憂鬱なダックちゃん(5)
翌日。
相変わらず浮かぬ顔をしてダックちゃんが出社してきた。
「おはようございます」と、元気のない声で挨拶すると工場の中に入っていく。
「まだダックちゃんは元気でね~の?」
僕がチョビにきくと、チョビは工場長に「あの話、ききました?」と尋ねた。
工場長がきいたきいたと言ったので、僕は再度チョビに「なんの話?」と聞いてみた。
「ダックちゃんはねえ~、お姉さんが二人いて、それぞれに子供がいるんだけど、今、そのお姉さんが二人でやってきて大変な事になっているのよ。」
「どんな?」
「ダックちゃんの故郷の市政府が、市内の戸籍を5000元で売ることになったの。で、お姉さん達がダックちゃんに、お前は大学でて合弁会社に勤めているんだから子供二人分くらいなんとかなるだろう?なんとかしてくれって毎日おしかけてきてるの。」
「なんで戸籍かわなきゃならないんだよ?子供は一人なら戸籍あるじゃん。」
「だって農村の子供は農民戸籍でしょ!!」
「農民戸籍だとなんか問題あるの?」
「え~とですねえ。」工場長が説明した。
「農民戸籍は、農民しかできないんです。もちろん市内に働きに出ることはできるけど、市内の会社で正社員にはなれません。あくまで臨時雇いのバイト。」
「え~!?マジ?ってことは中国では農民に生まれたら農民って事?」
「農民がみんな市内にでてきたら、食料つくる人がいなくなるじゃない!!」
「いや、そういう問題じゃなくてさあ、中国は共産主義だろ?みんな平等なんじゃないの?農民には職業選択の自由とかないわけ?」
「まあ。」
(-_-;)
そんな話ははじめてきいた。
それじゃ、江戸時代の日本か、カースト制度のインドみたいだ。
あきれてものが言えない。
「だからお姉さん達も必死なんですよ。この機会に市内の戸籍を買えなければ、子供は一生農民かもしれないし。」
「はあ。でもダックちゃんはうちの正社員じゃん。ダックちゃんは農民じゃないの?」
「ダックちゃんは大学でてるでしょ!!」チョビが何言ってんだ!!という顔をした。
「農民でも頭の良い子は大学にすすみます。大学でたら市民ですよ。」
「つまり頭の良い子は都会に住んでもいいけど、バカは農業やってろということ?」
「いや、それはちょっと・・・・」
共産党の幹部でもある工場長は言葉を濁した。
「でもそうやって戸籍売ってるなら、今回ダメでもまた売るんじゃない?」
「さあ、どうでしょう?大体農民に市内の戸籍売るって事自体、今回はじめてですし。」
「多分今回きりよねえ?そんなことしたら、中国から農民なんていなくなっちゃうし。」
「でもさあ、農村でも万元戸とか億元戸とかでてるじゃん。別に農民でもいいじゃん。」
「いや、お金の問題では・・・」
「チョビがお金持ちの農民と結婚したら、チョビも農民になるの?」
「し・ま・せ・ん!!」
「お金持ちの農民より、貧乏な市民なのか?」
「面子がないし、子供が農民にされちゃうでしょうがっ!!」
そっか。
やっぱ蔑視とまではいかなくても、単なる田舎モンというよりも、自分たちより、やや下の身分みたいな感じなんだな。
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
僕は二階工場の事務所にいくと、ヨシさんに聞いたことを話した。
「なんだ。それでダックの野郎元気ねえのか?」
「はあ。」
「農民は農民でいいじゃね~か。戸籍買うなんてせこいことしないで、勉強してダックの奴みたいに大学でりゃあ市民だろうが?」
「ま、それもそうですけどね。でも、姉二人のやってることからして、頭の程度はあまりよくないから、その子供って事は・・・」
「しかも農民旦那の血も混じっているしな。」
ヨシさんはゲラゲラ笑った。
「でもな、ダックの奴は今年大学出たばっかりだろ?今だって見習い扱いだろ?給料いくら?」
「今月から正社員ですよ。でも600元くらいでしょ。」
「1万元貯めるのには飲まず食わずでも2年くらいかかるな。」
「期間限定だから、今月中にお金つくらないとダメだそうです。」
「日本語しゃべれるんだから、奴がムチムチぷりんでもうちょっとマシな顔してりゃあ、20日もあれば稼げるけどな。」
「え~。それはつまり体を使うお仕事ですね?処女だから日本人相手なら3人相手すればいいかもですよ。」
「高い金とれるのは最初だけだろうがっ!!」
「そうでした。でもお弁当用の調味料入れ日本からもってきてケチャップつめて終わったあとばらまけば・・」
「そりゃいい考えだ。って円さん。あんた金だしてダックとやるか?」
「絶対やりません。タダでもやりません!!」
「そうだろ?ダメだ。奴が処女だとしても、女としての価値はない。」
「女としては売り物になりませんね。ダックだし。」
「しょうがねえなあ。1万元て日本円でいくら?」
「今のレートだと14万かけるくらいです。」
「出せねえ金じゃねえよなあ。」
「そうなんですよねえ。僕もそう思うのですけど、社員と金の貸し借りするのもどうかと。それに返せないとなるともっと気まずくなっちゃうし。何年も勤めていればまだしも、先月見習い期間が終わったばかりですからねえ。」
「まあな。でもオレ、半分なら出してもいいよ。」
ヨシさんが笑いながら言った。
「でも中国の農民が5000元かせぐのにどれくらい時間かかるかわかりませんよ?」
「ま、その時はしょうがねえだろ?女買ったと思ってあきらめるわ。」
そういう割り切り方があったかっ(^_^;)
「じゃあ、もう少し様子見て、ダックちゃんがお金工面できないようなら、私も半分出してあげることにします。」
「おうっ!!宜しく頼むわ!!」
「オヤジの事務所の秘書に言って、ヨシさんの分の借用書も準備させます。」
「宜しく!!」
そういうとヨシさんは帽子をかぶり二階の工場に入っていこうとして、つぶやいた。
「はあ~。ブスでやれねえ上に金はかかる。どうしょうもない通訳雇っちまったなあ~」
え?これって僕のせい?????
To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
