齢化社会の日本。

それはともかく、家に帰った僕は皆に状況をメールした。

友人達は頭の中が真っ白になったと言う。

そんなとき、長老からメールが入った。

「先生の説明が日曜日にきまったんだけど、私独り身でしょ?円さん悪いけど一緒に聞いてくれない?姉や妹はもう70前後だし、聞いてもわからないと思うの。かといって、他の人にきいてもらって、あたし以上に動揺されても。円さんなら、病気にも詳しいし、何よりも自分が心不全で死にますってお医者さんにいわれても、看護婦さんとの合コン企むくらいだから、万が一私の寿命が短いっていわれても動揺したりはしないでしょ?」

「あのですねえ、誤解がないようにいっときますが、あの合コンはかまやつの元彼に、せめて新しい彼女つくってあげようと思って企画したもので、私自身の為ではないですからね。ウソだと思うならチヒロに聞いて下さい。でもまあ、いいですよ。一緒に聞いてあげますよ。しょうがない」

「ほんと?あ~よかった!!医者とマンツーマンでもう長くありませんなんて言われたらたまったもんじゃない。これで安心。夕ご飯た~べよっ!!」

こうして僕は、長老の治療カンファレンス(?)に付き合う事になったのだった。

To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)

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2005.04.18

長老よっしーの受難(下)

「昭和一桁世代の根性をみせてやる!!」長老よっしーの許可を得てつづるリアルタイムストーリー

いいですよといったものの、よく考えたら治療スケジュールだけではなく、寿命まで告知される所に立ち会う事になるかもしれないということに気がついた。

長老の話では、胃、腸、肝臓には転移していないという。

ってことは他の臓器も無事なのだろうか?

卵巣がガンなのは間違いないとして、子宮とかは転移してても取っちゃえばいいだけだし。

胆嚢もとっても大丈夫。膵臓はやばいかな?

胸水も卵巣ガンのせいだといっていたが、そんな事ってあるのか?

腹水なら可能性大な気がするけど。

僕の自宅には、ここ三年、心不全、十二指腸潰瘍による大量出血、耳下腺腫瘍、膵炎、胆嚢切除などの数々の病に襲われた経験から、『ワシントンマニュアル』『スカッドモンキーハンドブック』『レジデント臨床技師基本技能イラストレイテッド』がおいてある。

今の時代、入院するにも最低限の知識があるに越した事はない。

病院には新人看護師、何日も眠っていない研修医など、気をつけないと命に関わるデンジャラスな存在が徘徊しているのだ。(いや、本当はそんな風に思ってないですよ。皆様ご苦労様です)

とりあえずワシントンマニュアルを見ると、「腫瘍が卵巣に限局している場合には外科手術は根治的である可能性が強い」とある。やはり転移してなければきっちゃえば良いということだな。胸水に関しては「胸膜侵襲もしくはリンパ流閉塞の結果おきる」とある。

リンパはやばい気がするし、胸膜に転移してるのも・・・・

胸膜って、全とっかえできなさそうだしなあ~

ここまで考えて、さすがの僕も引き受けなければよかったと思い始めてしまった。

僕も普通の人間だと思われていた当初、心不全で入院することになった僕に医者は「これは自分が円さんの立場だったらという話ですが、万が一の時の準備はしておきます。」と言われた。

もともと若い頃、自分には生きる意味があるのだろうか?などと考え込み、当然のごとく、いくら考えてもそんな意味はてんでわからず、とりあえず死から一番近いところで生きてみて、それでもし生きて帰れたら、理由はわからないけれども、自分には生きる意味があるものとして生きていこうなどと考えた若き日の自分。

そして『葉隠』を読んで、毎日瞑想しながら、自分の腕、腹、首などをイメージのなかで切り落とされる訓練をして、(普段からそういう訓練をしていると、いざそのような状態になっても動転することなく、冷静に対処できるのだそうです)大学を卒業してからは当時戦争状態だった地域を取引相手にする商社に就職したくらいだから、告知されても恐怖はなかった。

ただ、自分が長年手がけてきた仕事が、あともう一息で仕上がるというところで、リタイヤしなければならないのは辛かった。一緒にやってくれている人達にも迷惑をかけることになるし。

まあ、結局は医師も「?」となるような、ある種の特異体質だったらしく、当初の予想は、とりあえず杞憂に終わってしまった訳だが。

でも、僕のようなのは特殊だからな。

長老は「あと何ヶ月です」なんて告知されても大丈夫だろうか?

僕自身は、「どうせ命は自分が努力して得たものではないし、自分の命と思うこと自体が実は間違いなのではないだろうか?まあ、返せっていうならいつでも返してあげますよ」って感じで生きているけど、それを長老に言ってもなあ。

そういう事は、人から言われて「ああ、そうだ」ってわかるものではなく、自分なりにつきつめていった結果納得できるものだからなあ。

そんな事を考えていると、流石の僕も鬱な気分になってくるのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

医師の治療カンファレンスの当日。

3時からということで、お昼を食べて一休みしてからでかけた。

天気は晴れ。

だが、鬱な気分は病院が近づくにつれ、強まってくる。

駅から病院に向かう時には、僕は激しく後悔していた。

「いくら長老とはいえ、アカの他人。肉体関係がある、もしくはあったならまだしも。ほかの事に付き合ってあげるならともかく、死の宣告を受けるかもしれない時に付き合ってあげるなんて、俺って、人が良すぎかも・・・・」

病院にいく途中の公園の前をとおると、何故かもの悲しい笛の音が。

見ると外人さんが、昔「キャンディ・キャンディ」で、アンソニーがスカートつけて吹いていたバグパイプを吹いていた。

なんでこんなときに・・・・

バグパイプを吹いている人をテレビ以外でみたの、うまれて初めてだよ(-_-;)

僕の頭のなかには、いつの間にか椎名林檎の「茜さす 帰路照らされど」が大音量で流れていた。

ヤバイ!!

ヤバすぎるぜ!!

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

病院につくと、長老の病室にはお客さんが来ていた。

沖縄のメル友、島袋さんほか3名。

本当は島袋さんが沖縄から出てきた今日、みなで食事をすることになっていたらしい。

僕はテレビのある待合いラウンジでSPAを読みながら四人が帰るのを待った。

4人が帰ると、長老と僕はカンファレンスルームに呼ばれ、説明を受けることになった。

産婦人科医とは思えないような、いがぐり坊主頭に無精ヒゲのごっつい先生がホワイトボードに胸部レントゲン写真や、骨盤内のMRI画像を手際よく張り出した。

長老が「そんな写真みれない!!」と顔を覆ったので、しかたなく僕は写真を見た。

胸部レントゲン写真は乳の付け根のところまで真っ白だ。

確かにすごい量の水が肺を満たしている。

こんな状態で腐ったりしないのか?肺って?

エヴァンゲリオンのコクピットはLCLで満たされていたから、腐ったりはしないのかな?

いや、アニメの設定でモノいってる場合ではなかった。

医者が画像を指さしながら説明をはじめた。

「これが胸部X線写真です。白いのは水で、ここまでたまっています。呼吸が苦しいのはこのせいです。次にMRI画像ですが、こちらがお尻となります」

「長老。お尻ずいぶんたれていますね(-_-)」

長老が顔を覆っていた手をどけて僕の方を見た。

見るならホワイトボード見て下さいよ長老。

「で、この黒い部分が卵巣です。本来は指先くらいの大きさのモノが、これほどの大きさになっています」

そういうと医師は野球ボール二個分を一回り大きくしたようなサイズを両手でつくった。

卵巣って本来はそんなに小さかったんだ。

それにしてもでかくなってるな。

これじゃブラックベイビーだ。

長老三ツ股かけてのメル友で興奮して、処女(未亡人なので処女ではないけど)懐胎というか単体で子供作っちゃったんじゃないだろうな?

「率直にいいますと、卵巣ガン。しかもステージ4。末期・・いや、中期から末期ですね」

長老が僕の方を向いたまま、泣きそうな顔になった。

ああ、長老。泣きそうな顔をしてもいいから50年若返ってくれっ!!

「転移状況はどうなんでしょう?」

僕は医師に質問した。卵巣ガンは想定内だ。多分肺がこの調子じゃ、まず胸水をなんとかしなければならないが、卵巣を切り取ればそれでおしまいだ。問題は胸水をふくめて、転移しているのかしていないかなのだ。

「確認しましたが、実臓器には転移はみられません。リンパも同様です。ただ、胸膜などの膜部分には転移していると思われ、それが胸水の原因になっています。胸水も検査に出し確認しましたが、そのような反応がでています。卵巣に関しても腫瘍マーカーが。」

なんか助かりそうな気もするが・・・

「ガンには実臓器に転移する転移パターンと、今回のように膜部分に転移していくパターンがあります。もし今回腸や、肝臓といった実臓器に転移していたら、残念ながらというところですが、膜部分に関しては視認できないような小さなガン細胞の転移なので、十分に抗ガン剤で対処できると思います。」

「卵巣に関しては外科的にとってしまえば、それでOKですね?」

「現状でできないことはないですが、肺にこれだけ胸水がたまっていると麻酔医の方で嫌がると思うので。まず抗ガン剤で、膜部のガン細胞を叩いて胸水を止め、その後で外科的処理をして卵巣を取り除くのがベストだと思います」

「卵巣の除去自体は手術としては難しくないですよね?」

「こちらのMRI画像でわかるとおり、卵巣は腹水のなかに浮かぶような格好になっていて、ほかの臓器に癒着している様子はありません。場合によっては子宮にということもあるでしょうが年齢的に機能を残す必要はないと思いますので難易度は低いですね」

「成功の確率は?」

「8割でしょう」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

そのあと僕等はセカンドオピニオンの問題や、費用、治療のスケジュールなどを聞いて病室に戻った。

最後に医師は「ガンと聞くと、我々専門家の目から見るとこんなの切っておしまいだというようなガンでも、ひどく落ち込んでしまうような人がいます。必要があれば坑鬱剤も処方しますが、自分はガンと聞いて一時的に落ち込んでしまう状況まで鬱病として扱うのは、あまり賛成じゃないんで、できればお友達やご家族の力なども借りて乗り越えてください。今回のケースは去年うちの病院でも20例ほどありましたが、全員手術まではいけてますから。一緒に頑張りましょう」といって帰っていった。

「ほら、悲観的なんていって、まだ全然死ななそうじゃないですか」

僕は言った。

「そんな事いったって、前の病院でカルテを見たとき、ステージ4って書いてあるのが見えたんだからしょうがないでしょ。普通は死ぬと思うわよ」

「だって2リットルも胸水抜いたのに、体重減ってなかったじゃないですか。死にそうなガン患者でそんな人いないですよ。70越えての卵巣ガンなんていらなくなった所捨てるようなもんじゃないですか」

「失礼ね。大体私はあなたみたいに死にそうになって入院してるのに、毎日寝てるだけでかわいい看護婦さんが食事もってきてくれて楽しいなんていってる人とは違うんですからね。」

「どうでもいいですけど、お尻ずいぶんたれてましたねえ」

「あれは、MRIのベットに寝てたから体重でつぶされていただけです。胸はたれてなくて真っ白で美乳だったでしょ!!」

「美乳って長老。それこそMRIのベットに寝てたから重力に下に引っ張られなかっただけでしょ?それに白かったのは水ですから」

「きれいならいいのよっ!!」

「じゃあ、ブログに書いてもいいですか?」

長老はちょっと考えていた。

「ふん!!書きなさいよ!!昭和一桁の女の勇ましさを平成のガキどもに見せてやるわよ。そのかわり、ちゃんと美乳って書きなさいよっ!!」

ってあなた。さっき泣きそうな顔になってたんですけど・・・・

「じゃあ、ついでにお尻の反対側から卵巣の方にのびる線があった事についても書いていいですか?」

「(-_-)?」

「いわゆる長老の▼●って奴だと思いますが」

「だめ~っ!!その言葉は書いたらダメ~っ!!」

「MRI画像だったんだからいいじゃないですか」

「ダメっていったらダメ!!それだけはダメ~ッ!!」

流石は昭和一桁世代。恥じらいはあるらしい。

「末期ガンになるよりも、あんたのネタにされるほうがよっぽどおそろしいわっ(>_<)」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

翌日、翌々日と僕は熱を出し、会社を休んだ。

流石にいくらMRIの白黒画像とはいえ、70代女性の骨盤内を見てしまったショックは大きかったようだ。

男の子なら一度はなりたいとおもったであろう産婦人科医に、僕もなりたいと思ったことがあるが、今は高齢化社会の日本。

産婦人科医は医師のなかで、一番きつい仕事なのかもしれない。

To be continue.

Uploads on coming monday!!


see you (^_-)

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2005.05.16

劣情モラトリアム SIDE-A

想像を絶する複雑さをもった女体の神秘に昭和の中学生たちは・・・・

僕等がまだ小学生だったころ、性教育の授業があったのは女性徒だけだったように思う。

小学校4年くらいのとき、女子だけに特別授業があり、にもかかわらずその内容に関しては誰も男子に話さなかった。

僕には6歳離れた妹がいるが、小学生の間、ずっと子供は肛門から生まれるのだとばかり思っていた。

もっともテレビなどで、生まれたばかりの赤ちゃんがウンコだらけでないのを見て、あれはどうしてだろう?なぜウンコだらけではないのだ?と不思議には思っていた。

そして自分がウンコするときの事を思って、果たして肛門からあんなものが出てくるのだろうか?と疑問に思っていたことは事実だ。

でもね。

男の子には肛門と尿道管しかないわけで。

人間は平等という戦後民主主義のなかで育てられた僕等(多分)としては、女性に別の穴があるなんてことは、想像もつかない訳で。

それは僕も小学校低学年までは銭湯にいってたから、女性にはおちんちんがないということくらいは知っている。

だが、赤ちゃんの妹がおしめ変える時にみても、そこには一本の線があるだけで、銭湯で成人女性の裸を見ても、そこには黒い茂みがあるだけであり・・・・

人間誰しも、自分にないものに関しては、想像なんてことはできないものなのだ。

中学生になって保健体育の時間で、例の卵巣が両側にあって、子宮があって、それが外部につながっているという図を見て、はじめて男女は機能だけではなく構造が本格的に違うことを知った。

それでも僕の理解は「なるほど、つまり女性というのは男の睾丸が卵巣になっていて体のなかに入り、それに伴い男では外に出ているおちんちんの部分が体のなかにめりこんで、一部はふくらんで子宮になっているわけだな。でも、そうすると女性のおしっこが出るところは月経の血が出たり、おしっこが出たり大変だな・・・」という程度のものだった。

もちろんその理屈からいくと、赤ちゃんも尿道から出てくることになり、赤ちゃんがウンコだらけで生まれない理由も説明できる。

ただ、一方でどう考えても肛門よりも細い尿道からどうやって赤ちゃんが出てくるのか?という疑問は当然もった。

いくらなんでもそれは・・・・

結局当時僕が出した答えは、赤ちゃんは肛門から生まれるが、ウンコだらけでないのは、多分お産に際して浣腸をお医者さんがしてくれるからだろうということだった。

多分女性からすれば笑っちゃう話だと思うのだが、男の子には肛門と尿道しかないのだ。

同じ人間の女性に、もう一つ別の穴があるなんて想像できるわけがない。

確か当時の保健体育の教科書には子宮と卵巣は書いてあっても膣という言葉はなかった(と思う)のだ。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

中学二年生のある日。

二時間目が終わったころから、男子生徒の間では、なにやらザワザワとした雰囲気があった。

「スエーデンだってよ・・・」 ヒソヒソヒソ。

「ノーカットらしい・・・」 ヒソヒソヒソ。

どうやら隣のE組の生徒が、どこからかスエーデンのノーカットポルノ本をゲットして、学校に持ち込むことに成功したらしい。

昭和の中学生にとって、テレビで見るアイドルタレントは性の対象にはならない。

当時女性アイドルタレントは、おしっこもおならもうんちもしないし、恋愛もしないものなのだ。

今から思えば、これってマスコミを使った凄い洗脳だったと思うのだが。

もちろん当時日活ロマンポルノのようなポルノ映画はあったが、そこに出てくる女性は、小中学生が裸を見て、美しいとか、きれいだとか思えるような代物ではなかった。

大体設定自体が、「団地妻」とかでは、生活臭あふれることこの上もない。

そんな僕等にとっての性の対象は、ずばり「金髪美人」

そして、中学生でも知っている世間の噂では、北欧はフリーセックスの国々であり、とりわけ何故かスエーデンはノーカットポルノ本の聖地ということになっていたのである。

三時間目が終わり、クラスの一人がE組の生徒に交渉にでかけた。

「それ、次の休み時間に俺らのクラスにもみせてくれや」

次の休み時間は昼休みになってしまう。

「ダメだ。時間が長すぎる。先生にバレル可能性が高い。」

そこをなんとか!!と頼み込み、結局給食が配られ、食べ始める前の時間だけ貸してもらえることになった。

4時間目の授業中、先生の目をくぐって、男子にのみメモが回された。

「給前 金 広 全部」

万が一、先生に見つかってもいいように暗号メモになっている。

そりゃそうだ。

ただのエロ本ではなく、海外のノーカットポルノなのだ。

先生に見つかったら間違いなく、見たモノ全員が激しく反省させられ、親は呼び出されるに違いない。

タバコを吸ったとか、酒を飲んだで呼び出されるならまだいいが、ノーカットポルノを見た罪で親、しかも多分に母親を呼び出されるのがマズいということは、皆理解できる。

というより、以後女子が口をきいてくれなくなる可能性すらある。

これは絶対ばれてはいけないのだ。

暗号メモの意味はこうだった

「給食の前に見れる。金髪美人が股を広げていて、全部見えるらしいぜ!!」

僕等はゴクリと唾を飲み込みながら、メモを次の男子に回していった。

授業が終わると、給食当番の男子3名と、ブツを取りに行った2名をのぞいたクラスの男子全員が校舎の一番端にある音楽室に集合した。

専門教室には、給食が終わるまでは誰もこない。

皆、期待に目が輝いている。

「金髪 金髪!!」

金髪という言葉がエロに直結していたあの頃。

懐かしい・・・・

そのうち生徒の一人が言い出した。

「あのさ、俺、前から思っていたんだけど、金髪の人って下の毛も金髪なのかな?」

皆が目を合わせた。

「いや、やっぱり頭だけなんじゃないか?」

生徒達の口論がはじまった。

「そんな事ないだろ?やっぱ頭が金髪なら、下も金髪だろ?」

「え~っ!!じゃあ、男は金髪のなかにおちんちんが立っているのか?」

「じゃあ、白人が上が金髪で下は黒いのかよ?じゃあ、胸毛は何色になるんだ?」

「ジェームスボンドは黒い胸毛だったぞ(ショーン・コネリー版)」

「でも、ジェームスボンドは髪の毛黒いだろ?」

「あ、黒人は肌が黒いけど、手のひらと足の裏は白いというか、黒くないってさ」

「それは白人との混血だからじゃないのか?」

「じゃあ、日本人とアメリカ人のハーフは手のひらと足の裏だけ白かったり黄色かったりするのかよ?」

「いや、それは肌の色だろ?それに黒人の足の裏と手のひらが黒くないのは太陽にあたらないからじゃないか?何代にもわたって日焼けしてないからだろ?」

「だったら脇の下も黒くなくないとおかしくないか?」

ようやく不良の間で髪の毛を脱色するという技が定着してきた頃である。

しかもコーラで脱色するとかいう世界だ。

僕等にとっては果たして金髪美人のヘアが黒か金色か?ということは、本当に未知の領域だった。

「それは本がくればわかるだろ?」

一人がそういったとき、ドアで見張りをしていた生徒が言った。

「来たぞ!!」

ブツを取りにいった二人が小走りに音楽室に入ってきた。

一人は学生服のお腹に、本をかくしているのがバレバレな状態だ。

「もってきたぜ!!」

彼がお腹から本を出した。

プレイボーイなんかと同じ大判の雑誌サイズだ。

「おおっ!!」

みんなが声を出した。

表紙の女性が、びっくりするような美人だったからだ。

「さすがスエーデンだな・・・こんな美人も脱ぐのか・・・」

もちろん金髪だ。

ヌードではなく、パンティをはいて胸をおさえている。

「見ようぜ」

僕等はページをめくった。

「げ~っ!!」

そこに写っていたのは、なんと全裸の男性。

しかも勃起した自分のブツを両手で握っている。

さらには、両手で握っても、そのブツは余っているのだ。

「こんなのチンチンじゃねえ・・・・バットだ・・・・」

誰かが言った。

僕等は一瞬頭が真っ白になった。

勝てない・・・・

このでかさには勝てない・・・・

金髪ロン毛の筋骨たくましい男性は、金色の陰毛のなかにそそり立った、両手でも有り余る自分のブツを握りながら不適にニヤリとこっちを向いて笑っている。

「やっぱ、バイキングだからかな・・・」

その声に、皆、意味もなくうなずいた。

そうだ。スエーデンはバイキングの国だ。

ヨーロッパを股にかけて暴れ回ったバイキングならば、このようなバットのようなブツもっていても・・・・

「いいよそんなの!!次!!次!!」

一人が言い出すと、皆もうなずいた。

僕等に与えられた時間は給食委員が給食を受け取り、配りはじめるまでの僅かな時間だけなのだ。

次のページをめくった。

「やっぱり」

「おお~っ!!」

そこには金髪美人のねーちゃんが、斜め座りでポーズをとっていた。

「やっぱり下も金髪だ!!」

「すげ~」

「そうだったのか~っ」

皆、ひどく感動した。

白い肌にやわやわと茂る金色のヘアからはエロさは感じられず、むしろ崇高さすら感じられる。

これが日本男児がひれ伏す(?)金髪美人の秘密だったのだ!!

「う~ん。きれいだなあ~」

みな感動した。

「次、いこうぜ!!次!!」

次のページはお尻を突き出した別の女性の写真だった。

「う~ん」

「次!!」

僕等全員に衝撃が走った。

「うっ・・・」

そこにはメガネをかけた秘書風の女性がベットの上に股を広げて横たわっており、その両手は、自分の大事な部分を思いっきり広げていたのだ。

しかもその色はいわゆるドドメ色という奴で・・・・

僕等全員が沈黙した。

これはなんだ?

この複雑怪奇な不思議な物体は?

というか、内臓ならともかく、何故こんなヌメヌメした感じのものが、人間の体の外側についているのだ?

男子のモノはシンプルである。

女性の体に、こんなにも異質なものがついているのだとは、誰も思っていなかったに違いない。

ぼくらは音楽室を出て教室に向かった。

その日の給食を完食できた男子は一人もいなかった。

そしてその日一日、女子と積極的に話をする男子もいなかったのである。

その晩、僕は意味もなくうなされた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

高校生になった僕は、家のタンスからヌードトランプを発見した。

海外出張が多かったオヤジが香港で買ってきたものをポンとタンスの片隅にいれておいたらしかった。

13X4+2の54枚のカード全部の、一枚ずつが違う女性のヌードになっていて、もちろんノーカットだった。

人種も白人、黒人、アジア人それに南米のインディオの女性まで多岐にわたってあった。

僕は色々な人種の女体の神秘の形状に関して学ぶことができた。

そして遂に、その複雑な物体に対する違和感を克服することができた。

そのころ世間ではノーパン喫茶なるものが大ブームになっていた。

床が鏡張りで、ウエイトレスがノーパン(だけどパンストははいていたらしい)という喫茶店だ。

だが僕がそんなものに興味を持たなかったのはいうまでもない。

中国に住んでいたころ、出張でやってくる人が、時々香港でプレイボーイを買ってもってきてくれた。

今はどうなったかしらないが、当時の香港ではカラミ写真はダメだが、女性が単独で写っている雑誌は、本屋で買うことができたのだった。

みてみると、どの女性も美しいサーモンピンクでとてもきれいだった。

僕はお昼の日本人スタッフ食堂で、紙袋にいれたプレイボーイ誌を、単身赴任できているスタッフに渡しながら、中学生の時の話をした。

「毎回ハスラーや、プレイボーイもらうと思うんですけど、最近のモデルさんのって凄くきれいな色してますよね。あのときはすっごい色してた記憶があるんですけど」

すると僕から雑誌をうけとった日本人スタッフは、焼きそばを食べながら、雑誌を開き、ヌード写真のページを見ながら言った。

「マイケル・ジャクソンだってあれだけ白くなるんだからなあ~。まあ、そんなもんじゃない?」

おくれてやってきた社長がテーブルにつき、プレイボーイ誌をのぞいて「いいものもってますねえ~」と笑いながら言った。

遠洋漁業船勤務が長かった社長はこういうことに関して、きわめておおらかな人だ。

楽しそうにヌードグラビアページを見ながら食事をする二人を見て、僕はなんともなしに大人になるということの意味を理解したような気がした。

自分にはないものは想像できない。

だが、たとえグロくても実物をみればすぐに慣れる。

そしてやがてそれが美しくも見えてくる。

政治でも商売でも。

そして女性でも。

そういうことがわかってくるのが大人。

それが人類が繁栄していくための偉大な錯覚なのか?

それとも人類を万物の霊長にまで高めた適応能力のすばらしさなのか?

そんな事は誰も知らないし、僕も知りたくはない。

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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2005.08.15

円海兵士を送り出す

何故僕が、バブル期の日本を出て、豊かという言葉からはほど遠い80年代末から90年代前半の中国で5年間もの時間を過ごしたかに関してはいくつか理由がある。

そのうちの一つは、最初のプラントの建設立ち会いに行った時の事だ。

そこは日陰でも37度という気温で、大量に水分を摂取するにもかかわらず、トイレに行く事はほとんどなかった。

みな汗で流れるヒマもなく蒸発してしまうのだ。

そんな場所での2週間の設置作業がようやく終わったあと、掃除をする為に、工員として雇われた女の子達が10人ほどやってきた。

皆、10代後半か20代の始めといった女の子たちだが、誰もが、白いブラウスと、くろっぽい変に緩んだスパッツのようなものを着ていた。

そのころ僕等の国は、デザイナーズブランドがブームで、こんな終戦直前の日本のようなファッションの女の子は見たことがなかった。

それまでにも、バナナとタバコと怪しげなジュースしかない屋台の売店とか、買うとあきらかに油やけしているインスタントラーメンとか、日本の常識では考えられないものをたくさん見たが、この女の子たちの姿は、かなり考えさせられた。

外見だけみれば、彼女達も、僕も、さしてかわりがあるわけではない。

でも、生まれた場所が、ほんの少し違うというだけで、着ているもの一つとってもこれほどの差が・・・・

縫製もよくなさそうな白いブラウスとスパッツズボンで、けらけらと明るく笑いながら、掃除をする彼女たちの姿を見て、当時20代の半ばだった僕は、少しでも彼女たちに良い生活をさせてあげたいと思ったのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

それから一年半後。

僕は二番目のプラントを輸出した会社に勤め、中国に住んでいた。

僕が一階の工場事務所にいくと、工員のロッカー室の前に男子工員がたかっていた。

事務所に入って、工場長が品質管理課や、生産管理課のスタッフ相手にしている会議を横でききながら、僕は自分でウーロン茶をいれて飲んでいた。

「他に何かありますか?」

話し終わった工場長が僕にきいたので「特になし」と返事をすると、スタッフ達は工場の中に入っていた。

「あの人だかりは何?」

僕は事務所に残った工場長に聞いた

「ああ、あれですか・・・」

工場長は浮かぬ顔をして言った。

「軍隊ですよ。」

「何?それ。」

「管轄局の方から何人か軍隊に人を出すことになって、うちの会社からも1人か2人出すことになったんです。」

その時、三階の社長室から、書類をもって秘書兼通訳の王さんが降りてきた。

「ねえねえ、中国の軍隊って志願制じゃないの?」

僕は日本語で彼女に聞いた。

「志願する人もいますけど、徴兵もあります。」

「げ~っ 信じられない!!日本で徴兵なんてやったら、間違いなく反乱がおこるぜ。」

「日本は志願制なんですか?」

「戦前は徴兵でしょ。でも戦後は志願制。自衛隊に行きたい人がいく。韓国は戦前の日本と同じ徴兵制だけどね。」

「知らなかった・・・・」

オイオイ。あんた日本語学科卒だろ?

「でもなんでウチの会社から?中国人は10億以上いるから、志願兵だけで十分ジャン。大体、管轄局だって5000人近い人がいるでしょ?なんで合弁のウチから兵隊出すのさ?国営の企業から出せばいいじゃん。」

「う~ん。合弁だからじゃないでしょうか?兵隊の給料はすっごく安いから、どこの会社でも自分の社員出したがらないし。」

「安いんだ。」

「はい」

具体的にいくらかは忘れてしまったが、「ともかく、飯と着る服はタダでやるんだから、文句いうんじゃねえ~」というような金額だった。

「それは酷い。そんな金額で兵隊雇うから占領地で賄賂とったり、強盗まがいの事したりするんだ。」

「それは昔の国民党です。共産党ではありません。」

王さんの言葉に、工場長もうなずいた。

「そりゃ失礼。じゃあさ、オレが軍隊入って気合い入れ直したほうがいい奴選んでやるよ。」

「誰ですか?」

工場長が言った。

「とりあえず工場長。」

「はあ~(-_-) 言うと思った。」

「だって君たちの国の軍隊の仮想敵国はどこよ?ソ連はなくなっちゃったから、当然日本とアメリカだろ?日本国民のオレとしては、当然中国人民解放軍の弱体化を願っているから、きるだけ年寄りにいってもらいたい。本当は中国側副社長にいってもらいたいけど、あれはもう50過ぎだから検査にとおらないだろう?工場長は30代だから大丈夫。中華人民共和国の平和の為に、そして若き工員達の心の平安の為に、自ら立候補してくれ。頼む。」

「党幹部は徴兵対象にはなりませんから。」

「チェッ!!じゃあ、王さんいけ。日本語しゃべれるから情報部入りだ。弾が飛んできて死ぬことないぞ?俺は自分の部下が死ぬことには絶えられん。日本鬼子といわれた戦時中の日本人ではなく、戦争を放棄した心優しき戦後日本の国民だから。」

「今回は女子は募集してません。それに決めるのは軍のリクルーターです。」

「な~んだ。王さんの軍服姿見たかったのにぃ~。」

書類を工場長に渡すと、王さんはフン!!と鼻を鳴らして出て行った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

半月ほどして、一階の事務所にいる僕に館内電話がかかってきた。

王さんからで、社長室に来るようにということだった。

僕の机も、一応そこにあるのだが、僕はほとんどの時間を一階の工場事務所か工場の中で過ごした。

中国人には管理職は管理事務所に閉じこもるという悪い癖があり、工場が1,2階、事務所が3階というこの会社では、そんなことでは緊急時に間に合わない。

工場管理部門のスタッフは、基本的に一階事務所か工場内ということを、率先して示していたのだ。(って本当は50過ぎたおじさん二人と一日中一緒にいるのがイヤなだけだったりもしたが。)

「先日局の方から、徴兵の指示がでまして、当社からも1名を軍に出すことになりました。」

中国側の副社長が言った。

「で、軍のリクルーターが来て、色々と相談したのですが彼を出す事にしました。」

そういうと彼は、採用時の履歴書を出した。

「これって拒否はできないんですか?」

僕は一応聞いてみた。

「国民の義務ですから。」

「徴兵期間は?」

「2年から3年でしょう」

「徴兵期間終了後の現職場への復帰の保証。それと徴兵期間中、給与の一部をなんらかの名目で、本人に支払ってあげることができますか?」

「現職場への復帰の保証はそちらが良ければ問題ないでしょう。給与の一部を払ってあげれば家族も喜ぶと思いますが、社長の意見はいかがですか?」

中国側の副社長が、社長に尋ねた。

「こないだ聞いたけど、軍の給料は雀の涙ほどしかでないらしいです。」

僕は日本語で社長に言った。

「適当な名目がつきますか?」

「経理と相談しますが、問題ないかと思います。」

「じゃあ、基本給の6割を給付という方向で調整して下さい。円君それでいいですね?」

「はい。」

中国側の副社長は、部屋を出て行った。応接室には軍のリクルーターがまっているのだ。

「徴兵なんてまだあるんですねえ」

僕は社長に言った。

「う~ん。私が子供の時ですからねえ。日本に徴兵制があったのは。私もちょっとびっくりしました。」

「僕なんて、テレビの中の世界の話ですよ。徴兵なんて~のは。大体10億以上の人間がいて、なんで志願兵じゃ足りないんですかねえ?」

「まあ、いくら人口が多くたって、みんなが兵隊になれるほどの教養があるとは限らないんでしょう。彼がいくのは海軍だそうだから。銃の引き金をひければいい陸軍とは違うんですよ」

そういうものか?

そんな話をしながら、社長室のソファでインスタントコーヒーを飲んでいると、秘書の王さんが入ってきた。

「軍に入る前に壮行会をやるんですけど、いつがいいでしょうか?」

「そうですね。別にいつでもいいですよ。どこでやるんですか?」

「会社の食堂の二階でいいそうです。」

「それでいいですけど、料理はきちんとしたもの出してあげてください」

「円さんは、いつがいいですか?」

「オレも?」

「当然です。直属の部下が軍隊にいくんですから。」

「いつでもいいけど、他に誰が来るの?」

「会社からは三人の他に工場長。あとは彼本人とご両親。軍のリクルーターです。」

「いつでもいいよ。でも料理には石班魚と龍蝦をつけてあげて。海軍なんだから。」

石班魚というのはハタの仲間で、中国の南方では日本におけるタイの様な位置着けをされている魚だ。龍蝦とは伊勢エビの事。このあたりの「豪華な食事」には欠かせない食材だ。

「海軍とは関係ないですけど、つけるように言われた事は言っておきます