いい年した男が三人でーその1-
大学時代からの友人が椎間板ヘルニアで自宅療養になった。
その友人から、ある日僕の携帯にメールがきた。
「モトちゃんが、足、骨折したらしいよ」
他人の不幸は蜜の味。大学時代「悪魔」とまで呼ばれた僕は,
速攻でモトちゃんのうちに電話をかけた。
電話にでたのは奥さん。
「モトちゃん、足の骨折ったんだって?」楽しそうに尋ねる僕に、
「えっ?なんで知ってるの?今、病院から帰ってきたばっかり
なのに!!」と、ちょっと驚く奥さん
「はは。僕にも色々と情報網があって・・・・・・」
情報網も糞もない。単に21世紀日本の携帯文明の成果だ。
「まあ、いいや。なんでもないところで転んで、足にひび
はいったのがショックみたいで。年なのかしら。動けないん
ですよ。今ベットにいます。フフフ」
奥さんの微妙に楽しそうな「フフフ」。動けないモトちゃん。
僕はナニゲに昔見た映画『ミザリー』を思い出した。
こういうときに備えて、モトちゃんは普段から奥さんを大事に
しているのだろうか?
結婚記念日と奥さんの誕生日には、きちんと花束くらい
あげているのだろうか?
だとしたら、亭主の不幸をおもしろがるような、この笑いはなんなのだ?
モトちゃんの奥さんは、僕と同じB型だが、血液型だけではなく、
性格も僕と同じB型悪魔系なのだろうか?
動けないのをいいことに、奥さんが外出する間、無理矢理
成人用おむつをつけさせられるモトちゃん
「おでん食べさせてあげるね」と口元まで運んでもらうが
激熱で唇も口内もやけどするモトちゃん
「ウーロン茶のませてあげるね」と言われるも、
2Lのペットボトルを、無理矢理口につっこまれ、
溺死しそうになるモトちゃん
まさにドメスティック・バイオレンスの嵐だ。
電話の向こうで、「フフフ」という、笑い声一つで、
とんでもない妄想が繰り広げられているのも知らず、
寝たきりになった亭主の実況レポートにはげむ奥さんに、
僕はモトちゃんに代わってもらうよう頼んだ。
「電話とどくかなあ~(コードレスじゃねーのかよ!!)。
携帯にかけてくれっていってますよ」
「イヤだ。携帯代高いもん」
「しょうがないな~」ガサゴソ
「よお~」モトちゃんだ!!
「足にヒビはいったんだって?」
「いやいやいや、なんかちょっと、ひねっただけなのに、
ヒビはいっちゃってさあ~。今日は仮ギブスみたいなの
つけてもらって、明日ちゃんとしたの、つけてもらう
予定なんだけどさあ~。いずれにせよ、車はしばらく
使えないから、仕事も休みだわ」
「お気の毒。でもまあ、ずっと忙しかったから、この辺で
ゆっくり休養とって、奥さんの愛情を堪能してよ」
「ははは。そうするかなあ~」
とりあえずドメスティック・バイオレンスの嵐は吹きまくっていないらしい(当然だ!!)
安心して(?)電話を切った僕は、携帯をとると、
ヘルニア友人と、僕等の共通の友人のミユちゃんに、
メールを入れた。
「モトちゃん、足にヒビ!!三本目以外立たず!!」
だが、そんな僕にも、モトちゃんの不幸を、はるかに
凌ぐ不幸が、ヒタヒタとせまって来ていたのだった。
その時は、知らなかったのだけど。
(To be continue)
