2007.04.09

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(21)

恒例の四月鬱が(-_-;)・・・・・更新はGW明けになります・・・多分 4/23記

翌朝。

生ぬるい空気のなかで目覚めた僕は、すぐにシャワーを浴びた。

今日はダイビングはなく、10時の飛行機でグァムに向かうので、食事はレストランで食べる事になっていた。

例により念入りにドライヤーをかけている我が友チヒロをおいて、僕は先にレストランに向かい、あれこれと並んでいる料理の中からオレンジジュースとエッグベネディクト、ベーコンをとってテーブルについた。

入り口のところにチヨが見え、手をふると一人でやってきて僕の向かいにすわった。

「おはようさん。」

「おはようでおじゃる。」

「なに?それ?」

チヨが顔をしかめて言った。

「公家言葉だろ?」

「まろやんかっ!!」

「さようでおじゃるか?」

「・・・・・」

ウケてなさそうなのでやめた。

「円さん、何それ?」

チヨがエッグベネディクトを差してきいたので、僕は得意になって説明した。

「これはエッグベネディクトといってな~。イングリッシュマフィンにベーコンとポーチドエッグをのせてオランデーズソースをかけた、私の大好きな朝ご飯だ。でもそこいらのホテルにはおいてないのでめったに食べられないんだけどな。食べておきなさい。」

「おいしそ~やなあ。もらってこよ。」

チヨが席を立つと、入れ替わりにサワムラさんが入ってきて席についた。

なんだか朝のホテルのレストランで女性と二人で座ってるとドキドキするな。

「おはようでおじゃる」

「はあ。おはようございます。」

「よく寝られたでおじゃるか?」

「な、なんですか?それは?」

「公家言葉でおじゃるよ。」

「そ、そうですか・・・でも私は実家熊本だし、公家言葉でなくていいですよ(^_^;)」

「そっか。さっきチヨにも使ったんだけど全然ウケないな。東京ではウケるんだけど。」

「ウケるんですか?」

「いや、やったことないんだけど。」

丁度いいタイミングでチヨが戻ってきた。

「う~ん流石はモンチッチ。二皿で、一皿はフルーツが盛りだくさんですか。」

「誰がモンチッチや!!」

「なんでバナナがないの?ああ、日本でも食べられるもんなバナナは。」

「関係あるかっ!!」

「チヨちゃんそれ何?」

サワムラさんも、チヨと僕のお皿にのっているエッグベネディクトを見て、チヨにきいた。

「これですか?これはエッグベネディクトといって、高級な卵料理です。めったに食べられないんです」

「ずいぶんはしょったな。チヨ。」

「詳しくは円さんに聞いて下さい。」

そういうとチヨはエッグベネディクトにナイフを入れ、一口食べた。

「おいし~い。」

「でっしょ?エッグベネディクトおいしいでしょ?」

それをきいてサワムラさんもビュッフェに向かった。

三人でエッグベネディクトを食べて、そのおいしさとソースについて語り合っていると我が友チヒロがカメラを肩に提げてやってきた。

僕等の姿を認めると、先に料理をとってからテーブルにやってきた。

「何食べてるの?」

「エッグベネディクト!!」三人が同時に言った。

「なんだ?それ。」

「食えばわかる。」

「円さんつめたいなあ~。」

「じゃ、チヨが教えてやれ。」

「おいしい卵料理です。」

あまりかわらない。っていうか、エッグベネディクトに夢中なので話したくない。

「オレもとってこよ。」

我が友チヒロは再び席を立ち、お皿にエッグベネディクトとサラダをきれいに盛り合わせてきた。

そしてカメラを取り出すとカシャカシャと写真をとりはじめた。

「見ろチヨ。マニアは目で味わうよりさきに、カメラで味わうのだ。」

「なんのマニアかわからんわあ。」

「フィルムが余ったからな。」

我が友チヒロが言った。

ブルーコーナーで写真が撮れなかったからフィルムが余ってしまったらしい。

魚の替わりにお料理カメラマンになってしまった。

僕はデザートをとるためにたちあがり、チヨもジュースをとるために席を離れた。

僕等はビュッフェテーブルのところで、こっそり二人を見ていた。

我が友チヒロが望遠レンズのついたカメラを、サワムラさんの顔に向け、シャッターを押した。

カシャカシャカシャ・・・

「やめてください。」

サワムラさんのきっぱりとした、しかもかなり怒っている感じの声が、レストラン中に響いた。

僕とチヨは、すかさず二人に背をむけた。

「うわっ!!チヒロはカメラでサワムラさんを味わおうとして、怒られてしまったぞ!!」

「まずいデスね~ あれはっ!!」チヨも標準語になった。

「なんかあれだな。10代の女の子の前でいうのもなんだが、あのカメラは、その、男のナニみたいであり、朝から至近距離でいきなりむけられるとちょっと怒りたくなるかもな。」

「なんか成田離婚するカップルと同席した気分や~」

「いや、成田離婚するんであっても、1度はカップルになれたならチヒロ君には問題ないと思うぞ。金かけて外国まで来て、カップルにもなれず、険悪な雰囲気だから問題なんだろう?」

「どないしたらええんやろか?」

「しらんぷりだ!!今の事は気がつかなかった事にしよう。」

「そうやなあ~。サワムラさんも火の国の女やからなあ~(^_^;)」

「チヒロは京都のおっとりした女の子だと思ってるからな。」

「まあ見てくれはそうやけど。丙午やし。」

「え?ひのえうま?男を食いつぶすといわれる丙午女?」

「そうや。」

そっか。それじゃしょうがない。

  

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

荷物をもって、誰よりも早くレセプションでチェックアウトをすませていると、ヨシタニさんが迎えの車でやってきた。

ヨシタニさんは、僕以外誰もいないとみると、視線は彼らがやってくる方向に向けながら僕に尋ねてきた。

「で、どうでした?チヒロさんは?」

「はあ。バットを振って振って振りまくったけど、全打席空振りの三振だったようです。」

「振りまくってしまいましたか・・・」

「はあ。海外遠征までしての企画だったので、一度の空振り三振ではあきらめきれずに、追って追っておいつめたら相手が爆発みたいな。」

「ははは。怪傑ズバットならぬ、恋愛ズバットですね。」

「ズバット参上、ズバット解決なら良かったんですが。ズバット惨状、ズバット怪決なんで気の毒です。」

「でもまあ男はそれを繰り返してようやく打率を上げられるようになるんですよ。いきなり三割バッターにはなれませんから。」

「はあ。師匠がいうと説得力がありますね。まあ、私としては胸にZの傷跡が残らないことを祈ります。」

空港に向かう車の中ではサワムラさんはチヨと隣同士ですわり、楽しそうに話していた。

我が友は黙って外を見ていた。

助手席に座る僕と運転するヨシタニ師匠は、バックミラーでチラチラとその様子をながめていた。

せつなすぎるな・・・・

空港でチェックインをすませると、僕等はグァムに向かった。

グァムでは乗り換えだけだ。

僕は四人のチケットをまとめて受け取ると、ビジネスファーストのカウンターにいき、自分の分と三人の分のグァムー成田間のチケットを手にいれた。

Yクラスの席は、2人を隣同士に。1人を後ろの席にしてもらい、3人分まとめて我が友に渡した。

最後のチャンスだ。がんばれ。

トランジットルームに入ると、チヨとサワムラさんは免税店に買い物にでかけた。

僕と我が友チヒロは女の子達の荷物をみながら、高校生のバイトが売っているアイスラテを買って飲んだ。

「なんてことだ・・・オレのクリスマスが・・・」

僕は黙ってアイスラテをすすった。

「ブルーコーナーも流れていて、写真も撮れなかったし。」

でもお前には、お弁当食った島で撮った、青い海とサワムラさんの写真があるではないか。後ろ姿だけど・・・と言おうと思ったがやめた。

よく考えると、今朝だって怒られたものの、写真は撮れていたはずだ。

魚の写真はとれなくても、サワムラさんの写真はいっぱいある。

「昨日のゲームは負けっ放しだし。」

はあ。

「旅行費用や、カメラのハウジングで50万近くかけたのに、何もいいことがなかった!!」

で、あるか。

「大体お前がきてから変な流れになったんだ!!初日はいい感じだったのにっ!!」

って、初日も一人で部屋を真っ暗にして寝てたじゃん!!

「大失敗だ!!お前なんかさそわなけりゃよかった(>_<)!!」

これには流石の僕もキレた。

クリスマスのテーブルをチップ払ってとったのも僕だ。

三人のフィリピンバンド(?)に歌わせたチップも僕の負担だ。

ついでにドンペリも僕の負担になった。

チヨのお守りもずっとやった。

なのにこれかいっ!!

「あのな~。キミはトロすぎる。大体南の島で、ドンペリ飲んで、彼女の後ろでラストクリスマス演奏してやって、これ以上ないってくらいに盛り上げてやったのに、何故落とせない?まあチヨがいるからベットまではいけなくても、帰ってから改めてデートするくらいは約束できるだろ?普通。」

我が友チヒロがその瞬間、異常なテンションになったのがわかった。

「オレはトロくなんかない!!サワムラが硬すぎるんだ!!ウソだと思うならお前が落としてみろっ!!」

そう吐き捨てるようにいうと、我が友チヒロは席を立ち、免税店へと向かった。

ほ~っ そうですか。いいんですか。

入れ替わりにサワムラさんが帰ってきた。

「なんかいいものありました?」

僕はサワムラさんに聞いた。

「特には。会社の人へのお土産だけかってきました。」

よく見るとサワムラさんはかわいい。

きちんとしているし、派手派手しさがないし、女というよりは、素朴で育ちの良い少女のような雰囲気だ。

僕はキチンとした女の子というのは苦手なほうなのだが、サワムラさんの場合、少女のような雰囲気が、キチンとした女性特有のかたっくるしさを感じさせず、なかなか好感がもてた。

でもだ。

よく考えてみると、ここ数年、僕は自分と似たりよったりの年齢の日本女性と話したことがない(-_-;)

みゆちゃんとは日本に帰ったときに一緒にご飯を食べたりするが、すでに結婚しているし、もともとが友達の彼女だったので、口説くことを念頭において会話しているわけではないし。

さて、何を話したらよかろう?

日本の音楽も、日本のテレビの事もしらないしなあ~。

だが僕等には仕事で微妙に共通する部分があった。

僕にしてもサワムラさんにしても扱っているのは生物である。

で、生存している場所からして全く違うし、サワムラさんは一番上流の育てる方で、僕は下流の加工の方だ。

ただ、天然のモノではなく、人工的に育てたものを扱うのは同じ。

で、僕は餌に関する話を振ってみた。

僕たちはいつの間にか、お互いの扱っている生物を病気をさせずに早く大きくするのにどんな栄養素が必要とされるかについて、ありえないほど熱心に語り合っていた。

正直育てる側にいるサワムラさんの話はとても興味深かった。

熱中して話していてふと気がつくと・・・・

我が友チヒロが熱心に語り合っている僕とサワムラさんを、免税店を出てきたところで呆然としてみているのが目に入った。

その姿はまるでゾンビのようだった。

いや、極めて学術的な会話だったんですけど・・・・

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

飛行機がグァムの空港を飛び立ちしばらくしてから、僕はYクラスの方をのぞいてみた。

三人の席の番号を探して飛行機の後ろへと歩いていく。

サワムラさんが僕に気がつき、手をふった。

で、その隣にいるのは我が友ではなく、チヨ・・・・・

我が友はその後ろにちょこんとすわっていた。

ダメだったか・・・・

しかも目がイッてしまっている。

僕の姿も目に入っていないのか、僕が声をかけるまで、瞬きもせずにただ正面を向いて座っていた。

大丈夫なのか?我が友よ!!

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

成田からはスカイライナーで東京駅に向かった。

チヨとサワムラさんは、今夜は東京駅近くのホテルに泊まり、明日京都に戻る。

僕とチヒロは成田で荷物を宅急便に預けてきていた。

二人は荷物をもったままなので、スーツケースをゴロゴロ引きずりながらホテルへと4人で向かった。

二人がチェックインをすませると、僕は「じゃあちょっと早いけど、良いお年を」といった。

チヨとサワムラさんも「良いお年を!!」といい、エレベーターを上がっていった。

こうしてPDD大作戦は終わった。

僕等二人はホテルから出た。

朝は南の島にいたのに、今は師走の東京の夜10時だ。

僕はここ数日の楽しさと、東京の凍える年末の空気のギャップにどうしょうもない寂しさを感じた。

正月を東京で過ごしたあとは、また中国に戻らなければならない。

僕は中国の空港に降りる飛行機の窓から見えるであろう、光がまばらにしかない暗い大陸の大地の光景を思い出した。

気がつくと吐く息が白い。

僕は思わず両手を摺り合わせた。

その時。

「パラオなんてだいっきらいだ(>_<)!!ワムのラスト・クリスマスなんて、二度ときかねえっ!!ワア~ッ」

視線も定まらず、ゾンビのように歩いていた我が友チヒロがいきなり叫ぶと走り出した。

まるで青春ドラマの1シーンのようなセリフと行動だった。

20代最後の師走の街を、我が友チヒロは走り、小さくなると消えた。

僕は摺り合わせていた両手に白い息をふきかけた。

手を開いてみると、南の島の太陽と海水にあてられたせいか、手のひらの香港癬は跡形もなく消えていた。

僕は香港癬の消えた手をあげタクシーを拾うと、そのまま家へと帰った。

 

 

The end.

NEXT「ダックちゃんの憂鬱」

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.03.19

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(19)

フロントで待ち合わせていた僕たちは、4人そろってレストランに向かった。

レストランの入り口には昨夜のウエイターが立っていて、僕たちをにこやかに迎えてくれた。

「こちらでよろしいでしょうか?」

僕等のテーブルは、周囲が外人の家族連れで、日本人の団体客の反対側だった。

うん。これなら良いだろう。

「今日はクリスマスディナーのバイキングテーブルをご用意させていただいております。」

ウエイターが手で示す方向を見ると、ローストビーフやら、ターキーやらがガンガンと並んでいる。

以前ここで食事したとき、「本日のスペシャルパスタ」を頼んだダイビング仲間に、単なるソース焼きそばが出てきた事があるからなあ~

確かに非日本、非中国圏のパラオからするとスペシャルなパスタなんだけど。ソース焼きそば。

僕はチヨとサワムラさんに、クリスマスバイキングで良いかどうか聞いた。

「めっちゃおいしそうや!!」

チヨが目を輝かせて言った。

「私もそれでいいです。」

4人ともクリスマスバイキングにすると、ウエイターが「お飲み物は?」と聞いた。

我が友チヒロの目がキラリと光った。

「え~と・・・クリスマスだし、ワインを頼もうかな・・・」

我が友の気迫に押され、僕はウエイターにワインリストを頼んだ。

「クリスマスだからな。いいワインを頼めよ。任せるから。」

我が友チヒロが念を押すようにいう。

任せられても、僕はワインに関してはあきらめている。

ワインと料理の相性なんて数をこなさないとわからないし、大体僕は酒はほどほどにという口だから、これに関して語るには肝臓の許容量が足りない。

で、自分で必死におぼえるよりもソムリエに任せる方がずっと良いワインにありつけるのがわかって以来、ワインに関して学ぶのはあきらめている。

もちろん我が友チヒロもそれは知っているはずで、つまりこの場合は「ドンペリを頼め!!」という事だ。

英語でかかれたワインリストをぺらぺらとめくり、ドン・ペリニョンの値段だけ確認して、「これを。」と頼んだ。

ぼくらは料理を取りに行き、テーブルに戻ってくると、ウエイターがワインクーラーに入れたドン・ペリニョンをもってきた。

コルクが抜かれ、ウエイターが僕のグラスに注ごうとするので、僕は我が友チヒロのグラスに注ぐよう頼んだ。

フルートグラスに注がれたドンペリニョンからは当然の如く、静かに泡がのぼっていった。

「こ、これってシャンパン?」

チヨがきく。

「チヨちゃん。ドン・ペリニョンだよっ!!」

サワムラさんが嬉しそうにいった。

「え~っ!!ドン・ペリニョンって、ドンペリ?」

「チヒロ君がクリスマスだしっていうから。これは僕等二人からのクリスマスプレゼントってことで。」

我が友チヒロがOKをだし、僕とサワムラさんのグラスにもドンペリが注いだあと、ウエイターがちょっと困った顔をした。

僕がすかさず首を横にふると、ウエイターはにっこり笑ってボトルをワインクーラーに戻し、戻っていった。

「な、なんで?なんで私にはないの?」

チヨがおろおろしながら言った。

「当然だろ?子供はお酒飲んじゃダメじゃないか。」

僕は意地悪そうな笑みを浮かべながらチヨに言った。

「え~っ!!何それ?」

「だって19でしょ?未成年でしょ?おっさんの私としては、認められないな。」

そういうと僕はサワムラさんと我が友チヒロの顔を見て、乾杯して一口飲んだ。

「南の島のシャンパンもなかなかいいな。」

我が友チヒロの顔を見ながら言ってみた。

「特にドンペリはな。まあチヨには悪いが、未成年なんだからしょうがない。」

我が友チヒロも調子を合わす。

「え~っ!!本気なん?本当にダメなの?」

「それはダメでしょう。おっさんが未成年者に飲酒をすすめるなんてできないし。」

「そ、そんな・・・私、ドンペリ飲んだことないんよ?」

「そりゃ当然だろ?未成年だし、今回が初の海外旅行なんだから。」

「サワムラさ~ん」

「何?」

「東京モンが意地悪する~。」

「意地悪じゃないとは思うけど。でもパラオはもしかすると18歳からお酒飲めるかも。」

「そうなん?」

「いや、アメリカは確か21からだから、パラオも21じゃん?」

「バナナジュース頼むか?あるかないかわからないけど?」

「なんで私だけバナナジュースやのん!!」

「子供だから。」

思わず、僕と我が友チヒロの声がハモった。

「キーッ!!」

「チヨちゃん、おっさんは許さないけど、お兄さん達は目をつぶってくれるかもよ?」

「お兄さん?」

チヨがサワムラさんの顔を見ながら聞いた。

「ダメだな。お兄様でなければ。」

僕が言った。

「お、お兄様・・・(-_-;)」

「それでは私に言っているのか、チヒロに言っているのかわからん。もっとも成人三人の許可が必要だと思うが。」

「ぐっ!!」

サワムラさんがチヨの顔を横目で見ながらグラスを傾けた。

なんか喉元が涼しげで、いい感じだ。

「おいしいよチヨちゃん。」

「うっ・・・え、円お兄様・・・チヒロお兄様・・」

「ほう。何かね?チヨちゃん。」

「チヨもドンペリ飲みたいです。」

「なるほど。まあ、キミの保護者はサワムラお姉様だからねえ。サワムラお姉様の意見をきかないと。」

「くっ(>_<)!!サワムラお姉様は問題ないと思います。」

「そうなの?」

僕はサワムラさんの顔を見て言った。

「いいんじゃないですか?一杯くらいは。」

「それならいいかなあ~。どうする?」

我が友チヒロの顔を見た。

「まあクリスマスだからな。一杯くらいはいいだろ。」

そういうと珍しく我が友チヒロはワインクーラーからボトルを出し、チヨに注いでやった。

チヨのグラスにも泡がのぼっていく。

「やったあ~。」

「よかったねチヨちゃん。」

サワムラさんが言う。

「ほな乾杯やあ~」

僕等は4人で乾杯した。

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

食事がほぼ終わった頃、ギターをもった3人組のフィリピン人が僕等のそばにやってきた。

我が友チヒロがまたしても目をキラリと光らせたので、仕方なく僕は手をあげ、彼ら三人を呼んだ。

「ワム!!のラストクリスマスできる?」

「できますよ。まかせて下さい。」

僕はポケットからあらかじめたたんでおいた10ドル札を出し、リーダー格の男の手に握らせた。

もう金銭感覚がわやになってるな(^_^;)

「じゃあ、こちらの女性達に。」

サワムラさんとチヨの後ろに立った三人組が、静かに「ラスト・クリスマス」を歌いはじめた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-) 

 
僕はこのときのチヨとサワムラさんの嬉しそうな顔を今でもはっきり思い出す事ができる。

高いところで風が吹き、海際に植えられたヤシの葉がその風にあおられ地上の光をかすかに浴びながらゆっくり揺れるのも。

遠くで日本人の団体客が笑う声も。

周囲の外人さん達がほほえむ姿も。

 

 

すべては完璧だったのだ。

このときまでは・・・・・

   

 
To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.03.12

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(18)

その時のログは今も僕の手元にある。

「コーナーにしてはとても流れが早い。ウーロンチャネルが流れている時のような早さで、コーナーまで一気に流される。コーナーでチヒロくんがボーナスの大半(違います!!半分以下byチヒロ)をはたいて買ったハウジングをかかえて、必死に岩にしがみついているのを発見!!チヒロくんピ~ンチ!!と思い助けにいくが(大きなお世話だっ!!byチヒロ)あまりの流れの速さに自分が死にそうになった(すごーく流れがきついのに円さんは何をしにきたのだろうとチヒロさんの斜め後ろで思っていたサワムラbyサワムラ)マスクは相変わらず浸水するし、前日、エクジットバルブのノブがとれてしまったので、逆立ちで腰のバルブからエアをぬきつつ減圧する。(私に自分の技術の高さをみせつけているのかと思いましたbyチヨ)(チヨそんなことするヤツは技術高くないから。円は単なる自滅型のダイバーだから見習わないようにbyチヒロ)誰も助けてくれずに、非情という言葉の意味を知る。」

()は各自が追加書き込みした部分

つまり、僕の命がけの行動は、自然の猛威のなか命をかけて友を救おうとする男と、その素晴らしい友情をみつめる女という、ラブロマンスの王道を行く物語にはならずに、この人は、何故こんなすごい流れの中をはいずって移動しているんだろう?という周囲の軽い疑問をおこすだけで終わったのだった。

それは良しとして・・・・・・

ダイビングを終え、僕等はホテルに戻った。

その日は4人でジャグジーでまったりとして、三人は部屋に戻り、僕はビーチにでてビーチチェアをリクライニングさせて横になっていた。

ヤシの葉のさざめきと静かな波の音のなかで、太陽がゆっくりと傾いていく。

僕の育った東京は、この頃おそらくどこよりもモノが満ちあふれた世界になっていた。

お金さえあれば、世界中のありとあらゆるものを手に入れることができた。

しかもチヨのような今年の春に高校を卒業したばかりの女の子でさえ、南の島の一流ホテルでダイビングしながら、クリスマス休暇を楽しめるだけのお金を得ることができた。

それが僕の生まれ育った国だ。

一方で僕が仕事をしている中国では、風が吹けば砂埃が舞い上がり、街中の商店にいっても買いたくなるようなものはほとんど無く、工場は港に面していたが、ふと潮の引いた岩場で夕日を眺めていると、いつのまにやら周囲には巨大なドブ鼠たちが走り回っていたりする。

空にある太陽はおなじだけれども、照らし出す世界は違う。

僕はこの四年間の中国での生活を思っていた。

四年前はじめて中国に来たとき、僕は生まれる場所が、飛行機で数時間の距離を違えただけで、こんなにも豊かさがちがうのか?と驚いたのだった。

そして、なんとかしてこの人達を僕等と同じような生活ができるようにできないかと思い、仕事をはじめた。

それが無駄だったとは思わない。

だが、太陽ですら人間に等しく光を与えることはできても、等しく豊かな世界を与えることはできないのだ。

空が静かなオレンジにそまりはじめたころ、僕は自分の中で何かがかわっていっていることに気づいた。

それが何なのかは、まだ言葉にできなかったのだが。

部屋に戻る途中、サワムラさんに会った。

「あら円さん。今部屋に戻るんですか?」

「はい。サワムラさんこそ、一人で何してんですか?」

「チヨちゃんがお風呂入ってるので、ホテルのお土産屋さんでものぞいてようかと思って。」

「そうなんだ。イルカのネックレスとかかわいいのありましたよ。8月に来たとき。じゃ、私もご飯の前にお風呂入るんで。」

ホテル内のお土産店の前で別れて部屋に戻った。

ドアを開けると、我が友チヒロはバスルームで鏡に向かいしきりに髪の毛をいじくっていた。

つけっぱなしになったテレビからは英語のナレーションが流れていた。

サメの番組をやっている。

我が友チヒロがバスルームからでてくるなり、僕の顔を見ていった。

「なんだ?なんかお前の周囲に、くら~いオーラが見えるぞ?」

「なんだそれ?」

「いや、冗談だけどなんか変だ。まあ、お前は子供の時から時々急に黙り込んで変になるけどな。」

「チヒロ君。僕は誰もいないプライベートビーチで、風にふかれながらここ数年の人生を振り返っていたのだよ。」

「そっか。まあ、お前のこの4~5年の生活は激変だからな。大体旅行というものを修学旅行しかしないお前が、日本、香港、中国と飛び回り、中国でも1日300キロ車で移動しながら過ごしているなんて考えられないことだ。」

「どうでもいいけど、お前も一度くらいは中国来いや。旅行好きなんだから。」

「イヤだ。お前の手紙読んでいるだけで十分。大体お前だって中国は仕事するところで観光する気になれないとかいってるだろ?」

「オレが観光する気になれないのは、旅行中に公衆便所使うことを考えるとだなあ・・・」

「そうだな。壁ないそうだから。万里の長城行って感動したとしても、そのあとトイレで中国のおっさんの尻の穴からウンコがモリモリでてくるの見せられたら意味ないよな。絶対万里の長城のインパクトより、おっさんのケツから出るウンコのインパクトのほうがすごいもんな。つまりオレが中国に旅行に行っても、記憶に残るのは中国のおっさんのケツから出るウンコの記憶だけってこった。そんな旅行はしたくない。以上。」

「お前はスカトロジストかっ!!もしかするとおっさんではなく、美少年かもしれんぞ。」

「それに興奮できたら、こんなとこまでサワムラをおびき出して来るか!!オレが旅に求めるのは美味しい食べ物、写真にとりたくなるような素晴らしい景色。そして素敵な女性との出会いだ。」

「それはオレも同じだがな。」

「それは違う。お前は素敵な女性との出会いがなくてもいい男だ。実際そういう旅をして4年間くらしているし。」

「うん・・・・・」

「わかった?」

「なんとなく・・って何が?」

「お前が素敵な女性との出会いを求めて旅をしない男だってことだよ。だから今夜も求めるな。クリスマスだけど。いや、チヨだって5年もすればそれなりにかわいくなるかもしれない。求めるならチヨを求めろ。先行投資だ。そういうわけで早く風呂に入れ。予約した時間まであと30分だぞ。」

僕はバスルームに入り、熱いシャワーを思いっきり浴びた。

シャンプーで頭を泡だらけにして、たっぷりと泡立てた石鹸で全身を泡だらけにしたあとで、じっくり時間をかけて熱いシャワーを浴びる。

中国のホテルでは、シャワーの水量も十分ないことが多かった。

熱いシャワーを心ゆくまで浴びられるのは贅沢だった。

タオルで全身を拭き、ヒゲを剃り、ドライヤーで頭をかわかすとパンツをはいてバスルームを出た。

ジーンズにシルクのシャツを着る。

コテージを出て本館の廊下を少しあるくと、オープンエアのカフェの方向で人々のさざめきが聞こえた。

そこに流れている気配は、中国とも日本とも違った。

今日は祭の夜なのだった。

 

To be continue.
 

Uploads on coming monday!!
 

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.03.05

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(17)

1本目にコーラルガーデンを潜った僕等は、お昼を取るために小さな島に上陸した。

お弁当を食べた後、皆で記念写真を撮り、小さな浜辺で休憩となった。

2本目はブルーコーナーからドロップオフをずっと進み、ブルーコーナーに行き浮上するらしい。

我が友チヒロは、念入りにカメラとハウジングを整備していた。

カメラが趣味の我が友チヒロは、愛用の一眼レフの為に、オーダーメイドで水中撮影用のハウジングを今回つくったのだった。

カメラとハウジングで、30万近くという代物だ。

ナニゲに見ていると、透明のアクリルのなかで、一眼レフカメラのレンズが伸びたり縮んだりしていた。

「浸水しないといいな。」

僕がナニゲに言うと我が友チヒロは僕の顔を睨み付けた。

「縁起でもないこというなっ!!お前がそういうこと言うと、本当に浸水しそうでこわいわっ!!」

そうですか。はいはい。

写真派のダイバーにとって、浸水は最大の悪夢である。

フィルムはもちろんおシャカだし、大抵はカメラそのものもダメになる。

ブルーホールからブルーコーナーへと抜けるコースは、平均水深も20mを越えるし、ビーチダイビングのように浸水に気づいたからといって、すぐに一人だけ浮上する訳にはいかない。

海水がハウジングに入り出したら、いっぱいになり、カメラとフィルムがおシャカになるところを、水中でまさに息を殺してみていなければならない。

「円さん円さん。血液型何型?」

チヨが僕に聞いた。

サワムラさんと島を探検していたのだが、戻って来たらしい。

「B型。」

「あ~っ!!ウチと同じやあ。」

「チヒロもB型だぞ。」

「ほんま?」

我が友チヒロがうなずいた。

「サワムラさんは何型なんですか?」

僕はサワムラさんに聞いてみた。

「私はA型です。」

そっか。

「そうなんだ。じゃあ円とサワムラは友達になれないよ。円の歴代の彼女にも友達にも、A型は一人もいないんだからな。」

我が友チヒロが嬉しそうに言った。

「えっ?そうなんですか?」

サワムラさんが僕に聞いた。

「まあ、そうなんですけどね。でも最初のA型の友達になるかも知れないし。サワムラさんが。」

「そうですね。光栄です。」

光栄?そりゃどうも。

我が友チヒロを見ると、面白くなさそうな顔をして顔を背けた。

イヤ、そんな人の足を引っ張るようなこと嬉しそうに言うから(^_^;)

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

ブルーホールは、海中にある縦穴である。

ここをゆっくりと降りていき、底から上を見ると光の加減できれいに見えるという、写真派ダイバーには良いかもしれないが、僕のような浮遊派ダイバーには、魚もいないし、どうでもいいような場所だ。

大体こんなクリスマスシーズンだと、次から次へと、ホールにエントリーしてくる連中が水雷のように上から降下してくるから、上を向いてシャッターを構えても、降下してくるダイバーくらいしかうつらない。

バディを組んだ我が友チヒロも底についたとき、上を見たが、写真を撮るのはすぐにあきらめた。

ホールから出て、ドロップオフをブルーコーナーへと向かう。

ドロップオフというのは海中にある崖のこと。

ここを陸上では崖の上ではなく、崖が落ちた空中にあたる部分を、流れにのって崖下を見ながら進んでいく。

中世浮力がとれれば空を飛んでいるようでダイビングをしていて良かったと思える瞬間なのだが、中世浮力がとれないと崖下までどんどん降下していってしまう恐怖の瞬間となる。

ブルーホールからブルーコーナーへのドロップオフは深く、底まで落ちたら多分帰ってこれない。

流れにのりながらじっと下を見ていると、サメがずっと下を泳いでいるのがわかる。

パラオではごく普通にサメを見るが、ダイバーが襲われることはない。

夏に3mくらいのハンマーヘッドを見たときは、ポイントにいたのは僕とヨシミさんだけだったが、ハンマーヘッドのほうが逃げていった。

僕は左手に深度計をもって、深度が落ちすぎないよう気を付けながら崖に沿って進んだ。

途中振り返ってチヨや、サワムラさんを見るが二人とも落ちていくこともなく順調にすすんでいた。

もちろん我が友もだ。

途中先頭を進んでいたヨシミさんが振り返り、全員に崖から離れるよう手で合図した。

ドロップオフにむけて直角に海の流れが来ていると、ドロップオフにぶつかったとたん流れは上か下に逃げる。

その流れに巻き込まれると、あっというまに流れに乗って浮上させられたり、沈下させられることになる。

僕は素直にドロップオフから離れつつ進んだ。

ブルーコーナーはこのドロップオフ沿いにちょっとつきだした岬のような場所だが、もちろん海中にある。

そこには常に7~8匹のサメの群れと、数知れない大きなバラクーダ(鬼カマス)の群れがいて、当時は世界中のダイビングスポットでも10本の指に入るくらい人気があった。

僕等がたどり着くと、すでに5~60人の先客がいて、コーナーの岩に必死につかまっていた。

それはまるでウーロンチャネルの流れている時のような凄さで、岩の上をとばされながらも、BCのエアを一気に抜き、岬の上に着陸するような感じで僕も岩にとりついた。

片方の腕でポケットから3mのロープを出すと、それを岩にまきつけ、反対側のカラビナをBCのDリングにつけて、岩にとりついた手を離しBCにエアを少しだけいれる。

僕の体は流れに煽られ、浮き上がった。

こうすればブルーコーナーの流れの速い時でも、両手をあけてじっくり魚を見ることができるのだ!!

これぞ今年の夏、パラオに来たときにヨシタニさんから盗んだ必殺技、マンカイト!!

別名白影の術!!(わからない人は、ウィキペディアで仮面の忍者赤影を調べよう!!)

魚を見るどころではないくらい吹いている海中でも、サメやバラクーダは泳ぐこともなく、ヒレの角度でバランスを取るだけで一点に留まっていた。

こういうのは見ると感動する。

まあ、ビニールが飛ぶような風の日だって人間は立っていることが出来るわけだから、単に陸に住むものと海に住む者という違いに起因する事だと言ってしまえばそうなんだけど。

そんな事を考えながらサメをじっとみて、なんとかあの流れの中でも一点にとどまれるテクを盗めないかと考えていた時、マスクの隅に我が友チヒロの姿がうつった。

みてみると、彼は片手に総額30万のハウジング入りカメラをかかえ、必死で岩につかまっていた。

その体は、流れに煽られていて、今にも岩につかまっている手を離してしまいそうではないかっ!!

もちろん写真なんかとれる状態ではない。

これは我が友最大のピンチ!!

助けにいかなければっ!!

僕はロープを取り込みながら、再度BCのエアを抜いて岩の上に降下すると、流れに逆らい匍匐前進するように我が友チヒロの方へと向かった。

その時、前にいた別のグループに離脱の指示がでて、全員がふわっと浮き上がった。

僕は確認もしないで後ろに流れてくるバカタレの身体を岩の上に密着するようにして避けた。

ガキっ!!

そいつの体はかわせたものの、巻き上げた小石が飛んできて、僕の頭にあたったっ(>_<)

いって~っ!!

が、そんな事を言っている場合ではない。

我が友は流れの抵抗を少しでも減らすべく、ハウジングを腕で抱きかかえているが、それでも身体を煽られているのだっ!!

僕は痛む額をこらえて我が友チヒロのもとへと進んだ。

助けなければ!!我が友を助けなければ!!

流れのあまりの凄さに、マスクがずれて浸水してきた!!

オーッ!!オレがピンチじゃん(>_<)!!

それでも我が友のもとへと向かう僕を、我が友の斜め後ろに位置していたサワムラさんが見ていた。

サワムラさんも必死に岩につかまっている。

おおっ!!きっとこの凄まじい流れの中、我が友チヒロを助けるべく、必死に海中匍匐前進している僕を見て、サワムラさんは猛烈に感動しているに違いない。

ついにこの物語は、自然の猛威のなか命をかけて友を救おうとする男と、その素晴らしい友情をみつめる女という、ラブロマンスの王道を行く展開になったのだっ!!

これぞクリスマスイベント!!

すごいぜオレ!!

すごいぜパラオ!!

 

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.02.25

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(16)

クリスマスの朝・・・・・

ベットで寝ていた僕は、いきなり我が友チヒロの蹴りでおこされた。

「クリスマスだぞ!!早く起きろ!!」

クリスマスって・・・・

おいらクリスチャンじゃないし・・・・

我が友チヒロはすでにバスルームに入り、シャワーを浴びていた。

僕はケロッグのシュガーフロストを器に入れ、牛乳をかけて食べ始めた。

時計を見ると、集合の時間まで、まだ一時間半もあるではないか・・・

まあ、七時半だから、決して早起きってわけではないが・・・

ケロッグを食べ終わった頃、バスルームからドライヤーの音がした。

昨日食事に出る前に、我が友チヒロはメモ用紙にヘアドライヤーを入れてくれるようメッセージを書いてテーブルにおいておいたため、帰ってきたらバスルームにはドライヤーがおいてあったのだった。

「よしっ!!これから今日の作戦会議をするぞっ!!」

バスルームから出てきた我が友チヒロは、髪の毛もきちんとしていて、やる気満々だった。

「まずこれだ。」

そういうと我が友チヒロはバックをあけ、赤いサンタクロースの帽子を二つだした。

「なんだそれ?」

僕はイヤな予感を感じつつ言った。

「みればわかるだろ?サワムラとクリスマスの日はみんなでサンタ帽かぶって潜ろうと約束したんだ。」

「いや、オレは約束してないから。」

モンチッチのようなチヨや、サワムラさんがサンタ帽かぶるのは似合うからよい。

我が友チヒロも、サンタらしくないやせ形だが、のんびりした顔と言えない事もないからクリスマスならいいだろう。

だが僕は、叔父から「人を殺しそうな顔だった」と一年後に言われるくらいの殺伐とした風貌なのだ。

サンタ帽は似合わなすぎる・・・・

「お前が約束したかどうかは関係ない。クリスマスにサンタ帽かぶってダイビングするのは、このツアー参加の条件だから。因みに帽子の代金は700円だから。日本に帰ってから徴収する。」

イツカラツアーニナッタデスカ?

我が友チヒロは全然乗り気ではない僕の手に、無理矢理真っ赤なサンタ帽を握らせた。

帽子一個とはいえ、コスプレダイビングさせられるとは・・・

「そして夕食だが。今日はクリスマスバイキングがあるからそれにしよう。あとルームサービスのメニューにこれを見つけた。レストランにもあるだろ?」

我が友が指さしたルームサービスメニューには「ドン・ペリニオン」と書かれていた。

「まあ、クリスマスだからいいかもね。あれば・・・・・」

「うん。やっぱり折角南の島にやってきてドンペリくらい飲まないとな。」

南の島とドンペリはあまり関係ない気がする。

クリスマスとは関係しそうだが・・・・

なんとなくそのドンペリ代は僕が払う事になりそうな予感を感じながらも、僕は了解した。この際、それは払うから、サンタ帽はチャラにしてくれよ・・・・

「で、食後だが、ゲーム大会だ。」

「ゲームなんかもってきてないぞ」

「安心しろ。おれがもってきた。」

我が友チヒロが二段になったバックの下の段をあけると、まるでおもちゃやさんの行商のようにUNOから、トランプから、訳のわからないゲームがどっさり出てきた。

お前、そんなに持ってるんなら、一人で寝てないで、サワムラさん達とゲームやってろよ・・・・

「オレ的にはおすすめはジェンガだ。これはめっちゃもりあがる。どこでも大成功だ。」

僕はそう言う我が友チヒロの目を見ていった。

「あのな、オレはともかく、お前は盛り上がるだけでいいのか?盛り上がると、なんというか楽しすぎて、それだけで終わっちゃうだろ?それよりも、これあたりをやってみて、サワムラさんの心の内を探りつつ、なんというか、夜中のプライベートビーチ散歩とかに持ち込んだほうがいいんじゃね?」

そういって僕は、「ドキドキ心理ゲーム」とかかれたカードを取り出した。

多少シモネタチックな質問もあるらしい。

「そ、そうだな。ありがとう。そうするよ。作戦会議してよかった。」

いや、どーいたしまして(-_-;)

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

ぼくら二人は、南の島の焼けるような日差しの中、部屋を出た。

エンジンのかかった我が友チヒロは五分前行動で動いている。

ホテルの端にある桟橋まで僕等は歩き、桟橋のところにあるダイビングショップの前で腰掛けてボートがくるのを待った。

チヨとサワムラさんはまだ来ていない。

「何やってんだよっ!!早く帽子かぶれ!!」

我が友チヒロがサンタ帽を握ったままの僕を見て言った。

もちろんチヒロはすでにかぶっている。

「いや、別にこんなところでかぶらんでもよいだろう?」

これからドルフィンウオッチにいく客を迎えにくる船が続々と桟橋につき、それに乗り込む客がサンタ帽かぶったチヒロをジロジロと見ている。

恥ずかしい・・・

僕等がかぶる、かぶらないで言い争っていると、サンタ帽をしっかりかぶったチヨとサワムラさんがやってきた。

チヨがモンチッチなのはいつも通りだが、水着の上にボートジャケットを着て、赤いサンタ帽をかぶったサワムラさんを見て、僕ははじめてかわいいと思った。

「円さん。なんで帽子かぶらへんの?あかんやん」

チヨが僕を見て言った。

「いや、別にボートのってからでも・・・」

「なにいうとるのん?みんなかぶっとるやんか。はよかぶり!!」

「そうですよ。ちゃんとかぶらないと。」

サワムラさんが微笑みながらそう言うので、僕は渋々帽子をかぶった。

みるとピンポンパンのお兄さんの帽子みたいにゴムひもがついている。

「なんでゴム紐がついてるんだ?」

僕は我が友チヒロに聞いた。

「ん?それかぶって潜るんだから、紐つけてないと流されてしまうだろ?オレが前の日針仕事でつけたから」

そんなことまで・・・・

「ウチらもついとるもんね~。サワムラさん!!」

チヨがそういうと、サワムラさんが帽子の中にしまっていた黒いゴム紐を出して見せた。

「サワムラさん達のは黒いゴム紐だが、俺らのは白で、さらにパンツのゴムひものような気がするが、オレの気のせいか?」

『気のせいだ。気にするな。どうせ海に潜るときだけする紐だから。海の中では誰も「あいつの帽子の紐はパンツのゴム紐だ!!」なんて思わないし。』

やっぱし、パンツのゴムひもなのかっ(>_<)

4人でサンタ帽をかぶって並んで座っていると、外人の団体がとおった。

「ワ~オ!!キュート!!」

もちろんチヨや、サワムラさんを見て言っている。

チヨやサワムラさんと一緒に、写真を撮りたがる外人さんもいて、なかなか好評だ。

僕等にも「グッド!!」などと声をかけてくれる。

フレンドリーって素敵だね!!

外人さん達がボートに乗っていってしまうと、今度は日本人の家族連れがぼちぼちと前をとおっていく。

誰もが僕たちの事を冷たい目で見て通り過ぎていった。

「いるのよね。海外だとすぐああいうことしちゃう日本人。」

「恥ずかしいわよね。同じ日本人として。」

そんなことを胸の内でつぶやいているのが、ありありと見える冷たい表情だ。

日本人サイテー・・・・

ああ、僕はビーチの砂になって、この場から消えてしまいたい・・・・・

そんなことを思っていた時、一艘のボートがやってきた。

その船首には僕等同様、水着にTシャツの上に、サンタ帽をかぶった女性がすっくと仁王立ちしていた。

「あれうちらのショップのボートちゃう?」

チヨが言った。

僕はじぃ~っと見ていた。

間違いない。

あの女子プロレスラーのような体躯はヨシミさんだ!!

ぼくらは走って桟橋の先へと向かった。

「ヨシミ師匠~っ!!仲間ですねえ~っ!!」

「やっぱり円さん達だったか!!てっきり外人さんだと思ったんだけど、4人いるからもしかしたらって思ってたんだ!!よかった私一人でなくって。」

やっぱりこんな事するのはパラオでも外人さんだけなのかっ(-_-;)

ボートにはぼくらの知らないお客さんが他に6人いた。

みなにこやかな顔をして僕等サンタ帽の四人組を迎えてくれた。

だからダイバーって好きなんだ。

「今日は一本目にコーラルガーデンにいき、2本目はブルーコーナーを潜る予定です。」

ボートが走り出す前、ヨシミ師匠が皆にいった。

「ブルーコーナーや!!ウチ、ついとるなあ。ダイビング始めたばっかりやのにブルーコーナー潜れるなんて」

チヨが嬉しそうに言った。

クリスマスにブルーコーナー潜れるなんて、まさに最高!!

さあ、風は吹いてきたぞ!!

我が友よ!!がんばれっ!!

 

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.02.12

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(15)

2本目はウーロンチャネルを潜った。

ここは流れるとすっごく楽しいのだが、時間的に流れがなく、極めて平和な一本だった。

帰りのボートでヨシミさんが僕に聞いた。

「今夜他のお客さんと食事いくけど、円さん達はどうする?」

「う~ん。明日もあるし、今日はご一緒させてもらいますかね。」

「じゃあ初めての人がいるんで、あおしまでもいいかな?」

「それいいですね。やっぱここ来たら例のスープは飲んでおかないと。」

帰りはホテルの桟橋ではなく、ダイビングショップの方にボートがついた。

機材はお店の方にあずけ、三人に夕食は、あおしまでいいか確認した。

ホテルまでの送迎の車のなかで、チヨがきいた。

「あおしまって日本料理なん?」

「海鮮料理だ。マングローブカニとか、ロブスターとか、エビとか、京都ではくえない地場の材料をつかった料理だな。エビ、カニは好きか?」

「好きにきまっとるやん。」

「よかったな。でも食べ過ぎるなよ。小学生なんだから。」

「小学生やないっ!!全部くうたるっ!!円さんの分までくうたるっ!!」

まあ、僕は甲殻類はそれほど好きじゃないからいいけどね。

PPRはルームサービスもあるので、食われても問題ないもんね。

ホテルにつくと、チヨとサワムラさんは、ビーチのそばにある露天ジャグジーに入るという。

「円さんはどうします?」

サワムラさんが聞いた。

「ん?まだ一回もいったことないから行ってみようかな?」

すると我が友チヒロが「オレ調子悪いから部屋帰る」といい、一人で部屋の方へと歩いていった。

僕等三人は、ビーチサンダルをペタペタさせながら露天ジャグジーに向かい、ダイビングで硬くなった筋肉をほぐした。

「サワムラさん先にバスルームつかってください。私は円さんとビーチでよこになってからいきますから。」

サワムラさんとわかれて、僕とチヨはビーチに向かった。

途中のタオルハウスで二人分のタオルをもらい、ボーイにオレンジジュースを二つ頼み、ビーチチェアにタオルを敷くと、リクライニングさせて体を伸ばした。

まだ夕暮れには2時間以上ある。太陽の光は弱くなっているが、十分南の島だ。

頭のはるか上では、ヤシの葉が風に吹かれてサワサワと鳴っている。

「ほんま、ええなあ~。日本の海とは大違いや。」

チヨがオレンジジュースをストローで吸いながらいった。

「プライベートビーチはいいよな~。静かで。」

当時のPPRは日本人と欧米人の客が大半だった。

ホテルの規模がでかい割にはビーチにいる人はいつも皆無に等しい。

「ほんまや~。大人になるってええなあ~。うち、去年は高校生やろ?一年後にこんな南の島の静かなビーチで横になってオレンジジュース飲んでるなんて想像もできんかったわ。」

「よかったな。オレも一年前にはPPRのビーチで、19歳の美少女と二人でヤシの葉ずれの音を聞くことになるとは思ってもいなかったよ。」

「円さん。」

「はい?」

「なんか言葉に毒があらへん?」

「ないだろ?別に」

19歳の小猿といわずに、美少女と言ってやったではないかと言おうと思ったのだが、チヨはしみじみとしたムードにひたりきっていたのでやめた。

僕はムードを大事にしてやる男なのだ。

たとえ小猿のムードでも。

「サワムラさんと一緒やったらええのにとか思ってない?」

「それはチヒロくんが思う事で、私が思うことではない。キミは大人になるっていいと思ってるが、チヒロくんは大人になるってつらいと思ってると思うぞ。多分。」

僕は思わず意地悪そうな笑みを浮かべてしまった。

「はははは。でもなんで一人で部屋に帰るんやろなあ。もっとがんばったらええのに。」

「チヒロくんはナイーブな男なのだ。」

「そうは思えへんけどなあ。」

「それはしょうがない。私にとってもチヒロくんは謎な男だから。とりわけ女性に関しては。」

「変なこと考えずに、みんなで楽しく過ごすことだけ考えればええのになあ。そのあとでもじっくりできるやん。」

「チヨくん。それは非常に正しい見解だ。だが、クリスマスに女性を海外まで誘い出した男にはそういう発想の転換は無理なのだと思うぞ。煩悩の塊だから。個人的な見解だが。」

「むずかしいなあ。」

それから30分ほど今日のダイビングの話をして、僕等はお互いの部屋に戻った。

僕が部屋のドアを開けると当然の如く冷房は効いておらず、我が友チヒロはベットに横たわっていた。

「おう・・・」

よどんだ熱気のなかでチヒロが死体のような声を僕にかけてきた。

僕は答えずに部屋の窓をすべてあけた。

海からの気持ちよい風が入ってきた。

「おまえな~。南の島にきてこんな死体置き場みたいな空気が濁った部屋にいるな!!海風でもあびてこい!!」

「無理。調子悪いから。」

調子が悪いのは体でなく、心だろうと言ってやろうと思ったがそれはやめた。

バスルームに入りシャワーを浴びてでてくると、部屋は暑いながらも風がはいり、いい気持ちだった。

ぼくはシーツでさなぎのようになっている我が友チヒロを横目にみながら、冷蔵庫からダイエットコークを出し、テレビを見ながら飲んだ。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

時間が来たのでタクシーを呼んでもらい、4人であおしまに向かった。

我が友チヒロはゾンビのようなやる気のなさなので、仕方なく僕がフロントにタクシーを頼んだ。

一応今夜がクリスマスイブ。

明日はクリスマス。

これからが本番であろうに、ゴングが鳴る前からKOくらったような顔でどうするんだ?

あおしまではマングローブカニやらエビのコースだった。

チヨもサワムラさんも次から次へと更に盛られてくる料理を喜んで食べていた。

だが我が友チヒロは元気がない・・・・・・

そのうちステンレスの壺に入れられたスープがきた。

何も説明せずに、僕はウエイトレスからお玉をとりあげると、コンソメスープを皆にサーブした。

「これおいしいなあ。なんのスープやろ?」

チヨがスープを飲みながら聞いた。

「とっても上品な感じのコンソメですね・・・」

サワムラさんも喜んで飲みながら壺の方を見た。

「フフフ。では君達に教えてあげよう!!このスープの秘密をっ!!」

僕は立ち上がり、壺がお腹のあたりに来るようにして、両手を壺に突っ込んだ。

「トゥルルルットゥル~  フルーツバットス~プ!!」

そういって僕は壺の中におさまっていた、苦しそうな顔をしたコウモリの両翼のところを掴んで持ち上げた。

「えっ・・・・」

チヨとサワムラさんが同時にスプーンをとめた。

そう。フルーツバットというのは、このあたりにいるフルーツしか食べないとされているコウモリで、あおしまの名物は、このフルーツバットを毛もむかずにそのままどぼんと煮込んだフルーツバットスープなのだった。

だがその味は非常に繊細で、何もいわなければ「コンソメっておいしいんだね」という話しにしかならない。

もっとも本当にフルーツバットのダシだけでああいう味になっているのかどうかは僕にはわからないが。

「君達が飲んでいるのは、このコウモリ汁だ。」

「こ・・コウモリ汁・・・」

「円さん・・汁はやめましょう。フルーツバットスープのほうが・・」

サワムラさんが遠慮がちに言った。

「すごいなあ。こうもりそのまんま丸ごといれちゃうなんて。びっくりや。」

チヨはそういうとまたスープを飲み、お皿を空にすると言った。

「おかわりある?」

「なんと!!この壺茹地獄にあったコウモリの凄惨な顔を見て、なおもおかわりか?流石だな京都産フルーツ猿!!」

「誰がフルーツ猿やん!!おいしければなんだっていいやん!!うちはこのパラオクリスマスを徹底的に楽しむんや!!」

「あたしもおかわりっ!!」

「なんとサワムラさんまで!!」

僕は二人にスープをよそってあげた。

「チヨ。このスープのおいしさから想像がつくと思うのだが・・・」

僕はチヨの顔を見ながら言った。

「フルーツバットの肉はすこぶる旨いのだ。」

チヨは僕の顔をジーっと見た。

「それはウソや。だまされへんで・・・」

「いや、本当。世界三大珍味の一つなのだ。」

「やっぱりウソや!!世界三大珍味はトリュフとフォアグラとキャビアやないかっ!!」

「ちっ!!流石にそれくらいは知っていたか。」

「京女をバカにしとったらあかんでえ~」

「いや、バカにはしてない。三大珍味はウソだが、おいしいのは本当なのだ。」

そういうと僕は皮膚が破れたところの肉をちょっとだけつまんで口にいれた。

他のお客さんをはさんで反対側の席で、笑いながら見ていたヨシミさんがちょっと驚いた顔をした。

「ほら。すっごく旨い」

僕はそういうとチヨの顔を見た。

「ほんま食べたんか?」

口をあけて見せた。

「キミも試して見なさい。」

「ほなちょっとだけ。」

僕はチヨにフルーツバットの肉をちぎってあげた。

チヨが口に入れた。とたんに顔をしかめ、ゴックンと飲み干した。

「騙したな~っ!!臭いやんかあ~っ!!」

「でも肉質は悪くないだろ?」

「そんなんわかるかっ!!」

「だったらもう一切れどうだ?」

「いるかっ!!サワムラさん。東京モンにいじめられたあ~。」

「あははは。でも円さん不味いのわかってたんですか?」

「わかってたら食べませんよ。」

「じゃあ、チヨちゃん騙す為にわざわざコウモリ食べたんですか?」

「敵を欺くには自分からと言うでしょ?」

「いや、味方からだと思いますけど。」

「それは一般向けです。奥義書には自分からと書いてあります。」

「でたらめ言うな!!なんの本に書いてあるんやっ!!」

「鬼一法眼の兵法書にきまっとるだろ?」

「サワムラさんほんま?」

「ほんま臭いけど、多分ウソだと思う。」

「やっぱりウソやんかあ~。東京モンはウソつきやあ~」

これだけの騒ぎをしているのに、我が友チヒロはちっとものってこなかった。

仕方ない。ちょっと刺激してやるか。

「そうだ!!せっかくだからコウモリと一緒に写真とりましょう!!」

僕はチヨの後ろにまわり、フルーツバットをチヨの胸にあてた。

「サワムラさんとって。」

サワムラさんがシャッターをおしてくれた。

「よっしゃ。サワムラさん一緒にとりましょう。チヨ。お前シャッターおせ!!」

僕は自分の胸にフルーツバットを広げ、サワムラさんと仲良くならんで写真をとった。

「次はチヒロさんとサワムラさんや。」

カメラをもったままチヨが我が友チヒロに向かって言った。

「いいよ。俺は・・・」

チヒロが投げやりに言ったとたんチヨがキレた。

「なにがいいんやっ!!はよならびぃっ!!」

我が友よ。ガキに怒られてどうする(/_;)

いいよと言ってた割には、何故か我が友チヒロはテーブルの一輪挿しをサワムラさんとの間に置いて写真をとろうとしだした。

「そんなのはアングルとして面白くない!!せっかくならウケを狙って彼女に捧げてみせろっ!!」

そう僕がいうと、合点だとばかりに我が友チヒロは花瓶から花を抜き、恥ずかしげにサワムラさんに捧げようとした。

その時・・・・

「えっ ちょっとそれは・・・・」

サワムラさんのごめんなさい攻撃・・・・・

チヨと僕は一瞬視線を交わし、チヨは有無を言わせずシャッターを押した。

あとには気まずい静けさが残った。

あとでフィルムを現像してみると、我が友チヒロはフルーツバットよりひどい顔をしてうつっていた。

  

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

ホテルに戻り、チヨとサワムラさんを部屋に帰したとき、「円さん。チヒロさん。」と声をかけられた。

振り向くとヨシタニさんだった。

ヨシタニさんは我が友のOW講習の先生であり、ダイビングにおける師匠である。

「どうですか。PDDは。」

「う~ん。時間があったらヨシタニさん相談にのってあげてくださいよ。」

僕がそういうと30分くらいならというので、僕等三人はホテルのバーに入った。

「うまくいかないんですか?」

ヨシタニさんが我が友チヒロに聞いた。

「うまくいかないのはまだしも・・・・」

チヒロがゆっくりと僕の顔を見た。

「流れがこっちにいっちゃっているような気がするんですよ。」

そういうチヒロの目には危険な炎がチロチロと燃えていた。

「な、なんだそれは!!俺が流れをこっちにひっぱっている訳ではないだろう?お前が自分から外れてしまうから、流れがこっちに来てしまうだけだろ~がっ!!。俺はウーロン島でもサワムラさんとチヨをちゃんと切り離したし、ホテルに戻ってからも、サワムラさんを部屋に帰して、チヨと二人でビーチでジュースしてたぞ!!お前が一緒にジャグジーくれば、誘えたじゃないかっ!!」

「それはそうだが・・・・」

「まあまあ。円さんはチヒロさんを助けてあげようとわざわざ1日おくれで来てくれたんじゃないですか。」

「そうだ!!しかもお前に強制されてきたんだぞ!!しかも19歳とかいって、人間じゃなく小猿の世話までさせられて!!因みにチヨのオレンジジュース代も俺が払った!!大体悪いのはお前が調子悪いといいつづけているからだろ?せっかくクリスマスを南の島で楽しくすごそうとやってきた女の子達に対するサービス精神がなっていない!!」

「ああ、それはそうですね。女の子達は皆、現実から逃れて南の島に夢をもとめて来ますから、そこで調子悪いって言っているのは。やはり女の子達を楽しませてあげるという気持がないと。」

流石は南の島の中年王子だな。ヨシタニ師匠。

「う・・・それはそうだが。」

「やっとわかったかっ!!俺が折角こんなとこまで来てお前の恋の成就の為に協力してやってるのに、お前がやる気がないからいかんのだっ!!」

「・・・・・・・」

「まあまあ円さんもそう責め立てないで。まだ二日あるわけですから。」

「・・・・・・・」

「で、明日の作戦はたててあるんですか?」

ヨシタニさんはそういって我が友の顔を見た。

「とりあえず明日は4人で食事をしようと・・・」

「よし!!ここで食事にしよう!!海風の吹くオープンエアのカフェで食事するのだ!!」

「そ・・・そうだな。」

「夜は流しのギターミュージシャンが来てますよ。」

「よし!!それも頼もう!!何にする?」

「やっぱワムのラストクリスマスかな・・・」

「海風にふかれながらおいしいもの食べて、ワムのラストクリスマスですか。いいですね。夢のような南の島のクリスマスです。」

僕等はヨシタニ師匠と別れてレストランに向かった。

「明日の晩の予約したいんだけど。」

「はい。中でございますか?」

「中?」

「あちらでは本格的なフランス料理を提供できますが?」

レストランの一画にVIPルームのように黒いガラスで仕切られた場所があった。

「いや、折角南の島にきたから、外のテーブルがいいんだけど。」

「かしこまりました。お時間は?」

僕は時間を言って予約をとると、5ドル札を渡した。

「できるだけ良いテーブルを。」

「かしこまりました。お任せ下さい。」

これで大丈夫なはず。まあ、本人が明日の晩のシフトに入っていればだが。

「あそこでチップを使うとは。」

我が友チヒロが僕の顔を見ながらいった。

「短期の人間関係は金でつくる。必要とあればだが。」

「そ、そうなのか・・・」

「勝利の為には使うべきときに使わねばならぬのだよ。」

「そ、そうだな。」

「キミも全力をつくして、明日をもりあげろっ!!」

「わかった。PDDに来たんだったな。俺達は。」

「そうだ!!PDDだ!!」

「うん!!PDD!!」

ロビーをよこぎると、ちらりとヨシタニ師匠の姿が見えた。

ん?まだいたのか・・・・

僕等がロビーの端から観察していると、僕等の横を通り過ぎていった女性がヨシタニ師匠と手をつなぎ、ホテルの外へと出て行った。

30前後のなかなかの美人だった。

「流石だな。ヨシタニ師匠。」

「客へのお手つきは厳禁といってたぞ?」

「アホか。こんな何にもないとこで、客に手をつけなければ、何をすればいいのだ?」

「それもそうだな。」

我が友チヒロは、すっかり師匠に洗脳されてしまっていたらしい。

「師と慕って損をしたっ!!」

チヒロはすっかり怒っていた。

いや、お前だって同じだろ・・・・(^_^;)

 
To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.02.05

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(14)

ウーロン島にあがった僕等は、砂浜の上にすわってダイビングショップが用意してくれたお弁当を食べた。

食べ終わってしばらくすると、僕はチヨを誘って海に入る事にした。

浜辺のところでは、カズミが一人でしゃがんで、何かをしていた。

「ねえねえ。カズミがつくったゲージュツ作品見て!!」

みると砂で裸の女体をつくっていた。

「嫁入り前の娘が、そーゆーものをつくってんじゃねえっ!!」

僕はそう言うと、カズミの頭をいきなりどついてやった。

「チヨ!!お前にパラオの海辺での正しい過ごし方を教えてやろう。」

僕はチヨにそう言うと、膝くらいの深さのところで腹這いになり、両手を水底につけると顔を海面に出して、あとは波にあわせて体をゆらゆらとゆらした。

「それ何?」

「ワニにきまってんだろうがっ!!」

「どんな意味があるん?」

「意味?意味なんてあるかっ!!こうやって海のリズムに体をあわせると気持いいんじゃ!!」

「ほんま?ほなやってみよ。」

チヨも「ワニ!!」と叫んで腹這いになった。

「う~ん。確かに陸にいるより気持ええわあ。」

するとカズミがばしゃばしゃと騒がしく近づいて来て「何してるの?」と聞いた。

「ワニ!!」

チヨがカズミに元気よく言った。

「波のリズムに体をなじませる秘法だ」

僕も言った。

「え~っ!!カズミもやるよ。ワニ!!」

こうして三匹のワニが海から陸地をのぞく形になった。

サワムラさんは波打ち際のちょい後ろにいて、我が友チヒロは何故か裸の上半身にスキージャケットのようなものをきてサングラスをかけて、サワムラさんの4mほど後ろにいた。

 

何をしているのだ?せっかく陸地に二人きりにしてやったのに・・・・・

 

「あのさあ、あのおじさんとおねーさんってどういう関係?」

カズミが僕とチヨの顔を見て言った。

「私が見るに、チヒロの一方的な片思い関係。」

僕が言うと、チヨが「やっぱそうやったんか。」と言った。

『な~んだ!!カズミ、円さんがおとーさんで、あのおねーさんがおかーさんで、チヨが子供かと思っちゃった。でもそれにしては奥さん若いなって思ってたんだ。でもさあ、さっきボートの上でカズミと同じフィンがあったから「これ誰のですか~っ」て聞いたら、あのおじさんが「オレのツレのだよ」っていうからさ~。あれ~この4人どうなってんだろって不思議だったんだ。』

アホかっ お前は!!なんで私が19歳のチヨのオヤジなんだっ!!

その時、我が友チヒロがいきなり手元の防水バッグからカメラを取り出すと、こちらを眺めているサワムラさんを背後から撮りだした。

「すっごい望遠レンズみたいなのついとるけど、あれってわたしらはいってるんやろか?」

「いや、絶対サワムラさんの背中と青い海しかうつってないと思う。」

「そやろなあ~。でもどうせとるんやったら、正面から撮ったらええんとちゃう?」

「片思いだから正面から撮らせてくれと言えないのでは?」

僕とチヨがそう言っていると、カズミがいきなりサワムラさんに向かって大声をあげた。

「おくさ~ん!!4人の関係がやっとわかりましたよ~っ!!」

サワムラさんが、自分が話題にされていることに気づいて、こちらにやってきた。

う~ん。確かに中肉中背。身長は160前後。足も太からず細からず。なかなか良いですな。

「何してるんですか?」

サワムラさんがほほえみながら僕に聞いた。

「海のリズムに体のリズムをあわせる為の軽い瞑想です。まあ、私はワニといってますが。」

「じゃあ私もやろっと。」

サワムラさん、チヨ、僕、カズミの四人がワニになって陸上を見つめる形になった。

そして4人の視線の先には、12月とはいえ、皆が水着だけでいる南の島で、スキージャケットを来た我が友チヒロがサングラスをかけて体育座りをしている。

「チヒロさんはこんなに熱いのに、なんであんなジャケットきてるんだろ?」

サワムラさんが誰にともなくつぶやいた。

僕は静かに頭を海中にしずめて、このつぶやきが聞こえないふりをした。

島のお昼は、残酷な気配をはらみつつ、静かに過ぎていった。

 

To be continue.

 

Uploads on coming monday!!

 

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.01.29

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(13)

ついに南の島でのクリスマスがはじまった。

 

 

目が覚めるとクリスマス・イブの朝だった。

我が友はまだ寝ているので、黙ってシャワーを浴び、トイレをすまし、シュガーフロストに牛乳を入れもぐもぐと食べる。

部屋の外に出ると朝とはいえ、けっこう熱い。

でも天気も良く、絶好のダイビング日和。

部屋に戻ると我が友チヒロが飯を食い終わったとこだった。

シャワーを浴びにバスルームに入る前に「冷房きつくするなよ」とのたまわる。

すでに室内の冷房は止められていた。

メッシュバックの中に忘れ物がないか再度チェックしていると、我が友チヒロがバスルームから出てきた。

「ドライヤーもってこさせてくれ。」

「はあ?」

「電話かけてドライヤーもってこさせてくれよ。」

「オレはドライヤーなんか必要ないぞ?」

「オレがいるんだよ!!」

「知るかっ!!自分でハウスキーピングに電話してヘアドライヤー プリーズって言えばいいだろう!!」

僕は自分が何かをするついでにやってあげるのはかまわないが、自分がする必要のないことをしてあげるのは嫌いだ。

もちろん本人ができないなら別だが、昨日はフロントに英語でタクシー頼んでいたのだから、ドライヤーを頼めないことはないはずだ。

結局我が友チヒロはドライヤーを頼まずにすませた。

どうせ1時間もすれば海に入って頭もびしょぬれなのだ。

でも、髪の毛が気になるのか、荷物をもって部屋を出るときに「あ~あ。円がドライヤー頼んでくれないから髪の毛がうざい」とかいいやがったのである。

おまえ、バリカンもってこさせて坊主頭にしてやろうか?

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

ボートは桟橋につくことになっているので、ホテルの一番端っこにある桟橋までメッシュバックを抱えたまま歩いた。

桟橋にはすでにチヨとサワムラさんが来ていた。

「おはよう」

「おはようさん。ええ天気やなあ~」

「チヨ。声だけ聞いていると凄くいいぞ。さすが京女」

「うれしくないわ。ようねれました?」

「ん?」僕は我が友チヒロの顔を見た。ヤツはサワムラさん相手に「今日耳ぬけるかなあ~」などと話している。

「まあまあかな。チヨはバナナ食ったか?」

「朝はサワムラさんと一緒にお湯を注いでつくるおにぎりですう。」

「そっか。でもチヨは京言葉なのに、サワムラさんは何故標準語なんだ?」

「サワムラさんは大学から京都やから。」

「え~っ!!そうなの?知らんかった!!元はどこの人?」

「宮崎やろか。」

なるほど。それで地黒なんだな。

ボートが来ると、舳先のところにヨシミさんが立っていた。

「ヨシミ師匠!!ご無沙汰しております!!」

僕は他の三人がびっくりするような大声で挨拶をして頭を下げた。

「うん。円さんも元気だったか?」

「はい!!師匠!!お陰様でポナペでも楽しく潜れました!!」

ヨシミ師匠は30代半ばのガイドで、体つきはかなりがっちりしている。

女プロレスラーもびっくりするような独特の威圧感があり、ぱっと見はかなり怖い。

だが僕が運動部の後輩のような態度で接するのは、その威圧感のせいではなかった。

ダイビングをはじめたころ、僕の講習を担当したインストラクターは、まだ経験が浅く、僕は10キロ近いウエイトをつけさせられていたのである。

まあ、体重からすればあり得ない数字ではないが、僕は同じ体重の連中と比べればはるかに筋肉質なのだ。

そんなわけで、ウエイトはオーバーウエイトで、タンクのエアもすぐ切れてしまっていた。

大瀬崎での講習では、砂煙を巻き立てて移動だ。

ようやくオープンウォーターをとって、我が友チヒロと八丈島いったときには、20分足らずでタンクのエアがなくなり、一人だけ先に戻らなければならなかった。

ぶっちゃけ皆ができることができないというのは激しいショックで、ダイビングをやめようかとおもったくらいだ。

だが4月にパラオに来たとき、シーズンオフなせいもあり、一週間の期間のうち3日ほどはヨシミ師匠とマンツーマンで潜ることになった。

経験豊富なヨシミ師匠は、僕のウエイトが過剰なことを一発で見抜き、毎回ウエイトを減らして、最終的には来たときの1/3の3キロが適性ウエイトであることを僕に教えてくれた。

もちろんタンクのエアも減らなくなり、一週間のパラオ滞在が終わる頃には、普通のダイバーと潜水時間も変わらなくなっていた。

ヨシミ師匠はガイドとしての腕もよく、ジャーマンでのマンタは50%以上の確立で見られたし、流れのない、小魚が落ち葉のように舞い狂うブルーコーナーも見せてもらった。

そして今年の夏にはマンタポイントのジャーマンで、2匹のハンマーヘッドを至近距離で見ることができたのである。

どちらかと言えば性格的に不器用な人なので誤解をうけることもあるが、ある程度の時間を一緒にすごすと、ぱっとみの怖い感じの奥に非常に繊細な感覚を持った人であることがわかる。

そんな訳で、僕にとってはヨシミさんは、唯一の絶対的な師匠なのである。

「もう一度忘れ物ないかメッシュバックの中を確認して下さい。」

ヨシミ師匠が僕等にいい、僕等は念のためもういちどメッシュバックのなかを確認してからボートに乗り込んだ。

ボートは10人ほどがのれ、僕等の他に、カップルが一組と、もう一人ヨシミ師匠に負けないくらいがっちりした茶髪の女の子がいた。

僕とチヨは、その子のとなりに座り、我が友チヒロとサワムラさんは反対側にカップルと座ってボートは走り出した。

カップルは体験ダイビングだということで、ヨシミ師匠とは別のガイドと共に途中の島で降りた。

するとやにわに、茶髪の女の子がうるさくなった。

「あの~スタッフさんですか?」

僕は思わず聞いた。

「え?違うよ!!カズミ19歳だしっ。ヨロシクね!!」

19?声がかすれているのは酒焼けじゃね~のか?

「え?ほんまですか?わたしも19や。」

チヨは身体を前にのりだし、カズミの顔を見ながらいった。

「え~っ 同級生じゃん!!」

「ほんまや。同級生やん。うれしいわあ。」

「よかったなチヨ。同級生がいて。」

なんと!!僕は19歳の女の子を両手に花だ!!

でもなんか小猿と小ゴリラに囲まれているような気がするのだが・・・・

「おにーさんも関西なの?」

カズミが僕の顔を見てきいた。

「東京だよ。」

「え~カズミも東京だよ。東京のどこ?」

僕は自宅近くのJRの駅名を言った。

「きゃ~っ!!カズミ隣の駅だよっ!!」

「あ、オレ、その駅のスポーツクラブ行ってる」

「え~っ!!カズミも行ってるよっ!!」

「すごいやんかあ~。円さんカズミさんと赤い糸でつながっとるんちゃう?」

一瞬僕は自分の小指を見てしまった。

確かにこれは危ない気がする。

「確かに。やばいよね」

カズミも自分の指を見た。

19歳とまさかの偶然というのはおいしいが、小ゴリラの19歳だ。

ああ、なんで折角の偶然なら小猿や小ゴリラでなく、もっと普通の19歳とお近づきになれないのだろう?

女運なさすぎっ(>_<)!!

そんなことを思っているうちにボートはウーロンドロップオフについた。

僕の心のなかのように海の中には何もいず、僕は4ヶ月ぶりのダイビングに身体を慣らすことに専念することができたのだった。

海からボートにあがると、昼食をとるべく、ボートはウーロン島に向かった。

ボートを出すときに我が友チヒロとふと目があった。

その目は「わかってるな?」と言っていた。

はいはい。わかってますよ(-_-;)

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.01.22

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(12)

今回から登場人物に京都の方が参入されますので、関西系の言葉がでてきます。でもずっと昔の事なので、「こんな京言葉はない!!」とか怒られても困ります。京言葉をご存知の方は脳内変換をお願いいたします<(_ _)>

 

12月とはいえ、南国パラオの締め切った真っ暗な室内で布団にくるまる我が友チヒロ。

なんのためにクリスマスに南の島にきたのかまったくわからん。

しかも室内は蒸し暑い。

お前はナメクジかっ?

僕はとりあえずサッシのガラス戸をあけ、室内の陰鬱な空気を追い出した。

「何をやっとるんだ?」

チヒロはベットの上にシーツと毛布にくるまったまま起き出した。

「いや、調子悪くてさあ。」

「じゃあ、外で寝ろ。」

「え?」

「外の方が温かいから。それに風邪がオレにうつったら困る。ダイビングなのに。」

「お前は鬼かっ!!なんで病人を外に寝かせる!!」

「病人なら東京で寝てればよかっただろ。オレの楽しいクリスマス休暇を邪魔する事はゆるさん!!京都のおねーさん達は二人とも引き受けるから、今夜は私に風邪うつさんように外で寝て、明日帰りなさい。」

もちろんチヒロはそんなことする訳もなく、全然同情してない僕を不満げに見ていた。

僕はとりあえずダイビングの機材をメッシュバックに移し、半袖のポロシャツに着替えた。

「市内に朝食の買い出しにいくけどどうする?」

「サワムラ達にも紹介しないといけないからいくよ。」

そういって我が友チヒロはようやくベットから起き出して来た。

なんということだ。これでは女の子達はシラけきって盛り上がりのかけらもないに違いない。

こいつには風邪の身を押しても、女の子達に、生まれてはじめての南の島でのクリスマスを楽しくすごさせてやろうという気持はないのか?

チヒロが館内電話で女の子達の部屋に電話をして10分後にフロントで落ち合うことになった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

フロントにいくと女の子達はすでに来ていた。

サワムラさんは子供の頃は腕白だったけど、大人になっておしとやかになりましたという感じの女の子だった。

確かに趣味としては悪くない。

でも物腰は柔らかだが、やるときはキッパリやるという意思の強さがにじんでいる気がする。

我が友のいう、ウエット脱ぐのも恥ずかしがるようなっていうのは、ちと違うな。

そう簡単には脱がないが、脱ぐとなったらババッと潔く脱ぐタイプに見える。

サワムラさんがチヨを僕に紹介した。

「こんばんわ」チヨが関西系のイントネーションで頭を下げた。

「か、かわいい・・・」僕は言った。

「え?わたしですか?ほんま?うれしいわあ。」

「うん。凄くかわいい。モンチッチとして。」

確かにチヨはあらゆる意味でモンチッチにそっくりだった。

まず髪型がそっくりだし、顔もそっくりだ。

元気の良さそうなところもそう。

僕の思う京都の女の子というイメージからは限りなくとおく、あえていえば鞍馬山のやんちゃ猿のお姫様みたいな感じだった。

で、僕はその通りの事を本人に言ってやった。

「うわ~ん。サワムラさ~ん。会ったばっかしなのにいきなり東京モンにイジメられたあ~(T_T)」

ノリもなかなかいいな。

「まあまあ、そう泣かないで。お兄さんが美味しいバナナ売ってる所に連れて行ってあげますからね。」

「いらないよっ!!バナナ昨日買ったモン!!」

「なるほど。やはりバナナは真っ先に仕入れないと生きていけないわけですね?」

「そんなことない!!」

「で、どう?やっぱ日本のバナナよりパラオのバナナの方が美味しい?モンチッチとしては?」

「き―――――っつ 誰がモンチッチやのん!!」

「そっか。鞍馬山には鏡がないからねえ。」

「鞍馬山じゃないですうっ!!市内ですっ!!」

そんな事をやっているうちに、我が友チヒロがフロントに頼んだタクシーがやってきた。

女の子の前だと良く働くね(-_-)

タクシーでメインストリートのスーパーについたころには、我が友チヒロも元気を取り戻していた。

デパート(?)の一階は食料品売り場になっていて、二階が食品以外の衣料やら雑貨が売っている。

「お前一階で買い物してろよ。俺達は昨日済ませたから、上行って来る」

いきなり元気になったチヒロがその場を仕切り、僕は一人だけ一階に取り残された。

それはあんまりでは?

でも海外でひとりぼっちの食料品買い付けはいつもの事。

バイバイと三人を上に見送って僕は食料品コーナーに入っていった。

もちろんPPRホテルには、バイキング方式の朝食もルームサービスもあるのだが、ダイバーの僕等は朝、そんなに食べない。

とりわけパラオはポイントにいくまで、ボートで40分以上走らなければならないのだ。

朝、たらふく食べたら、潜る前にボートで船酔いして吐く事になりかねない。

そんな訳で、各自軽くフルーツやらスナックをつまんでいくのが普通だ。

僕はケロッグのシュガーフロストと牛乳を買った。

それにスポーツ飲料のゲータレードを二本。

朝食用の買い出しはこれで十分だが、他に何か面白いものがないかと見ていると後ろから「円さん」と声をかけられた。

振り向いてみるとサワムラさんとチヨだった。

まだ別れてから5分もたってないぞ?

「おやま。どうしたんですか?」

僕がサワムラさんに聞くと、二人は顔を見合わせた。

「特に欲しい物なかったんで」とサワムラさんが答えた。

あちゃ~。

日本からついたばかりの僕を一人っきりにするような仕切するからだよ。

仕方なく食品売り場を一回りしたが、チヒロが降りてこないので、三人で二階にあがった。

洋服売り場や雑貨売り場を見てもチヒロはいない。

最後におもちゃ売り場にいくと、サンタクロースが3人ほどの子供達に「ホッホッホ メリークリスマス」といっているのをぼんやりと見つめているチヒロの姿があった。

悲しいぞ!!

チヨが走ってサンタクロースのところにいく。

去年はまだ高校生だからね・・・・

僕は大はしゃぎしながらサワムラさんに写真を撮ってとせがむチヨと、それをほうけたような顔でみつめるチヒロを見ていた。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

ホテルに戻り、そのままオープンエアのカフェに席をとった。

夕食は軽い機内食だった僕が、軽く夕食をとるついでにチヨにチョコレートサンデーをご馳走してあげるといったのだった。

カフェは大きなヤシの木で囲まれており、上空を吹く風にヤシの葉がザワザワと揺れていた。

僕はトリプルデッカーサンドウィッチとアイスティーを頼み、チヨはチョコレートサンデーを。サワムラさんと我が友はビールを飲んでいた。

「こうやって夜空に揺れているヤシの葉の音きいてると、ほんま南の国にきたんやなあって思うわ。」

チヨがニコニコしながら言った。

「ここのホテルはヤシの葉の音が聞こえるから好きだな。ビーチで寝ててもずっと聞こえるし。」

「ほんま?明日はダイビング終わったらいってみよっと。」

「それにしても、日本はいい国になったよなあ。19歳の女の子が普通に自分の稼ぎで、南の島でクリスマス過ごせるようになったんだから。」

「フフフ。同級生の間でも、外国でクリスマス過ごすの、わたしがはじめてです。」

「そりゃそうだろ。鞍馬山立おさる学校なんだから。」

「誰がおさる学校じゃっ!!」

「チョコレートサンデーがとけるぞ。」

「あ、ほんまや~っ どないしよ」

「おにーさんが喰ってやろうか?」

「誰がくわせるかっ!!それにおにーさんやのうておっさんやろっ!!」

「失礼な。自分が小学生だからって。」

「え~ん。サワムラさん、東京モンがいじめる~。嫌いや~」

「チヨちゃん・・・・」

二人のやりとりを見ていたサワムラさんが、笑いながら言った。

「チョコレートサンデーにバナナが入ってないからって泣かないでも・・・」

チヨがきょとんとした顔をした。

我が友、サワムラさん、僕の三人が大笑いした。

「サワムラさんまで~っ!!」

チヨは一人でむくれると黙々とチョコレートサンデーを食べ続けた。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

「よし!!うまくいったな!!」

部屋に戻ると我が友が僕に言った。

「何が?」

「チヨの隔離作戦だ。見事にチヨをなつかせたな。」

はあ・・・・

「これでおれは、サワムラ攻略に専念できるっ!!」

そういう問題か?チヨよりもお前が隔離されているように僕には見えるのだが。

でも流石にそれは言えない。少なくとも現時点では。

我が友が風呂に入ったので、僕は部屋の冷房をMAXにして部屋を冷やした。

やっぱ南の島のホテルの部屋は、別世界のように冷たく冷えていないとダメだ。

我が友がそろそろ出てくると思える時期を見計らい、冷房を止めた。

5分もせずにバスルームから出てきた我が友は、いきなり僕を睨みつけて言った。

「冷房つけただろう?」

「今は止めてるだろ。」

「なんで冷房つけるんだよ!!オレの風邪がひどくなるじゃないかっ!!」

僕等は20分ほど部屋の冷房について言い合いをし、結局27度に調整してつけることで同意して、それぞれベットに入った。

パラオの熱いクリスマスがはじまったのだ。

色々な意味で・・・・・

 

 

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)

2007.01.15

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(11)

成田を飛び立った僕はグアムで飛行機を乗り換え、トランジット用のロビーでバイトの高校生が売ってるグラニタ・カフェラテを飲んでパラオに向かう飛行機に乗り換えた。

パラオの空港は4度目だ。

我が友がCカードとったとき、この年の4月、8月、そして今回。

飛行機からただのトラックにつまれた荷物が運ばれてくるのだが、機材がなかった初回はともかく、機材を持ってからは、毎回グアムできちんとトランジットされているか不安だ。

こなければこないで、レンタルで潜ることもできるのだが、機材が違うと微妙に勝手が違う。

レギュレーターがレンタルなのは不安だし、僕はスキューバプロのジェットフィンを使っていたが、他のメーカーのプラスティックフィンを使ったら、水中で全然進まず凄まじいストレスを味わった。

伊豆あたりでビーチエントリーをする分には、まだいいが、パラオのようにボートダイビングでドロップオフ(絶壁のように落ち込んでる上を飛ぶようにすすんでいくのである)が多いと、いざと言うときにフィンが進まないというのはめっちゃ怖いし、レギュレーター不調で、うまく浮上できたとしても陸は見えないし、どっかのボートがみつけてくれるまで海の上をぷかぷか浮いていなければならない。

4月の時はマンタ(オニイトマキエイ)を見るジャーマンというポイントでハンマーヘッドと5mくらいの距離で出くわした僕としては、サメがそんなにめったやたらと襲ってくるものではないというのはわかっているが、それは潜水中の話しで、ぷかぷか浮かんでいる時にどうかというと全然自信がない。

唯一言えるのは、ブルーコーナーのサメが、いきなり海面に向かってダッシュしていくのを以前見たが、恐ろしい早さで、浮いている時に真下からサメにこられたら、姿を見た時にはすでにアタックされているだろうということだ。

そんなわけで、僕はフィンとレギュレーターだけは手荷物のなかに押し込み、BCやウエットスーツだけを預けておいたのだが、やっぱり荷物がこないと落ち込む。

最初のトラックには荷物がなく、二回目のトラックにもやはりなく、限りなく不安になった頃来た最後のトラックの数個のなかに僕の荷物は見つかった。

ビジネスファーストの預かり荷物はすべてこのトラックにあったのだが、普通はこの荷物が最初だろ?

ビクビクした分、怒りながら空港を出ると、ダイビングショップのヨシタニさんが迎えに来ていた。

彼は我が友の師匠であり、僕も4月に来たときウーロンチャネルをガイドしてもらった。

「円さん久しぶりですね。他にも二組お客さんがいるのでちょっとまって下さい。」

一組は若い夫婦で、もう一組はカメラ機材をもった男性だった。

夫婦をニッコーパラオ、男性をメインストリート沿いのホテルにおろすと、僕はまず手荷物のなかから、ヨシタニ師匠が大好きな某和食を取り出した。

「これ、みなさんでどうぞ」

「これはこれは。いつもながらかたじけない」

僕も海外生活者なので、海外生活での日本食差し入れのありがたさはよくわかる。

今ではパラオには日本食はなんでもあるが、当時はやっと冷凍大福が入ってきたというくらいだった。

すでにパラオに3年住んでいたヨシタニ師匠は、あまりの嬉しさに冷凍大福を毎日3個食べて、見事な中年太りになりファンを相当数失ったらしい。

「で、どうなんでしょう?チヒロのつれて来た女の子はかわいいんですか?」

「ああ、サワムラさん?まあ綺麗とかわいいの中間くらいですか?」

「ってことはどっちつかず?」

「いや、まあ、100点満点で82点ってとこでしょう。趣味いいですよ。チヒロさん」

「なるほど。で、落とせそうですか?」

「う~ん。今日は僕でなくヨシミがガイドしたんで。話によると円さんの強力なプッシュが必要な感じですが、直接はみてないのでなんとも。」

「強力なプッシュ?チヒロは日本でもうあとは告白をするばかりみたいなこと言ってましたよ?」

「そうですか?まあその辺はご自分で確かめられたら?」

ヨシタニ師匠は運転しながら複雑な笑みを浮かべた。

ぶっちゃけリゾートのダイビングインストラクターは女性に関してもやり手である。

ヨシタニ師匠に関しては、僕だってすでに5人くらい手をつけてしまった女性を知っている。

その彼が苦戦というなら多分そうなのだろう。

「因みにその子の会社の後輩の19歳という子が一緒だと聞きましたが」

「ああ、千代ちゃんね」

「そっちはどうでしょう?」

ヨシタニ師匠は僕の顔を見た。

「かわいいです。いろんな意味で」

「いろんな意味で?」

「そうです。詳しく説明しましょうか?」

「いや、いいです。自分で確かめる事にします。」

「そうそう。女性は自分の目で確かめるのが一番です。」

いったい何処を確かめているんだか・・・と言い返そうと思ったがやめた。

ガイドに逆らうと、いざというとき助けてくれないということはないが、怖い目にあわされる可能性があるのは確かなのだ。

ホテルに車がつくと、チェックイン手伝いましょうか?というヨシタニ師匠を断り、ポーターに荷物をもってもらってフロントに向かった。

どうせヨシタニ師匠の夜は忙しいにきまっている。

P.P.Rホテルは当時パラオ一のホテルで、唯一パラオでプライベートビーチがあった。

このホテルに決めたのは僕である。

ダイバーでこのホテルを使うのは、他のホテルに比べれば少ない。

ということは、ダイビングの時、他の客と知り合っても、ダイビングが終わったら顔を合わす事はまずないということだ。

オマケにプライベートビーチには人も少ないから、ダイビングが終わったあと、のんびりと砂浜をデートすることもできる。

これ以上、女性を落とすのに最適な環境があるだろうか?

フロントを抜けるとオープンエアのカフェテラスになっていて、その向こうがプライベートビーチだ。

そしてフロントの左右にコテージ式の部屋がひろがっている。

フロントを抜ける南の島の風を感じながら、チェックインの手続きをして、同室のチヒロはどうしているかときくと外出だという。

「ルームキーはあずけてあるの?」

「いえ。」

来る時間は大体わかってるんだから、普通はフロントで待ってたりするだろっ!!

なのにルームキーもったまま外出かっ!!やってくれるなっ!!

「マスターキーをポーターに。」

「かしこまりました。」

こうして僕は差し出されたウエルカムドリンクを一気飲みすると、ポーターに荷物をひきずらせて部屋に向かった。

「こちらになります」

鍵をあけてもらうと部屋は真っ暗だ。

ようやくついたというのに、お迎えもなく、本当に外出中かっ!!

なんて友達甲斐のないヤツ!!

ポーターに玄関部分の電気をつけてもらい、チップを渡して僕が部屋の中に入ると、ふくらんだ布団がもぞもぞと動き出した。

僕はあせって部屋のライトをつけた。

まぶしそうな顔をして我が友チヒロが、12月とはいえ、日本の夏のような南の島の暑さの部屋の中で、しっかり布団にくるまりながら僕を見た。

「おお、ついたか・・・」

おまえ、なんで冷房もついてないのに布団にくるまってるの?????

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

| TrackBack (0)