ベルサイユに萌えて・・・・・(上)
レストランにつづく二階のテラスに現れた美女。いつしか僕等は彼女をベルサイユと・・・
80年代末の中国の地方都市では売春婦をみかけることはほとんどなかった。
北京や上海にはいると聞いたが、それでも当時中国で女性を買うのはいつ公安が踏み込んでくるかわからないリスキーな事だと言われていた。
僕が住んでいた地方都市でも売春婦が現れるようになったのは、いわゆる天安門事件の後だ。
彼女たちは昼間は大抵ホテルのコーヒーショップで時間をつぶしていた。
僕が休日に買い出しのついでにチョコレートサンデーを食べに行く海沿いのホテルのコーヒーショップも、極めて雰囲気の悪い場所になってしまった。
そんななかで、僕がゆったりとした気分で飲み食いできるのはかつてニクソンも泊まったという高台のホテルのフレンチレストランくらいになってしまった。
僕は休日になると、僕等の工場にヘルプで来ていたナカタ君と待ち合わせて、そこで夕食をとることが多かった。
「円さん。今日僕、ビーチに泳ぎに行ったんですが、凄いもの見たんですよ。」
彼は僕の会社が合弁している日本の大手企業から北京大学に語学研修に派遣され、天安門事件で北京の大学生活から、僕等の工場の立ち上げのヘルプにやってきたのだった。
「またロシア人のビキニ女?」
僕は笑いながら言った。
その前の週に僕等は大学近くのビーチにでかけた。
もちろん大学近くのビーチなら女子学生が一杯砂浜にいると思ったからだ。
だが、何故か海水浴客はほとんどいなかった。
僕等は11時頃にいったのだが、昼間に40度前後になるこのあたりでは、地元の人は夕方にならないと海水浴はしないのだった。
それを知らなかった僕等二人は海辺で悲しく太陽に焼かれていた。
するとビーチのはるか向こうから二人組の女性が歩いてくるのが見えた。
「ナカタ君。女だよ」
僕はナカタ君に言った。
「かわいいですか?」
彼は背中を日に焼きながら見もせずに聞いた。
「わかんないけどビキニみたい」
ナカタ君はがばっと起きあがった。
そして小さく見える二人組を見て言った。
「確かにビキニだ。しかもこっちに歩いてくるっ!!」
僕等は興奮して彼女たちが来るのを見守った。
ふとタシロ君の海パンを見るとすでに・・・・・
だが、5分後に彼の海パンはおとなしくなっていた。
「ニイハオ!!」と目をあわせるなり言ってきた二人組は確かにビキニを着ていて、しかも金髪だった。
しかし、凄まじいビヤ樽体型だったのだ。
ナカタ君が中国語で聞くとソビエトからの留学生だという。
僕等は引きつり笑いを浮かべながら、二人の巨体を見送ったのだった。
「違いますよ。先週で懲りた僕は、今日は島のビーチにいったんです」
「きれいだった?」
「汚いですよ。中国なんだから」
今は大分きれいになったが、そのころはトイレを始め、中国の衛生状況は僕等日本人にとって絶望的な状況だった。
「でもそんなことはどうでもいいんです。泳ぎ疲れた僕は、フェリーで戻ると、あのホテルのコーヒーショップでアイスクリームを食べることにしたんですよ」
「ふ~ん」
僕はエスカルゴをトングでつまみながら中身をほじくり出した。
ここのホテルはニクソンも泊まっただけあり、出される洋食も極めてまっとうなものだ。僕等はこのホテルを天国。僕等が住んでいるホテルや、海辺のホテルを人間界。会社も含め、そのほかを地獄と呼んでいた。そのランク分けは主として不快感を感じずに使えるトイレがあるかどうかでなされていた。
だがまっとうな洋食が食べられるこのホテルは別格だった。中国とはいえ、5星である。それに中国人は絶対ここでは食事をしない。
従い取引先などの見知った顔に出くわす可能性もない訳だ。
「そしたらね、僕が座った正面のテーブルに小姐がすわったんです。」
小姐というのは中国語で若い女性をさす。シャオチェと発音する。
「で、僕がアイスクリームを食べていると、やたらと視線をおくってくるんですよ」
僕はエスカルゴを全部食べ終わると、殻のなかに残ったガーリックバターソースをエスカルゴの下に敷いてあるマッシュポテトにかけて食べ始めた。
多分正しい食べ方ではないが、こうすると美味しいのだ。
「それでですねえ、目があってしばらくすると彼女どうしたと思います?」
「さあ~」
「テーブルの下の股間をゆっくり開きだしたんです」
彼の目は興奮して輝いていた。
「でもパンツはいてるでしょ?」
「違うんですよ!!それがっ!!彼女はパンツはいてなかったんです!!」
ナカタ君は急に大きな声を出して言った。
「僕がゆっくりと開く股間から目がはなせないでいると、段々黒いモジャモジャが見え始めて、そのうちにモジャモジャの中にピンクっぽい部分も・・・」
そう言ったナカタ君の鼻から、まるでマンガのように赤い筋が降りてきた。
「鼻血でてるよ・・・・・」
僕はナカタ君に言った。
「え?」
彼は鼻の下をぬぐうと、赤くなった手を見ていった。
「本当だ・・・・」
ナカタ君は、あわてて膝の上においたナプキンを鼻にあてた。
「トイレ行ってきます!!」
ナプキンを鼻にあてたまま、彼はトイレに走った。
フロアマネージャーがやってくると「彼はどうしたの?」と英語で言った。
「一週間ぶりに中華以外のもの食べたんで鼻血がでちゃったみたい」
僕はこたえた。
フロアマネージャーは笑うと、「じゃあ、メインのハンバーグステーキは彼がもどってくるまでもうすこしオーブンにいれておくわね」といってキッチンへ行った。
しばらくして戻ってきたナカタ君に僕は笑いながら言った。
「今の鼻血で本当なのはわかったよ。」
「本当にきまってるじゃないですか!!でね、じっくりぼくにみせつけるようにしたあと、彼女は股を閉じて僕を見たんです。」
「うんうん。」
「そいで、こっちに歩いてくると、マッチかしてくれない?って。」
「なるほど。」
「でも僕、タバコ吸わないから、マッチもってなかったんですよ。で、ないっていったら、そのまま会計すませてどっかいっちゃいました。」
「そりゃ残念だ。」
「でもよかったですよ。タダで見れたもん。」
それは微妙に生殺しのような気がするのだが・・・・・・
その時僕等のテーブルにフロアマネージャーがハンバーグステーキをもってきた。
「僕のには卵がのってない・・・・」
ナカタ君が僕のハンバーグステーキと自分のハンバーグステーキを見比べていった。
確かに僕のハンバーグステーキには、サニーサイドアップの目玉焼きがのっているが、ナカタ君のハンバーグステーキにはのっていなかった。
彼がフロアマネージャーを呼びつけた。
「なんで僕のハンバーグには卵がのってないんだ!!」
フロアマネージャーは二つの皿を見ていった。
「こちらのお客様のは単品注文でのハンバーグステーキで、あなたのはセットメニューのハンバーグステーキですから。」
確かにセットメニューだとエスカルゴは4つしかつかないが、単品だと6つなので、僕はすべてをアラカルトで頼んだ。
一方ナカタ君はメインがハンバーグになっているセットメニューを頼んだのだった。
「そんなのは納得がいかない!!だって卵なんて1元もしないじゃないか!!僕も彼も同じハンバーグを頼んで、なんで彼にだけ卵がつくんだよっ!!」
「ですからそれは・・・・」
「ひどい!!ひどすぎる!!僕等は友達じゃないか!!」
確かに週二回くらいは通う僕等は、フロアマネージャーとは仲良しだった。
彼女がいるときは、ウエイトレスの手があいていても僕等のテーブルには彼女が料理を運んでくれていた。
「そうだけど、これは厨房でのきまりだから」
「厨房?だったら僕は厨房にいく!!厨房に断固ぼくのお皿にもたまごをのせるよう交渉してくる!!」
そういうとナカタ君は、自分のお皿をもってたちあがり厨房に入っていった。
フロアマネージャーがあわてて後を追う。
しばらくするとニコニコしながらナカタ君が厨房から出てきた。
お皿の上には目玉焼きがのせられていた。
「厨房で、言ってやったんです。僕は日中友好の為に北京大学に留学したのに天安門事件で北京大学を追い出された。大学でできた友達も何人か行方不明なままだ。でも、中国に対する気持はかわらないのでそのまま日本にはかえらずに、ここで工場建設の手伝いをしている。なのに君らはこの僕にアラカルトで頼まなかったという理由で、友達のハンバーグにはある卵焼きを僕のハンバーグにはつけないというのか?それが共産党の精神か?って」
「そしたらなんだって?」
『「本当か?」っていうから、北京大学の学生証とここの会社の名刺見せてやりました。すぐに「そりゃ大変だったな。ここは北京とは違う。安心してくれ。卵もつけてやるから」といって、のっけてくれました。』
「すごいね。卵一つのために」
「円さんだって、さっきマッシュポテトにエスカルゴのガーリックバターかけて食べていたじゃないですか。大事なのは格好よりストレスをいかにして感じないようにするかです。ダメもとでこれくらいのことを主張できないと中国では生きていけませんよ。」
するとフロアマネージャーが、名刺をもってぼくらのテーブルに来た。
「先ほどは失礼を。宜しかったら名刺いただけますか?」
僕は名刺を彼女に渡した。
「もしよろしければ、企業会員の登録をいかがですか?宿泊料もお食事も20%オフになりますけど」
「今から?」とナカタ君。
「はい。正式なホテルとの契約は、後日会社の方へお伺いいたしますが、レストランとの仮契約であれば円海さまのサインいただければ。」
「レストランの契約の方は今僕がサインしますけど、ホテルとの契約は社長に確認とった上でってことになりますけど?」
「わかりました。今、書類をお持ち致します」
「得しちゃいましたね。」
ナカタ君はハンバーグの上で黄身をつぶしてから一切れ口にして「うま~」と言った。
確かに中国では、過度の要求ができるぐらいでないとダメらしい。
「よかったね。黄色いぬるぬるもピンクのヌメヌメも今日はゲットできて。」
「まあ、こんなもんですよ。中国では奥ゆかしさは悪です。大阪のおばちゃんくらいの図々しさで丁度いいんですよ」
To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
