悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(1)
中国での5年間の生活が終わりに近づきかけた頃の物語・・・
三年目の夏の終わり。
電気事情により、僕の休日は水曜日だった。
つまり、皆が日曜日に休んでしまうと、日曜日には電力があまってしまい、平日は電力が足りなくなってしまうので、市内にある工場はどこも休日を市政府から指定されていた。
もっとも誰だってできることなら日曜日に休みたい。
だから平日を休みにされるのは、政府筋に力がない合弁会社ってことになる。
もっとも僕の場合、休みが水曜だろうと日曜だろうとさしてかわりはない。
当然の如く地元に友人がいないから、休日は一人である。
だが僕にとって問題なのは、平日には日本からの出張者がやってくることだった。
しかも奴らは、月曜日に日本の会社に出て、火曜日出発。水、木と現地を視察し、金曜日に帰国して土曜、日曜を休む。
流石にあちこち案内してくれなんて仕事が休日の僕にまわって来ることはないが、出張者が来て会議ともなれば、僕は出勤しなければならない。
日本はすでに週休2日だったが、中国がそうなるのはまだしばらく先の事。
しかも当時は国慶節(中国の建国記念日)と旧正月以外に休みがない。
季節により、工場が1~2週間とまる事があるが、工員はその時休めても僕は出勤しなければならない。
工場が休みになればメンテナンスがはじまるし、それに伴いメンテナンスに必要な資材の購入に関する確認とサインをしなければならないし、原料の状況を確認するために出張もしなければならない。
一度週休二日で、ゴールデンウィークやなんたらの日といった祝日がある日本と、僕の出勤状況を比べてみたら、僕の方が年間40日以上余計に働いていたということがわかりへこんだことがある。
40日以上余計に働いている上に、工場が18時間体制になれば、仕事は夜中の12時を過ぎる訳だが、経営者の端くれには当然の如く残業代なんて出ない。
まあ、それでもやってこれたのは、最初の2年間は外国人が住めるようなアパートが市内になく、ホテルにすまわせてもらったからである。
ホテルなら掃除も洗濯も会社にいる間にやっておいてくれるし、冷房やボイラーが壊れたとしてもとりあえず別の部屋を提供してくれる。
当時の中国のレストランは朝、昼、夜で営業し、間の時間は閉まってしまうが、コーヒーショップではビーフンやサンドイッチなどの軽食を注文することができたし、夜中の12時過ぎる時はその前に会社から電話をしてルームサービスを頼めば、夜中の2時に帰ってひもじさで眠れないってことにもならないですんだ。
だがその生活も最初の2年間のみ。
日本円にして月額25万円の家賃はちょっと高いのではないかと言うことになったのである。
それだって二間続きのジュニアスイートだから日本人の感覚からすれば激安なのだが、合弁会社だとそうもいかない。
それに市内には外国人向けのマンションがたちはじめたし、ホテル住まいと会社で決めた最大の理由は、国際電話がひかれてないということだったのだが、新しくできた外国人向けマンションには国際電話も引かれていた。
で、僕もマンションを探す事になったのだが、探し始めるとホテルの関係者から、いきなり台湾人のお妾さんをやってるという女性が部屋を貸したいといってるけどという話がきた。
「でもさ~。それってあなたの旦那の台湾人があなたに住むようにって買ってくれた部屋でしょ?」
会社の応接室で、お妾さんと向かい合いながら僕は言った。
「そうですが、別に部屋を貸して、それを生活費にしてもいいって事なんで。」
中国人のお妾さんはそういうと僕を見た。
なんだこの視線?
なんなら私もセットでど~よ?ってな話しになったりするのか?
「はあ~。もし借りるって事になったら、所有者である、その台湾の方に確認したいのですがかまいませんか?」
「はい。でも条件があります」
「なんでしょう?」
「一番最上階の二部屋が買ってもらった部屋で、階段の所を鉄格子で仕切ってあるんですが、この二部屋をまとめて借りて欲しいんです。」
「二部屋ですか?でもかたっぽが2LDKで、かたっぽが3LDKですよね?3LDKの方だけでいいんだけどなあ~」
「料金は一部屋分で結構ですから。」
値段を聞くと日本円で3万円だった。
それでもこのお妾さんの生まれ育った地域では大変な収入だ。
「わかりました。こちらでも検討させてもらいますが、所有者の台湾人の方はいつ頃こちらに見えますか?」
「来週には。」
「じゃあ、その時に部屋を見せてもらって決めるということで宜しいか?」
「部屋は明日にでもみれますが?」
「じゃあ、明日にでも見せていただきます。」
彼女が帰ると、僕は総務に行った。
「あのさ~。ほかの人はみんなきまったよね?」
僕の会社には、僕以外に、社長と総工程師の二人の日本人がいた。
「きまりましたよ。円さんも早くきめてください。」
「マンションは月額4万(日本円)までだよね?4万以内だったらどんなに広くてもいいの?」
「かまいません。」
僕が気にしたのは、二部屋だということで、だったら総工程師と一緒に住めとか言われたらたまったもんじゃないってことだ。
だが、二人の部屋はすでに決まっている。
どうせ総務課の課長が間に入ってコミッションを取っているので、もう変更はないだろうな。
翌日お妾さんと部屋をみにいくと、そこは会社から自転車で10分くらいで、六階建てのアパートの最上階だった。一階には物置もついていて、バイクがおける。
エレベーターはないが、僕は若いので問題ない。
六階までの階段は決してきれいではないが、内装はきちんとしていた。
おまけにキッチンは2つ。リビングも二つ。ベットルームは5つでバスルームも2つだ。
「これなら住み込みのメイドが雇えますね。」
一緒に来た秘書が日本語でいった。
「じゃあ、このお妾さんをメイドでやとおっかな?」
「またっ!!大体家事をやるのがイヤだからお妾さんになるんですよ。メイドなんかできませんよ。」
「じゃあ夜だけメイド。」
「フンっ!!」
思いっきりバカにされた。
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
一週間後、所有者の台湾人が会社にやってきた。
40半ばの堅太りな感じだがおなかは出た、見るからに脂ギッシュな、お妾さんをつくりそうなタイプだった。
「どうですか?気に入りましたか?」
「はい。2部屋分ですが1部屋分の料金でいいとか。だったら別々に現地の人に貸した方がいいんじゃないですかね?」
「そりゃそうです。でも中国人にはそんな家賃払えないし、香港やら台湾の連中に貸しても、結局私と同じように、中国人に住まわせることになる。中国人が住んだら部屋は1年で滅茶苦茶だ。私としては日本人のあなたに住んでもらったほうが内装も痛まないし、助かります。大体家賃で儲からなくても、あと2~3年すればここいらの不動産価格は上昇して十分元がとれますから。それまで綺麗に部屋を使ってもらう方がいいんですよ。」
「なるほど」
「それにあの女をここに住まわせておけば、毎日することもなく、大抵面倒な事になります。あなたが払う家賃で、彼女の故郷で生活させ、私がここに来るときだけ呼び出せば良い。あの子の故郷では、毎月これだけの収入があるヤツなんていません。遊んで暮らせるし、何よりも私も、余計な生活費を払わないですむ。」
なるほど。お手当が浮く上、部屋も綺麗なまま。まあ実質管理人みたいなモンですな私は。
彼の魂胆はともかく、いつまでも部屋を探しているわけにもいかないので、僕は一年契約でこの部屋を借りる事にした。
で、翌週家具を運び込んでもらったのだが、ベット、机、応接セット、ダイニングテーブル
ガスレンジに冷蔵庫それにタンス、が一つだけ。
いや、それ以上はいらないけれど・・・・・
でも、3LDKの部屋で完璧におさまってしまった。
もう一つの2LDKの部屋、激しく無駄・・・・・
そう思いながら日本からの出張者がつづき、三週間ぶりの休みとなる前の晩。
僕は翌日は昼過ぎまで寝たおすつもりでベットに入った。
部屋も六階ともなると激しく静かだ。
隣の部屋がうるさいということも、上の部屋がうるさいということもない。
これはなかなか成功だったと思いながら、海外でのマンション一人暮らしの初日の眠りについた。
だが。
翌朝、僕は激しい地響きと爆発音で目が覚めた。
ずし~んという、爆弾が着弾したような音だ。
な、な、なんだ?
中台戦争でもはじまったか?
僕はとりあずベットから飛び降り、リビングの床に伏せた。
爆風で割れた窓ガラスでも突き刺さったりしたらたまらない。
時計を見ると10時ジャストだった。
だが、後続の爆発音はない。
夢だろうか?
僕はキッチンにいくと、お湯をわかし、免税店で買った香港から輸入されたカップヌードルを食べた。
とりあえずお腹も一杯になったのでまた眠ることにした。
すると2時間後、またもや爆発音と地響きで目がさめた。
なんじゃこりゃ~っ(>_<)
To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
