2004.03.16

恐怖!!鶴の湯旧道!!ーエピローグー

恐怖に満ちた(?)ブレアウイッチな森を踏破した
僕たちの東北パラダイスな夜は・・・・


食事まで、まだ少し時間があるが、外はすっかり
暗くなっていた。
もちろん部屋にはテレビなどない。

することもないので、僕は、露天風呂にはいっている
はずの、我が友を見に行くことにした。

きっと露天風呂の中、一人で目だけをだし、女の子が
来るのを待ちかまえているに違いない。

鶴の湯の露天は、旅館の庭にある、池のようだ。
水のかわりに白濁した湯がはいっていて、鯉のかわりに、
人間がはいっている。

僕が露天風呂の所にいくと、広い露天風呂には誰も
いなかった。

いや、いた。

暗闇の中に我が友が、たった一人、湯煙共々、ぼおっと
白い顔を浮き上がらせている。

「女の子来たか?」

頭を振る我が友

「おまえ、そうやって一人で露天独占してるけど、
楽しいか?」

「うるさいなっ!!今、出るところなんだよっ!!
あっちいけ!!」

風呂上がりの我が友は不機嫌そのものだった。

「ちっ!!こんな温泉しかないところで、温泉に
はいらないで、みんな何やってんだ!!ばっかじゃ
ね~のっ!!」

食事は母屋の板張りの広間に、四角くすべての
客が並び、各自の前に膳が出されて食べる。
川魚の焼き物、栗、山菜。まあ、そんなものだ。

若い女の子が3人いたが、みんなカップルだ。みんなで
集まって食べていても、二人だけの世界に入り込んで
出てこない。

ほかはおじさん、おばさんだけだ。

「おい、円。あの人達の言ってることわかるか?」

僕もさっきから気になっていたのだが、おじさん達の
しゃべっていることがまったくわからない。僕等が
東京できく、東北弁の片鱗すらない。大体、単語すら
まったく聞き取れないのだ。
「正直わからん。日本語なのか?少なくても中国語
でも英語でもミンナン語(台湾系の方言)でもないぞ」

注意深くきいていると、やっと一つだけわかる単語が
出てきた。おじさん達の会話のなかに「4WD」という
言葉が出てきたのだ。
「どうやら車の話してるらしいぞ」

食事が終わって、部屋に戻った我が友は、ますます機嫌が
悪くなっていた。
「なんだ!!あの食事は!!何もかも、裏山で拾ったもの
ばっかしじゃないかっ!!オヤジたちの話は、何いってん
だか、ちっともわかんないしっ!!若者は、ちっとも
フレンドリーじゃないし!!ここは本当に日本なのか?!
テレビもなければ、言葉も通じない、同年配の若者は
俺達を無視する!!いったいなんなんだ!!」

そんなこといっても、一泊二食つきで、5000円だからねえ~

「そこらでひろってきた」といっても、山の宿なんだから、
料理が川魚や、山菜になるのは当然であって、大体、秋田藩
の隠し湯なんだから、昼喰ったみたいなイクラ丼が出たら
そのほうが変だと思うのだが。

それに山奥の秘湯にしっぽり濡れに来た若い男女が、お互い
をほおっておいて、我々に話しかけて来るというのも・・・・
ユースホステルじゃないんだから。

「円!!大体おまえみたいな贅沢なヤツがなんでもっと文句
言わないんだ!!中国とはいえ、ホテルのスイートにすんで、
毎日ホテルのレストランで食事してる癖に、なんで頑張り棒
だけでカギもテレビもないところで、裏山で拾った栗や雑草
喰わされて文句いわないんだ!!」

僕が文句をいうのは、料金と中身が、極端に釣り合いがとれない
時だけだ。冷凍のハンバーグとフライドポテトを暖めて、ご飯
つけただけで、1000円も取る飛行場のレストランとか。

それにホテルのスイートといっても、ベットルームとは別に
リビングが付いているだけだし、ホテルのレストランといっても
中華レストランで毎日中華料理だから、この宿みたいなシンプルな
日本料理には別に文句はない。露天の温泉が24時間入り放題で
泊まれて2食付きで5000円なら、別に文句いう筋合いは・・・

前に新宿で夜遊びがすぎて、生まれてはじめてカプセルホテルに
とまったが、回り中からいびきが聞こえて、棺桶みたいなスペース
はいって、食事もなしで、5000円だったぞ。確か。

「くそっ!!偽善者め!!普段からいい生活しているおまえの
ようなヤツには、日本のサラリーマンが、何を求めて、こんなに
遠くまでくるかわからんのだっ!!もういい!!温泉はいるぞ!!」

打たせ湯を浴びてから露天風呂にはいると、下は砂利でなかなか
気持ちよかった。

「おいっ!!円!!なにしてるんだ!!」

「ワニだ」

「はあ?」

僕は両手を底につけて、身体を浮かせると、ワニのように身体を
うねらせて、露天中を移動した。

「こうやって身体を横にうねらせるのが、正しいワニのやり方だ。
あくまで優雅にふるまわんとな」
「バカかっ!!なんでこんなとこまで来て、ワニの物まねやってんだ!!
死ね!!死ね!!死んでしまえ!!それにしても24時間入り放題
なのに、何で誰もはいってこない?まだ8時だぞ?」
「みんな地元の人っぽかったから、もう寝ちゃったんじゃない?
田舎の人は、夜早いっていうから。ほれワ~ニ、ワニ。ワ~ニ、ワニ。」
「・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後10時過ぎに我が友は、一人でまた露天風呂にいった。
「エッチが終わったカップルは絶対露天に来るな。待ち伏せしてやる」

なんかいつの間にか、出会いを求めて旅をしてる男ではなく、
ただのデバガメになってるようなのだが・・・・

僕は布団をかぶって寝た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝の朝食はハムが出た
僕は我が友に言った

「よかったな。山では拾えないものが出たぞ。キャベツにハムだ」

「・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰りのタクシーをまってる僕に、我が友はいった
「俺は絶対納得できん。新幹線代を払ってまで、テレビもない
地の果ての混浴露天風呂にきたのに、見れたのはおまえのワニ
だけだ!!俺はこれから、乳頭温泉を全部まわる。
断固として露天の美女を見る!!すべての温泉をまわりきるまでは
帰らんぞ!!」

そういうと彼はバスに乗って別の温泉に向かった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一ヶ月後。東京

「ってことは、円さん達は、別々に帰ってきたんですか?」

グレープフルーツサワーを飲みながらカナちゃんが言った

「当然だろ。こいつは温泉をまわる根性をなくして、タクシー
で帰ったんだから」と我が友が答えた。

「仲悪いじゃないですか・・・二人・・・」とカナちゃん

「ん?そうか?」

「別に」

「だって一緒に旅行へ行って、喧嘩して、帰りは別々に帰って
きたんでしょう?」

「喧嘩はしてない」

「別にしてないな」

「してるじゃないですか!!」

「喧嘩ではない。意見の相違だ。な?」

「行きは行き先が一緒だったから、一緒に行動した。途中で
行き先が別になったから、別行動した。ただそれだけ」

「へんなの~」

B型同士の旅はA型には理解できない

The End

NEXT 「みのちゃんのココログ妖怪ハンター」

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2004.03.15

恐怖!!鶴の湯旧道!!ーその4ー

道路にクマ不在!!安全を確認して我が友のもとに
戻ろうとした僕の背後で、茂みをかきわける音が!!

ガサガサッ ガサガサッ

その音は僕の後方4~5mの距離からした。

キミは、明らかにサイコな人に、いきなり
日本刀の切っ先で背中をススッとされた
ことがあるか?

その瞬間、僕の背中に、そんな感触が走り抜けた。

一瞬立ちすくむ僕。

そして振り向く僕。

お父さん、お母さんごめんなさい。
僕はもうダメです。
死ぬより先に発狂しそうです。

だって、だって。

振り向いた先にいたのはクマではなく。

後ろ姿の、もんぺみたいなのはいた、老婆だったんです・・・

僕の頭の中は、本当に真っ白になった。
何も考えられない。

一時間以上誰も見ることのなかった鶴の湯旧道に
いま、老婆が一人きりで、道のはじっこに座っているのだ

そんな事、ありえるか?
僕はクマよりも恐ろしいものに遭遇してしまった!!
それは山の悪夢!!山道に忽然と一人で現れる老婆。

「あなたの知らない世界」そのままの光景だ・・・・

僕は凍ついたまま、老婆から目が離せない。
金色から紅にかわろうとする山の空間に
ただ、時間だけが流れている

すると老婆が動き出した。
竹の背負いかごみたいなモノのなかに、小枝を入れている。

これはもしかして・・・・・

柴刈り?

日本昔話でしか見たことのない、柴刈りをしてる老婆
なのか?

って、ことは、幽霊でも、山姥でもない????

立ちすくんで、老婆を見てる僕の後ろに人の気配がした。
道を曲がって見えないままの僕に、しびれを切らした我が友
が、僕のバッグを拾ってやってきたのだ。

彼も道に立ちすくむ僕の視線の先にいる老婆の後ろ姿を見て
「うっ」と息をのんだ。

その気配で、僕の体を支配してた凍り付く感触が消えた。
僕はおそるおそる老婆に近寄り、声をかけた

「あの~」
「ん?」振り向いた老婆の顔は、人の良さそうな顔だった
「鶴の湯に行くには、この道で宜しいのでしょうか?」

老婆の表情に、ちょっとだけ平静心を取り戻した僕は尋ねた

「ああ、そうだねえ。この道さ」
「僕達、鶴の湯旧道でバスを降りて、ずっと歩いてきたん
ですけど、鶴の湯は、近いですか?」
「ん。このまま行けば、もう少しだよ」
二重の意味でホッとした。
「有難う御座います」
僕等は再び歩き出した。

10分も歩かないうちに、建物の屋根がみえてきた。
そして露天風呂も

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

露天風呂には確かに女の子が入ってた。彼氏と一緒だったが。

でも、その露天風呂を普通に鶴の湯に来た観光客みたいな人が
旅館の池を見るように見ていく。露天風呂は白濁してるので
まあ、なんてことないといえば、なんてことないだろうが
少なくても太陽の昇ってるうちは、自分がはいるのは
御免こうむりたい感じだ

僕等は母屋と思われる場所にはいり「すいませ~ん」と
声をかけた。

「予約してたモノですが」
「あらあら、どこからきなさった」
「鶴の湯旧道からです」
「えっ?そんなところから?田沢湖高原で降りて電話下されば車で迎えに
いきましたのに」

僕は我が友の顔を見た。そっぽを向いてとぼけている

「あんなとこから来る人いませんよ」
「・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕等の部屋は離れの建物で、母屋からそこに行くとき、立派な
砂利敷の駐車場を見た。でっかい観光バスもとめられそうな
駐車場だ。

腹がたった。

部屋は畳敷きの六畳くらいの部屋だ。カギがなく棒が一本おいてある

無口になってる僕に我が友が、不自然なまでに陽気な声を
出していった

「おおっ!!これは時代劇で見る‘頑張り棒’ではないかっ!!」

僕はその棒を見ると、我が友を冷たい目で見て言った。

「心張り棒だよ。バカっ!!」

「わかってるよっ。ちょっとギャグとばしてみただけじゃんか」

我が友は黙ってバッグのなかをガサゴソとはじめると、
タオルを取り出しいった。

「夕食の前に露天風呂にはいってこよお~っと」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こうして、僕等の鶴の湯旧道における恐怖体験は終わった。
まあ、我が友においては不愉快な一夜の、はじまりにすぎなかった
わけだけど・・・・・

The End

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恐怖!!鶴の湯旧道!!ーその3ー

山姥が出そうなススキの原を無事通過した僕たちの
前方12mで、その木は揺すられていた・・・・クマ?

土が固められただけの道は、前方10m程で左に
曲がっている。そして曲がり角の向こうの木が、一本だけ
不自然に揺れている。いや、揺すられているのだ。

魅入られたように、二人して揺れる木の幹を見ていた
僕等だが、いきなりスイッチがはいったように、二人同時に
片膝を地面につけて、姿勢を低くした

「クマがいるぞ・・・」僕は揺れる木の幹から目を離さずに
ささやくようにして隣の我が友に言った。
「う・・・うん。クマだな。」我が友も幹から目を離さずに
うなずいた。

ゆらゆらと幹は揺れているが、クマは見えない。道路が
曲がっている上、道の左側は崖だ。クマは道をはずれ、
崖の下のところで木を揺すっているらしい。

僕等は片膝をたてたまま、5メートルほど後退した。
まるで敵地に忍び込んだレインジャー部隊か何かの
ように。

「どうする?」僕は揺れる木から、目をはなさすずに
言った。
「どうするって・・・・引き返したら森のなかで確実に
日が沈むぞ・・・・」

僕等はようやく顔を見合わせた。我が友の顔もかつて
見たこともないくらいに真剣だ。間違いなく、僕の顔も
そうだろう。

「選択支は一つだ。クマを追い払って前に進む。」
「それしかないな。森で野宿する装備がないし、一晩の
うちに、きっとクマに襲われる。夜の森を一晩中クマから
逃げまどうのは御免だからな」

そういうと我が友はいきなり、不自然なまでにでかい声を
僕の隣で出した。

「ほれみろ円!!ススキの原にはクマも山姥も
いなかったじゃね~かっ!!この臆病ものめっ!!」

揺れていた幹の動きがぴたりと止まった。

「ほれみろ!!クマは逃げたぞ!!」と僕の隣で我が友は
得意げに言った。ちっさい声だったけど。

一方僕は、これまで以上の恐怖をおぼえていた

「あ、あのなあ、クマに俺達の存在が知られたぞ!!
逃げてくれればいいけど、崖に沿って迂回して、いきなり
側面から襲われたらど~すんだよ!!さっきまで、クマが
どこにいるか、わかってたのに、今じゃ何処にいるか
わかんなくなったじゃんかよお~っ」

我が友は、そこまでは考えていなかったらしい。

「だって、クマに襲われるのは出会い頭で、人間の声
きいたら逃げるって、おまえがさっき言っただろっ!!」
「そんな本に書いてあっただけの話、誰が信用するかっ!!」
「だったら、ススキの原での俺の努力はなんだったんだ!!
喉がかれるまで歌をうたったのは、クマに襲われる為
だったのかっ!?」

やばっ・・・・

「まて!!待つんだ。今はそんな話をしてるときじゃない。
崖側には落ち葉が一杯あった。クマは体毛をたてて、
ススキの穂が揺れる音を消すことはできても、落ち葉を
踏む音は消せないはずだ!!耳をすませ!!近づいて
くればわかるはずだ!!」

話の雲行きがヤバくなってきたので、僕は話を強制的に
中断させ、我が友の思考のすべてを、クマが落ち葉を
踏む音に、集中させるよう仕向けた。
腕の時計を見て時間を計る

1分・・・・2分・・・・・3分。

「逃げたと思うぞ」と我が友。

確かに3分の間、幹は揺れなかったし、落ち葉を踏む
音も、枯れ枝を踏んだ音もしなかった。僕等の目の前に
あるのは、夕暮れに金色からオレンジに染まりつつある、
山の風景だけだ。

「よし。行こう」と僕。
「うん。」と我が友。
二人は立ち上がり、前に進んだ。

いや、二人は立ち上がったが、前に進んだのは僕だけだ。

「どうした?」振り向き、我が友を見て僕はいった。

「いや。先に進むが、ここは円。おまえが5m、いや、
7m先をいけ」

「・・・・・・・・・・」

一瞬僕の頭が空白になった。

「おい、さっきまで、クマがいたんだぞ!!襲われたら
どうする!!」
僕は真剣に抗議した。

「だからおまえが前をいくんじゃないか。二人一緒に
襲われたら、鶴の湯を目前にして、この場で野垂れ
死にだ。どちらか一人が鶴の湯までたどり着けば、
きっと猟師がクマを退治してくれる」

猟師って・・・・そんなのいるのか?温泉宿に?

「いや、しかし・・・・それは」

我が友が、見たこともないような残酷な瞳でニヤリと
していった

「確かに鶴の湯旧道で降りたのはオレが悪い。
だから責任をとって、ススキの原でオレは5m前を行った。
それでおれの責任点はチャラだ。だから今度はおまえが
責任を果たせ。立派に親友の役に立ってみせろ」

鬼だ・・・・こいつは鬼だっ!!変態!!人殺し!!鬼畜!!

「ほら、いけよ。日が暮れると、襲い来るクマが視認できなく
なって、お前はますます危険になるぞ」

僕は泣きそうな顔をしながらも、頭の中では、必死でクマ対策
シミュレーションを組み立てた。

1.間合いはクマに思いっきり抱きついてしまうのが一番
  安全クマは自分の胸をかきむしれない
2.腕をかみつかれたら、腕を抜こうとせず、相手の喉の
  奥につっこんでやる。そしたらはき出してくれる。
  抜こうとすれば喰いちぎられる。
3.四つんばいではしってきたら、跳び箱のように飛び越える

思いつくのは、それぐらいだ。僕には、二年間、両腕に二キロ
ずつのパワーリストをつけて訓練した、必殺の手刀打ちがある。
でも、クマには絶対きかない。牛を殺したマス・大山や熊殺しの
ウイリーではないのだ。ああ、こんな事なら、合気道や柔道で
なく、極真空手を習っておけばよかった・・・・・

「おい、日が暮れる。早くいけ!!」

僕はいつの間にか捕虜になった兵隊のような立場になっていた。

何故だ?コイツに「ついてくればいいんだよ」といわれて
温泉に来ただけなのに、なんで人っ子一人いない山奥で、
熊への人身御供に、されなければならん?

そう思いながらも、僕は全神経を聴覚に集中させ、少しずつ
前にすすんだ。曲がり角の手前5メートルくらいで、後ろを
見ると、我が友はまだ、さっきと同じ場所にいる。7メートル
どころじゃない。10メートルは離れている。

間違いなく、僕が曲がり角の向こうを確認するまで、あの
場所から動かないつもりだ。

僕はさらに前にすすみ、曲がり角の手前まで来た。
こわい。猛烈に怖い。もし、クマが僕等同様、その場を
動かずに様子を探ってたとしたら、僕とクマの距離はすでに
5m以下だ。今、この瞬間、道の左手から、クマが
襲いかかってきても、まったくおかしくはないのだ。

思わず、僕は後ろを振り向いた。我が友はやっぱりさっきから、まったく動かず、しかも僕に手振りで「行け!!行け!!」とやってる。泣きたい。マジ泣きたい。

僕は、曲がり角の手前で、荷物がはいったバックをおくこと
にした。こうしておけば、クマに襲われても素早く逃げられるし、
クマは走る僕を追わずに、このバックに気をとられるかも
しれない。完璧だ。

素手になると僕は、ありったけの集中力を耳と目に回し、
おそるおそる角を曲がった。

いない。

なにもいない!!

道だけだ!!

クマなんかいないぞ!!

これで温泉にたどり着ける!!やったあ~!!
僕はほっとして曲がり角の手前に戻り、バッグを拾って、
我が友に合図しようと道を戻りだした。

「ガサガサガサ!!」

しかしその時、僕の後ろ。道の左側の崖のなかで、
思いっきり藪をかきわける音がしたのだ・・・

本当の恐怖が、僕の背中を吹き抜けた瞬間だった

(To be continue.Uploads soon!!)

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2004.03.08

恐怖!!鶴の湯旧道!!ーその2ー

露天で混浴。東北桃源郷を目指す僕等に
森の試練が・
・・

さすがに二人とも言葉を失った。
東京生まれの東京育ちの二人が、人生ではじめて
文明の匂いのするのは、アスファルトの道路だけ
という状況にさらされたのだ。
しかも「鶴の湯旧道」という停車場なのに、
道なんかない。

「僕の前に道はない。僕の後に道はできる」

中学校だか小学校の国語の教科書のってた
高村光太郎の詩(だと思うけど、まちがって
たらごめんなさい)が僕の頭を飛び交った。

今、僕の前には森がある。だが、僕がすすんでも道はできそうもない。

先生。教科書は嘘をついてました・・・

共にたじろいでいた我が友だが、僕の冷たい
視線を感じたのか、きょろきょろと周囲を細かく
探り出した。

「で、ここで降りた訳だが、どの道をいくのだ」

キョロキョロ。キョロキョロ。

僕は、最悪、道にそって戻れば夜には人のいる
ところに出られると踏んだ。バスが往復してくる
可能性は高い。

だが、こういう田舎で、バスが何時まで走っている
のかは、皆目検討がつかないから、歩き続ける
覚悟は、したほうがいいだろう。

そして、鞄の中にあるはずの、当時はまだ珍しかった、
携帯電話をさがしはじめた。もちろん海外出張中の
オヤジのモノを勝手にもってきたのだ。

ごそごそと鞄の中を携帯をさがして、まさぐってる
僕に、いきなり我が友の得意げな声が聞こえた。

『ほら!!みろ!!円!!おれの判断は間違って
いなかったのだ!!そこに「鶴の湯旧道」と書いて
あるではないかっ!!』

たしかに道はないが、木に「鶴の湯旧道」と
書かれた板が、打ち付けてあった。
まあ、そこに至るまで、道らしい道はないが、
獣道みたいなのはある。

インディアンか、ベトナム戦争のLRP
(ロング・レンジ・パトロール)メンバーだったら、
確かに「道だ」というだろう。

僕には板きれがなかったら、ちっともわからないけど。

「いくぞ!!暗くなったら、混浴露天の意味がないからな。」

我が友は元気一杯で進み出した。僕は携帯を取り出すと
スイッチを入れた。感度を示すアンテナは三本立っている。
きっと我が友のアンテナも三本たってるだろう。
こっちは携帯の電波とは関係ないが。

進んでいくと、道はあいかわらずなのだが、所々に
「鶴の湯旧道」と書いた板きれが木にうちつけてある。
僕等はブレア・ウイッチな森を、この板きれをたどって、
進んでいった。

「鶴の湯旧道」「鶴の湯旧道」「鶴の湯旧道」「鶴の湯旧道」

僕たちは薄暗い森のなかを、板きれに書いた「鶴の湯旧道」
を読み上げながら進んだ。だが、二十分くらいすすんでも、
そこはやっぱり「鶴の湯旧道」だ。

「ちょっとまて!!」すでに道なき道と、声を出すのに
疲れ果て、何度目かの「鶴の湯旧道」をつぶやくように
声にだした我が友に、僕はいった。

「ここが鶴の湯旧道なのはわかった。おまえは正しい。
だが、この鶴の湯旧道は、鶴の湯にたどりつくまで、
あとどのくらいかかるのだ?旧道ってことは、秋田藩の
お殿様が使ってた頃からある道だとした場合、少なくとも
一里(約4キロ)はある可能性が高いぞ。もう一時間も
すれば、日が暮れはじめるだろうし。おまえ、懐中電灯か
なんかもってるのか?」

「オレは混浴露天にきたんだからそんなもんもってないぞ。
山登りしにきたんじゃないから。円こそもっってるのか?」

「俺はおまえが、ついてくればいいといったから、当然
そんなものもってきてない。懐中電灯もって泊まるのは
中国の田舎の宿だけで、十分だからな」

我が友は周囲を見渡した。「日がくれたら、看板が見えなく
なるから、完全に道に迷うな。やばい。急ごう」

僕はバッグのなかの携帯の感度を確認した。大丈夫だ。
「あと30分だ。30分進んで道らしい道にでなかったら
戻る。いいな?」僕は我が友にいった。
「しょうがない。こんなところで道に迷って野宿するよりは、
バスが通る道を歩いた方がマシだからな」我が友も同意した。

二人は「鶴の湯旧道」の看板を見つけながら歩いていった。
すると小川を渡る丸木橋のあたりから、道らしくなってきた。

「道だな」と我が友。
「道だ」と僕。

僕等は足早に歩いていった。そして、ついに陰鬱な森を出た。
そして僕等の前には明らかな道がっ!!

そう、傾いた太陽に黄金色に輝くススキの原のなかを、
うねうねとつづいているであろう道だ!!

「道だ」と我が友。
「道だな」と僕。

だが僕等は進まなかった。
道はあるが、五メートルもいかないところで折れている。
そこから先は見えない。

僕は子供の頃見た、「あなたの知らない世界」を思い出した。

たしか、一人で写真撮影をするために山奥をあるいていた
カメラマンが、いきなり道ばたですわってるおばあさんに
遭遇して・・・・というヤツだ。なんかこのススキの原を
すすんでいくと、おばあさんがかがんでいそうだ。マジで。

怖すぎる・・・・・

「う~ん」と我が友がうなった。
「円、ともかく先にすすもう。日が傾いてきてるし、
道なんだから鶴の湯は近いぞ」

確かにその通りだ。もう引き返すには遅すぎるし。僕は
もう一度、ススキの原を見渡した。そして、ススキの原に
すわっているかもしれないおばあさんよりも、現実的な
問題に気がついた。

「進もう。だけどキミ、5m前をいけ」と僕は我が友に言った。

「なっ、なんでだよっ!!」さすがに我が友は嫌がった。

「だって、ここは東北だろ?東京と違ってクマがでるじゃ
ないか。しかもこのススキの原では視界がきかないし。
クマは毛をたててせまってくるから、ススキの原を近づいて
きても、音がしないと西村寿行の小説で読んだぞ!!」

「って、なんでオレが前なんだ!!」

「だって、一緒に歩いてて、一度にクマに襲われて二人とも
あるけなくなったらどうする?二人そろって野垂れ死にだぞ?
五メートル離れていれば、片一方がクマに襲われているうちに、
もう一方が助けをよべるじゃねーかっ!!結果二人とも
助かるだろ?」

「いや、その理屈はわかってるけど、どうして俺が前なの
かって事をきいてるんだよっ!!」
「バカだなあ、クマは頭がいいから、正面からおそって
こないで、後ろに回っておそってくるんだよっ!!おまえが
少しでも安全にと思い、言ってるんじゃんか!!」
「うそくせーぞ!!それはっ!!」

僕の中にいる、金色の瞳をした悪魔が目を開いた。

『じゃあ言うが、責任点だ。おまえが鶴の湯旧道で降りたん
だし。運転手に一言「鶴の湯いくにはここでいいんですか?」
ときけばよかっただろ?』

「うっ・・・・」
「まあ、命が惜しければ、おまえが、五メートル前方を
進まなければいけないのは、間違いない。クマが、
後ろから襲うというのも、いくつもの本で見た。あと、
クマは人を襲わない、襲うのは出会い頭の時だと
いうのも本で見たから、心配ならおまえ、歌うたってけ」

そうして、「線路はつづくよどこまでも」をやけくそになって
歌う我が友を先頭に、ぼくらはススキの原横断をはじめた。

僕は冗談抜きでうしろばかり確認していた。前方はなにか
不審な事があったり、クマに襲われたりすれば、我が友の
歌が消えるだろうから、歌が聞こえてる限り警戒する必要は
ない。問題は後ろだ。冗談抜きに怖い。クマはでなくても、
包丁もった老婆が、走っておいかけてきそうな気がする。

「おおっ!!」我が友がいきなり叫んだ。

「ススキの原が終わったぞ!!円!!」

ススキの原が終わったところは、一車線くらいはありそうな
道幅の、道だった。舗装はされてないけど、あきらかに道だ。
これなら確実に鶴の湯は近い。僕等は顔を見合わせると、
最大限のスピードで歩き出した。その時・・・

前方の曲がり角の向こうにある木が、大きく揺れた。

クマだ・・・・・

姿は見えないけど、クマだ・・・・・

クマ以外、一体誰が、あんな木を揺すれるのだ・・・・・

僕等は冗談抜きで、その場に凍り付いたのだった・・・


NEXT 「恐怖!!鶴の湯旧道!!ー後編ー」
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恐怖!!鶴の湯旧道!!ーその1ー

露天、混浴、秘湯。東北のパラダイスを目指した僕たちに
ブレアウイッチな森が・・・

「あのな、円。体調悪いんだろ?東京にいないで
温泉いこうぜ!!湯治だよ湯治!!絶対体にいいって!!」

中国での二年間の勤務の末、体をガタガタにして、一時帰国、
休養してる僕のもとに、中学時代から付き合いのある友人が、
電話をくれたのは、もう何年も前の事だ。

彼との長い付き合いに感謝の意をこめて、ここでは、
「我が友」とよばせていただく。

「おまえは中国いたから知らないだろうけど、今、日本は
温泉ブームなんだよ!!女子大生もOLも、連休には
みんな友達同士で、温泉にいくんだ!!。しかもな、俺
が今、おまえと行こうとしてるのは、秋田藩の殿様の
隠し湯だったところで露天なんだよ!!更に混浴!!
露天で混浴だぜ?!おまえ見たことある?露天で混浴!!
ないよな?俺と同じ東京生まれの東京育ちだもん。
しかもこのシーズンは、紅葉がきれいなんだよ!!紅葉に
露天で混浴なんだぜ!!もう、いくっきゃないでしょ!!」

確かに僕は、二年間中国にいたさ。だけど、そういう人
の為に、日本の新聞を3日遅れくらいで、国際郵便で運んで
くれるサービスがある。
だから日本の事情くらい、ちゃんと知ってるのだ。

「温泉ブームは去年の話だろ?しかも混浴目指して行った
都会の男共は、行ったはいいが、混浴していたのは、地元の
おばちゃんばっかしで、おもいっきし、視姦されて帰って
きたと聞いてるぞ」

「チッチッチッチッ!!」我が友は電話の向こうで、怪傑
ズバットのようにシュラッグした。

「円くん。このオレが、そんな凡ミスするわけがないでしょ。
それは淫欲にまみれた、未熟者の顛末な訳よ。オレのような
熟練者は、そういう淫欲にまみれた連中にはたどりつけない
所を狙う訳よ。だから、秋田藩の殿様の隠し湯。エロ男には
簡単にたどり着けない場所。しかも、一泊二食付きで5000
なんぼ。安いだろ?安くて、紅葉を楽しめて、露天で混浴。
ああ俺って、なんていい友達なんだっ!!」

でもなあ~往復新幹線でいったら、宿泊費は五千円でも、
それなりにするような・・・・それなら都内のホテルで
のんびりルームサービスと室内プール楽しんだほうが
いいような・・・・・

「バカかっ!!おまえは!!中国ではホテル住まいだろ?!
日本に帰ってきてまで、お金つかってホテル泊まって、
どーすんだよ!!日本で外泊するなら、日本情緒あふれる、
ジャパニーズ・トラディショナル・おやど。すなわち、旅館だろ!!
(ジャパニーズ・トラディショナル・ホテルじゃないのか?
ジャパニーズ・トラディショナル・お宿って・・・)
二年間も異国でがんばってきた親友の為に、オレが日本情緒を
たっぷり味あわせてやろうっていうのに、その乗り気のなさは、
なんだよっ!!」

何故か我が友はキレた。しかもマジ切れだ。まあ、中国では
一ヶ月五万円で暮らせたので、お金はたっぷりあるし。我が友の、

「すべての手配はオレがするから、おまえは一緒にくるだけだ」

という言葉もあったので、僕は「わかったよ。いくよ」と答えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
はじめて乗る東北新幹線は、やけに座席が狭くて(東北新幹線
の工事に苦労なされたみなさんの名誉の為に、僕の肩幅は
平均的な日本人より広いことを断っておきます。普通の日本人なら
丁度良いかと)僕はウォークマンをききっぱなしだった。

となりの我が友は、ガイドブックを眺めながら、やけにご機嫌だ。
きっと紅葉の露天風呂で肌が紅葉色に染まった女の子の群れ
でも想像してるのだろう。
乗るとき、駅弁を買おうとしたら、「むこうについたら、この店で
昼くうぞ!!わかってるだろうな?」とガイドブックをみせられて
言われた。

僕は日本情緒あふれる駅弁をあきらめ、サンドイッチとカフェオレを買った。

新幹線だから一時間半くらいでつくのかと思ったら、全然そんなこと
はなく、喉がかわいたので、コーヒー飲んだら胃が痛くなった。
やっぱこなければ良かった。いや、来るなら、日本情緒たっぷりの
夜行電車で寝ながらくればよかった。新幹線が走ってる今、あるか
どうかしらないけど。

盛岡で新幹線を降りた僕等は、駅の近くの海鮮どんぶりやにいった。
我が友は、いくら丼を頼み、「うわっ!!こんなにイクラがのってるっ!!すげえ~!!さすが東北!!」とのたまわられた。

北海道でイクラが沢山のってたら、さっすが!!だけど、東北でも、
イクラが多いと、さっすが!!なのか?

いや、築地でイクラ丼頼んで「さすが築地!!イクラがこんなに!!」
はアリだろうから、まあ、いいんだろうな。

それから先の事は申し訳ないのだが、記憶がすっぽり抜け
落ちている。

記憶が戻るのは、乳頭温泉の鶴の湯に向かうバスにのった
あたりからだ。

すでに午後の半ば頃だった。ごく普通のワンマンバスに僕等は
のったが、バスは山道を走っていく。
「どこで降りるかわかってるんだろうな?」僕は外の景色を
見ながら、我が友に聞いた。「もちろんだよ。きまってんだろ」

僕は我が友の答える声のなかに、かすかな不安を感じた。
彼の顔を見たとき、「次は鶴の湯旧道」というアナウンスが
流れた。我が友は、すかさず降車ボタンを押した。
そして僕等は「鶴の湯旧道」で降りた。

だが、おりるのが、僕等二人だけなのはともかく、バスにのっていたすべての乗客が「おまえさん達、こんなところでおりるのかえ?」って顔で僕等二人を見ていたのを、僕は見逃さなかった。

そしてバスが去ったあと、僕等二人の前にあったのは、
ブレアウイッチな森だけだった・・・・

(To be continue.Uploads soon!!)

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