« 憂鬱なダックちゃん(6) | Main | 憂鬱なダックちゃん(8) »

2007.07.16

憂鬱なダックちゃん(7)

翌日。

僕は、親父の事務所の秘書に書かせた借用書を、二階工場の事務所にヨシさんが一人でいるときをみはからって持っていった。

この秘書は上海の大学を出ていて非常に賢い。

僕がおよその事情を話すと、すぐに僕とヨシさんの分の借用書の下書きをもってきて、僕の確認をとってからタイプしてくれた。

「まあ、利子なんかはないので返済の期限だけですけど。1年です。期限内に返せなかった時のペナルティはかかないでおきました。なんなら追記しますけど。」

「金も美貌もない女に借金返せないときのペナルティをつけても意味ね~よ。ちゃんと返せるまでは一生懸命通訳しろってオレが言ってたって言ってくれよ。」

そういうとヨシさんは借用書にサインして、鞄から厚みのある封筒を出した。

「円さんが一緒にわたしといてくれ。」

「預かり書きましょうか?」

「いるわけね~だろ」

ヨシさんは格好良く笑いながらそういうと、工場内に入っていった。

遊びなれた男って粋だな~

 

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

僕の方は馴染みの両替屋のポケベルを鳴らして、今日の両替レートを確認すると、会社の手前まできてもらった。

「悪いね」

原チャリで乗り付けた両替屋は20代後半の男で、非常に精悍な顔つきをしている。

僕がはじめて中国に来たときに、ホテルの前で声をかけてきた両替屋のうちの一人だ。

どいつもきわめていかがわしい雰囲気だったのだが、彼だけがまっとうな雰囲気だったうえ、レートもふっかけてこないので、こちらに住むようになってからはずっと彼に両替を頼んでいた。

「バイクがあるからかまわないよ。いつでも連絡くれよな。」

「最近ホテルの前いないもんね。」

「今は建築内装の仕事はじめたんだ。そっちが忙しくてホテルの前で客待ちしているヒマがなくてさ。でもあんたなら連絡してくれればいつでもこっちからいくからさ。」

「助かるよ。」

そう言って僕は封筒に入った外貨券4000元を渡した。

彼は封筒の中の札をパラパラとめくり、すべて100元札なのを確認すると、電話で言ったとおりのレートで両替して人民元をよこした。

「そんなパラパラとやっただけで数も確認できんの?」

「いや。でもあんた相手にそんな細かい数確認する必要ないしさ。今まで足りなかった事は一度もないしな。」

「ま、お互い様ってとこだね。」

「それよりさ、こんど食事でもご馳走しようか?」

僕はちょっと考えた。

「悪くないね。でも、内装の仕事が儲かってからでいいよ。」

両替屋は、はははと笑った。

「んじゃ、そういうことで。」

「うん。今度は月の半ばくらいに又両替頼むから。」

両替屋が原チャリで市内に戻っていくと、僕はタクシーを拾い、親父の事務所があるホテルに向かった。

いくらなんでも年収以上の金額をダックちゃんに貸すのに、社内でという訳にはいかない。

 

  
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

ホテルにある親父の会社の事務所で秘書に入れてもらったお茶を飲んでいると、ダックちゃんがやってきた。

僕は机の上に、ヨシさんの5000元と僕の5000元、計10000元をつみあげた。

「じゃあ、これがお金。ヨシさんとオレとで5000づつあるから数えて確認して。」

ダックちゃんは一枚ずつ丁寧に数えた。

僕等日本人の感覚からすると、大学出たての子がいきなり目の前に500万ほど積まれるのと一緒だ。

僕等側からすると、ちょっとした買い物しちゃったという金額だけれども、農村育ちのダックちゃんにしてみれば、いままで見たこともない大金なのかもしれない。

そう考えると、これでよかったのだろうか?という気がしてきた。

僕が外資系の会社に大学出て勤めたとして、自分の事ならともかく、自分の兄弟の事で困っているからといって、会社のエロい人が、500万ポン!!と貸してくれるだろうかと考えるとそんなことは絶対ありえない気がする。

しかも僕にしてもヨシさんにしても、最初から返してくれればめっけもんくらいの気持なのだ。

自分の事ながら、日本人って気前が良すぎないか?

「はい。確かに10000元あります。」

「じゃあ、この借用書の内容確認してサインして。金利はいいから、返済期日は守るように」

ダックちゃんは内容を確認して嬉しそうな顔をしてサインした。

「あとハンコ。」

「あっ。忘れちゃいましたぁ~」

「あ?じゃあ、拇印押して。親指で。」

僕は秘書に朱肉をもってこさせた。

ダックちゃんは、4枚の借用書を前にうつむいた。

「早くおしちゃって。それで終わりだから」

「・・・・・・・」

ダックちゃんは金と借用書を前にうなだれたままだった。

そして、いきなりシクシクと泣き始めた。

なんだ?

僕とヨシさんの優しさに感激して泣きだしたのか?

ダックちゃんのシクシクは泣きじゃくりにかわってきた。

僕は秘書の顔を見た。

秘書も僕の顔を見た。

やはり何故泣いているのかわからないらしい。

「何泣いてんだ?」

僕は仕方なく、泣きじゃくるダックちゃんに聞いてみた。

「だって、だって・・・・・」

ヒック・・ヒック・・・

「こんな事・・・こんな事・・・・」

ヒック・・・ヒック・・・

「私、犯罪者じゃないですよぉ~っ(>_<)」

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)