2006.01.23

中国に真実の愛はあったか?(6)

この物語はすべてフィクションです。よしんば私の周辺でこれと似たような事件が起きていたとしても、その関係者からのクレームはうけつけません。フィクションですからね~(^_-)

翌日は6時半に目が覚めた。日本では7時半なのでNHKーBSをつけてシャワーを浴びた。7時過ぎに事務所に電話をかけて鄭君にリーリーがそちらにいっていないか尋ねた。

ホテルは12時を過ぎると宿泊客以外の出入りが禁止になる。

その場合は事務所の方に泊まるよう、サクちゃんを通じてリーリーに伝えてあるのだ。

鄭君の話では、きてないし、連絡もないという。

「やっぱこなかったんじゃないですか?いくらなんでも600キロバスに乗ってくるのは辛いですよ。」

やはりこなかったのだろうか?

まあ、それはそれで、がっかりしているであろうサクちゃんをいじって遊べばいいことだが。

7時20分になるとだんじり君が電話をかけてきた上で、部屋にやってきた。

「事務所の方にはきてないそうです。やっぱこなかったんでしょうか?」

「そやなあ。遠いもんなあ。まあ、それはそれで朝飯食いながらサクちゃんいじったればええやん」

生まれ育ちは東京、大阪と違っても、悪魔の考えることは同じだ。

かわいそうなサクちゃん。カリビアンルームをあてがわれたばっかりに。

僕たちはそろって三階でエレベーターをおり、サクちゃんの部屋の前に立った。

「さあ、ガサ入れにはいりますよ!!多分来てないとは思うけど・・・・」

僕はだんじり君に言った。

「ええのか?ほんまええのんか?」

だんじり君は顔には満面の笑みをうかべていたが、多少遠慮しているようだった。

それはそうだ。僕とサクちゃんは共に中国を歩んできた仲だが、だんじり君はここ2~3年の付き合いだし、何よりもサクちゃんは10歳以上年上だ。

果たして年上の、しかも資本金が両手でやっと足りる桁の会社の副社長相手に、早朝ガサ入れをかけていいものか?と考えればたじろがないほうがおかしい。

しかも場合によっては、ベットには裸の女性がいるかも知れないのである。

僕にとって、リーリーは裸を見てしまっても「み~ちゃったみ~ちゃった」ですむ相手だが、だんじり君にとっては初対面の外国人女性だし。

サクちゃんの部屋の前でなにやらこそこそしている僕たちを、掃除をした部屋のチェックをしているフロアマネージャーが不審気に見ていた。

僕は彼に手をふり、別にあやしい者ではないことを知らせると、ドアののぞき穴を指で押さえ、扉をノックした。

「は~い」

「佐久間さん。迎えにきました。あけて下さい。」

僕がそういうと、サクちゃんがドアを少しだけ開けた。

「ずいぶん早いじゃないですか?」

そういうサクちゃんはすでに服を着ていた。約束の30分前。僕なら間違いなくパジャマだ。

「いや~。二人してなんか寝られなくて。」

「そうですか。じゃあ、行きましょう。」

そういってサクちゃんはそのまま部屋を出ようとした。

あやしい!!僕の直感がささやいた。

約束の30分も前に部屋を出られる準備をしているのはおかしい。

それに、いつもはこういう場合、サクちゃんは僕を部屋にいれてくれるし、こんな風に扉を自分の身体の分だけあけて僕を迎えた事はなかった。

「ちょっと待って下さい!!」

そういうと、僕はだんじり君の顔を見た。

だんじり君がごくりと唾を飲んだ。

僕はだんじり君にうなずくと、「ガサ入れだ!!」と叫びサクちゃんを押しのけて、カリビアンルームへと突入した。

サクちゃんが思わず「ああっ!!」と叫んだ。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

僕とだんじり君が突入したカリビアンルームは朝の光をいっぱいにみなぎらせていた。

その朝の光のなかには、真っ白なベットが二つある。

どちらも寝乱れた様子もなくきれいだったが、そのうちの一つがこんもりとふくらんでいた。

僕もサクちゃんも、にんまりとしてお互いの顔を見た。

「だんじり警部。この部屋は一人で宿泊していると聞いていますが」

僕はこんもりとふくらんだベットを見ながら言った。

「このふくらみはなんでありましょうか?枕でしょうか?」

だんじり君も興味深そうにこんもりしたふくらみを見ながら僕に言った。

「円刑事。ちょっとさわって確かめてみたらどうだろう?」

僕は足の先のあたりをチョンチョンとつついて見た。

ふくらみは動かない。

「反応ありません。やはり枕なんでしょうか?」

僕がだんじり君の顔を見ていうと、うつむいているサクちゃんの後ろから不意に現れた鄭君が「ああ~っ」と大声をあげた。

「ほんとうにきたんですか?」

4人の男の視線を浴びて、白いふくらみは微動だにしなかった。

これはまだ寝ているのだろうか?それとも裸か下着姿なので起きられない?

「だんじり警部。自分が布団の中に手をいれてみたいと思います。」

「うっ・・・いいのんか?」

だんじり君はちょっとたじろいだ。

「はい。参考人の佐久間さんも黙秘するようですし、このままでは埒があきませんので」

僕はふとんの中に手を入れると、ちょうど足の裏あたりをこちょこちょとくすぐった。

こんもりしたふくらみがちょっと動いた。

「警部。どうやら起きているようです。」

「うむ。」

今度は両手を入れて、片手で足首をつかむと、もう片方で足の裏を思いっきりくすぐった。

白いふくらみがすごい勢いで動くと、モジャモジャの髪でがばっ!!とリーリーが起きあがった。

「ちょっと!!なんてことしてくれるのよ!!」

下は足首を掴んだときに服にふれたので、裸やパンツ一丁でないことはわかっていたが上半身もTシャツを着ていた。

「おおっ!!リーリーではないか!!久しぶり!!おはよう!!」

僕は片手をあげると元気にリーリーに挨拶した。

「おはようじゃないわよ!!私は2時過ぎについたんですからねっ!!まだ眠いのよっ」

「すげ~なあ~。ほんとうに来たんだ?」

鄭君が僕に変わって話し出した。

僕ははっと閃くと、鄭君とリーリーがどれくらいかかった?とか話すのをききながらバスルームに行き、シャンプーの容器の中身を半分抜き、中に水を入れてシェイクして部屋に持ち出した。

ベットに上半身をおこしているリーリーのとなりに座ると、リーリーが不審気な顔で「何?」と言った。

僕はにこりと笑うと、黙ってリーリーの頭に、水を入れてシェイクしたシャンプーをふりかけて、頭をゴシゴシと洗い始めた。

「ああっ!!何これ!!」

「リーリー様、本日は当ホテル自慢のカリビアンルームにお泊まりいただきありがとうございます。これは本カリビアンルームの特別サービス、早朝洗頭マッサージです。御気分はいかがでしょう?」

ベットの上でみるみる頭を泡だらけにしていくリーリーを見て、サクちゃん、だんじり君、鄭君がゲラゲラ笑った。

「ああっ!!ベットの上で洗頭するなあ~」リーリーが何もできないまま、叫んだ。

「そうおっしゃらずに。スペシャルサービスですので。」

僕はリーリーの髪をしっかり泡立ててやると、バスルームに行って手を洗った。

バスルームから出てくるとベットの上で上半身をおこして頭を泡だらけにしたリーリーは(-_-;)な顔をしていた。

「これでよし!!寝ないでそのままシャワー浴びて髪の毛乾かしたら下のビュッフェでご飯食べよ~ぜえ。待ってるよ~ん」

そういうと僕等は笑いながら部屋を出て行った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

だんじり君と鄭君と僕の三人で「真実の愛を見せてもらいましたよ!!」などと言ってサクちゃんをからかいながら、朝食にクロワッサンとクリスピーベーコンにスクランブルエッグ、トマトスープにマカロニのサラダなどを食べて、食後の紅茶を楽しんでいると、後ろから思いっきり頭をグーで殴られた。

「イテテテテ」

当然の如くリーリーが後ろに立っていた。

レストランのマネージャーがトラブルかと近寄ってくる気配を見せたが、僕は手で制止して、リーリーの為にとってあった僕とサクちゃんの間の席に座らせた。

「バイキングだから自分でとってこなくちゃならないけど、言えばサクちゃんが取ってきてくれると思うよ。」

「いいわよ。自分でとってくるからっ!!」

リーリーはお粥に焼きそば他、中華風のメニューを選んで持ってくると食べ始めた。

「よくもやってくれたわね!!」

「何が?」

「ふん!!」

「でもさ、起き抜けにベットで洗頭してもらったことある?」

「あるわけないでしょ!!」

「でも、ぼんやりしてるうちにベットで頭あらってもらって、そのままシャワー浴びればすっきりして丁度いいじゃん」

「まあ、それはそうだけどねっ!!」

「きっと一生忘れられない思い出になるよ。」

「忘れるわけないでしょ!!人が寝てるとこにはいってきて、寝ぼけまなこのとこにいきなり頭洗われればっ!!」

やりとりを聞いていた鄭君とサクちゃんが笑った。だんじり君は中国語がわからないので鄭君に訳してもらってから笑った。

「ま、いいじゃん友達だから。はだかって訳でもないし。お昼はおいしい海鮮料理ごちそうしてあげるからさ。」

「ほんとうでしょうね?」

「円さんはここに五年もすんでいたから美味しいお店いっぱいしってるぞ」

サクちゃんがリーリーに言った。

「じゃあおかわりしないでおこっと」

11時ちょい過ぎに、サクちゃんの会社の株主でもある商社の人が日本からやってきた。

僕等は一緒に昼ご飯を食べ、ホテルにまで戻ってきた。

僕とだんじり君は明日日本に帰るので、午後は2時頃から市内にお土産を買いにいくことにした。サクちゃんはぼくらと逆のコースをたどり営業にいくという。

リーリーは600キロ離れた街に戻ることになった。24時間で1200キロ。中国人は逞しい。

日本からきたばかりの商社マンはサクちゃんの工場の方へタクシーで向かうという。

「佐久間さん一週間くらい戻ってこないなら、佐久間さんの部屋借りててもいいですか?」

彼が言うと、サクちゃんは気前よく了解した。

僕が携帯で愛民に連絡をし事情を話して、彼がついたらサクちゃんの部屋の鍵を渡してもらうよう頼んだ。

「すいません」

「別にいいですけど、会社から経費出るでしょ?」

「そうなんですが、それが・・・・」

彼が言うには、先月このホテルで専務と部長、課長、それにサクちゃんの会社の中国側の株主と会議をして昼飯を食べた。

で、彼の会社がごちそうすることになり、料理の注文をまかされた彼が、ウエィターの勧めに従って注文すると、このあたりにはないタラバカニなどの料理が出て、しかも6人のテーブルで最後に出てきた領収書が日本円にして16万だったという。

僕等は絶句した。

一人あたり2.5万円の食事なんて・・・・・・

「はい。町中ならボラれたって事になるんでしょうが、ホテルなので僕のミスです。その、会社から一年間上海に留学させてもらってたんですが、あまりちゃんとした料理店で注文することなかったんで、XXカニとか、XX海老といわれてもXXの部分がわからなくて、単純に海老だと思ったら伊勢エビ、渡りカニだとおもったらタラバカニってな具合で。料理そのものはすごくおいしかったんですが、請求書みた部長からめっちゃ怒られて、今回も余計な金使うんじゃないぞとそれはしつこく・・・・」

ホテル代は「余計な金」じゃないと思うのだが。

サクちゃんが笑って「なんならこの子も部屋につけてあげますよ」とリーリーを見ながら冗談で言った。

冗談とわかっても、僕もだんじり君もギョッとした。

その雰囲気を見て、リーリーが「今なんていったの?」と僕につめよった。

「さあ。佐久間さんに聞けば?」

リーリーが佐久間さんに尋ねたが、サクちゃんは言っていることがわからない振りをした。

「ねえ、なんていったの?教えてよ」

「さあ?なんでしょうねえ」

「おしえろ!!円!!おしえろっ!!」

「いやあ~ 困っちゃうなあ~」

「言ってもいいですよ」

サクちゃんが言った。

「ほら。本人が言ってるじゃない。教えてよっ!!」

「聞かない方がいいと思うけど。」

「いいからいいなさい!!」

僕はサクちゃんが商社マンの彼に言ったことを訳してあげた。

「はあっ?」

リーリーが怖い顔でサクちゃんを見た。

「私もうかえるっ!!」

リーリーはバスの停留所に向かって歩いて行った。

「だから聞かない方がいいって言ったのに(-_-;)」

そういいながら僕はサクちゃんの運転手に長距離のバス停までリーリーをおくってもらうよう頼んだ。

だんじり君がお土産を買いに行く前に本社に報告を入れるということで、リーリーを送りにいった車が戻ってくるまでの間、僕とサクちゃんはコーヒーショップでお茶をすることにした。

「せっかく600キロの距離をおいかけてきてくれたのにかわいそうな事を。」

僕はサクちゃんに言った。

「いいんですよ。所詮お金が欲しかっただけだから。1万元貸してほしいって話でした。」

1万元は当時の為替で15万円くらいだ。

「多分故郷に帰るんでしょう。もう28ですから、地方からどんどん若い子がカラオケに流れ込んでくる今では、働く場もないでしょうしね。」

僕はサクちゃんがお金を貸したかどうかは聞かなかった。

ただ田舎に帰るリーリーが、カリビアンルームでの朝の洗頭サービスを、若い頃の思い出として、思い出す事があるだろうかと考えていた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

それから半年後。

愛民がホテルをやめて、僕の会社に移籍する事になった。

僕に数々のネタを握られている腐れオヤジが、僕と愛民が仲が良いという噂を聞いて、会社に引き抜けば、必ず僕が過ちをおこすに違いないと読んで、強引に引き抜いたのだった。

腐れオヤジのやることは、いつもこういう邪心からやることなので、僕は父親としての彼はそれなりに評価しても経営者としての彼に関してはほとんど評価しない。

だが愛民がホテルのある街から、僕が住んでいた街の事務所に荷物をまとめて移動すべくタクシーにのったとき、街を出る寸前にタクシーは横からきた車に追突され、彼女も足を骨折して3ヶ月の入院となった。

結局退院後、大連に戻ることになり、腐れオヤジの悪巧みはあっさりと潰れることとなった。

彼女は翌年結婚したが、結婚の翌日の夜、僕に電話をかけてきた。

今でも年に1,2度メールが来る。

だが僕のPCでは中国語のメールは送れないので、僕は毎回「見た」とだけ返事をする。

The End

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2006.01.15

中国に真実の愛はあったか?(5)

ついにはじまった僕等の修羅場計画とは?

ホテルの部屋に入った僕はテレビをつけて、一週間ぶりに日本のニュースを見た。

このホテルのビジネスセンターには、日本の新聞がおいてある。

あとで見に行こう。

そんなことを考えながら、ルームバーの冷蔵庫から海南島特産の椰子の実ジュースを取り出してグラスに注いだ。

牛乳好きの僕は、中国で牛乳が手に入らないときは、これを飲む。

もちろん共通点は白い事くらいだが、コーラやペリエでは、気分的にも牛乳のかわりにはならない。

ベットにぐた~っとなって、BSのNHKニュースを見ていると、自分の部屋に荷物をおいただんじり君と、彼についていった鄭君が僕の部屋にやってきた。

「なんや。円ちゃんの部屋も外は工事現場か?」

僕の部屋の窓の外、通り一つ向こうでは高層ビルの建築がすすんでおり、床と柱の骨組みだけの殺風景なビルの骨格が広がっていた。

すでに今日の仕事は終わってしまったのか、人影はない。

「そっちも?」

だんじり君は窓際の椅子に腰掛けうなずいた。

「サクちゃんの部屋はどないやろ?」

「プールがひろがり、その向こうには湖ですね。時々プールサイドをビキニの外人さんが通ったり」

「何!!ビキニの金髪美人かっ!!」

「そういう時もあります。」

「むむ・・・でも窓の外をビキニの金髪美人が通らなくても、夜には可愛い女の子が遠い街からやってくるんやろ?」

「ですねえ。」

僕はだんじり君に答えながらもニュースを見ていた。

「そんなん・・・そんなんあかんでえ!!円ちゃん!!そんなの許してはあかん!!大体佐久間さんは50過ぎやんけ!!なんで50過ぎのおっさんが若い女とカリビアンルームで暑い夜を過ごし、儂等がつくりかけのビルみながら寝なあかんのや?」

「まあ、運命でしょう。」

「どないしたんや!!そんなことで男がたつかい!!ここは佐久間さんをギャフン!!といわしたらなあかんで!!」

そういわれると僕にもカリビアンルームを取られた(訳ではないけど気分的に)恨みがムラムラとわき上がってきた。

僕はベットからおきあがり、アルミのスーツケースをあけると中からコンドームを取り出した。

もちろん僕が個人的にエロい目的でもっていたわけではなく、昔一緒に仕事をしたM商事の商社マンから、「自分がやらなくても、お客さんがやる気になったとき、コンドームがなかったらどうする?海外にお客さんをアテンドして、そのお客さんを性病にして帰すのは商社マンの恥だ!!コンドームくらいいつももっていないと、夜中にコンドーム探して町中タクシー走らせることになるぞ!!」と厳しく指導されて以来、海外出張の時は常に標準装備としてもっているものだ。

コンドームを二つ取り出して、不気味に笑う僕を見てだんじり君が言った。

「コンドームやんか・・・どないするんや?」

僕はコンドームの封を切りながら、だんじり君に説明した。

「これからサクちゃんのところにカリビアンルームを見せて下さいといって見学にいきましょう。そして二手にわかれて、サクちゃんの部屋にコンドームをおいておくんです」

ごくりとだんじり君が唾を飲み込んだ。

「一個はバスルームのゴミ箱に。もう一個はサクちゃんが寝ていない方のベットのわきに落としておくのです。で、それが終わったらすばやくサクちゃんを食事に誘い出し、その後はカラオケでもサウナでも行って、サクちゃんの彼女が来るくらいの時間に戻ります。サクちゃんは軽くシャワーを浴びて彼女が来るまで一寝入りするはずですから、部屋に落とされたコンドームには気づかない。で、サクちゃんの彼女が600キロも離れたところからやってきて
気がつくと・・・・」

だんじり君と鄭君が同時に笑った。

「すでに他の女に使ったと思われるコンドームがベットわきとバスルームに計二個」

だんじり君が満面の笑みを浮かべて言った。

「修羅場や!!最高の修羅場やっ!!」

僕はパッケージから引っ張り出したコンドームをくるくると拡げると、両手でくちゃくちゃにした。

「これでよし」

三人とも狂ったように笑いだした。

600キロもの距離を乗り越えてきたリーリーとの愛のカリビアンルームが、たった二個のコンドームで、一瞬の間にベクトルが正反対になり、悪夢の修羅場にかわるのだ。

こんな見事なシナリオがあるだろうか?

まさに大どんでん返し!!

ひとしきり笑い終わった時、だんじり君が口を開いた。

「いいアイデアや。でも東京の子は甘いの~。岸和田ではそんなんじゃツメが甘いいわれるわ。」

そういうとだんじり君はベットサイドにある僕の飲みかけの椰子の実ジュースを持ち、しわくちゃのコンドームをとりあげた。

そして白い椰子の実ジュースを慎重にコンドームのなかに小量注ぐと、自分の手の中でしわくちゃにした。

だんじり君が手を開いたときに、その手のひらの上にあったのはどう見ても使い終わったコンドームだった。

僕等は再度爆笑した。

そして、僕がバスルームに。だんじり君がベットわきにと分担をきめ、お互いに一個ずつ椰子の実ジュースがはいったコンドームをポケットに忍ばせるとサクちゃんの部屋に電話をかけ、カリビアンルームの視察へと向かったのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

ドアをノックして、僕等三人はサクちゃんのカリビアンルームへと突入した。

まずは僕が冷蔵庫をあけて中をのぞいた。

「ペリエに、サンキストオレンジ、椰子の実ジュース。ビールにコーラ。同じですね。僕等の部屋と。」

「当然ですよ。単にプール際にあるってだけじゃないですか。大体円さんは泊まってるでしょ?何度も。」

「そうですけど、ホテルって常にサービス向上に努めているじゃないですか。」

「そりゃそうだけど、ルームバーの内容なんて変わりませんよ。」

「うおっ!!さすがや、すごいなあ。」

だんじり君がプールに面したサッシのドアから外をのぞいて言った。

「佐久間さん。これどうやってあけるの?」

そういわれてサクちゃんはサッシのドアの方へと行った。

打ち合わせ通りだ。

僕はすかさず入り口わきのバスルームに入り込むと、ゴミ箱のなかに椰子の実ジュースのはいったくちゃくちゃのコンドームを入れた。

どう見ても一仕事終えて捨てられるのを待つばかりのコンドームだ。

僕がバスルームから顔を出すとサクちゃんとだんじり君はサッシドアからプールサイドへと出ていた。

鄭君が僕の顔を見るとポケットからコンドーム二個分のパッケージだけを取りだし、部屋のゴミ箱に笑いながら捨てた。

「佐久間さ~ん。やっぱアニメティなんかは違いますよ~」

僕が声をかけると、サクちゃんは部屋に戻ってきた。

バスルームに来ようとするサクちゃんに、同じく部屋に戻ってきただんじり君が声をかける。

「このドア、どうやって鍵かける?」

「ああ、こうです。」

サッシの鍵は閉められた。これで食事に出てしまえば、サクちゃんがサッシドアの前に来ることはないだろう。

だがカリビアンルームにはじめてとまるリーリーは、かならずライトアップされたプールを見ようとするはずだ。

「ほら、シャンプーなんかは一緒だけど、僕の部屋には爪ヤスリとかがないんですよ。それにバスローブも二つあるけど、僕の部屋は一つです。」

「そりゃ円さんが一人で泊まるからでしょう?」

「え?じゃあ、佐久間さんは二人で泊まるってあらかじめホテルに言ってあったんですか?」

「いってませんよ。カリビアンルームだからでしょ。」

「ほら!!やっぱりカリビアンルームとスタンダードツインは違うじゃないですか。」

「バスローブの数だけじゃないですか。」

「でも僕は今シャワー浴びて、バスローブ使ったから、濡れてるんです。夜寝る前にシャワー浴びるから二ついるんですよ。これ一個僕の部屋にもって帰っていいですか?」

「ダメですよ。どうせ、そうやって一個もって帰るつもりでしょう?私がホテルにバスローブ盗んだと思われるじゃないですかっ!!」

「リーリーが持っていった事にすればいいじゃないですか。」

「持っていったのは円さんでしょ!!人のせいにしない!!」

「チェッ!!」

「佐久間さん。なんか電話違いますよ」

部屋の方でだんじり君が言った。

部屋の方の仕込みが終わったのだ。

「違うわけないでしょう。同じです。みんな同じ!!」

そういいながらバスルームを出て行くサクちゃんに僕も続いた。

「そうかなあ~。鄭君なんか違うとおもわん?」

「はあ。いっしょですよきっと。」

「多少違っていても、電話にはかわりないからいいじゃないですかっ!!」

「まあ、そうやけどなあ。さあ、そろそろ六時や。日本料理食べにいこか?」

「そうですね。日本料理いきましょう。佐久間さんおごってくれるんですよね?」

「はあいいですよ。いきましょう。一階ですから。早くいきましょう。」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

こうして仕込みを終えた僕たちは、夕食に久しぶりの日本食を食べ、そのあとサクちゃんをサウナに連れ出した。

サウナに入り、垢すりをしてもらい、90分のマッサージを終えると10時チョイ前で、僕等は再びコーヒーショップに戻り、サクちゃん、だんじり君、鄭君はビールを。僕はオレンジジュースを頼んだ。

三人で話しているとサクちゃんの携帯がなった。

リーリーだ。

「2時くらいにつくそうですよ」

サクちゃんが僕等に言った。

「なんや。せっかく佐久間さんの彼女見てから寝よう思ったのに」

だんじり君が残念そうに言った。

僕等も2時までは、まってはいられない。

「じゃあ明日の朝食一緒にしましょう。8時でどうです?」

僕はサクちゃんに言った。

「いいですよ。8時ですね?」

「はい。僕等は6階だから、三階のカリビアンルームにお迎えにいきますよ。8時に」

「またそんな・・・・」

僕等は一緒にエレベーターにのり、サクちゃんを降ろすと6階で降りた。

鄭君は会社の事務所に戻っていった。

事務所にはちゃんと従業員用の部屋があるのだ。

「明日は7時半にサクちゃんの部屋にガサ入れをかけましょう!!」

僕はだんじり君に言った。

「ほ、ほんまか?」

「もちろんです。二人の間に600キロの距離を超えるだけの愛があったかどうか、僕たち二人が見届けるのです。」

「部屋のなかまで押し込んでか?」

「大丈夫です。リーリーとは仲いいから。多少はおこるかも知れないけど。」

「すごいな。東京の子も。」

「明日は7時半ですから。寝坊しないで下さいよ」

「わかったわ!!はよ寝よっと。」

楽しそうな顔をして部屋に戻るだんじり君を見送って自分の部屋に入った僕は、テレビのチャンネルをNHKのBSにあわせてシャワーを浴びた。

出てきてペリエを飲みながら、海外のニュースを一通りみると眠くなり、モーニングコールを6時半に頼んで眠りについた。

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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2006.01.09

中国に真実の愛はあったか?(4)

サクちゃんの優雅な生活をきかされただんじり君は・・・・

僕はサクちゃんの、麻雀とカラオケギャルに囲まれた優雅な日々を、インスタントコーヒーしかないようなホテルばかり5連泊してきただんじり君に語って聞かせた。

「(-_-)・・・・・・」

だんじり君はコーヒーカップを眺めながら沈黙した。

「ハ・・・ハハハ(^_^;)また円さんたら大げさな事言って!!」

サクちゃんが気まずい雰囲気をなんとか打ち破ろうとして口を開いた。

「大体、私が麻雀してるのは会社が休みの土曜の午後ですよ。」

「そうですね。で、部屋にいるのは佐久間さん以外はみな夜の姫君で、常に6~7人いるんですよね。週末の午後だけだけど。」

「いや・・・・まあ、そうですが・・・・」

サクちゃんは愛民の事を思い出したに違いない。

ホテルのセキュリティ用監視ルームを押さえているマネージャーと悪魔のタッグくらい怖い物はない。

いったい僕がどれくらいの情報をもっているかサクちゃんには想像もつかないのだ。

もちろん僕が聞いても、愛民が教えてくれるかどうかはわからないが、後ろめたい事がいっぱいあるはずのサクちゃんにとっては、当然知られていることを前提に、僕に対して対応しなければならない。

ここでウソをついて逃れようとすれば、僕が次から次へと情報を開示していくであろうことは、付き合いの長いサクちゃんには容易に想像がつく。

「ふ~ん。ええ生活しとるなあ。ワシが家に帰っても7つも年上の嫁とうるさいガキが三人いるだけなのに。週末には若い夜の姫君が6~7人でっか。」

周囲にはだんじり君を中心に、冗談抜きで灰色のオーラが漂っているようだった。

「いや、夜の姫君って!!そんなのじゃないですから!!円さんやめてくださいよ!!変な噂がたったらどうするんですっ!!」

「この業界、変な噂はつきものじゃないですか。私なんかオヤジをシンガポール人にされたり、おふくろを中国人にされたり、たまったもんじゃない。」

「それとは問題が違います!!っていうか、一番の極悪人は鄭君ですっ!!」

ニヤニヤ笑いながら三人のやりとりを聞いていた、日本に不法滞在すること二年、強制送還された過去をもつ鄭君がいきなり話をふられ、コーヒーにむせた。

「鄭君が何かしたんですか?」

僕はサクちゃんに尋ねた。

「まずはですねえ、この間二人でいたら鄭君の携帯が鳴るけど、彼はでないんですよ。で、何度もなった後、ようやく出たらすっごく邪険な返事をして切ったんです。」

「ほう」僕はそういいながら鄭君の顔を見た。

「さ、佐久間さん!!その話はやめましょうよっ!!」

鄭君が少しあわてたように言った。

『で、誰?って私が聞いたらですねえ、「ほら、円さんがかわいいなあ~って言ってたあのカラオケの女ですよ。一回やったくらいでしつこく電話してきやがって」なんていってるんですよ!!』

「なにっ!!あのボブカットの女の子か?」僕はじろりと鄭君を見た。

「そうです。ボブカットの女の子です。鄭君は円さんが気に入っているのを知っててヤってしまったんです!!」

「佐久間さん!!」

鄭君は流石にあわてはじめた。

僕は鄭君をにらみつけながら言った。

「相手はそれが商売の一環とはいえ、一度で飽きてしまうならやらんほうがいいな。特に仲間内にあの子いいなと思っている人がいる場合は。」

「そ、そうですね。気をつけます。なんていうか、お酒飲んでいて気がついたら裸でとなりに寝ていたと言う感じで。申し訳ない!!」

まあ、別に可愛いなとおもっただけだからいいや。

口きいたこともないし。

そう思っていると、サクちゃんが再度の追い打ちを鄭君にかけた。

「もっとひどい事があるんです」

「なんや?」

僕がお気に入りの子を寝取られた話を聞いて、ちょっと機嫌が直っただんじり君がサクちゃんに尋ねた。

「私が仕事で遅くなる日にですねえ」サクちゃんが意地の悪そうな顔を鄭君に向けながら言った。

「鄭君がちょっと部屋借りていいですか?って電話をかけてきたんですよ。で、私も忙しかったからあまり考えもせずに、いいよって返事したんですが、会社から帰って私の部屋に入ると・・・」

「佐久間さん!!」

鄭君があわてて、サクちゃんの口をおさえようとした。

それを両手でかわしながらサクちゃんが言った。

「暗いベッドルームで、女と二人、裸でねてたんですっ!!私のベッドでですよっ!!」

「ひどい!!」
「ほんまか?」

僕とだんじり君は信じられないという顔で鄭君の方を向いて言った。

「い、いや、まあ、そんな事もありましたね(^_^;)」

鄭君が照れ笑いしながらしどろもどろで答えた。

「自分の部屋でやればいいだろっ!!」

サクちゃんはその時の怒りを思い出したのかいきなり鄭君を怒鳴りつけた。

「まあ、いずれにせよ、佐久間さんの部屋は、女郎さんの控えの間で、しかも売春宿でもあることが本人のカミングアウトで証明されたわけです。」

僕が総ての話をきちんとサクちゃんの淫乱な生活っぷりに戻して、だんじり君に話を返した。

『そやな。円ちゃんはカラオケのねーちゃん見て「あの娘ええな~」とかおもっとるだけやけど、佐久間さんと鄭君は、同じ部屋で女抱いて生活してるっていうことが良くわかったわ(-_-)』

「きっと部屋だけでなく、一緒に寝る女性も一部カブってますよ。この二人は。」

僕が二人の顔を見ながら言うと、二人はお互い顔をあわせ、そしてうつむいた。

「マラ兄弟やな。この二人は(-_-)」

「不潔ですよ。日本と中国の淫魔代表コンビです。どっちかがエイズになれば直に両方ともエイズになります。」

これには流石にサクちゃんが「それはあんまりですよ・・・」と力のない声で反論した。

コーヒーも飲み終わり、そろそろチェックインしようかと話しているとサクちゃんの携帯がなった。

話し方と妙ににやけた顔で、仕事の話ではないことがすぐにわかった。

「きっとカラオケのおねーちゃんですよ。」

僕はだんじり君の方へ身体を傾け、わざと小さな声で言った。

「(-_-)・・・・・」

僕が鄭君に目でサクちゃんの携帯を奪うよう合図すると、サクちゃんの隣にいた鄭君は素早くサクちゃんの携帯を奪った。

「あっ・・・・・」

不意をつかれ呆然とするサクちゃんを尻目に、極悪中国淫魔代表の鄭君は携帯の相手と話し出した。

「円さんリーリーです。円さんにかわれって言ってますよ」

鄭君が面白そうな顔をして、僕に携帯を渡した。

サクちゃんはすでにあきらめたような顔で僕を見ている。

「ウエィウエィ(もしもし)」僕は中国語で話しかけた。

「円?ひさしぶり。今佐久間さんと一緒にいるの?」

「そうだよ。リーリーはどこにいるのさ?せっかくだからこっちくれば?」

リーリーは僕等のいる街から600キロほど南の街の名前を言って、遠すぎるよと言った。

「今から高速バスに乗れば夜中にはつくじゃん。きなよ。週末だし。サクちゃんも逢いたいってさっきまでさんざん俺らにのろけてたんだぜ。」

「ほんとう?」

「ほんとうだよ。今、XXのXXホテルだからさ。あさってには俺らは日本に帰るけど明日はいるから。」

「どうしよっかな。佐久間さんに変わってくれる?」

僕はサクちゃんに携帯を返すと席を立ち、チェックインの為フロントに向かった。もちろんコーヒー代の伝票はサクちゃんの前に置いてだ。

「ほんまくるかな?」

だんじり君が楽しそうな顔をして言った。

「どうでしょうねえ。600キロくらいあるから。8時間くらいかかりますよ。」

「その距離バスでやってきたら、サクちゃんに相当惚れとるな。」

「そうですねえ。私だったら電話でこいよって言われて600キロ先の街にいるって言われたら絶対いかないですからねえ。」

僕等がチェックインの用紙に必要事項を書き込んでいると、サクちゃんがやってきた。

「どうでした?」

僕は妙にニコニコしているサクちゃんの顔を見て尋ねた。

「来るっていってましたよ。」

僕もだんじり君も思わず書類から顔をあげてサクちゃんの顔を見た。

「ほんまかいな?」

「まあ、ほんとうに来るかどうかはわかりませんけど。」

そういうとサクちゃんは僕等が来る前に記入していたらしい書類をフロントに出した。

「円さま。こちらがXX(だんじり君の本名)さまの。こちらが円さまのキーです」

フロントの女の子が僕とだんじり君にキーを渡した。

「佐久間様。予約はノーマルツインで承ったのですが、今日はあいにく満室で、こちらの方でカリビアンルームをご用意させていただきました。もちろん料金はノーマルツインの料金ですので。」

「何!?カリビアンルーム?」

僕は思わずサクちゃんの顔を見た。

「なんや?カリビアンルームって?」

だんじり君が僕の尋常ではない反応に驚いて聞いた。

このホテルは三階にプールがある。プールに面して直接プールサイドに出られる部屋がカリビアンルームと呼ばれていて、僕が一人でこのホテルに来るときは大抵この部屋を頼む。値段もノーマルと20ドルくらいしか違わないが、夜は青くライトアップされたプールが見え気分が良い。

僕が仕事で泊まるホテルのなかでは、この部屋が一番好きだ。

因みに今回はだんじり君の出張費の関連でノーマルツインにしたのだが、これだと場合によっては窓の外はところどころ筵をかけた工事中のビルだったりして、激しくげんなりする。

僕はそのことをだんじり君に説明した。

「佐久間さん今日はほんまに運がいいなあ。600キロも離れたとこから女の子が夜中にかけつけ、おまけに部屋はオシャレなプールサイドのカリビアンルームかあ。」

サクちゃんは嬉しそうに笑っている。

ムムム・・・サクちゃんめえ・・・・

俺のカリビアンルームを・・・・・

コノウラミハラサデオクベキカ・・・・・・・・・

To be continue.

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2005.12.25

中国に真実の愛はあったか?(3)

一年後。

僕とだんじり君は一週間にわたる、原料の実地調査を終えて以前僕が住んでいた街へと戻るところだった。

だんじり君は大阪のだんじり祭で有名な所出身の僕の取引相手である。

僕等がやっている商売は、原料も製品も基本的に相場モノだ。

本格的な生産シーズンに入る前に、僕は情報を集め、今期加工可能な原料がどの程度あるのか確認する。

もちろん一発で正確な数字は出てこない。

色々なところから情報を取り、実際に原料の状態もチェック。ダブルチェック、トリプルチェックをかけて、情報をふるいにかけていく。

場合によっては生産業者と麻雀仲間の、関連業界や違う業界の中国人から情報を取る事もあった。

同じ業界の人間には警戒心が働いて本音を出さないが、まったく別の業界の人間相手にはぽろりと本音が出ることがある。

麻雀で一人勝ちしているような時にはなおさらだ。

もちろん僕は具体的にこれこれの情報が欲しいなどと言うことはいわない。

一緒に食事をして、「そういえばあそこの親方元気?」などと話をふる。

そうすると「この前麻雀したけど・・・」と話がはじまる。

僕が知りたいのは、ずばりその親方がどれくらいの原料を持っているという情報ではなかった。

相場をつくるのは中国全体での原料の量だから、一生産者がどれだけもっているかにさしたる意味はない。

そういうコアな情報は仕入れるにも高くつく。

また裏切られた場合、こちらの正体がはっきりわかってしまう。

故意に間違った情報をリークされ、ひっかかる可能性も高い。

僕が求めているのは、周辺情報だった。

いくつもの間接的な情報をあつめていくと、相手がこちらにむけて書いているシナリオと、現実の原料状況の両方が浮き上がってくる。

どちらが彼らの書いたシナリオで、どちらが現実の原料状況なのか見分けるのに親方達の麻雀仲間の情報が必要な事があるのだ。

どちらが彼らの書いたシナリオか目処がついたら、僕等はそのシナリオをもって各地をまわる。

そして「自分たちが産地をまわって調べた結果だが・・」といって、中国側の書いたシナリオを喋る。もちろんごく一部だけ真実と思われることを混ぜこんでだ。

すべての相手が大筋でそれを認めれば、間違いなくそちらが彼らが書いたシナリオだ。

そして僕等が帰ったあと、彼らは「うまく日本人をだませた」と喜ぶ。

一方で日本のマーケットの状況に関しては僕は正直に説明した。

そうすることで、中国人達に、僕は日本のマーケット情報を正確に伝えてくれる日本人であると同時に、自分たちのシナリオを信じ込むたやすい相手という印象を与えるのだった。

その結果、翌年も彼らは僕の訪問を喜ぶ上、そのガードは下がる。

そして僕はより一層正確な情報を得ることができるようになるのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

「しんどかったなあ~」

車のなかでだんじり君が言った。

僕等は朝に隣街から出て、100キロ先の産地へ向かい、そのまま僕が以前住んでいた経済特区の街へと戻るところだった。

往復200キロだが、高速道路があるわけではないのでけっこうきつい。

しかも一週間にわたりコーヒーといえばインスタントしかないような情けないホテルにとまりつづけた後なのだった。

「でも、もう1時間もすれば、美味しいコーヒーと和食が食べられますよ。」

僕はげっそりとした、だんじり君の顔を見ながら言った。

「和食か。一週間たべてないわ。」

中国南部の料理はほとんどが海鮮で、シンプルな料理が多いから胃に脂がもたれるということはない。

だが毎日宴会料理ではイヤになってしまう。

中国がはじめてというようなお客さんだと、僕も気をつかってふりかけやらインスタントの味噌汁などをもっていくのだが、だんじり君は僕と同じ年だし、なにしろ今回は移動につぐ移動で、服を洗濯に出す時間がない。

荷物には着替えがつめこまれることになり、食品を入れておくスペースはなかった。

僕は仕事の出張に関しては、基本的に機内持ち込みの可能なアルミケース一つですます主義だ。

ぼおっとしているだんじり君を見ていると携帯がなった。

サクちゃんからだった。

「円さん。今どのあたりですか?」

サクちゃんの懐かしい声がした。半年ぶりぐらいだった。

副原料の会社の副社長であるサクちゃんは当然様々な情報を持っている。

今向かっている街で、僕等は落ち合う約束をしていた。

「あと40分くらいでホテルにつきますよ」

僕は切れ切れになる電波を気にしながらサクちゃんに言った。

「よかった。ほとんど一緒ですね。」

「はい。コーヒーショップで待ち合わせて、コーヒー飲んでからチェックインしましょう。エスプレッソが死ぬほど飲みたいんです。」

「わかりました。ついたらコーヒーショップに行きます。」

「夕食は日本食にしましょう。」

「はははは。円さんも堕落しましたね。昔は毎日中華でも音をあげなかったのに。」

「堕落じゃないですよ。日本食喰えるところがなかったから我慢してただけです。僕は便利をあえて拒否して、不便を楽しむほどマゾじゃないんで」

「わかりました。うちの会社でおごりますよ。じゃあ後で。」

携帯をしまうとだんじり君が僕の顔をみつめながらぼそりと言った。

「もう中華たべんでいいんやな?」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

ホテルが見えてくるとだんじり君は俄然元気が出てきた。

「おおっ!!すごいやんけ!!」

現地調査の仕事の時は、最初にせこいホテルに泊まらせてしまう。

大抵は中国のホテルはこんなもんなんだとあきらめるからだ。

もちろん中国にも日本以上に快適なホテルはあるが、いきなりそんな所に泊まらせたら、早く帰ろう早く帰ろうとうるさくてしょうがない。

僕等が今夜泊まるホテルは4つ星だった。

それも本来5つ星なのだが、街の真ん中にたてたので5つ星にするには敷地面積が足りずに4つ星になったホテルだから、サービスも設備も行き届いて、素晴らしく快適だ。

もちろん日本のBS放送も見ることができる。

一階にはビュッフェと日本食レストラン、ちゃんとしたコーヒーを飲ませるコーヒーショップ。それにショットバーがあった。

僕とだんじり君はホテルに入るとベルボーイに予約があることと、コーヒーショップでお茶してからチェックインすることを伝えて荷物をあずかってもらった。

コーヒーショップにいくとすでにサクちゃんとウチの会社の現地スタッフである鄭君が一緒にお茶をしていた。

僕とだんじり君がふかふかした椅子にすわると、深くスリットのはいったドレスを着たウエイトレスが注文を取りに来た。

僕はエスプレッソのダブルを頼み、だんじり君はアイスコーヒーを頼んだ。

「疲れてるじゃないですか」

サクちゃんがぼくらに言った。

「当然でしょ。佐久間さんのように、毎日ハーレム暮らししてた訳じゃないんですから。お湯がちょぼちょぼしか出ないホテルでカラオケもサウナもいかず、毎晩二時まで会議しながらここまでたどりついたんですからね。」

「そやそや。まあ、円ちゃんはようけ知らん女と時々中国語で電話しとったけどな。」

だんじり君が言うのを聞いて、サクちゃんがにやりと笑った。

「経理から手紙預かってますよ」

封筒を差し出した。

「何それ?」

「円さんの彼女からのラブレターですよ。」

「電話の女か?」

「そうです。」

「ゆうたろ。ゆうたろ。オヤジさんにゆうたろっ!!」

「いいですよ別に。僕はオヤジのように不純な付き合いはしてないですから。普通に仲良く友達しているだけですから。」

愛民とは日本に戻ってからも電話で話したりしていて、仕事で彼女のホテルにとまれば、一緒に食事をしたりしていたが、それ以上の関係へと進む気は僕にはなかった。

彼女の方は誘えばいつでも落ちてあげるのにという雰囲気だったが、自分の方からは、やはりそれ以上積極的になる気配は見せなかった。

それでますますこれは普通ではないと感じたので、現状のままの付き合いをつづける事にしたのだった。

まあ、知り合いもいない中国の田舎をまわっているときに、寝る前に電話で話す女性がいるのは悪くはない。

「そうかなあ~。その封筒あけてみ。ラブレターやないか?」

僕は封筒をあけた。手紙と一緒に写真がはいっていた。

「これかっ!!」

だんじり君が写真を取り上げるとサクちゃんに見せていった。

「そうです。」

とサクちゃん

「きれいやんけ!!」

「大連の女性ですからね。背も高いですよ。」

「ホテルのマネージャーなんか?」

「前は客房部だけだったんですが、今はゼネラルマネージャーになったんですよ。客室だけでなく、フロント、レストラン部門、全部仕切ってます。円さん知ってました?」

「知ってますよ。」

「ええなあ~。こんな美人で背が高くて頭のいい彼女がいて。」

「彼女じゃないって(^_^;)」

「は~。わしなんかな、女房7つ上なんよ。」

「7つ?なんでまた?」

「しらんかったん。結婚式のその日まで。」

「はあ?」

「結婚式で昭和何年生まれてって言うやろ?それきいてわかったんや。」

「ウソでしょ?」

「ほんまやて。」

「なんで?結婚するまで年きかんかったの?」

僕もだんじり君につられて段々関西弁のようになってきてしまった。

『いきつけの食堂でしりあったんけどな。付き合いはじめたとき、きいたんや。「いくつにみえるん?」っていうから「同じくらいかなあ」といったら「そうやね」っていうから、上でも1つ2つやと思ってた。』

「7つ年上だったら普通わかるでしょ?いったいいくつの時結婚したんです?」

「23」

「じゃ、奥さん三十路じゃないですか?」

「おう。式始まってから指折り数えてびっくりしたわ。」

「いや、そういう事ではなくて・・・離婚しなかったんですか?」

「でけへんわ。そのかわり結婚式終わってからいうたったわ。」

「なんて?」

「ふざけんなっ!!お前三十路やんかっ!!いたいけな23歳の若者騙しておもしろいんかっ!!って」

「結婚式上げてからいってもねえ。でも奥さんなんて答えたんですか?」

「私はあんたが勝手におなじくらいかなあ?っていうからそうやねっていっただけや。別に24とも25ともいうとらんわアホって。」

「完全に負けじゃないですか。」

『負けやないわ。ワシいうたったもん。「ええかっ!!お前はワシのこと騙したんやからな。離婚はせんでおいたるけど、浮気はさせてもらうで」ってな。』

「はあ。それで奥さんはなんて?」

「浮気ぐらいええわ。そのかわりしっかり生活費いれいやって。」

「負けてるじゃん!!」

「負けとらんわ!!浮気自由の権利を勝ちとったんや。独身の円ちゃんには既婚者が浮気自由の権利を勝ち取ることがどれだけ大変やかわからんやろうけどな。ワシは結婚式が終わると同時に勝ちとったんや。」

「はあ。それで浮気はやり放題なんですか?」

「いや・・・・」

「権利勝ちとったんでしょ?」

「うん。だけどな、収入全部握られて小遣いもろうとるから、女みつかってもホテル代ないねん。」

「お子さんいましたよね。」

「うん。」

「何人?」

「4人。」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

僕もサクちゃんも思わず絶句した。

「浮気自由の権利とっても意味ないじゃん・・・・」

「ほっとけっ!!」

だんじり君の大きな声に、ウエイトレスがこちらを見た。

「まあまあおちついて。」

「おちついとるわっ!!」

だんじり君は愛民の写真を見ると僕に聞いた。

「この子円ちゃんより年下やろ?」

「はあ。」

「いくつ下?」

「え?7つだったかな?」

「なんでやねん!!なんで俺と円ちゃんは同級生なのに、俺は7つ上の女房で、円ちゃんは7つ下の彼女とつきおうとるねん!!年の差が14もあるやんけっ。女房が中学二年の時生まれた子やんかっ!!」

雲行きがヤバくなってきたぞ。

「はははは。僕なんか全然たいしたことないですよ。ここにいる佐久間副社長なんか20歳は年の違う彼女がいるんですよ」

それまで楽しそうに僕とだんじり君の話を聞いていたサクちゃんが思わず、げほっ!!げほっ!!とコーヒーにむせた。

「しかも毎晩カラオケのおねーちゃんが出勤前に佐久間さんの部屋に麻雀しにきてて、それはもう酒池肉林で有名な殷の王様も真っ青ってくらいの爛れた生活を・・」

「な、何いってるんですか!!円さん!!やめてくださいよ!!」

「いや、私は見たままの事を言っているだけですが。」

僕がしれっとして言うと、だんじり君が酒も飲んでいないのに据わった目であとをついだ。

「その話、おもしろそうやんけ。」

To be continue.

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2005.12.18

中国に真実の愛はあったか?(2)

90年代後半の中国での物語(多分3割の真実に7割の脚色バージョン)

サクちゃんは翌日午前中に僕の工場にやってきたが、お昼前に急用ができて、自分の工場に呼び戻された。

「すいません。夕食を一緒に食べましょう。」

三時過ぎにその日の僕の仕事は終わり、工場の車でホテルに送ってもらい、六階でエレベーターを降り、自分の部屋に向かうと愛民がサクちゃんの部屋の前に立っていた。

部屋のドアは開いており、愛民は部屋の中を見ている。

僕の部屋は一番奥なので、当然の如くそちらに向かうと、愛民が僕に気づいた。

サクちゃんの部屋からは一人の女の子(といっても25過ぎだろうが)が出てきて、こちらに向かってかって来て、すれ違いざま僕を見てニコリと笑い「ニイハオ」と言ってエレベーターホールへと向かった。

部屋の前で、サクちゃんの部屋の鍵がかかったのを確認する愛民と、話をした。

「今帰ってきたの?」

「そう。土曜だし、原料がなくなったから。今の子は?」

「ああ、佐久間さんから電話があって、部屋にいれてあげてくれって頼まれたの」

「会社の子?」

「はははは」

会社の子ではないらしい。

僕に挨拶をしたので、会社の子かと思った。

もっとも、サクちゃんの会社やこのホテルを含めて、市内に1000人は越えるこのグループの従業員は大抵僕の事を知っている。

この会社がまだ100人ちょっとの頃からの付き合いだからだ。

もともと日本人はめったに来ることのない街でもあるし。

もちろん僕が知っているのは一緒に仕事をする数十人だが、僕が知らなくても相手の方は工場の食堂などで僕を見ていて、「ああ、あの日本人だ」とすぐわかるはずだ。

「私今夜は5時で終わるんだけど、一緒に食事しない?」

愛民が僕の顔を見ながら言った。

「夜は佐久間さんと一緒に食事するけど、一緒でよければかまわないと思うよ。」

愛民がそれでもいいというので、僕は携帯でサクちゃんに電話をして、確認をとった。

「いいってさ」

「何時?」

「サクちゃんは5時に部屋に来てくれっていっているから、ちょっと打ち合わせして5時半かな?」

「じゃあフロントにいるから電話して。」

愛民と別れると僕は部屋に帰りシャワーを浴びた。

別にエロい期待をしてではない。

昼食時以外はほとんど工場にいたので、工場の匂いが髪の毛にしみこんでしまっているのに気づいたからだ。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

五時になったのでサクちゃんの部屋にいくと、なかではジャラジャラと音がする。

中国でジャラジャラと音がすればそれはまず間違いなく麻雀だ。

ドアベルをならすと、さっき部屋から出てきた女の子が顔を出した。

「小円が来たよ!!」

室内にそう声をかけるとドアチェーンを外して僕を室内に入れた。

中ではサクちゃんがおねーちゃん3人と麻雀をしている。

そればかりかソファやら窓際の椅子にも座っているので、7人のおねーちゃんの中に、男はサクちゃん一人の状況だ。なんだこれは?ハーレムか?

「何やってるんですか・・・(-_-)」

僕はイヤそうな顔をしてサクちゃんに尋ねた。

「ああ、上のカラオケの女の子達ですよ。出勤前に麻雀やって時間つぶしているんです」

いや、それはわかるけどね。

チミはそういうことしてていい身分なのか?

カラオケのおねーちゃんなんて地元の人間は一人もいずに、みな流れ者みたいな連中だから、いつ盗っ人に変身してもおかしくない連中だぞ?

「ねえ、私あなたのお父さんしってるわよ。」

麻雀をせずに窓際の椅子に座ってお茶を飲んでいるおねーちゃんが言った。

「そうそう。彼女はあなたのお父さんの事すごく良く知ってるわ」

今度はソファに座ったおねーちゃんだ。

「こういう場合、あなたは彼女のことなんて呼ぶべきかしら?中国の副ママ?」

orz

麻雀をしている女の子達一同が笑い、サクちゃんの部屋は銀座のクラブのようになった。

腐れ親父めっ!!ぶっ殺す!!

僕がうんざりした顔をしたのにドアを開けてくれた女の子が気づいたのか「ほらほら、麻雀はもう終わり!!みんな出て行って!!」とカラオケねーちゃん達を追い出しにかかった。

どうやらこのグループの仕切屋は彼女らしい。

「はい。お茶」

カラオケねーちゃん達を追い出したあとで彼女がお茶をいれてくれた。

リーリーと名乗った彼女は、ちょっと上向きな鼻をしたファニーな感じの顔立ちで、さきほどのねーちゃん達ほどはスレていないように見えた。

カラオケのケバいねーちゃんというより堅気の女の子のように見える。

僕は化粧をばっちりしたような女性は苦手だ。

苦手というか、うんざりしてくる。

業務用のマスクのような顔には興味がもてないのだ。

僕はサクちゃんと仕事の話をちょこっとして、どこで食事するか相談をはじめた。

「海鮮が食べたいですね。」

僕がそういうとリーリーが「マーばあさんの店にいこうよ」とサクちゃんに言った。

「なんですか?マーばあさんの店って。麻婆豆腐でもつくってるの?」

「いや、国道からこっちに別れる道のところに去年できたお店ですよ。道ばたに屋根とテーブルと調理場、それに水槽おいてやってる店なんですが、安くて美味しいと評判なんです。こないだテレビでもやってましたよ。」

サクちゃんが会社から車を呼び、僕は室内の電話でフロントに電話して愛民を呼び出した。

「国道の所にあるマー婆さんの店に行くんだって。」

「あっ。そこ私も一度いってみたいと思ってたんだ。」

確かにこの界隈では有名な店らしい。

僕等が30分くらいかけて店につくと、すでに店は8割り方埋まっていた。

屋根の下のテーブルに案内されると、僕は水槽を見て回り、牡蠣を卵焼きにしてもらい、石班魚(ハタ)と伊勢エビを清蒸に、メスの卵をぎっしり抱いた青蟹は生姜の薄切りと一緒に炒めてもらい、オコゼはスープ。前菜に小エビを蒸してもらうことにした。それに野菜炒めと焼きそばをつけてもらう。

席に戻るとお茶碗にポットから熱湯を入れ、箸を突っ込みガチャガチャと消毒をし、さらにジッポーのライターを出して炎で茶碗の中と箸をあぶった。

となりでやはり食器をガチャガチャ消毒している愛民がそれを見て「ずいぶんと中国通ね」と言った。

「円は中国に来て7年ぐらいになるのよね?」

リーリーが言った。

「そうだけどなんで知ってるのさ。」

「お父さんに聞いた。」

「はあ。」

「お父さんカラオケ大好きよ。こっち来ていれば毎日来るわ。あたし達みんなで今息子が来てるみたいだけど、全然こないわねって行ってたの。円はカラオケ嫌い?」

「仕事で来てるからね。仕事の時間以外は知らない人と、中国語で話す気にならないんだ。」

「じゃあ、夜は何してるの?」

「日本から持ってきた本を読んだり、音楽を聴いたり、友達に手紙書いたり。」

「ふ~ん。お父さんとは大分違うのねえ~。」

「ヤツはそんなに夜な夜な遊び回っているのかっ?」

「毎晩来るわよ。」

「佐久間さんも一緒だろ。」

「もちろん。」

「ちょっとちょっと。円さん何話しているんですか?」

サクちゃんも僕と同じ頃中国で仕事をはじめたが、中国語はそれほどうまくない。

自分の名前が出たので、自分のことを話しているとわかったらしい。

「別に」

「別にって今、私の名前言ってましたよね?」

「さあ?」

「言いましたよ。なんていったんです?」

「ばれたか。じゃあしょうがない。佐久間さんともう寝た?って聞いたんです。」

「寝てませんよ!!何いってるんですかっ!!」

「ホントですかあ~?その割りにはさっき部屋でやけにかいがいしかったような。」

「変なこと言わないで下さいよ!!」

「しかし、部屋にあれだけの女を侍らしている男が、おねーちゃんには手をつけていないなんて信じられませんね。」

「しょうがないじゃないですか。円さんのお父さんが毎晩私をつれていくから私も彼女たちと顔見知りになって、ああなっているんですよ。」

「では彼女達とは麻雀しているだけで、肉体関係はないと?」

「ないですよ。日本には女房子供がいるんですから。」

「お子さん高校生ですよね。多感な時期ですね。」

「そうですよ。だから余計なこと言わないでくださいね!!」

「海外で一生懸命働いていると思っているお父さんが、実はカラオケねーちゃんと毎晩乱交パーティ・・・いや、麻雀三昧だと知ったら・・・・・」

「土曜だけでしょ!!しかも麻雀ですよ。乱交パーティなんかしたらすぐ公安につかまります。」

僕は運転手に尋ねた。

「サクちゃん現地妻いないの?」

運転手は伊勢エビを食べながら僕の顔を見て言った。

「さすがにここにはいないな。俺の知る限りじゃ」

「リーリー。サクちゃんとやっただろ?」

僕は極めて率直にリーリーに聞いた。

「え~ 私はやってないよ。他の子は知らないけど」

愛民がそれを聞いてクスクス笑った。普通中国の未婚の女の子はこういう話しをすると黙ってしまう。

こいつ処女ではないな。少なくとも。

「警備室で監視カメラの集中監視してるよな?あれってどこの管轄?」

僕は愛民に聞いた。

「客房部よ。」

「つまり愛民の管轄だろ?」

「そうね。」

「って事はサクちゃんの部屋にどの女が出入りしているかチェックしてるよな。」

「記録はあるでしょうねえ。」

「俺は日本の奥さんから頼まれている。あとでチェックさせろ。」

「ちょっとまってくださいよ!!今、奥さんに頼まれてるからチェックするとか言ってたでしょ?」

サクちゃんがあわてて愛民にいった「ウソだから。みんなウソ」

「はあ~」そういうと愛民が手をぱたぱたさせて自分の顔を扇ぐふりをした。

「私はどっちの言うこと聞けばいいのかしら?」

「当然俺だろ?帰ったらコーヒーショップでアイスクリームおごるから。」

「サクマサン イイデスカア~」

愛民がサクちゃんにいきなり怪しい日本語で尋ねた。

「ダメ。ダメにきまってるだろっ!!絶対ダメ」

「じゃあ、佐久間さんの事調べるのやめるから、親父の事話して下さいよ。」

「ええっ」

「話してくれなくてもリーリーに女の子何人か呼ばせて聞き込みしますよ。愛民に立ち会ってもらえば、質問に答えないとホテル内での営業認めてもらえなくなるかもって思って全部吐きますよね?その時佐久間さんの事も聞きますがいいですか?」

僕はこれを中国語で言った。

運転手もリーリーも愛民も笑った。

「言えるわけないじゃないですかあ~。それより、円さん、いつの間に客室の経理とそんなに仲良くなってるんですか?私なんて1年以上住んでいるのに、挨拶以外の話したの今回が初めてですよお・・・」

「それは僕が毎日のようにカラオケに行って女買ったりしない、信用ある男だからですよ。ホテル従業員は紳士の味方なんです。」

「私だってしてないですよ。」

「いいですよ。そういう事で。まあ、調べればわかることだから。」

食事は美味しく、値段も日本円にして5000円ちょいだった。ホテルで食べれば2万円近くとられるはずだ。

僕等はホテルに戻り、僕はコーヒーショップで愛民とチョコレートサンデーを食べた。

もちろんサクちゃんの女性関係を探るような事はしなかった。

掴んでいる可能性があるとさえ思わせておけば、色々な意味で抑止力としては十分なのだった。

愛民が日本語を教えて欲しいというので、今回の仕事が終わるまでの一ヶ月、夕食をホテルのビュッフェで一緒に食べたり、工場で食事を終えてからコーヒーショップでコーヒーを飲み話をしながらホテルで使える簡単な日本語を教えてあげた。

リーリーも時々そこにやってきて、一緒に話をした。

なんだかんだと僕等は友達といっていいぐらいに仲良しになった。

そして僕は仕事を終え、日本に戻った。

To be continue.

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2005.12.05

中国に真実の愛はあったか?(1)

90年代後半の中国での物語(多分3割の真実に7割の脚色バージョン)

90年代の前半に、僕が派遣されていた工場が中国でもまっとうな製品が作れるということを証明すると、業界他社も続々と工場を中国に移転させてきた。

その状況の中で思わぬ幸運を掴んだ人物がいる。

僕が工場を稼働させるときに、副原料の担当者として一緒に立ち会ったサクちゃんだ。

サクちゃんといっても、僕より10歳は上だから、もちろん本人のいる所では、長幼の序をわきまえた礼儀正しい僕は「佐久間さん」と呼んでいる。

だが、本人のいない所ではサクちゃん。

別にバカにしているわけではない。

人柄の良い彼は、皆からサクちゃんサクちゃんと慕われているのである。

僕もサクちゃんは大好きだ。

変に肩に力のはいっていない彼は、一緒にいて肩が凝らない男なのである。

アホなのか狡猾なのか判断がつけがたい中国人とのやりとりの後、サクちゃんと一緒に食事なんかをしていると心底くつろげるのだ。

で、このサクちゃんが思わぬ幸運を掴んだ顛末。

原料は中国にあり、工場も2年ほどで以前の5倍の数になった。

だが副原料がなければ製品はつくれない。

そして副原料は、どの工場も日本から輸入していた。

工場が5倍になるということは、原料も副原料も5倍となるということだ。

そして工場は更に増えそうだった。

しかも重要な事は、これまで原料しかもっていなかった中国人が、工場を持ち始めようとしているということだった。

以前中国以外のところで生産していた連中は、中国に工場を移しても、副原料は前から取引のあったところを使う。

だが、そういう関係の無い、中国人の工場はどこから副原料を仕入れるのか?

ここにウチの取引先である中国の会社と、その代理店をやっていた僕のバカ親父、それにサクちゃんのところの社長が目をつけた。

副原料工場を中国にたてて、この急速に拡大する中国マーケットのシェアをがっぽり頂こうというのである。

試算をしてみると、日本から輸入する1/3で生産できる事がわかった。

副原料の生産は、決して難しいものではなかった。

現地の従業員を訓練する必要もほとんどない。

工場を稼働させるのに、最低でも1ヶ月は訓練をさせなければならない僕等とは大違いだ。

生産は極端に言えば、建物と設備さえあればできる。

三社が話し合いの末、日本円にして8桁の資本の工場ができた。

サクちゃんはそこの副社長になったのだ。

サクちゃんの親会社も資本金は8桁だが、8桁前半だ。

子会社のサクちゃんの資本は親会社の3倍。

満面の笑みを浮かべたサクちゃんは僕にこういった。

「ウチは同族企業だから、オーナー一族でない人間が出世できるのは、子会社の社長止まりです。嬉しいですよ。」

だが、サクちゃんの幸運はそれだけではとまらなかった。

1年後、日本の商社がこの事業に目をつけ、出資を申し出たのだ。

工場はその他の会社とも一緒になって集団公司という形態になったが、資本金の額も日本円にして10桁になった。

そして、その会社でも、サクちゃんは日本側の代表として副社長でありつづけたのだった。

そう、資本金8桁の会社の課長だったサクちゃんは、2年で資本金10桁の会社の副社長になりあがったのだった。

ビバ!!チャイニーズドリーム!!

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

5年間の中国在住生活を終えて3年後。

僕はサクちゃんの会社がある、中国南部の街に来ていた。

ここには親父が代理店をしている中国の会社もある。

この会社が日本から受注した製品の生産立ち会いをするのが、その時の僕の仕事だった。

やってきてすでに一週間。

原料の状態も良好で、工場側のよい物を作ろうという熱意も半端ではなく、仕事はきわめて順調に進んでいた。

仕事を終えると、親父が現地事務所として年間契約しているホテルの部屋に戻り、日本からもってきた本を読み寝た。

この部屋は、ホテルフロアの最上階にあるのだが、その上はナイトクラブ&カラオケで、実は夜になると心持ち騒がしい。

サクちゃんの部屋は斜め向かいにあった。

実はこのホテルも、サクちゃんに出資している中国側の会社が保有していて、サクちゃんはスイートルームを年間契約して住んでいるのだった。

サクちゃんの副原料工場は夜の10時くらいまで生産をしており、サクちゃんも帰ってくるのは9時過ぎだった。

僕は自分が中国に住んでいたころの経験から、夜サクちゃんの部屋に押しかけたりはしなかった。

人にもよるだろうが、海外で自分が旅行中で夜ヒマだからといって、毎日居住者である自分の部屋に遊びにこられても迷惑なのである。

とりわけ外国語で1日仕事をしたあとは、部屋に帰ったらじっくり休みたい。

僕も6時に仕事を終えて工場の食堂で幹部用の食事を工場の管理スタッフと一緒に食べると、あとは部屋に帰ってウォークマンで日本の音楽を聴きながら日本の本を読んでいた。

もっとも1日に1回は日本に報告書をファックスしなければいけないので、ファックスのある
1階のビジネスセンターに行くうちに、大連出身の女性マネージャーと仲良くなった。

名札には客室部マネージャー 方愛民と書いてあった。身長は170センチ近くあり、中国の南方ではめったに見かけないタイプだ。

なかなかの美人だった。

「またなんで、大連からこんなとこに来てるのさ。」

「ああ、このホテルは広州に本社があるホテル経営のコンサルタントをする会社が管理を請け負っているの。私はそこからの出向。」

「大連の人間が広州の会社で仕事?中国もグローバルになったもんだね。」

「ははは。会社は広州だけど、スタッフは中国全土から来ているのよ。」

「ふ~ん。」

僕は少しだけガードをあげた。

中国では企業が成功すると、大抵はグループ内でホテルを造る。

そして当然ながら、その企業の関連の客はほとんどそのホテルに泊まる。

中国ではホテルに泊まる時には政府発行の身分証明書を出さなければならないから、ホテルの管理をしていれば、どんな人間がその会社に出入りしているかは一目瞭然。

もちろん宿泊している外国人の監視もできる。

本業はホテルの経営コンサルタントであっても副業がないってことにはならない。

実際僕が中国にすみはじめた時に年間契約していたホテルでは、最初の2年間、従業員が僕の事を、公安の指示で24時間監視してたし。

「こっちと、大連では食事も違うでしょ。」

「そうね~。でも広州にしてもここにしても、基本的に料理は美味しいからいいわね。友達の中には全然口にあわないとこに派遣させられた人もいるし。そういう人に比べれば私はマシ。」

「そうなんだ。」

「あなたはどうなの?日本ではナマの魚とか食べるんでしょ?」

「いや、僕は20代の後半は中国すんでいて、ほとんど毎日中華だったから。それに日本でも餃子とか、ワンタンとかは普通に食べるんだ。戦前中国に住んでいた日本人が、引き上げた時に一緒に持ち込んだから。」

「へえ。そうなんだ。」

「うん。他にも、焼売とか焼豚とか青椒牛肉絲、麻婆豆腐、春巻。普通に家庭料理で出てくるよ。」

「ご両親のどっちかが中国系とかでなくても?」

「うん。中国人は中華しか食べないからびっくりするかもしれないけど、日本人は今日は刺身、明日は中華、あさっては洋食みたいに、いろんな国の料理を食べているんだ。」

「ホントに?信じられない。」

「自国の伝統より、海外の事に関して好奇心が強いからね。日本人は。」

「あ~あ。ここの人に教えてあげたいわ。ここの人達ときたら。」

「しょうがないよ。ここは中国でももっとも保守的な傾向があるとこだからさ。このホテルの親会社の幹部に客家のヤツがいるけど、泣いていたよ。」

「でしょうね。地元の人以外には心開かないものね。」

「そうみたいだね。」

「でもあなたは日本人でしょ?あなたのお父さんも。良く10年近く仕事を続けてられるわね。」

「多分親父がバカだからじゃないかな?それに他の地域の中国人より、日本人の方が信頼できると思っているんじゃない?」

「そうかな~。」

「知ってた?ここの会社では取引先の相手きめんのに、こっそり面相見に面相みさせて決めてるんだぜ。」

「本当?あきれた。あ、お友達が帰って来たわよ。」

振り向くとビジネスセンターのガラス越しにサクちゃんがホテルにはいって来たのが見えた。

サクちゃんも僕に気づいてビジネスセンターにやってきた。

「オカエリナサイ サクマサン。」

彼女がサクちゃんに日本語で声をかけた。サクちゃんも「ニイハオ」と答えた。

「またまた、円さんはこんなところでマネージャーと仲良くなって。」

「文化交流ですよ。」

「ハナ金ですよ。これから上のカラオケいくんですよ。一緒にいきましょう。」

「僕は明日も仕事ですから。もう寝ます。それに私が田舎の中国娘相手に仕事終わってからも中国語で喋るの嫌いなの知ってるでしょ?」

「このマネージャーと話すのはイヤじゃないんですか?」

「ホテルのマネージャーと仲良くしておくのは、仕事の一環です。帰りの飛行機の手配。
混み合ってる時の部屋の確保。どれも大事な仕事ですから。」

「なるほどねえ。じゃあ、明日工場の方にいきますよ。お昼一緒に食べましょう。」

そういうとサクちゃんは会社のスタッフを二人つれてエレベーターの方に向かった。

「カラオケいくんじゃないの?」

日本語でも中国語でもカラオケはカラオケだ。

「勘弁してよ。どこの馬の骨だか知らないおねーちゃん相手に中国語で話すの面倒くさいでしょ。」

「私と話すのは面倒くさくないんだ。」

「ホテルのマネージャーと仲良くしておくのは大事な仕事だからね。」

僕はそういって立ち上がった。

「あなた結婚してないでしょ?」

「うん。」

「カノジョは?」

「いないね。」

そういいながら僕はビジネスセンターのドアを開けた。

「ねえ、私をカノジョにしない?」

僕はふりかえって彼女の顔を見た。

悪びれた様子も、不安げな様子もなかった。

「そうだな~。まあ、考えておくよ。嫌いじゃないけどね。」

そういうとドアを閉め、ガラスの向こうの彼女に手を振り、エレベーターに向かった。

もちろん僕の方もワクワクしたりドキドキしたりはしなかった。

中国で長くくらしたけど、素人の女の子が自分の方から逢ったばかりの外国人に「私をカノジョにしない?」と言ってきたのは初めてだった。

これって恋愛の始まりなんかじゃなくて、ある種の腕試しの宣戦布告なんだよね。

お互いに。

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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