2008.01.21

円海VS人民解放軍(4)

「36式ですよ」

よくわからんけど、どうやらアメリカ製のM3のコピーらしい。

中国軍って、こんなものまでコピーしてたんだろうか?

「これってフルオートで撃てるの?」

「もちろんです。」

軍人さんはニコリと笑ってそういった。

注意しなければならない。

M3がどのくらいの速度でフルオート射撃できるかわからないが、小刻みに撃っていっても、30秒かそこいらでマガジンがカラになるのは間違いない。

料金は弾丸一発につきいくらだから、我を忘れて夢中になったりしたら、いったいいくらになるかわかったもんじゃない。

「どうしますか?やめますか?」

考え込んでいる僕に軍人さんはそういうと、ニヤリとバカにしたような笑顔をむけた。

なんだこのやろ~っ!!

若さ故の過ち?むかっとした僕は「やりますよ。とりあえずマガジン二つ分弾下さい」といって、36式短機関銃を受け取った。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

統計員と兵隊さん二人を従えて、拳銃用のレンジに僕が向かおうとすると、兵隊さんが「違う、違う」という。

短機関銃用のレンジがあるのかと、二人についていくと、つれていかれたのはなんと最初にAKを売ったライフル用のレンジだった。

「ターゲットは?」

そうきくと、100m先に人型の標的があがってきた。

「あれです。」

僕はきわめて不愉快な顔をした。

そりゃ当然だ。

サブマシンガンの弾丸は基本的に拳銃弾と同じだ。

つまり拳銃の場合普通は20m、がんばって狙って50m先にあてられるかどうかだから、フルオートのサブマシンガンでは50m先だって打ち抜けるもんではない。

それを100m先ってど~よ?

ランボーだって無理だぞ?

こいつら軍人なのか?本当に?

そうおもって銃をもっている兵隊の顔を見ると、ニヤニヤしている。

マガジンをもっているもう一人の顔をみると、やはりニヤニヤしている。

こいつら・・・承知の上でやってやがるなっ!!

僕はとりあえず統計員に最初のマガジンを撃たせる事にした。

「大丈夫かなあ・・・」

統計員は不安そうな声をだしながらも、顔は嬉しそうだった。

そりゃそうだ。

ミリタリー ヲタなら国籍をとわず、フルオートの銃を撃つときには胸が高鳴る。

統計員は慎重に狙いをつけると、引き金を絞った。

ガガガガガガッっと続けて音がしたと思うと、すぐに射撃音はやんだ。

「ひょおお~」

統計員は驚いた顔をしてこちらを見た。

あたったようには見えない。

兵隊さんが双眼鏡で除き「全部はずれてる」といった。

う~ん。標的のさらに先は崖になっているのだが、そこに土煙があがった様子もなかったぞ?

もちろん地面にあたった様子もない。

ってことはあれだけ慎重に狙って撃ったのに、反動で弾丸は崖を飛び越えて飛んでいったということだろうか?

「はい。」

とりあえず満足そうな顔をした統計員が、僕に銃を渡した。

「え?もういいの?」

「はい。もう終わりです。」

「え?」

僕がマガジンを抜き出すと、たしかにカラになっていた。

マガジンがカラになるまで数秒かからなかったぞ・・・・

僕に次のマガジンを渡した兵隊さんの顔は、またしてもニヤニヤした顔だ。

やばいぞ!!

当たらずにやめれば「金が惜しいのかこのヘタレ!!」と思われる。

当たるまでやれば、あっというまに1万円くらいは余計にかかる。

しかも問題なのは、僕の腕ではなく、このサブマシンガンの性能上の問題で100m先のターゲットを撃抜けることはまずありえないということだ。

となると、さんざん金を使って「このへたくそめ!!」と思われてすごすごと帰ることになるってことだ・・・・・

なってこったいっ (>_<)

もちろん今から「サブマシンガンで100m先を撃ち抜けるはずないだろ」といって、ショットガンの時のように50m先にコーラのビンを出してもらうことはできるだろう。

しかし、性能上100m先は打ち抜けないってことは、こいつらが一番良く知っているのだ。

知っていてあえて日本人の僕に「あててみろ」と挑戦してきているのだ。

僕にだって日本男子としての意地がある。

こんなへなちょこのだらしない格好した兵隊風情に、なめられてたまるかっ!!

 

僕は黙って新しいマガジンを銃に押し込むと、スチール製の銃床を肩につけて、慎重にターゲットの腹の部分を狙って軽く引き金をひいた。

ガガッ!!と音がして、ターゲットの後方の崖の上の方に着弾した土煙があがった。

腹狙って撃ったのに、あんなとこに着弾するのか(-_-;)?

当然の如くターゲットには一発もかすってなかった。

ニヤニヤ

ニヤニヤ

二人の兵隊さんがにやけた顔をして僕を見ている。

気がつくと、斜め後ろにはいつの間にか軍人さんがたって、僕を見ていた。

流石にニヤニヤはしてないが、頬にはいかにも楽しそうといったシワを浮かべていた。

くっそおお~っ!!

だが、ここで冷静さを失ったら負けだ。

弾丸を追加して、しかも当てられないという最悪のパターンにはまってしまう。

僕はもういちどレンジをながめて、崖の着弾した位置を思い出した。

それはターゲットのほぼ真上だ。

ということは、弾道は上にはずれるが、左右にはずれていないということだ。

だとしたら、狙いを思いっきりターゲットの手前につけて、そこから上にむけて掃射していけば、当たるんじゃないだろうか?

理屈からいえばそうだ。

マガジンには、まだ15発くらいは残っているはずだから、手前の地面を撃って、着弾の土煙をみながら銃口をあげていき、後ろの崖に着弾の土煙があがったら銃口を下げる。

いける!!これならいけるぞ!!

僕は前足のつまさきをターゲットの方向に向けて、銃床を肩につけると、やや腰を落とし気味に構えた。

狙いはターゲットの10mほど手前にした。

先ほどの崖への着弾の位置からして、これくらい手前を狙えば、間違いなく初弾はターゲットの手前の地面に着弾するはずだ。

息をとめて、ゆっくりと引金を絞る。

初弾は案の定、ターゲットの7mほど手前に土煙をあげた!!

フルオートの銃声のなか、銃口を上に小刻みに上にあげる。4m前、2m前と土煙があがり、ついには土煙は見えなくなったので、その位置で銃口を固定して銃声が消えるまで引金を絞りつずけた。

これなら当たってるだろ?

兵隊さんの一人が双眼鏡をのぞき込んだ。

「あ、あたってる・・・・」

僕が双眼鏡を除いてみると、三発が命中していた。

しかも腹、胸、頭に一発ずつだ。

「うひゃ!!凄いな。三発もあたってるじゃないですかっ!!」

双眼鏡をわたされた統計員が僕の顔を見て笑いながら言った。

その声をききながら、マガジンに弾をつめていた兵隊が双眼鏡をのぞき「おおっ・・・」とため息のような声を出した。

残念だったな。そんなマガジンもういらないから。

もう終わりですからっ!!

「まあ、民間人といえども、これくらいのことはできないと、アメリカをはじめとして世界を相手に4年間も戦争はできんわけだな。良いか悪いかは別として。これが日本人の実力ってものなのだよ。」

そういうと、僕は笑顔で短機関銃を兵隊さんに返した。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

フロントで日本円にして一万円ちょいのお金を払い、僕等はまたせていたタクシーに乗り込んだ。

タクシーを切り返すときに、入り口のところに軍人さんが立って僕等のタクシーを見ているのが見えた。

見送りとかいうのではなく、単にみている感じだ。

「勝ったな。人民解放軍のアホどもに完璧に勝った。」

僕はタクシーのなかでそうつぶやいた。

僕等を乗せたタクシーは、夕暮れの山をのろのろと街に向かって下りていった。

 

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


2008.01.14

円海VS人民解放軍(3)

100m先のターゲットをびしばし撃ち抜く僕に三つ星の軍人さんがはなしかけてきた。

「え~っと。日本人ですよ。」

僕は軍人さんの問いに答えた。

「日本人?」

「そう。日本の民間人です。」

「あなたも?」

軍人さんは僕と一緒の統計員に聞いた。

「いや、俺は中国人。」

とりあえず僕は財布から名刺を一枚取り出すと軍人さんに渡した。

とりあえず偉そうだし、この先、日本からの客がきたがるかも知れない。

そういう場所ではとりあえず偉い人に名刺をわたしておく。

それに変に怪しまれるのも面倒だ。

軍人さんは名刺の会社名と役職を読むと、僕の顔を見た。

日本人なんてはじめてみるよっていう表情をしている。

「なるほど。ゆっくり楽しんでいってください。」

軍人さんにしては如才ない感じだな。

とりあえず軍人さんはどっかにいってしまったので、僕等は拳銃をみせてもらった。

ところがここの拳銃は、どれも競技用の拳銃で面白くない。

僕は拳銃射撃はやめにすることにして、入り口のカウンターに戻ると、銀色に輝くモスバーグを指さした。

「あのショットガンを撃ちたい」

「え~っ あれはダメだ!!反動が強すぎる!!」

二人いた兵隊さんが同時に反対した。

「そりゃ反動が弱いって事はないだろうけど、撃てない程強くはないだろ?」

「いや、これは強い!!」

んな事言ったって、ショットガンなんて誰でも撃っているじゃね~か。

AK撃ててショットガン撃てない訳ない。

「もしかして弾がないの?」

「ある!!」

「整備してなくて、暴発するとか?」

「ちゃんとしてあるって!!」

「じゃあ飾り物で、撃たせるものじゃないのか?」

「撃たせますよ」

「じゃあ出して。弾は50ね。」

何をケチケチしてんだか?もしかするとこの銃は中国製じゃないから撃ったことなくて、銃口のでかさだけみて、反動がどうこうといっているのかもしれない。

飾ってあったモスバーグが外され、弾丸50発とともに射撃レンジに運ばれた。

今度はAKの時のような、マンターゲットを狙うのではなく、兵隊さんが昔懐かしいコーラの小瓶を三本横に並べてくれたのを撃つらしい。

「50mです。」

弾を込めて、コーラの小瓶を狙って見た。

この距離なら十分見える。

うん。良い感じだ。

とりあえず一番左のビンを狙って引き金を絞った。

心地よい反動がきて、コーラのビンが割れた。

「おおっ!!」

兵隊さん達が驚きの声をあげた。

やっぱこいつら撃ったことないんだな。

僕はスライドを動かし、2発目を撃った。

これも見事命中する。

三発目も命中。

するとビンを三本抱えた兵隊さんがレンジにかけ出してきて、また横に並べてくれた。

そこからはガンガンうちまくったが、一発も外れない。

いっくら散弾とはいえ、これ凄くね?

40発目を撃ち終わったとき、熱くなった銃身からかげろうが立ち、狙いがつけずらくなった。

おおっ!!

昔見たアニメのルパン三世で、ワルサーP38のルパンと、コルトパイソンをもった敵がサシで打ち合う話があった。

その時に、ルパンのワルサーは銃身が熱くなってかげろうがたってしまい、狙いがつけずらくなるのだが、敵のコルトパイソンはベンチレーターがついているので、それがなく、ルパンがピンチになるという・・・・

本当に40発撃っただけで、銃身からかげろうが立つんだね!!

44発目と45発目をつづけて外したので、僕は銃身を少しさますことにした。

2、3分待つと、かげろうもそれほど酷くはなくなり、僕は残りの五発を命中させて、ショットガンの射撃を終えた。

50発で2発外したとなると、命中率は96%!!

我ながらあっぱれな記録だ。

フロントに銃を返しにいくと、そこにはさっきの軍人さんが待っていた。

「今度はこれを試してみませんか?」

彼がフロントのテーブルにおいたのは、恐ろしく不格好なサブマシンガンだった。

「え~これってM3?グリースガン?」

To be continue.

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see you (^_-)


2007.12.17

円海VS人民解放軍(2)

体調がもどりません(-_-;)

でも来週は更新する予定(01/06)

年末までお仕事です。更新は年明けになります<(_ _)>(12/25)

めっちゃぼろいクラウンのタクシーは迷いながら山道を登っていく。

目指す射撃場は植物園の中にあるのだが、植物園自体が一つの山になっているという訳のわからん場所で、ある意味流石中国・・・その気になれば貴重な植物は盗み放題。

もっとも僕は植物に関してはなんの関心もなかったので、貴重か貴重じゃないか以前の、これはなんという植物なのかがわからないから意味がない。

植物園内を掃除しているおじさんにきいたりして、ようやく山道を登り切ると、そこには確かに射撃場らしきものがあった。

うん。これは射撃場だ。間違いなく、僕のイメージにある射撃場だ。

統計員とタクシーを降りる前に、僕はタクシーの運転手にきいた。

「1時間50元でまっててくれない?最長2時間で。1時間過ぎたら10分でも20分でも追加の50元払うから」

運転手は気前よくいいよと返事をした。

この街にはタクシーが多いし、街のはじから端までいっても15元とれるかとれないかだからガソリン使わないで2時間100元かせげるのは悪い取引ではない。

それに迷いながらきたので、僕等は帰り道がわからなくなっていた。

帰り道を歩いていくことになったら軽く1時間はかかりそうだし、電話でタクシーをよべるかどうかもわからない。

タクシーをまたせて、建物の中に入ると、入り口の右側にカウンターがあり、そこに3人の兵隊がすわっていた。

彼らの背後にはAK47や、競技用の拳銃、そして銀色に輝くモスバーグのM500ショットガンが大事そうに飾られていた。

う~ん。やっぱ非共産圏の銃があると射撃場らしくなってくるね。

「とりあえず中見せてもらっていい?何撃つかはそのあと決めるから」

そういって中を見学させてもらうと、エントランスを抜けて正面が200m以上はある屋外の広いライフル射撃場で、右は屋内の25m拳銃射撃場になってた。

この拳銃射撃場の先は屋外のアーチェリー場だ。

うんうん。これが射撃場だな。やった!!

カウンターに戻り、とりあえずAK47のライセンスモノの56式と弾丸を50発もらいレンジに出た。

二人の兵士が銃と弾丸の持ち運びについてくれるが、レンジ内では自由で、もちろん鎖で銃をつないだりはしない。

とりあえず僕は、撃ちたそうな顔をしている統計員にうたせてあげることにした。

ずっと先に人型のシルエットがでてきて、胸の位置に標的紙がついているのがわかった。

どうやら地下にシルエットを出し入れする通路みたいなのがあるらしい。

距離をきくと100mだという。

ちっせ~なあ~。

僕の視力じゃ標的は狙えるけど、中心はあてずっぽうで狙うしかない。

兵隊さんがマガジンを押し込み、統計員にわたすと、彼がセミオートで打ち出した。

今回もフルオートはできないようになっている。

まあ、一発いくらなので、ありがたいっていえばありがたい。

一生懸命狙ってうつ統計員だが、ターゲットには全然あたらず、ターゲットの背後にある崖のとんでもないところに土煙があがっている。

反動で銃口があがってしまっているらしい。

「ダメだ!!全然あたらない・・・」

10発ほど撃ったところであきらめた。

兵隊さんが銃を僕に渡した。

100m先のターゲットを慎重に狙い撃つ。

「あたった」

双眼鏡でターゲットを見ていた兵隊が言った。

僕は続けて打ち続けた。

マガジンの中の弾をすべて撃ち終えると、人型のシルエットがひっこみ、やがてモーター音がして、僕の横にいきなり標的紙がでてきた。

「おおっ!!」

ほぼ全弾が標的に命中していた。

中央にも5発くらい当たっている

すごいぜ!!オレ!!

中央の黒丸なんて見えてないのに!!

残りの20発に10発追加して、次のマガジンを一杯にして装着し、新たなシルエットが出てくるのを待っていると、なにやらきちんとした制服を着た軍人さんがやってきて僕の背後に立った。

肩には星が三つついている。

まだ若いけどえらいのかな?

大尉クラスなんだろうか?ここの責任者なのかも知れない。

シルエットが出てきたので、こんどはテンポ良く撃っていった。

すでになれてきていたので、結構楽しい。

AK47は反動がきついとどこかで読んだ気がするのだが、そんな事は全然なく、とても扱い易い感じだ。

他の銃撃ったことないのでわからないけど。

マガジンがカラになり、再度標的が出てきた

今度もきわめて優秀な成績で、流石に中央には2発しか入ってなかったが、ほとんどの弾が当たっている。

「まだ続けますか?」と兵隊さんが聞いたが、僕は「いや、別の試して見る」といって、とりあえずレンジを離れた。

すると後ろでずっと僕が撃つのをみていた三つ星の軍人さんが声をかけてきた。

「失礼ですが、どちらの部隊でしょうか?」

  

To be continue.

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2007.12.10

円海VS人民解放軍(1)

90年代に入って、中国では人民解放軍がビジネスに進出してきた。

まあ、その辺の事情はよくわからないのだけれども、人民解放軍が養殖したエビとか、製造したインスタントラーメンとかの話があちこちから出だした訳で。

っていうことは、人民解放軍って自給自足?なんか昔日本にあった屯田兵みたいなもんなの?などと思っていたのだけれども、もちろん僕はその辺の事を詳細に尋ねたりはしなかった。

今とは違って、天安門事件の記憶もさめやらぬ頃だったし、僕のような、どちらかといえば右寄りといわれる大学を出て(まあそれは世間的なイメージで、実際は90%がノンポリなわけだけど)20代で中国にきて管理職やっているような人間が、人民解放軍に関して色々聞いているなんて話が上にまわったら、余計なトラブルを招きかねない。

まあ、それはともかく。

僕はいつものように、一階の工場事務所の来客用藤椅子にすわり、チョビがめずらしくサービスでいれてくれたお茶をすすりながら、地元紙の「検討」欄を読んでいた。

中国語で「検討」というのは、日本語の「反省」にあたる。

つまり地元の新聞における「検討」欄とは、刑務所にぶち込むほど悪い事をしたわけではない軽犯罪者が、署名入りで反省宣言をしている欄だ。

「検討。私はXX通りでナンバープレートのないバイクを走らせ、注意した公安局員を殴りました。以後決してこのようなことがないよう誓います」

「検討。私はXX通りで、泥酔して、通りすがりの人を殴りました。以後決してこのようなことがないよう誓います」

そんなことが毎日5~6軒かかれているだけの、どおってことのない欄なのだが、僕はこれがお気に入りで毎日熱心にみていた。

それ自体はどおってことないのだが、いい年をした大人が反省文をかかされたあげく「これは明日の新聞にのせるからな」などといわれているところを想像するとなんとなくおかしかったからだ。

その日の「検討」欄を読み終え、紙面をめくると、1/4面の広告が出ていた。

「射撃場」

そこには確かに「射撃場」と書いてあった。

ま、まさか・・・・

この娯楽のない街に射撃場がオープンするのかっ!?

その時丁度、中国人というよりも、額にビンディをつけたら、誰しもがインド人としか思わない通訳のダックちゃんが工場からでてきたので、僕は彼女に聞いた。

「ねえねえ。これって射撃場の事?民間人というか外国人もいっていいの?」

ダックちゃんは広告を熱心に読むと、いつものハイテンションで言った。

「あ~。そうですよ~っ。これは銃を撃てるところですね~。島のところです~」

「外国人が行っても撃たせてもらえるの?」

「あ~っ それはちょっと~っ でも大丈夫だとおもいますよ~。」

なんと!!ついに遊技砂漠ともいえるこの街にも、大人の遊び場ができるのかっ!!

「ここに電話して確認しろ!!今すぐしろ!!どんな銃があるか?外国人でも撃てるか?いったいいくらなのか?大至急だ!!」

そういうと僕は受話器をダックちゃんにわたした。

電話はすぐにつながり、ダックちゃんが色々と質問をする。どうも大丈夫そうだ。

「え~と 外国人も大丈夫ですよ~ 54式拳銃と56式歩槍が撃てるそうです。」

「歩槍?なんだそれ?小銃か?ライフル?」

ダックちゃんが日中辞典をひいて、確認すると自動小銃だということがわかった。

さて。

僕は中国向けの仕事をする前に、ちょっとだけ中東の仕事をしていたので、中東でつかわれる銃器に関しては、アメリカ製、ソビエト製、イスラエル製とそこそこの知識はあったが、中国に関しては全然しらなかった。

大体言葉もわからず、扱う商品に関しても、すべてO・J・Tというすばらしい状況だったので、とてもそういうことまで調べる時間がない。

多分ソビエト製のライセンスものだと思うのだが。

価格に関してはアメリカの射撃場に比べると高い気がしたが、5000円もあればそこそこ遊べそうな金額だった。

しかし、5000円といえば、当時の一般工員の1ヶ月分の給料だ。

会社の人間とそんなところにいったら、あっという間に「円海が射撃場にいって湯水の如き金をつかった」なんて噂が社内中にとびかってしまう。

会社を定時であがると、僕はオヤジの現地事務所へ行った。

ここにはここで、合弁会社とは関係ない、うちの会社の現地秘書がいる。

日本語はあまり話せないが頭の良い子で、非常に使いやすい。

僕は彼女に今日の現地新聞をもってこさせると、射撃場の広告を見せた。

「今度の休みの日の水曜日にここに行きたい。予約が必要かどうか確認して、つれていってくれ。」

もちろん秘書は了解するとすぐ電話をして、いく時間をその場できめた。

  

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
 

水曜日。

射撃場は意外なことに山をくりぬいた地下の洞窟の中にあった。

昔聞いた噂では、この街のいくつかの小山は中に縦横無尽に洞窟がほってあり、昔は核シェルターだったが、今は一部がカタツムリの養殖やマッシュルームの栽培に利用されているということだったが、どうやらそれは本当らしい。

でも洞窟の中に射撃場っていうのは、射撃場というよりも秘密基地って気がする。

大体耳がおかしくならないか?こんなとこで銃うったら?

とりあえず最初は射撃レンジを見せてもらった。

拳銃用のレンジが3つでライフル用が2つ。

いずれも銃は射撃台と鎖でつながれていた。

ぱっとみるに、AK47とトカレフみたいだったが、当然中国製のコピーだろう。

でも鎖でつながれていると、なんか射撃って気分じゃないよなあ・・・

どちらもターゲットは人型の紙で、それぞれの距離をきくと、ライフルが50m拳銃が25mという事だった。 
 

だらしのない軍服を着た係員が「どうしますか?」と聞くので、とりあえず拳銃から撃つ事にした。

はじめて持ったトカレフ(のコピー)は特に重いということもなかった。

うん。これなら大丈夫だ。

なんの説明もなく銃とイヤープロテクターをわたされたので、仕方なく、万が一の時に備えて読んでおいた、『テッド・新井のコンバットシューティング』という本の内容を思い出し、拳銃を構え、「柱にのったカボチャ」の位置にターゲットをおくと引き金をひいた。

反動もどうこういうレベルではなく、人型の紙がかすかに揺れたので、あたったのはわかったが、どこにあたったのかまでは見えない。

ちょっとどこにあたったか見たいというと、ターゲットをスルスルとひきよせてくれた。

ちゃんと円の中にははいっていて、最初にしては上出来な感じだ。

もとにもどして、20発ほど撃った。

再びターゲットをひきよせてもらうと、どれも綺麗に円の中におさまり、3発が中心に入っていた。

「すごい・・・一発も外れてませんよ。」

一緒に来た秘書が言った。

「フフフ。これが日本人というものなのだよ。生まれてはじめて撃ってもこの成績!!日本人の射撃能力は世界いち~っ」

とりあえずそんなことをいいながら、調子にのった僕はライフルレンジの方へ行った。

う~ん。流石に僕の視力だと50m先は見えずらいなあ~。

しかし、ライフルレンジの方には、射撃台の所に一脚があり、銃を支えられるようになっていた。

僕はそれを使い、慎重に狙いを定めて、まず20発撃った。

ターゲットを引き寄せると、全員が「おお~っ」と言った。

どの弾痕も10,9,8の中央部にあったからだ。

す、すごいぞ!!オレ!!

射撃に関しては意味もなく自信ががあったのだが、ここまですごいとは!!

僕はもう20発を弾倉につめてもらうと、今度は一脚からはずして、普通に肩打ちで、セミオート射撃をした。

フルオートはできないようになっていたからだが、これも見事に円のなかに全弾おさまった。

「う~ん。生まれて初めてなのに、ここまで見事にあたると自分でも怖くなるな。」

「本当にはじめてなんですか?」

秘書がいや~な顔をして言った。

「日本じゃ自衛隊にでも入らないと射撃なんてできないよ。」

「私もやってみていいですか?」

「どうぞ」

僕は射撃レンジを出て、レンジ内が見えるガラス張りの休憩室で、出してもらったお茶を飲んで秘書の射撃を見ていた。

秘書の身長は160センチあるかないかで、流石にそんな秘書がAK47なんかもつとミスマッチな感じがする。

つ~か、撃てるのか?

10分ほどすると秘書が標的用紙をもって、射撃レンジからでてきた。

「三発しかあたらなかったです。」

「ふ~ん」

「中国人は人殺しには向かないんです。」

「銃が向かないだけじゃない?剣とか槍とか矢では中国人同士何百万も殺してるじゃん。」

「・・・・(-_-;)」

「ま、君はライフル扱うには小さすぎるから。もっと大きくなってから練習しなさい。」

「もう24なんだから、これ以上おっきくならないですよっ!!」

「じゃあ、射撃はあきらめてお金儲けにでも励みなさい。日本人も戦後そうしたんだから」

 

 

折角できた射撃場だったが、僕はそのあと一回行っただけだった。

というのはその射撃場には、船にのっていかなければならないのだった。

で、その船着き場は僕の行きつけのホテルのレストランの前にあったので、帰りにそこのレストランで食事をすれば丁度よかったのだが、しばらくして、船着き場が離れたところに移動してしまったのだった。

ついでに言うと、銃が鎖でつながれているのが煩わしい。

そんな射撃は僕的には射撃っぽくないのだった。

  
  

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
  
それから1年後。

いつものように僕が一階の工場事務所の藤椅子にすわりながら、チョビをからかっていると、生産の統計担当者が工場内からでてくるなり言った。

「今日の新聞見ました?人民解放軍が、植物園の中に、新しい露天の射撃場をつくったんです。」
 

 

To be continue.
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2006.03.22

円海VSホモ痴漢(下)

おぞましいホモ痴漢の魔の手に必殺の肘撃ちが炸裂する!!

当然の如く、僕は鞄をもっていない手で股間に伸びてくる手を払った。

しかし、その手はさわさわと僕の手を撫でて、股間に再度伸びてくる。

これは一体どうすればいいのだろうか?

か弱い女子中学生だったら「痴漢です!!」といえば、周囲が助けてくれるかもしれない。

しかし、詰襟の男子中学生が「痴漢です!!」といって、誰か助けてくれるのだろうか?

繰り返し言うが、当時はゲイというものが一般化されていなかった。

薔薇族なんていう雑誌は当時でもあったと思うが、男同士の同性愛ということ自体、アンダーグラウンドの人や、芸術家みたいな人達の世界の話であり、朝の山手線の満員電車に乗る人には無縁の話だ。

そんななか、満員の山手線で僕は実際ホモの痴漢に襲われている訳だが、これを周囲に訴えたとして、果たして信じてもらえるのだろうか?

しかも痴漢が誰かもわからないのである。

下手すると狼少年扱いだ。

よしんばわかったとしても、相手は大人。

「なんで俺が男のお前に痴漢せにゃならんのだ!!」と言われたら、それでおしまいな気がする。

大体異性に対してそういうことするのは痴漢だが、(当時)同性に対してはどうなんだ?

そう考えている間も、僕の股間を巡っての、僕とホモ痴漢の壮絶な(でも他人にはわからない)戦いは続いていた。

あまりにもギュウギュウ詰めなので、相手も攻撃のコースを変更することができず、常に同じ角度からやってくるので、なんとか防げていたのだ。

すると電車が揺れ、微妙に人々の配置がかわった。

そして、ホモ痴漢の魔の手も。

ホモ痴漢は僕の股間に触れようとする動きはやめ、今まで防戦していた僕の手首を掴むとひっぱり、なんと自分の股間に当てたのだった。

「うぎゃあっ!!」

僕は思わず心のなかで叫んだ。

手のひらに思いっきり硬く勃起したナニが触れているぅ~っ!!

だが直接ではなく、ズボンの上からなのが救いといえば救いだった。

もし直接だったら、触らされたのがイヤだっていう以上に、満員電車のなかで、詰襟の男子中学生相手に、チャック降ろしてXXX剥き出しにしているその男の、精神性のおぞましさにメゲてしまったに違いない。

しかし、相手のこの作戦変更のおかげで、僕はホモ痴漢が誰だか確認することができた。

斜め向かいに立っていた、あたまのてっぺんがハゲかけた、身長160ちょっとくらいの40過ぎたおっさんだった。

僕の心の奥に眠った金色の目が炎を吹き出しそうな勢いで開いた。

この腐れオヤジがあ~っ!!

女に相手にされんからって、朝っぱらから詰襟姿の男子中学生に痴漢行為を働くとは、なんと破廉恥なっ!!

まだ、同級生の女の子の胸にも触れたことのない、穢れなき僕の手のひらによくも貴様のチ○コなぞを掴ませてくれたなあ~っ

変態めっ!!本当の変態めっ!!陵辱者めっ!!タダではすませんぞっ!!

電車はあと1分たらずで新宿につく。

とりあえず「痴漢です!!」と告発するのはやめにした。

間違いなく、相手は僕が男子であることを理由に否定するし、なによりも男子が痴漢にあって辱めを受けたなどと大声で叫ぶのは恥ずかしすぎる。

このまま、袋をつかんでねじ上げるか?

いや、電車のなかでそれをやって、逆に相手に「なにするんだ!!」などと言われても・・・

「痴漢されたので握りつぶしました」といって、通るかどうかわからんし、人違いだといわれたら、どう証明するのか?

ここはやはり降りる時の勝負だ。

これだけの混みようだから、新宿駅に着いたときには、押し合いへし合いのすごい騒ぎになる。

その隙にまぎれて、足をひっかけるか、肩を押すかなんかして、こいつを転ばして、みんなに踏ませてやるっ!!

これぞまさに、肉を切らせて骨を断つ。

いや、陰茎つかんで、骨を断つ!!(つかみたくないけど・・・)

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
 
 
 
電車は新宿について、扉が開いた。

一番前の連中がおりると、列車の中央部に乗っていた人達が出口の方へ動き出すので、中央より、やや出口の反対側にいた僕等は、前ではなく横におされた。

その後、出口の反対から出口に向かうベクトルにより、僕等は出口に向かって押し出されていったのだが、その時、僕の半身が丁度ホモ痴漢の前に出た。

 

チャ~ンス(>_<)!!

 

僕が肘を少し横に張ると、ちょうどホモ痴漢の胸のあたりにあたった。

見てろよこの変態!!

思いっきり痛い目見せてやるからなっ!!

ホモ痴漢より半歩先に電車を降りた僕の肘は、丁度彼の肋骨の一番下あたりにあたった。

今だ!!

僕が肘をいったん引きつけると、ホモ痴漢は前に出るのを押さえていた力を急に失い、つんのめるようにして電車をおりることになった。

その瞬間を狙って、僕はいったん引きつけた肘を、小刻みではあるが、思いっきりホモ痴漢の肋骨に見舞った。

後ろで鼻から息が抜けるような音がしたが、僕はかまわずに、人の流れとともにすすんだ。

振り返って見ると、ホモ痴漢は電車のドアから少し出たところでうずくまっており、電車からワラワラと降りてくる人が、激しく迷惑そうな顔をしてうずくまる彼を見ていた。

ざまあみろっ!!

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
 
 
 
半年くらい前に東京駅で乗り換えていると、ホームで両手にディズニーランドの紙袋を一杯もった女の子が、泣きそうな顔をして立っていた。

友達の女の子が、ハンカチで彼女のスカートを拭こうとしていたのだが、そこには見事なまでに一本の白い筋がつけられていた。

せっかくディズニーランドにいって、楽しい思いをして、お土産も一杯かったのに最後がこれじゃあなあ。

可愛そうに。

時代は流れても、人の迷惑を考えず、自分の欲望だけはしっかり満たそうとする人は、減ることもなくがんばり続けるものらしい。

 

The end

NEXT 「長老よっしーの復活」

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2006.03.13

円海VSホモ痴漢(上)

15歳の僕を、おそるべき魔手が襲う・・・・

 

中学2年の3月に引っ越しした僕は、4月から越境通学をすることになった。

当時中野区は比較的教育レベルが高い区で、たとえば中野区で真ん中あたりの成績だと、僕が引っ越しした区では上位の成績になってしまう。

そんな訳で、わざわざ中学二年の後半になってから、他の区から中野区の中学校に転校してくる子もいた。

なぜなら当時東京都の高校受験が学区制で、中野区が属する学区には、都立高校としては断トツの東大合格率を誇る西高、富士高があったからである。

まあ、僕には西、富士は関係なかったのだが、その下くらいは狙うことができた。

で、わざわざここで転校する必要もあるまいということで、僕は電車で学区外通学することになったのだった。

僕の中学校は東中野駅のすぐ近くで、電車通学するには便利だったが問題があった。

帰りは4時頃なので電車が混むことはないのだが、行きは池袋から新宿まで山手線に乗らなければならないのだった。

今だって通勤時間の山手線の混雑はすごいだろうが、僕が中学生の頃はもっとすごい。

とりわけ埼玉方面からの連中が赤羽線(現在の埼京線)で都内にでてくる池袋ー新宿間はすごい。

あまりにも人が乗りすぎていて、電車が揺れても人は動かない。

ただ足だけが浮き上がったまま進んでいくという、いにしえの奴隷船よりもひどいありさまだった。

だが新宿についてしまえば、あとは三鷹方面の総武線に乗るだけなので、大抵毎日のように座ることができた。

電車通学となると通勤の先生とも一緒になる。

中学二年の時の担任とは週に3度くらい新宿から一緒になった。

しかし彼は体育教師であり、今では信じられない(っていうか当時でも信じられなかったが)事に、通勤中もジャージの上下にランニングシューズなのだった。

しかもプーマの赤ジャージである。

赤ジャージで電車通勤し、赤ジャージで体育の授業(というか生徒と一緒にサッカーやらハンドボールをする)をして、赤ジャージでハンドボール部の指導をして、赤ジャージで電車にのって帰る。

今から思うと、何故彼を汗くさく感じた事がないのかが、本当に不思議だ。

彼は朝の通勤電車で僕をみつけると「おうっ!!」と声をかける。

もちろん黒の詰め襟姿の僕はこのジャージ男に「おはようございます!!」と返事しなければならない。

今になって思うのだけど、彼にとっては通勤途中の周囲の人々の「何?この人?」という視線に対する答えに、僕を利用していたのだと思う(-_-;)

周囲の人々の、赤ジャージで股を拡げてふんぞりかえっていて、時に少年チャンピオンを読んでいる彼を見る視線は、僕が「おはようございます!!」と挨拶することで、「ああ教師なのか」とちょっとだけ優しくなった気がするからだ。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

そんなある日。

僕は、新宿行きの山手線の一番前の車両に乗ることになった。

いつもは乗り換えの都合上真ん中あたりなのだが、この日は電車がおくれて池袋駅は大混乱だった。

そんな訳で、池袋で乗り換える時に、いつもの階段から乗り換えられず、駅員の指示にしたがって歩いていたら山手線の一番前の車両になってしまったのだった。

いつも以上にきつきつに電車のなかに閉じこめられると、もう新宿までドアがあけられないのは明らかだった。

当時はそれぐらい混みまくっていたのだ。

僕は鞄をもったまま、まったく動きがとれず、拘束されたように直立不動で電車に乗っていた。

すると・・・・・

僕の手をなでる手がある(-_-;)

最初は身動きできない状況のなかで、手の位置を変えている人がいて、その手が偶然僕の手にあたっているのかと思った。

が、違った。

その手は、僕の鞄を持っていないほうの手をさわさわと撫でているのだった。

!!

これは何?

何でこの手は僕の手を撫でているんだ?!

僕はあわててクビだけを回して周囲を見た。

だが、誰が僕の手をさわさわと撫でているのかはわからない。

はっきりと確認できた事が一つだけあった。

僕の周囲には女性はいない(>_<)

 

 

つまり。

 

 

この手は男だっ!!

 

 

ありえね~っ(>_<)!!

 

 

僕は詰め襟の学生服を着ている。

誰が僕の手を撫でているのかわからないが、相手には僕が男であることはわかっているはずだ。

男が男の手をさわさわ?

当時、「変態」ということばはあったが、ゲイと言う言葉はなかったし、女装趣味という意味で「おかま」というのは時々耳にしたが、ホモという言葉は滅多にきかなかった。

大体中学生でもセックスが具体的にどういうことか知らない奴が大半という時代である。

男と男がセックスするなんて、当時の中学生にとっては、想像の範囲をはるかに越えていたのだ。

従って中学生で15歳になったばかりの僕は状況が把握しきれなかった。

何がおこっているんだ?

この手は一体なんなんだ?

しかし、僕はいきなり自分のおかれた状況を正確に把握した。

僕の手をさわさわと撫でている手が、いきなり僕の鞄をのりこえ、股間に伸びてきたからだ。

 

ヒィィィィィ(゚ー゚;ノ)ノ

 

ズボンの上から必死に僕の股間をまさぐろうとしている。

 

はあ?

 

なんですかこれは?

 

もしかして・・・・

 

もしかして・・・・・

 

これは痴漢っていう奴?

 

w(〇◇〇;)wガァァァン!!

To be continue.

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2005.05.09

円海vs触手王(下)

暗闇の中に潜んでいた触手王!!果たしてその恐怖から逃げ出す事ができるのか?

いつものように、僕等は早朝から車ででかけた。

車を運転するのは霞ちゃん。

乗り込んでいるのはシュガケン、ヒトミねーさん、僕の三人だ。

30代の三人は、皆、夜型なので、早朝は激しく機嫌が悪い。

途中のサービスエリアで霞ちゃんが「朝ご飯食べますよ!!」と車を止めたが、三人とも激しくだるそうな顔で、嫌々車を降りるのだった。

元気よくキツネうどんを食べる霞ちゃんの横で、僕はダラダラと天麩羅そばを食べはじめた。

シナシナの天麩羅が激しく不味い。

月見そばにしておけばよかったな。

シュガケンとヒトミねーさんはコーヒーを頼むと、固形物を食べる僕等を信じられないといった顔でみた。

シュガケンがタバコに火をつける。

僕は天麩羅そばにドバドバと七味を入れた。

そうでもしないと食べられんがな。

「たまには伊豆とは逆の方にいくのもいいですね」

霞ちゃんが元気に言った。

「そうだね。伊豆みたいに道路が曲がっていないから、すっきりしていていいね。爽やかな感じ」

僕は道路の向こうに見える海を見て言った。

ヒトミねーさんは、恐ろしくアンニュイな顔で海を見ている。

「ヒトミねーさん。もう少しやる気出しましょうよ」

僕はやる気のない一つ年上の新潟出身女社長に言った。

「円さん。あなたは男だからわからないのよ。三十路女が外出するには、男より1時間は余計にかかるの。つまり私はあなた達より早起きしてるの。なんでかわかるわよね?」

ヒトミねーさんは「何でですか?」とツッコまれないように言った。

こういういい方をしたヒトミねーさんに「何で?」などとツッコミを入れると、悪意のあるバカ、もしくは頭の回転が悪い奴として5時間は口をきいてもらえなくなる。

「そんな~。ヒトミねーさんなら男と一緒におきても大丈夫ですよ。こないだ長老よっしーも言ってましたよ。流石新潟女の肌は違う。すっぴんでもきれいよね~って。」

僕は不機嫌なヒトミねーさんの機嫌を直すべく、長老の名前をだした。

「そうかしら?」

「そうですよ。ほっぺにさわってもいいですか?」

「さわらせてあげたいのは山々だけど、私、彼氏がいる身だから。別れたら触らせてあげてもいいわよ」

ヒトミねーさんはとたんに機嫌良くなった。

シュガケンはプカ~ッとタバコをふかし、気怠げに海を見た。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

僕等は携帯電話で、すでに現地入りして潜っている先発組と連絡をとり、直接その小さな入り江に向かった。

すでに一本目を潜り終わった先発組は、誰もいない岩場でたき火を囲んでいた。

凄い。

早朝たき火だ。

だがそのたき火の炎には、串刺しにされたタコがっ・・・・・

「喰う?」

三日前からきている先発組が、ダイビングナイフで、タコの足を切り取ると僕にすすめた。

「いや、ついさっき天麩羅そば食べたばっかなんで(^_^;)」

そのタコの足は霞ちゃんが受け取った。

荷物をおろしてから、市内にタンクを借りに車を戻すということで、僕等はたき火を離れ車に向かった。

霞ちゃんが歩きながらタコを囓っているが、まったくかみ切れなかった。

「か、カタい・・・・でもそれ以上に・・まずい(*_*)」

そりゃ海でとったであろうタコを塩もみもしないで焼いたって・・・

僕等は着替えて、機材の準備をしながら車がタンクを積んで戻ってくるのを待った。

「自動販売機ないな。トイレも。キャンプ用具が必要だったな」

シュガケンが言った。

どこの漁協も管理していない浜=自然のままの浜=トイレも売店も自動販売機すらない浜=ベンチも日よけもなく、太陽の下で肌を焼かせるにまかせるしかない浜・・・

「椅子くらいは欲しいわね。」

ヒトミねーさんも体育座りをしながら言った。

ようやくタンクを積んで車がやってきて、不満たらたらの僕等はタンクをBCに接続すると、現地のガイドの説明を受けた。

「見たとおりの小さい入り江です。水深は6m。外海に出るのはあそこだけなんで。水中ではケルプが茂っています。出たところでの水深は18メートルです」

「出ると何かあるんですか?」

僕は聞いた。

現地のガイドは一瞬目を泳がせてから小さな声で言った。

「アワビとか、伊勢エビとか・・・・」

何?

「密漁ターゲットが?」

「あっ、えっと、密漁ではありません。この入り江はどこの漁協の管理下にもないんで。密漁は犯罪です。もしここで生物を捕まえたとしても、それは採取活動ってことなんで、密漁とは口が裂けても言わないように」

僕は思わず口を押さえた。

僕等は入り江に入った。

「ではこれからエントリーします。ここにこれをおいていくので、もし、めったに見つけることができない生物を採取したときには、あがる前にここに入れて下さい。あとで、私が責任をもってひきあげます。でも、ナイトがあるんで、今回は入り江の状況を確認してもらうってことで」

そういうと現地ガイドは釣り人がもっているような青い網カゴをぼくらに見せた。

「密漁気分がもりあがりますね。採取活動ですけど」

「潜行!!」

現地ガイドは一瞬僕を睨むと水中に没していき、僕等もそれに続いた。

海中は陸と同じ岩場で、所々砂がたまっている。

水深は5m程度でずっと続いているようだった。

岩の間にはガンガゼがつまっている。

夜はこいつら岩の間からでてくるから、中性浮力をきちんととっておかないとやばいな。

サザエはそこら中にいた。

これだけいると、サザエは“めったに見ることができない生物”にはあてはまらない。

僕は岩と岩の間をたんねんに見ていった。

すると・・・・

でっかいほら貝のような貝がっ!!

僕はヒトミねーさんを捕まえて指さした。

「うっ!!」

ヒトミねーさんも驚いた。

手をニギニギして、ゲットせよとの指令を出す。

しかし、ほら貝の前にはガンガゼが3つあり、とげを張り出していて、とてもゲットできる状況にはない。

┐( ̄ー ̄)┌  お手上げさあ~

僕がジェスチャーすると、ヒトミねーさんは僕の肩についているSEALナイフを指さした。

刃渡りが24センチくらいはあるヤバ目のナイフだ。

これ使うの?

ウンウンとうなずくヒトミねーさん。

僕は肩からナイフを抜くと、ガンガゼを刃の背中で殴りつけた。

ガンガゼのとげはもろくも崩壊して、ぼくは岩の間に手をつっこみホラ貝をゲットした。

ヒトミねーさんに見せようとすると、ねーさんはすでに先に進んでいた。

ゲットを確認したら、あとは食べる事にしか興味はないらしい。

しばらくいくと、今度は岩の間にヒゲが・・・・

ヒゲ?

僕はタンクを叩くと、再度ヒトミねーさんを呼んだ。

僕はヒゲを指さした。

ヒトミねーさんがBCのポケットからライトを出して岩の間を照らした。

やはり・・・・

伊勢エビ・・・

だが伊勢エビの前にはまたしてもガンガゼがっ!!

しかし今度はガンガゼを粉砕するわけにはいかない。

そんなことをしたら伊勢エビは逃げてしまう。

幸いにもヒゲはガンガゼの手前まで出てきている。

ヒトミねーさんが僕の顔を見た。

僕は1秒間で5発の正拳を打ち込める高速の動きで伊勢エビのヒゲを見事つかんだ。

しかし、水中では僕の握力より、伊勢エビの腰の力の方が強かった。

ヒゲは僕の手からするりと抜け、伊勢エビは岩と岩の間の奥へと消えた。

僕はヒトミねーさんの顔を見た。

水中とはとても思えない早さで、ヒトミねーさんのゲンコツが僕の頭を襲った。

欲しいモノが手に入らないと癇癪をおこすのが、この女社長の癖らしかった。

ガイドの指示に従い、僕等はケルプを抜け、外海に出た。

体が僅かだがゆれる。

シュガケンは丹念に崖の部分をみていた。

そして僕等は、ナイトダイブに備えた昼のダイビングを終えると引き返した。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

夕日が落ちる直前に僕等は装備を調えて、海に入る準備を完了した。

周囲に電灯はないので、日が落ちてしまうと真っ暗になってしまう。

海に入ると、ガイドが緑とピンクのケミカルライトを網カゴに入れて言った。

「エクジットする前に、採取した生物はここに」

今度は僕は余計なことはいわなかった。

この入り江には伊勢エビがいるのだ。

ガンガゼ同様、伊勢エビも夜は岩のなかから出てくるに違いない。

うまくやれば、夕ご飯には伊勢エビの刺身と、頭の味噌汁がつく。

ぼくらは潜行を開始した。

下まで降りた僕は、目の前に釣りをするときにコマセをまく柄杓が落ちているのを見つけた。

今回に関しては潜る目的がかなり妖しいが、基本的に僕はきわめてまっとうな海を愛するダイバーである。

ダイビング中に空カンが落ちていたりするのを見れば一応拾っておく。

その時も、僕は迷わずこの撒き餌柄杓を拾った。

ぼくのキングペリカンライトは、想像以上に強く、かなり遠方まで光をとどかすことができるのがわかった。

周囲を見ると、やはり岩の上にはガンガゼが出てきている。

注意しながら中性浮力をとり、岩の間をてらしつつ進んだ。

岩の間にはサザエがいるが、これは帰りに拾っていけば良い。

今、目指すはただ一つ。

伊勢エビのみだ。

だが、ヒゲも光る目も、まったくみつからない。

すると、僕は岩と砂地の間になにやら動くものを見つけた。

僕は慎重に近づくと岩の下をのぞいた。

タコだ。ライトにてらされたタコはこちらをじっと見ている。

けっこうデカいぞ!!

僕は手にもった撒き餌柄杓で、ツンツンとタコの頭を何の気なしにつついて見た。

すると。タコはいきなり反転。無数の吸盤を僕に見せると、撒き餌柄杓にからみついてきたのだ!!

それもすっごい早さで!!

僕はびっくりして、柄杓をタコに押しつけるようにして振り切ろうとしたのだが、それがまずかった。

逆にタコの触手が伸びてきて、右腕にからみついてきたのだった。

やばい!!

僕はあわてて柄杓を手放したが、タコは手を離してくれない。

僕は自分の腕を引いた。

しかしタコは何本かの触手で岩に自分の体を固定し、2~3本の触手で僕の腕をがっちりとつかみ離そうとしない。

ここにいたって、僕は極めてやばい状況になっていることに気づいた。

ダイビングを始めてから、サメに喰われて死ぬことは一応覚悟していた。

しかし、まさかタコに絡まれて死ぬ事になるとは!!

その時。

一つの人影がゆっくりと近づいて来た。

ヒトミねーさんだ!!

僕は左手のキングペリカンライトでタコを照らすと、ヒトミねーさんの目を見て、レギュレーターをくわえたまま、「やばいっすよっ(>_<)!!」と思わず言った。

しかしヒトミねーさんは自分のライトでタコを照らすと、僕の顔を見てニコリと笑い、オッケー!!と合図すると闇のなかに消えた。

き、きさま・・・・・

私を見放したな・・・・・

私を見殺しにしようとしているな・・・・

僕の心の中で金色の瞳がゆっくり開きはじめた。

コノウラミ・・・・

コノウラミハラサデ・・・・

ぬわっ!!

タコの触手が手首から前腕全体に伸びてきたっ!!

ヒトミねーさんに復讐を誓っている場合ではない!!

そう、海の中では言葉が通じない。

僕が伝えたかった事。

「タコに!!タコに絡まれてます!!死にそうです!!助けて!!」

ヒトミねーさんの脳内会話。

「タコがいます。でかいでしょう?」
「わかったわよ。おっけー!!」

うを~いっ!!

俺、一人だよっ!!

夜の海で一人だよっ!!

しかもタコにつかまってるよっ(>_<)

浮上だってできないよっ!!

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

冗談事ではなく、僕はマジピンチだ。

ヒトミねーさんは先にいってしまったし、ガイド、シュガケン、霞ちゃんは、アワビを目指してヒトミねーさんの更に先にいってしまっている。

タコは腕をどんなにひっぱっても僕の事を離してくれない。

しかも手首をつかんでいた触手は、すでに腕全体にからみつき、顔にまで伸びて来そうな勢いだ。

当然体はいつの間にか岩にひっぱりこまれている。

僕はとりあえず落ち着くことにした。

水深はたかが5メートル。

呼吸をきっちりと制御すれば1時間どころか2時間だって潜っていられる水深だ。

それだけ潜っていれば誰かが助けに来てくれる。

ともかく落ち着け。肩の力を抜いて、呼吸をゆっくり。

ぐんっ!!

いきなり体が引っ張られた。

そしてタコの触手がついに肩のところまで伸びてきた!!

体の力を抜き、呼吸をゆっくりにしたために、タコは「こいつ弱りやがった!!」と思い、一気に攻勢を強めてきたらしい。

やばい!!

マジやばい!!

仲間が来るまで待機作戦は、あくまでレギュレーターをくわえていての話だ。

このまま触手が顔にまで伸びて来てレギュレーターをむしりとられでもしたら、冗談抜きで水深5メートルで溺死してしまう。

死んでもタコが吸着していてくれれば、「ああ、円君タコに襲われて死んじゃったのね」と原因もわかり、まだ救われるというもの。

しかし僕の死体からタコが離れてしまえば、「なぜ水深5メートルのところで・・」と不思議がられ、しかもバカダイバー呼ばわりされるに違いない。

ああ、せめてグローブだけでもはずしていれば、吸盤の後が残ってバカダイバー呼ばわりだけはさけられるのに・・・・

その時、僕の右の頬に、ヒラヒラと触れるものが・・・

やばいっ!!

マジ、肩を越えて触手が顔に迫ってきている!!

本当に殺されるぞ!!

僕は自分の腕に巻き付いている触手を見た。

思ったより太い。

そっか。

タコめ!!

腐れダコめ!!

このオレ様になめたマネしやがって!!

海の生物を傷つけてはいけないというダイバー精神を守っていれば、いい気になりやがって!!

僕は左手でもっていたキングペリカンライトを砂地にゆっくりおいた。

そして左の肩につけているSEALナイフを左手でゆっくりと抜いた。

ははははっ!!

後悔しやがれ!!この豚ダコ!!

僕は右手に絡んだタコの触手を自ら掴むと、ナイフの刃先を腕とタコの触手との間にねじ込んだ。

岩の間からキングペリカンライトの強力な光に照らされたタコの目が見えた。

地獄の痛みにのたうちまわりやがれっ!!

僕はナイフの刃先を触手にむけてたてると、力づくで押し、のこぎりのように挽いた。

すごい勢いで視界が遮られて行き、僕の右手からスルスルと触手が抜ける気配がした。

僕は光るライトを掴むと、思いっきりフィンキックしてその場を離れた。

触手王は去った。

僕はエアの残量をチェックした。

80。

深度5メートルの海底をサザエを探してうろつきまわるには十分な量だ。

僕はコンパスを見て、ケルプの方へと向かった。

すぐに4本のライトの光跡が見えて来た。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

その晩、僕等はサザエご飯を食べ、サザエの壺焼きを食べ、シュガケンが三個もみつけたアワビの刺身を食べてお腹一杯になった。

すると今度は舟盛りが出てきた。

「もう食べられないよ~」
「すげえ!!まだ舟盛りがでるのかよ!!」

テーブルにおかれたのを見ると、すべてサザエの刺身だった。

「サザエいらない」

「二きれ食べれば十分だね」

「でも、これとったの私たちですよ」

僕等は別の宿にいる先発組にサザエの刺身を押しつけることにした。

どうせ奴らは夜通し飲むのだから、おいておけば酒の肴に誰かが喰うに違いない。

霞ちゃんを先発組へのお使いに出してからシュガケンが言った。

「やっぱその日喰う分だけとらないとダメだな」

「そうですね。きっと古代の人達は、その日必要な分だけを自然からの恵みとしてとってたんでしょうね。多く取って、保存しておくということを人間がするようになってから、“自然の恵み”って感覚は無くなっていったのかもしれませんねえ」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

それから何年かして、うちの会社の税理士さんに聞いたのだが、子供の頃、戦後間もない瀬戸内海で素潜りで魚をとってあそんでいた彼らにとって、一番恐ろしいのがタコだったという。

「あれはさあ、素潜りでからみつかれると致命的なんだよね。だから僕等は布つけたヤスをもってて、タコみつけたら必ず離れたところからヤスを突き立てたのさ。それであとは海面から布を水中メガネでおいかけていて、砂地に出てきたら引き上げる。岩場ではタコが足ふんばっちまって、絶対とれないからね。でも、それ知らない友達が岩場のタコを手づかみで取ろうとして、2人くらい死んだな。小さくても力強いからねえ。素潜りだと30秒つかまったらダメだよ。」

タコは知能も高い。

人型をしてないからといって、下等動物と侮らないように。

The End

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2005.04.25

円海VS触手王(上)

濃密な闇のなか、密かにせまる触手王!!生き残るのは陸の悪魔系か海の魔性か?

ナイトダイビングが好きだ。

ナパームの匂いの次くらいに好きだ。

僕が最初にナイトダイビングを経験したのはオープンウォーターの講習を終え、アドバンスの講習に入った時だ。

その時はインストラクターと我が友チヒロと三人で大瀬崎を潜っていた。

ナイトダイビング。

それはスキューバダイビングの装備を身につけ、真っ暗な海中を各自が水中ライトとコンパスだけを頼りに進む、究極の根性試し(?)

これまでに数々の勇者が突如現れたサメに食いちぎられ、巨大イカに噛みつかれ、トビウオの体当たりで命を落としているというダイビング業界最大の業行である。(注:いうまでもなくまったくのウソです。信じないように)

ともに講習を受ける身分の僕とチヒロは、すでに暗くなった岸辺でインストラクターの説明をうけていた。

「昼間に潜ったのと同じコースですから。まっすぐ沖にでて、崖になった所を降りたら、崖にそって左へ向かい、そのあと水深XXメートルまで沖に出て停止。そこで夜光虫を見たあと崖に戻り、降りたところにもどって崖をあがります。時間は25分から30分。最初のナイトダイビングですから残圧系はできれば手元にもっていて、マメに確認してください。大丈夫だと思うけど、もしダイビング中に残圧が50になったら合図を。」

「あの~。万が一はぐれたらどうしましょう?」

僕は暗い海を見ながら聞いた。

「そのままで1分待って、私が戻ってこなければ浮上。海面に出たら海中にむけてライトを点滅。必ず拾いにいきますから」

「一人で浮上ですか?」

「チヒロ君が一緒にはぐれたらチヒロ君と浮上。」

僕はチヒロの顔を見た。

チヒロは吉田戦車が「伝染るんです」で描いたカワウソのような顔で僕を見た。表情は特にない。

チッ!!女の子と一緒に講習受けるんだったな。

真っ暗な海面を二人で漂えば、愛が生まれるかも。

チヒロとでは生まれようがない・・・・

「崖を降りるときにガンガゼ(ウニの一種)に注意。それとゴンズイ玉。」

ゴンズイ玉というのはゴンズイという毒がある魚が、何匹か群れになっているのを言う。

「円、知ってるか?ガンガゼって夜は泳ぐんだぜ」

チヒロが僕に向かっていい、僕はインストラクターの顔を見た。

彼女はタンクの最終チェックをしている。

「ホタテ貝がパフパフして海中移動するの見たことなるだろ?テレビで。ガンガゼも夜になるとああやって水中を動き回るんだぜ」

「ほ、ほんとうですか?」

僕はインストラクターに尋ねた。

「本当です。」

インストラクターはレギュレーターからエアを出し、タンクとレギュレーターの接続を確認すると、BCとタンクを背負って言った。

「海の中はガンガゼが水中機雷の用に浮遊しています。でも大丈夫。マスクしているから目が潰れることはないですから。せいぜいおでこに突き刺さるくらいです。」

僕とチヒロもBCとタンクを背負いながらその言葉を聞いた。

お互いに残圧系やら、予備のレギュレーターが動くのを確認してライトを点灯させて海に入る。

海水が胸の位置まで来たところで、僕等はフィンを履いてシュノーケルをレギュレーターに変えるよう言われた。

「あ、あの・・・水中機雷のようにガンガゼが飛んでいたらどうすれば・・・」

インストラクターは不思議そうな顔で僕を見た。

「バ~カっ!!ガンガゼが飛ぶように水中を浮遊してたまるか。冗談だよ冗談。」

そういうとチヒロはレギュレーターをくわえぶくぶくと海の中におりて行った。

イントラが僕の顔を見て潜水の合図をした。

畜生!!騙された!!

そう思いながら、僕も二人に続いて海の中に降りていった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

無事に崖を降下した僕等は砂地に降り立った。

砂地にガンガゼはいなかったが、崖にはあらゆるところにガンガゼがいた。

ここから見ると、まるで針の山だ。

オープンウォーターの講習を終えて半年たっているチヒロと違い、オープンウォーター講習から二週間でアドバンスの講習に入った僕には中性浮力も糞もない。

昼間はこの崖に手をつきながら浮上したが、今回それをやったら手がガンガゼの針だらけになりそうだ。

僕は帰りにここをあがる時にはエアを思いっきり入れておこうと心に決めた。

砂地の上でしばらく停止して、僕等に動揺がないのがわかると、インストラクターは崖にそって進み始めた。

僕も残圧が180あるのを確認してから、インストラクターにつづいた。

中に入る前は恐怖を感じたが、中に入ってみると夜の海はそれほど怖くはなかった。

魚たちもほとんどは岩の間に潜んでいるか、岩に沿うようにして移動している。

丁度満月の時期で、海面を見上げるとほのかな明るさのなか水面が揺れているのがわかる。

聞こえるのは、自分のレギュレーターが紡ぎ出す、規則的な呼吸音だけだ。

緊張でこわばっていた筋肉が急速にほぐれて、体がガチガチだったことに気づいた。

夜の海中は自分が思っていたのとは違っていた。

とても柔らかく、ゆったりした空間だ。

インストラクターが停止して、残圧を確認するように指示した。

そして僕とチヒロが残圧を伝えるとうなずいて、崖から離れて沖にいくことを伝えた。

砂地の上をすすみ、水深が13mになったところで、僕等は停止した。

インストラクターは水中ライトを消すように指示した。

この深度でも、インストラクターとチヒロのシルエットはぼんやりと見える。

背中につけたサイリュウムライトのせいだろうか。

僕が自分の呼吸に耳をすませていると、インストラクターが水中で手をヒラヒラと振った。

何してるんだ?

ヒラヒラヒラヒラと繰り返していると、小さな光の粒が手の動きにそって現れた。

夜光虫だ。

僕もヒラヒラと水中で手を振ってみた。

夜光虫がキラキラと光り消えた。

すばらしい。

まるで魔法使いになったような気分だった。

ナイトダイビング。

いいかも。

すると左手のほうから闇のなかにも明らかな砂煙をたてて、あっちこっちに水中ライトのビームを放つ集団が現れた。

ライトの数で10人くらいとわかる。

その集団がこちらに向かってくるのを見て、インストラクターは僕等にその場にとどまり、彼らが行きすぎるまで待つように指示した。

僕はうなずき、その集団が通り過ぎるのを待った。

凄まじいまでの砂煙で、それまでの静寂はウソのように飛び散り、何も見えなくなった。

そして海が静寂を取り戻したとき・・・・

僕は一人ぼっちになっていることに気づいた(-_-;)

イントラよ。

チヒロよ。

なぜいない(>_<)

僕はゆっくりと60数えながら残圧をチェックした。

まだ100以上ある。

60数え終わっても僕の周囲には誰もいない。

夜の海で迷子になっているよ・・・オレ(-_-)

水中でひとりぼっちだよ・・・・オレ(-_-)

水深は13メートル。

仕方なく僕は水面にむかってゆっくりと一人ぼっちの浮上を開始した。

まさか本当に水中で迷子になるとは・・・・

まっくらな海面に一人浮かび上がった僕は、BCにエアを一杯につめると周囲を見渡した。

海沿いにたつ民宿の光が見えるが、思ったより全然遠いぞ・・・

最悪の場合、一人であそこまで帰らないとならないが大丈夫だろうか?

僕はとりあえず、言われたとおり、水中のライトを下に向けて点滅させた。

あとはやることがない。

僕の頭の中に、不意に光瀬龍の小説を萩尾望都がマンガにした「百億の昼と千億の夜」のワンシーンが思い浮かんだ。

それは海中に数百年にわたり待機させられているシッタータが、海面に頭を出し、TOKYO CITYを見ているシーンだ。

何億年も前には、人間の原型となった海の生き物が、今の僕のように海面から頭を出して陸をうかがっていたのだろう・・・・

そんなことを思っていると、夜の海に一人で漂っている恐怖は感じなかった。

長い長い進化の歴史のなかでは、僕等はついこないだまで、このように海から陸をうかがう生活をしていたのだ。

確かに海は恐怖ではなく、僕等の母だ。

その時、海中に光が見えた。

どんどんあがってくる。

そして僕の目の前にインストラクターが。そして2m程離れたところにチヒロが顔を出した。

「お待たせ」

インストラクターが言い、僕がレギュレーターからシュノーケルに変えているのを見ると、残圧計を手にとって確認した。

「エアは十分あるね。下から戻るよ」

僕はレギュレーターをくわえると、また海の中に戻った。

上を見上げると、月の光をうけた水面が揺れている。

夜の海はいい。

全身にみっちりとからみつく海水は気持がいい・・・・

こうして僕の最初のナイトダイブは終わった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

それから3年が過ぎ、僕もようやく100本を越えた一人前(?)のダイバーになった。

半分くらいはパラオでのダイビングだ。

ある日ダイビングショップのオーナーが僕に言った。

「円さん。とてもいい話があるんですよ」

「はあ。」

「ダイバーがむやみやたらと、海の生物を捕ってはいけないと言うことは知ってますよね?」

「当然です」

「そう。日本の漁協さんが稚魚や稚貝を放流していたりしてますからね。ほとんどの場合、僕等が潜る所は漁協さんの管理下にあるんです」

「でしょうね。」

「でもですね。とある所に、漁協さんの管理下にない入り江があるんですよ。」

「はあ。」

「なんというか、二つの漁協がお互い権利を主張しているが故に、現時点ではどっちの漁協にも所属してないという場所なんですが。」

「なるほど。」

「今度ナイトダイブをやろうと思うんです。」

「行きます!!」

僕は速攻でこたえた。

「絶対に行きます。ナイトダイブ大好きですから。是非行かせて下さい。こないだペリカンの一番大きいライト買ったばっかりなんで、作動確認しなくちゃならないし。」

「わかりました。では、円さん参加ってことで。他に参加を表明しているのはシュガケン・・」

こうして僕はどこの管理下にもないという、小さな小さな入り江(多分)でナイトダイビングをすることになった。

そこにナイトダイビング大好きな僕を、恐怖のどん底に陥れる触手王が潜んでいるとは知らずに・・・・・

To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)

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