2005.08.08

ベルサイユに萌えて・・・・・(下)

90年代初頭の中国に突如現れたベルサイユな女は・・・

二日後、ナカタ君が北京から帰ってきた。

「いや~、美味しかったですよ。卵一杯抱いていて。北京事務所の連中は大喜びでした。」

青蟹は大好評だったようだ。

僕はあの女の事をナカタ君に話したくてうずうずしていた。

「どうしたんですか?円さん。」

「それがねえ~。凄いのが出たんだよ。」

「なんですか?」

「とびっきりだよ。」

「だから、何がでたんですか?」

僕は二日前に見た、ベルサイユな女の話をした。

「本当ですか?」

「こんな事、ウソついてもしょうがないじゃん。雪玲にきいてみたらわかるよ。本当にベルサイユなんだから。昨日も現れたっていってたよ」

半信半疑のナカタ君と僕は、一階のフロントへ向かった。

まだ早い時間なので、雪玲と、小呉(ショウウー)さんの二人がフロントにいた。

「ナカタかえってきたのね」小呉さんがいった。

小呉さんは、呉なにがしという名前だが、フロントのマネージャーも呉という姓なので、僕等はマネージャーの呉さんを呉幹部。こちらの呉さんを小呉さんと読んでいた。

このころ、外国人の泊まるホテルでの仕事は地元の女の子達にとっては花形で、勤めている女の子達は、誰もがたいてい気だてもよく、仕事もきちんとできる子が多かった。

「うん。雪玲」

「あなたねえ、帰ってきたのはいいけど、他のお客さんの迷惑になるようないたずらばっかりしてないでよ。」

雪玲は時にゴリ押しをするナカタ君が苦手だった。

「何の話?」ナカタ君はちらりと僕の顔を見た。

もちろん僕はそれを無視して、雪玲に話しかけた。

「ナカタにさ~。この前のドレスの女の話したけど信じないんだよ。雪玲からもウソじゃないっていってあげてよ」

「あ、あたしも昨日見た!!あんなヨーロッパの貴族が着るような服、生まれて初めてみちゃった」

小呉さんがいった。

「ほらね」

僕がナカタ君に言うと、彼もようやく信じたようだった。

このころの僕に、雪玲や、小呉さんまでも巻き込んでナカタ君をひっかけるだけの中国語力がないのは、彼が一番良く知っていた。

「どんな子なの?」

「え~とね、背が高いから多分北の方の子だと思うわ。吉林とか、黒竜江省とか。言葉もそんな感じだし。」

「美人?」

「きれいっていえばきれいよね~」

小呉さんと雪玲が目を見合わせて言った。

「でも鼻が黒いんだよね。っていうか鼻の穴がだけど」

そう、ベルサイユは長身でそれなりに美人といえたが、別に豚っぱなって訳でもないのに鼻の穴の黒さが妙に目立った。

「それって、鼻毛がモジャモジャなんでしょうか?」

ナカタ君が僕の顔を見て言った。

「さあ~?特に鼻が上向きって事もないんだけど、なんか鼻の穴が目立つんだよね。」

「鼻の穴がモジャモジャということは、下も・・・・」

そう日本語で言うと、ナカタ君はいたずらっ子のような笑いをした。

ナカタ君の良いところは、エロネタで笑っていても、子供がいたずらを楽しんで笑っているような所があり、下卑た感じがしないところだった。

「噂をすれば・・・・お待ちかねの女の子が来たわよ」

エントランスに着いたタクシーを見ていた雪玲がいい、僕等もふりかえってエントランスを見た。

電動のガラスのドアが開いて入ってきたのは、二日前と同じドレスを着たベルサイユだ!!

階段から中二階を経て、三階のディスコへ向かう彼女をナカタ君はじっと見ていた。

「本当だ。僕も中国は学生時代と今回で、二年間留学しているけれど、あんなドレスを着ている中国人ははじめて見た」

「だからベルサイユだっていったじゃん」

「たしかに。たしかにあれはベルサイユだ。」

「なかなか美人でしょう?」

「うん。確かに鼻の穴が黒いけど」

僕は笑った。

「でも、彼女はあんなドレス何着ももってるんですかねえ?」

「さあ、こないだ僕が見たときは同じドレスでした」

「ねえねえ、彼女戻って来たわよ!!」

小呉さんの声に中二階を見ると、何故かベルサイユがドレスをゆらしながら階段を降りて来るところだった。

そして、フロントの方へ歩いてくる。

僕とナカタ君は、雪玲のほうに体をむけながら、思いっきりの横目でベルサイユを見ていた。

フロントの前にやってきてベルサイユに、小呉さんが「何かご用ですか?」と尋ねた。

「長距離電話をかけたいの」

その彼女の声を聞いて、僕とナカタ君、そして雪玲は顔を見合わせた。

「ではあちらのフォンブースをどうぞ。終わった後、こちらで料金を計算して精算してもらいます。」

ベルサイユはフォンブースへいくと、電話で話し出した。

「うっ・・・」

小呉さんをのぞいた僕等三人は笑うのをこらえるので精一杯だった。

顔には似つかわしくない、すさまじく野太い声なのだ。

その衣装に見合うだけの品位のかけらもない、カエルが鳴いているような声だ。

彼女はフロントで会計をすませてディスコへと戻った。

ディスコでロココ調ドレスというのも考えてみれば凄い話だが、この手の仕事のおねえさんがディスコで踊りまくっているということはない。

隅っこの暗いブースに何人かで陣取って、客の見定めをしているのが普通だ。

「やっぱり黒竜江省でした」

小呉さんが言った。オペレーターからまわってきた請求でわかったのだろう。

「でも凄い声だよね。黒竜江省の女の人ってみんなあんな声なの?」

僕はナカタ君に聞いた

「いや、そんな事はないと思いますよ。っていうか、話し方も品がないなあ~」

小呉さんも雪玲もうなずいた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

「どう思います?」

僕の部屋のソファに寝ころびながらナカタ君が言った。

「どうって?」

「ベルサイユですよ」

「ああ、ベルサイユね。私は自分の鼻がまるっこいのに軽くコンプレックスがあるから、きれいな鼻か、かわいらしい鼻の女の子にしか興味ないからな~。ああいう風に鼻に妙なインパクトのある子はちょっと」

「そんな問題じゃないでしょ?問題はベルサイユファッションですよ。ああいうロココ調の服の女性とやったことあります?」

ナカタ君が真剣な顔で言った。

「あるわけないじゃん」

「う~ん。なんでそこで終わるかなあ~。男ならあのロココ服をきせたまま後ろからスカートめくってやってみたいとかおもわないんですか?」

僕はちょっと考えてみた。

なかなかいいかも・・・・

だが想像の中で後ろからスカートをめくりあげた女性がふりかえると、顔には底なし沼のように真っ黒な鼻の穴が・・・・・・

「いや、やっぱりあの鼻では・・・・」

「はあ~」

ナカタ君はため息をつくと、立ち上がり部屋のドアをあけた。

「僕は絶対やってみたいな」

そういうとドアを閉めて出て行った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

翌日ナカタ君は部屋には遊びにこなかった。

その翌日になって、お風呂を終えて寝ようとしていた僕の部屋がノックされた。

誰だ?

僕がチェーンをつけたままドアをあけると小呉さんと制服を着た公安局員がいた。

「円さん。公安局の立ち入り検査なの。一人なのはわかってるけど、確認だけさせてくれる?」

僕はドアをあけて、とりあえず公安局員に敬礼して「ご苦労様です」と声をかけ、協力的にふるまった。

海外では警官に非協力的にふるまってもろくな目にあわない。

向こうも外国人ということで緊張しているからとりあえずこちらに敵意がないということがわかれば、余計な物をひっくりかえされなくてすむのだ。

特に問題になるものはないが、スーツケースの中には香港で仕入れたノーカットのプレイボーイやハスラーが入っていた。

公安局員は他に人がいないのを確認すると、すぐに出ていった。

僕は小呉さんを呼び止めた。

「おね~ちゃん達のガサ入れ?」

小呉さんはうなずいた。

廊下の窓からエントランスを見ると、バスがとめられている。

僕はTシャツに短パンのまま、フロントに降りた。

フロントにいた雪玲が「何しに来たの?」といいながらニヤニヤしている。

「いや、なんかここにいると、いいモノが見れる気がしてさ」

そういっていると緑色の公安局の制服につれられて、7~8人の夜の姫君達が中二階にあらわれた。

その中にはベルサイユもいた。

もちろんいつもの白いロココ調のドレス姿だ。

ベルサイユを含む女性達は、そのまま公安局のバスにのせられてどこかにつれていかれた。

それ以来、ベルサイユの姿を見ることはなかった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

それから数日後。工場の見回りを終えて、管理室のソファで一息ついている僕の所へナカタ君がやってきた。

なんかポケットにつっこんだ手を動かしている。

「何してんの?」

「え?いや、別に・・・・」

その時、デスクで現地の新聞を読んでいた工場長がいった。

「売春婦ガサ入れ。137人検挙だって」

「それ、おれの部屋にも来たよ。公安局」

「よかったですね。つかまらなくて」

「やってないっつーの!!」

そういうと工場長は舌を鳴らしていった

「検挙されたうちの97%に淋病や梅毒などの性病があったそうです。大丈夫ですか?」

「おれは中国人童貞だから大丈夫。国粋主義者なんだ。」

僕はナカタ君を見た。

「な、なんですか?」

「いや、なんか股間をボリボリしてた気が」

「そんなことないですよ。変な事言わないで下さい!!」

「そお?」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

しばらくしてナカタ君は急遽日本に一時帰国することになった。

僕は社長に言った。

「ずいぶん急ですねえ」

「そうですねえ。なんかあったんでしょうか?」

社長は何か言いたげな気配を漂わせていた。

「社長。僕は知ってますよ。ナカタ君ベルサイユ見て、やりたいっていってたから。」

わはははははっと社長が大笑いした。

「なんだ知ってたんですか。僕もナカタ君から相談をうけたけど淋病みたいです。毛ジラミもうつされているな。」

「ばっかだなあ~。毛ジラミはしょうがないとしても、淋病って事はナマでやったんですかねえ?」

「本人はずいぶんしょげているんで、淋病ぐらい海の男の勲章だ!!って言ってやりましたよ。」

「勲章ですか?」

「円君は相手しってるんですか?」

僕は社長にベルサイユの話を一通りした。

「いいな~。私も流石にロココ調の服来た女性とはやってないなあ~」

「そうですよね。でも公安局行けばあの服は没収されて、どっかに保管してあるだろうから、借りてきましょうか、奥さんにきせれば・・・」

「いやいや、キミも恐ろしい事いうなあ~」

「でもナカタ君はロココ服の後ろからスカートめくりあげてやったんだと思いますよ。」

僕等二人は「う~ん」といいながら黙り込んだ。

お互いにエロい想像をしているのはわかっていた。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

その晩僕は夢を見た。

灰色の囚人服を着たベルサイユが出所してくるところだった。

灰色の服を脱いだベルサイユの前に、ロココ調の例の服が出された。

ベルサイユはそれを着ると、矢吹ジョーが収容されていた少年鑑別所のような場所から、恐ろしく不釣り合いなロココファッションででていくのだった。

目が覚めると電話がなっていた。

僕は電話に出た。

「ねえ、何してるの?一緒にテレビ見ない?」

天安門事件のあと、急に地方都市にも現れた夜の姫君達を根絶やしにすることは90年代初頭でも不可能だった。

公安局は思い出したように数ヶ月に一度、一斉検挙をしたが、2週間もすれば内陸から新しい女の子達がやってきた。

田舎から出てきて、学校も満足にでていない彼女たちにとって、まっとうに働いて一ヶ月でようやく稼げる金額を、外国人(香港や台湾人を含む)相手に一晩で稼ぐことができるこの仕事は魅力的だったのだ。

性教育というものがほとんどなされていない中国においては、「気持いいことしてお金かせいで何が悪い」という日本のコギャル達のような感覚で普通の工員から夜の商売に転職する女の子が続出した。

80年代末、絶対禁止だった売春行為は90年代後半には、普通の事になっていた。

公安局のガサ入れにつかまる事のなかった場合、彼女たちの大半は、1年足らずの都会生活で、故郷に親兄弟の為の家をたてる金をためて、故郷に帰っていったのだった。

To be continue.

Uploads on coming monday!!

Maybe (^_-)

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2005.08.01

ベルサイユに萌えて・・・・・(中)

遂に夜の姫君達は僕等の陣取るホテルにまで・・・

それから2ヶ月・・・・

あらゆるホテルのあらゆるコーヒーショップはその筋の女性達に占拠されてしまった。

そのころの彼女たちのファッションは、膝上のジーンズのミニスカートにタンクトップというのが多かった。

彼女たちはホテルに泊まり、昼間はホテルのコーヒーショップなどでヒマを潰し、夜になるとディスコと言われていたナイトクラブに現れて客を取る。

それはいいのだが、問題はディスコで客をとれなかったねーちゃんや、早めに客をとって、ショートで終わらして、朝までにもう一人客を取ろうとするねーちゃん達である。

彼女たちが何をするかというと、自分がとまっているホテルの内線電話を使って、1階の1号室から、絨毯爆撃の如く一部屋一部屋客がつくまで丹念に電話をかけていくのである。

それはホテルのディスコが終わる11時頃からはじまり、酷いときは夜中の3時頃にかかってくることがあった。

だが大抵は夜中の1時くらい、丁度僕が寝入ったころにかかってくる。

トゥルルルル トゥルルルル

「はい」

「今晩は」

「?」

「今、なにしているの?」

「あんただれ?」

「さ~。だれだと思う?」

「知らん」

「私今、XX室にとまっているの。あなたの部屋にビデオ見に行っていいかしら?」

「おれの部屋でも、キミの部屋でも、みれるビデオは一緒だろ!!自分の部屋でみろ!!」

ガチャリ

こっちは明日の8時には出勤していなければならないのだ。

するとすぐにまた電話が鳴る。

当時僕のために会社が年間契約してくれていたのは、シングルを二部屋つなげて、一部屋をリビングにしたスィートだった。

従い電話は二回線あり、どちらかに電話がくると、もう一方もなる。

仕方なく出ると、また同じ女の声がする

「あら、またあなた?スィートなんだ。お金持ちなのね。これから遊びに行ってもいい?」

「ダメ」

ガチャリ

翌日、僕は(電話の)交換室へ行って事情を話した。

「時間指定でつながらなくすることはできますけど」

中国の12時は日本の1時である。

「12時から7時は電話つながないようにして」

翌日からはその手の電話でおこされる事はなくなった。

しかし、テレビを見ても、僕の中国語のレベルではおおまかなことしかわからない。

というか90年代頭の中国では、面白いテレビ番組自体がない。

日本から14インチのマルチテレビとファミコンを持ち込んだのだが、時間つぶしにやろうと思っていた「信長の野望」は、14インチのテレビでは、文字が読めない事が判明した。

「円さん。ヒマですよ」

「そうだね~」

土曜日の夜、僕の部屋に遊びに来ていたナカタ君と話していると電話がなった。

「ねえ、何しているの?」

時計を見ると10時半だ。

ディスコに客がいずにあきらめて部屋に戻ってきたのだろうか?

「何も」

「部屋にいくから、一緒にテレビでも見ない?」

「見ない」

ガチャン!!

また電話がなった。

「円さん僕がでますよ。」ナカタ君がうすら笑いをうかべて言った。

「さっきバーで一緒になった台湾人の部屋下の階の4号室ですよね?」

僕等がバーで飲んでいると、台湾人がやってきて、週末だというのに月曜も仕事があるので台湾に帰れないとぼやいていたのだった。

「何しているの?」

「打飛機!!」

ガクッ(>_<)

打飛機(ダーフィチー)とは、いわゆる男性のひとりHのことである。

一説にはインベーダーゲームをやるときに手を激しく動かす様を見て、それが、男性版ひとりHの時の腕の動きに似ていたので、そのように呼ばれるようになったというのだが、実際そうなのかどうかは明言できない。

「はははは。一人でやってて楽しい?」

「楽しくないけど、公安局につかまりたくないからしょうがないよ」

「ねえ、私がやってあげようか?」

「え~。キミかわいいの?」

「かわいいいかどうかは、部屋に行ってみればわかるじゃない?」

「でも、今、イッちゃったからな」

「バカねえ。私ならもっとうまくとばせてあげられるのに」

「残念!!そういえばさあ、さっきバーで一緒に飲んでいた404の台湾人が、寂しい寂しいっていって部屋帰ったよ。電話してみれば?」

「あら、そう?じゃあ、してみようかしら。」

ガチャン。

「円さん行きますよ!!」

「何?」

「張り込みです。女の子かわいいか確認しないと。」

「はあ・・・」

僕はナカタ君と一緒に階段をかけおりて、404のドア前に立った。

丁度、部屋の中で電話のベルがなるのが聞こえた。

ナカタ君はドアに耳をつけて話を聞いている。

「きますよ!!きますよ円さん!!階段に戻りましょう。女の子が上の階から来るか、下の階から来るかわからないから、円さんは上を見張って、もし女の子が来たら下におりてきて、僕等はいったん3階まで一緒におりましょう。下は僕が見ていて、女の子が来たら上に戻りますから。」

そうして僕等は4階の踊り場と5階の踊り場にわかれて、女の子が来るのを待った。

「来ましたよ!!」

ナカタ君がこちらにあがってくると言った。

僕等は下を見た。

黒のタンクトップにジーンズのミニスカ姿の女が階段を上って来る所だった

「呼ばなくてよかった・・・・」

ナカタ君が言った。

「あのさ、ディスコで客捕まえられなかったこと自体が、美人ではないって事を証明してると思うよ」

「それもそうですね」

僕等は部屋からコーラを持ち出して、踊り場で飲みながら待ったが、女の子は台湾人の部屋に入ったまま、でてこない。

15分ほどすると台湾人の部屋のドアが開いて、「開けないで下さい」と書いた札をドアノブにかけて、ドアを閉めた。

「円さん。商談が成立したようですね。朝までやるつもりです」

「そうだね」

「僕は部屋に帰って、10分おきに無言電話をかけますよ」

「・・・・・」

「んじゃ、お休みなさい」

「・・・・・」

僕はナカタ君を見送ってから、台湾人の部屋の前に行った。

そして「開けないで下さい」を裏返して「すぐに掃除してください」に変えると自分の部屋に戻って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、夜10時半になると部屋に電話が複数かかってきた。

それをナカタ君にいうと、「今夜から僕も11時まで円さんの部屋につめます」と言い出した。

10時になるとビールをもったナカタ君があらわれ、部屋で待機をはじめた。

10時半きっかりになると電話がなった。もちろんナカタ君が出た。

「何してるの?」

「打飛機!!」

フロントや、交換オペレーター、各階の服務員と仲のいい僕は、ナカタ君に言われて4階の台湾人が一人でとまっている部屋をいくつか聞いておいた。

ナカタ君は、この前とまったく同じ要領で台湾人の部屋を教えてあげていた。

そして僕等はその部屋のドアへと走り、電話で商談が進んでいるのを確認すると踊り場で待ち伏せして、女の子の容貌をチェック。

そしてまた「開けないで下さい」の札が下がると、それを「すぐに掃除して下さい」にひっくり返して部屋に帰った。

翌日、翌々日、ぼくらはまったく同じ事をした。

そのたびにかけて来る女の子は違った。

だが、さらに翌日になると、電話してくる女の子の後ろで別の女の子の笑い声が聞こえるようになり、しかも一人の女の子に部屋を教えてあげると僕等が部屋に帰って来る頃、また別の女の子から電話がかかってくるようになった。

もちろんナカタ君が出て、別の台湾人の部屋を教えてぼくらは女の子をチェックして札をひっくり返して、部屋に戻り寝た。

12時以降は電話はかかってこなかった。

交換機で、きちんとつながらないように設定してあるからだ。

その週の土曜日はすごかった。

11時にかかってきた最初の電話の女の子は、「打飛機先生(ミスターひとりHとでも訳すか?)はいる?」と言ってきた。

後ろでは何人もの女の子の笑い声がしている。

ナカタ君は喜んで中国語でエロトークをしたあと、台湾人が一人で泊まっている部屋番号を教えた。果たして彼の会社は、会社が経費を全部もって北京大学に留学させて彼におぼえさせた中国語が、夜の姫君達とのエロ電話トークに使われていて、納得できるのか?

僕等が確認に行こうとすると、また電話がなった。

「打飛機先生はいる?」

ナカタ君はまたしてもエロトークをして別の台湾人の部屋を教えた。

続けざまに「打飛機先生」への電話がやってきて、6人目を紹介したところで、電話がこなくなった。

「なんか凄いね」

「円さん。僕が思うに、これはホテルもつるんでいますね。売春婦はかっこうでわかるから、ここに泊まっていて、ホテルが知らない訳がない。きっとホテル筋の売春婦ルートにこの部屋の打飛機先生に電話すると客を紹介してもらえるという噂が広がっているんじゃないでしょうか?」

「それっておれの部屋?」

「そうなりますが・・・・あっ!!今日の成果を見に行きましょうよ!!」

ナカタ君は、僕の年間契約している部屋がポン引きのような仕事していると思われて嫌がっているのに気づいたのか、急に話題をそらした。

ぼくらは4階におりていったが、見事なまでに6部屋「あけないでください」と札がかかっていた。

「う~ん。頑張った甲斐がありましたね」

「まあ、そうだね」

「これで女の子達も台湾人から高いギャラもらえて、台湾人も若い女の子と一晩寂しくない夜を過ごせて、大満足です。僕たちはなんていいことをしてしまったんだ」

確かにそうかも。

僕等は一部屋ずつドアに耳をつけて部屋の中の音を確認したが、とくにみだらな音声ははいってこなかった。

もちろん二人で笑いながら6つの部屋の「あけないでください」と書いた札を「すぐに掃除してください」にひっくり返して部屋に戻ったのはいうまでもない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

元々本社の北京事務所からヘルプで派遣されていたナカタ君は、いったん北京に戻ることになった。

お昼を皆で一緒に食べると、北京へのお土産に生きた青蟹を3杯もって、午後の飛行機で彼は北京にむかった。

別のホテルで夕食をして、部屋に帰り、8時過ぎに冷たいモノでもないかと冷蔵庫を開けると、空なのに気づいた。

1階の売店で椰子の実ジュースとコーラを何本か買い、部屋に戻ろうとするとフロントのサブマネージャーの雪玲に呼び止められた。

「円さん。ちょっとちょっと」

雪玲は小柄で肌の白い、メガネをかけた地味なタイプの女の子だ。

だが仕事は真面目で、大抵のことは彼女に頼んでおくときちんとやっておいてくれる。

「何?」

「最近、夜になると悪いことしてない?」

「さあ?」

『今朝、「掃除して下さい」の札見て服務員が掃除に入るとねえ』

「はあ」

「けっこう面倒な事になってたのよ」

「なるほど」

『お客さんは「あけないでください」にして寝たっていうのだけど』

「ふむふむ」

「まさかそれをひっくり返したりはしてないわよね?」

「誰が?」

僕は雪玲の顔をみながら言った。

「あなた、もしくはナカタがよ」

雪玲も僕の顔を見ていった。

「う~んナカタならやるかもしれない。でもさ、面倒な事って、どうせ女を部屋にひっぱりこんでたってことでしょ?犯罪行為が、このホテルを舞台におこなわれているのがわかってよかったじゃん!!取り締まれよ。派手に」

当時若年でこの町で一番の規模の日系企業にやってきた僕は、地元の公安局から間接的に監視されていた。当時某国の留学していたみゆちゃんから送られてくるシモネタ国際郵便は、すべて一度開封したあとがあったし、この一年後には、この雪玲から、監視対象だったことを告げられることになるのだ。

そんな僕にとって、毎晩誘いをかけてくる夜の姫君は煩わしいばっかりなのだ。

部屋にいれれば、次の日には董事会(要するに会長にあたる人達の僕の合弁会社における最高意志決定機関だ)の査問にかけられ、国外退去を命じられるのは間違いない。

雪玲は困ったように僕の顔を見た。

やっぱり、彼女達が泊まっているのはホテル側も承知の上なのだ。

何故台湾人が泊まっている、4階だけ10時を過ぎると服務台に服務員がいないのか納得できた。

「まあ、ナカタが帰ってきたら、やらないように言っておくよ。」

僕はそういうとフロントのカウンターを離れた。

その時。

僕の目の隅に二階のレストラン、三階のディスコにつづく中二階のテラスのところに僕が中国に来てからはじめて見るゴージャスなものが現れた。

1990年代初等の中国は今とは違う。

共産主義国家であり、労働者の国だ。

だが、中二階のテラスにたっている女性が来ていたのはチャイナドレスでもなければ、人民服でもなかった。

彼女が身にまとっていたのは、僕がマンガの『ベルサイユのばら』で当時の貴族が着ているのしかみたことのない、純白の、腰が思いっきりふくらんだドレスだったのだ!!

彼女はテラスから僕と雪玲を見下ろしていた。

そう、まるで共産主義国家の中国にタイムマシンで迷い込んでしまったマリー・アントワネットのように・・・・・・

To be continue.
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2005.07.04

ベルサイユに萌えて・・・・・(上)

レストランにつづく二階のテラスに現れた美女。いつしか僕等は彼女をベルサイユと・・・

80年代末の中国の地方都市では売春婦をみかけることはほとんどなかった。

北京や上海にはいると聞いたが、それでも当時中国で女性を買うのはいつ公安が踏み込んでくるかわからないリスキーな事だと言われていた。

僕が住んでいた地方都市でも売春婦が現れるようになったのは、いわゆる天安門事件の後だ。

彼女たちは昼間は大抵ホテルのコーヒーショップで時間をつぶしていた。

僕が休日に買い出しのついでにチョコレートサンデーを食べに行く海沿いのホテルのコーヒーショップも、極めて雰囲気の悪い場所になってしまった。

そんななかで、僕がゆったりとした気分で飲み食いできるのはかつてニクソンも泊まったという高台のホテルのフレンチレストランくらいになってしまった。

僕は休日になると、僕等の工場にヘルプで来ていたナカタ君と待ち合わせて、そこで夕食をとることが多かった。

「円さん。今日僕、ビーチに泳ぎに行ったんですが、凄いもの見たんですよ。」

彼は僕の会社が合弁している日本の大手企業から北京大学に語学研修に派遣され、天安門事件で北京の大学生活から、僕等の工場の立ち上げのヘルプにやってきたのだった。

「またロシア人のビキニ女?」

僕は笑いながら言った。

その前の週に僕等は大学近くのビーチにでかけた。

もちろん大学近くのビーチなら女子学生が一杯砂浜にいると思ったからだ。

だが、何故か海水浴客はほとんどいなかった。

僕等は11時頃にいったのだが、昼間に40度前後になるこのあたりでは、地元の人は夕方にならないと海水浴はしないのだった。

それを知らなかった僕等二人は海辺で悲しく太陽に焼かれていた。

するとビーチのはるか向こうから二人組の女性が歩いてくるのが見えた。

「ナカタ君。女だよ」

僕はナカタ君に言った。

「かわいいですか?」

彼は背中を日に焼きながら見もせずに聞いた。

「わかんないけどビキニみたい」

ナカタ君はがばっと起きあがった。

そして小さく見える二人組を見て言った。

「確かにビキニだ。しかもこっちに歩いてくるっ!!」

僕等は興奮して彼女たちが来るのを見守った。

ふとタシロ君の海パンを見るとすでに・・・・・

だが、5分後に彼の海パンはおとなしくなっていた。

「ニイハオ!!」と目をあわせるなり言ってきた二人組は確かにビキニを着ていて、しかも金髪だった。

しかし、凄まじいビヤ樽体型だったのだ。

ナカタ君が中国語で聞くとソビエトからの留学生だという。

僕等は引きつり笑いを浮かべながら、二人の巨体を見送ったのだった。

「違いますよ。先週で懲りた僕は、今日は島のビーチにいったんです」

「きれいだった?」

「汚いですよ。中国なんだから」

今は大分きれいになったが、そのころはトイレを始め、中国の衛生状況は僕等日本人にとって絶望的な状況だった。

「でもそんなことはどうでもいいんです。泳ぎ疲れた僕は、フェリーで戻ると、あのホテルのコーヒーショップでアイスクリームを食べることにしたんですよ」

「ふ~ん」

僕はエスカルゴをトングでつまみながら中身をほじくり出した。

ここのホテルはニクソンも泊まっただけあり、出される洋食も極めてまっとうなものだ。僕等はこのホテルを天国。僕等が住んでいるホテルや、海辺のホテルを人間界。会社も含め、そのほかを地獄と呼んでいた。そのランク分けは主として不快感を感じずに使えるトイレがあるかどうかでなされていた。

だがまっとうな洋食が食べられるこのホテルは別格だった。中国とはいえ、5星である。それに中国人は絶対ここでは食事をしない。

従い取引先などの見知った顔に出くわす可能性もない訳だ。

「そしたらね、僕が座った正面のテーブルに小姐がすわったんです。」

小姐というのは中国語で若い女性をさす。シャオチェと発音する。

「で、僕がアイスクリームを食べていると、やたらと視線をおくってくるんですよ」

僕はエスカルゴを全部食べ終わると、殻のなかに残ったガーリックバターソースをエスカルゴの下に敷いてあるマッシュポテトにかけて食べ始めた。

多分正しい食べ方ではないが、こうすると美味しいのだ。

「それでですねえ、目があってしばらくすると彼女どうしたと思います?」

「さあ~」

「テーブルの下の股間をゆっくり開きだしたんです」

彼の目は興奮して輝いていた。

「でもパンツはいてるでしょ?」

「違うんですよ!!それがっ!!彼女はパンツはいてなかったんです!!」

ナカタ君は急に大きな声を出して言った。

「僕がゆっくりと開く股間から目がはなせないでいると、段々黒いモジャモジャが見え始めて、そのうちにモジャモジャの中にピンクっぽい部分も・・・」

そう言ったナカタ君の鼻から、まるでマンガのように赤い筋が降りてきた。

「鼻血でてるよ・・・・・」

僕はナカタ君に言った。

「え?」

彼は鼻の下をぬぐうと、赤くなった手を見ていった。

「本当だ・・・・」

ナカタ君は、あわてて膝の上においたナプキンを鼻にあてた。

「トイレ行ってきます!!」

ナプキンを鼻にあてたまま、彼はトイレに走った。

フロアマネージャーがやってくると「彼はどうしたの?」と英語で言った。

「一週間ぶりに中華以外のもの食べたんで鼻血がでちゃったみたい」

僕はこたえた。

フロアマネージャーは笑うと、「じゃあ、メインのハンバーグステーキは彼がもどってくるまでもうすこしオーブンにいれておくわね」といってキッチンへ行った。

しばらくして戻ってきたナカタ君に僕は笑いながら言った。

「今の鼻血で本当なのはわかったよ。」

「本当にきまってるじゃないですか!!でね、じっくりぼくにみせつけるようにしたあと、彼女は股を閉じて僕を見たんです。」

「うんうん。」

「そいで、こっちに歩いてくると、マッチかしてくれない?って。」

「なるほど。」

「でも僕、タバコ吸わないから、マッチもってなかったんですよ。で、ないっていったら、そのまま会計すませてどっかいっちゃいました。」

「そりゃ残念だ。」

「でもよかったですよ。タダで見れたもん。」

それは微妙に生殺しのような気がするのだが・・・・・・

その時僕等のテーブルにフロアマネージャーがハンバーグステーキをもってきた。

「僕のには卵がのってない・・・・」

ナカタ君が僕のハンバーグステーキと自分のハンバーグステーキを見比べていった。

確かに僕のハンバーグステーキには、サニーサイドアップの目玉焼きがのっているが、ナカタ君のハンバーグステーキにはのっていなかった。

彼がフロアマネージャーを呼びつけた。

「なんで僕のハンバーグには卵がのってないんだ!!」

フロアマネージャーは二つの皿を見ていった。

「こちらのお客様のは単品注文でのハンバーグステーキで、あなたのはセットメニューのハンバーグステーキですから。」

確かにセットメニューだとエスカルゴは4つしかつかないが、単品だと6つなので、僕はすべてをアラカルトで頼んだ。

一方ナカタ君はメインがハンバーグになっているセットメニューを頼んだのだった。

「そんなのは納得がいかない!!だって卵なんて1元もしないじゃないか!!僕も彼も同じハンバーグを頼んで、なんで彼にだけ卵がつくんだよっ!!」

「ですからそれは・・・・」

「ひどい!!ひどすぎる!!僕等は友達じゃないか!!」

確かに週二回くらいは通う僕等は、フロアマネージャーとは仲良しだった。

彼女がいるときは、ウエイトレスの手があいていても僕等のテーブルには彼女が料理を運んでくれていた。

「そうだけど、これは厨房でのきまりだから」

「厨房?だったら僕は厨房にいく!!厨房に断固ぼくのお皿にもたまごをのせるよう交渉してくる!!」

そういうとナカタ君は、自分のお皿をもってたちあがり厨房に入っていった。

フロアマネージャーがあわてて後を追う。

しばらくするとニコニコしながらナカタ君が厨房から出てきた。

お皿の上には目玉焼きがのせられていた。

「厨房で、言ってやったんです。僕は日中友好の為に北京大学に留学したのに天安門事件で北京大学を追い出された。大学でできた友達も何人か行方不明なままだ。でも、中国に対する気持はかわらないのでそのまま日本にはかえらずに、ここで工場建設の手伝いをしている。なのに君らはこの僕にアラカルトで頼まなかったという理由で、友達のハンバーグにはある卵焼きを僕のハンバーグにはつけないというのか?それが共産党の精神か?って」

「そしたらなんだって?」

『「本当か?」っていうから、北京大学の学生証とここの会社の名刺見せてやりました。すぐに「そりゃ大変だったな。ここは北京とは違う。安心してくれ。卵もつけてやるから」といって、のっけてくれました。』

「すごいね。卵一つのために」

「円さんだって、さっきマッシュポテトにエスカルゴのガーリックバターかけて食べていたじゃないですか。大事なのは格好よりストレスをいかにして感じないようにするかです。ダメもとでこれくらいのことを主張できないと中国では生きていけませんよ。」

するとフロアマネージャーが、名刺をもってぼくらのテーブルに来た。

「先ほどは失礼を。宜しかったら名刺いただけますか?」

僕は名刺を彼女に渡した。

「もしよろしければ、企業会員の登録をいかがですか?宿泊料もお食事も20%オフになりますけど」

「今から?」とナカタ君。

「はい。正式なホテルとの契約は、後日会社の方へお伺いいたしますが、レストランとの仮契約であれば円海さまのサインいただければ。」

「レストランの契約の方は今僕がサインしますけど、ホテルとの契約は社長に確認とった上でってことになりますけど?」

「わかりました。今、書類をお持ち致します」

「得しちゃいましたね。」

ナカタ君はハンバーグの上で黄身をつぶしてから一切れ口にして「うま~」と言った。

確かに中国では、過度の要求ができるぐらいでないとダメらしい。

「よかったね。黄色いぬるぬるもピンクのヌメヌメも今日はゲットできて。」

「まあ、こんなもんですよ。中国では奥ゆかしさは悪です。大阪のおばちゃんくらいの図々しさで丁度いいんですよ」

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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