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2007.07.23

憂鬱なダックちゃん(8)

「犯罪者?誰もそんな事いってね~だろ?」

僕はうつむいて泣きじゃくるダックちゃんを見て言った。

「だって、だって、中国じゃ拇印を押すのは逮捕された時だけですっ!!」

顔をあげたダックちゃんは、目から涙、鼻からは鼻水がたれまくっていた。

誰か鏡を見せてやってくれ(^_^;)

「そんなの知るか!!日本人に金借りるのに、中国でなんたらかたらなんて話はつうじね~だろうがっ!!」

流石に僕もこの訳のわからない非難にはカチンときた。

「だって!!だって!!」

「だっても糞もね~んだ!!大体何ヶ月か前に知り合ったばかりの外国人から無利子で金借りるのに、お前が借用書に押す判子ももってこねえからこういう事になるんだろうがっ!!」

ヒーッ ヒーッ

ダックちゃんは硬く硬く目をつぶって変な声を出して泣き出した。

もちろん顔は前にもましてぐちゃぐちゃだ。

まあ、日本でも警察に捕まれば拇印は押させられるだろうが、なんだこの非難は?

僕も声を荒げているうちに段々エキサイトしてきた。

「なんだ!!私は犯罪者じゃないって!!誰も犯罪者だなんて言ってねえだろうが!!日本じゃ犯罪おかした人間は警察に指紋とられるが、普通に借用書書くときだって、判子もってなきゃ拇印おすんだ!!日本人が金貸すのに、日本の常識にしたがって書類を処理するのが、そんなに酷いことかっ!!それも元々は自分の年収以上の金を無利子、無担保で借りるのに判子一つもってこねえお前が悪いんだろうがっ!!」

ヒーッ ヒーッ

「だいたいなあ~。それくらいの事で、オレを悪く言えるほど、お前の周囲はいい人だらけなのか?お前が夜も寝られないで困っているときに、金貸してくれるっていった中国人がいるのか?」

ヒーッ ヒーッ

「ヒーッじゃねえよっ!!いるのかいないのかきいてるんだよっ!!」

「いませんよお~(>_<)」

「いねえだろうがボケ~っ!!同じ同胞の中国人がしてくれないこと、してくれる日本人が、酷い人間なのかどうか答えてみろやっ!!」

ヒーッ ヒーッ

『じゃあ、お前の姉ちゃん達はどうなんだ?てめえの息子の問題だろ?お前がどれほど姉ちゃん達に世話になったかしらんけど、だからといって、月給600元で働きはじめた妹に、いきなり一ヶ月で1万元つくれって毎日押しかけてくる姉が俺らより優しいのかっ!!てめえの息子の問題なら、まずてめえが努力して、その上で「困ってるんで余裕あったら少しお金貸して」というのが普通だろっ!!』

ヒーッ ヒーッ

「ヒーッじゃねえよっ!!そういう非常識なお前の姉どもとくらべて、困ったのみかねて、3ヶ月前に働きだしたお前に何の恩もねえのに、ポンと金貸してくれる俺らは、お前がそうやって泣いて抗議するほど酷い、鬼のような人間か?日本鬼子とでもいうんかいっ!!」

ヒーッ ヒーッ

「お前は姉に恩があるから、なんとか金をつくりたい。俺らはお前に何の恩もないのに、お前が困っててかわいそうだから金つくって貸してやる。お前と俺らとどっちがいい人なんじゃボケ~っ!!」

ヒック ヒック ヒック。

「大体お前の事を犯罪者だと私が思っているとしてだなあ~。犯罪者に金貸す奴がどこにおるんじゃ!!」

ダックちゃんは次第に泣きやんだ。

そして4枚の借用書に黙って拇印を押した。

押した後、またなきじゃくり、泣きやむと1万元を抱えて帰っていった。

ドアを閉めて秘書がいった。

「なんで担保も利子もなしでお金借りられるのに、ああやって泣いて騒がなきゃならないんでしょうねえ?拇印おすのがイヤなら、一端帰って判子もってくればいいのに」

知るか!!そんなこと。

私がききたい。

 

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

翌日。

僕はヨシさんに、ダックちゃんが拇印を押した借用書を渡すついでに昨日の事をそのまま話した。

「ぎゃはははは。ダックの奴、そんなことで大泣きしたのかよっ。きっと汚ねえ泣き顔だったんだろうな。」

「せっかくいいことしたつもりなのに、すっごくイヤな気分になりましたよ。」

「しょがねえな。かっペのやることは。」

「でもあれだけの金貸すのに、判子もなしって訳にはいかないでしょ。」

「そりゃそうだ。判子なきゃ拇印おさせるのは当然だわな。っていうか日本人なら判子忘れたから拇印でいいですか?って自分から聞くけどな。」

「でしょ?それが犯罪者扱いされたって大泣きですよ?いくら習慣が違うっていったってそりゃないでしょ?」

「まあ大体あいつは日本のお客さんにホテルでの食事に俺らと一緒に来るようにいわれて、ピンクのスエット上下で行こうとする人間だからな。」

先月日本からバイヤーがきたときに、生産部の方々も一緒にどうですか?と工場長と生産管理課長、品質管理課長が誘われたのだが、通訳ということで、ダックちゃんも誘われたのだった。

出発する前に工場にきたダックちゃんはピンクのスエット上下に運動靴だった。

「お前、なんで普通の服きてないの?」

この格好でもレストランで断られることはないが、いくらなんでも日本から来たお客さんに失礼だと僕は思ったので注意した。

「普通ですよお~。大学ではみんなこれですよお~。」

「ここは大学じゃないし、日本ではスエットなんて部屋着か運動着だ。こちらが接待するときならまだしも、日本のお客様に招待されてその格好は失礼だろ。着替えろ。」

このときもすったもんだのあげく、日本にいったことのある工場長がダックちゃんに説明して普通の服に着替えさせて事なきをえたのだった。

『昔、香港の友達と食事したんですよ。で、明日中国に戻るっていったら、彼が「円はモンキーハウスに帰るのか?」って笑うんです。で、モンキーハウスってどういうこと?って彼にきいたら、お前だって中国の農村いくだろ?あんな連中モンキーと同じだろ?食って寝て糞して、為替がどうなっているかも、世界情勢がどうなってるかも全然わからないし関心もない。モンキーに毛の生えたようなもんだろ?って言われたんですけど、なんかそれが理解できるような気がしてきましたよ。』

「ははは。モンキーハウスはすげえな。香港人だから言えることで、俺ら日本人には口にできねえけどな。それにしても大学出たダックでその調子じゃ、姉ちゃん達、金はかえさねえだろうな。そうなるとまたダックの奴泣くんだろうな。」

『一応ダックちゃんが帰る時に、お姉さん達に拇印押した借用書見せて、「あたしがここまでして借りてきたんだからちゃんと返してっていっておけ!!」って言ったんですけどね。やっぱ返せないと言いだした時の相手はヨシさんお願いしますよ。僕はもうイヤですよ。』

「勘弁してくれよ!!まあ、あれだな。常識のレベルが違う連中とやっていくのは面倒だってことだな。オレは、円さんや前の社長が工場長やら生産課、品管課の連中に日本の常識教えておいてくれたから楽だけどね。」

「あ~っ!!貸さなくてもいい金貸してやって、なんでこんなにムカムカしなきゃならないんだろっ」

「そりゃ 円さんがまだ若いからさ。年食えば、世の中そんなもんだってわかってくるって。」

「そうですかねえ~。」

「そうさ。女と友達に渡した金は戻ってこないし、感謝より逆恨みをかうもんなのさ。」

戻ってこないのはまだしも、逆恨みだけは勘弁してほしいな・・・

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

一方で、姉に1万元をポン!!とだしてやったダックちゃんは、これまでのしょげぶりがウソのように元気になった。

仕事も極めて熱心で、本来なら元気なダックちゃんの姿を見て、「ああ、お金貸してあげてよかった」と思うところなのだが、そんな気分にもなりずらい。

そんなある日、ヨシさんが内線で「円さんちょっとこれねえか?」と言ってきた。

めずらしいなと思いながら二階の工場事務所にいくと、応接ソファに二代目社長が座り、ヨシさんは自分のデスクで、二代目社長からもらった日本の新聞を見ていた。

何があったんだ?

To be continue.

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see you (^_-)


2007.07.16

憂鬱なダックちゃん(7)

翌日。

僕は、親父の事務所の秘書に書かせた借用書を、二階工場の事務所にヨシさんが一人でいるときをみはからって持っていった。

この秘書は上海の大学を出ていて非常に賢い。

僕がおよその事情を話すと、すぐに僕とヨシさんの分の借用書の下書きをもってきて、僕の確認をとってからタイプしてくれた。

「まあ、利子なんかはないので返済の期限だけですけど。1年です。期限内に返せなかった時のペナルティはかかないでおきました。なんなら追記しますけど。」

「金も美貌もない女に借金返せないときのペナルティをつけても意味ね~よ。ちゃんと返せるまでは一生懸命通訳しろってオレが言ってたって言ってくれよ。」

そういうとヨシさんは借用書にサインして、鞄から厚みのある封筒を出した。

「円さんが一緒にわたしといてくれ。」

「預かり書きましょうか?」

「いるわけね~だろ」

ヨシさんは格好良く笑いながらそういうと、工場内に入っていった。

遊びなれた男って粋だな~

 

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

僕の方は馴染みの両替屋のポケベルを鳴らして、今日の両替レートを確認すると、会社の手前まできてもらった。

「悪いね」

原チャリで乗り付けた両替屋は20代後半の男で、非常に精悍な顔つきをしている。

僕がはじめて中国に来たときに、ホテルの前で声をかけてきた両替屋のうちの一人だ。

どいつもきわめていかがわしい雰囲気だったのだが、彼だけがまっとうな雰囲気だったうえ、レートもふっかけてこないので、こちらに住むようになってからはずっと彼に両替を頼んでいた。

「バイクがあるからかまわないよ。いつでも連絡くれよな。」

「最近ホテルの前いないもんね。」

「今は建築内装の仕事はじめたんだ。そっちが忙しくてホテルの前で客待ちしているヒマがなくてさ。でもあんたなら連絡してくれればいつでもこっちからいくからさ。」

「助かるよ。」

そう言って僕は封筒に入った外貨券4000元を渡した。

彼は封筒の中の札をパラパラとめくり、すべて100元札なのを確認すると、電話で言ったとおりのレートで両替して人民元をよこした。

「そんなパラパラとやっただけで数も確認できんの?」

「いや。でもあんた相手にそんな細かい数確認する必要ないしさ。今まで足りなかった事は一度もないしな。」

「ま、お互い様ってとこだね。」

「それよりさ、こんど食事でもご馳走しようか?」

僕はちょっと考えた。

「悪くないね。でも、内装の仕事が儲かってからでいいよ。」

両替屋は、はははと笑った。

「んじゃ、そういうことで。」

「うん。今度は月の半ばくらいに又両替頼むから。」

両替屋が原チャリで市内に戻っていくと、僕はタクシーを拾い、親父の事務所があるホテルに向かった。

いくらなんでも年収以上の金額をダックちゃんに貸すのに、社内でという訳にはいかない。

 

  
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

ホテルにある親父の会社の事務所で秘書に入れてもらったお茶を飲んでいると、ダックちゃんがやってきた。

僕は机の上に、ヨシさんの5000元と僕の5000元、計10000元をつみあげた。

「じゃあ、これがお金。ヨシさんとオレとで5000づつあるから数えて確認して。」

ダックちゃんは一枚ずつ丁寧に数えた。

僕等日本人の感覚からすると、大学出たての子がいきなり目の前に500万ほど積まれるのと一緒だ。

僕等側からすると、ちょっとした買い物しちゃったという金額だけれども、農村育ちのダックちゃんにしてみれば、いままで見たこともない大金なのかもしれない。

そう考えると、これでよかったのだろうか?という気がしてきた。

僕が外資系の会社に大学出て勤めたとして、自分の事ならともかく、自分の兄弟の事で困っているからといって、会社のエロい人が、500万ポン!!と貸してくれるだろうかと考えるとそんなことは絶対ありえない気がする。

しかも僕にしてもヨシさんにしても、最初から返してくれればめっけもんくらいの気持なのだ。

自分の事ながら、日本人って気前が良すぎないか?

「はい。確かに10000元あります。」

「じゃあ、この借用書の内容確認してサインして。金利はいいから、返済期日は守るように」

ダックちゃんは内容を確認して嬉しそうな顔をしてサインした。

「あとハンコ。」

「あっ。忘れちゃいましたぁ~」

「あ?じゃあ、拇印押して。親指で。」

僕は秘書に朱肉をもってこさせた。

ダックちゃんは、4枚の借用書を前にうつむいた。

「早くおしちゃって。それで終わりだから」

「・・・・・・・」

ダックちゃんは金と借用書を前にうなだれたままだった。

そして、いきなりシクシクと泣き始めた。

なんだ?

僕とヨシさんの優しさに感激して泣きだしたのか?

ダックちゃんのシクシクは泣きじゃくりにかわってきた。

僕は秘書の顔を見た。

秘書も僕の顔を見た。

やはり何故泣いているのかわからないらしい。

「何泣いてんだ?」

僕は仕方なく、泣きじゃくるダックちゃんに聞いてみた。

「だって、だって・・・・・」

ヒック・・ヒック・・・

「こんな事・・・こんな事・・・・」

ヒック・・・ヒック・・・

「私、犯罪者じゃないですよぉ~っ(>_<)」

To be continue.

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2007.07.09

憂鬱なダックちゃん(6)

一週間が過ぎた夜。

ダックちゃんは目の下にクマをつくり、机にうづくまってなにやら翻訳をしていた。

チョビの話では、少しでも金をかせごうと、友人経由で翻訳を引き受けたらしい。

もちろん、ウチの会社的にはまずいのだが、うるさい事をいう連中がいない深夜の勤務だし、理由はわかっているので夜間に限り、僕も工場長も黙認していた。

「ね~ね~ダックちゃん。」

僕はダックちゃんの背中に声をかけた。

「なんですかあ~。」

目の下にクマつくりながらも、ダックちゃんは明るい声で振り向いた。

カラ元気というよりも、このテンションは変わらないものらしい。

「お姉さん達帰った?」

「え?」

「二人で、きてるんでしょ?」

「なんでしってるんですかあ~」

「私は社内の事は何でも知っているのだ。工員の誰と誰が付き合っていて、誰が誰を好きなのかまですべて知っている。」

「はははは。」

「で、一万元つくれたの?」

僕はさらっといった。

「えっ?」

「お姉さん達は子供に市内の戸籍買ってあげるのに金かせってきてるんでしょ?」

「なんでしってるんですかっ」

さすがにダックちゃんはびっくりしたようだった。

「私はなんでも知っている。キミの今日はいているパンツの色が白だということも。」

「ななな、なんでそんなことまで!!」

「簡単だ。中国の露天パンツ屋さんで白以外のパンツを見たことがないからだ(当時の話しです)」

「そ、そうですか・・そうですね・・」

「で、お金払う期限は月末までだろ?もう時間ないんじゃね~の?」

「はい・・・姉は合弁会社につとめているんだから、お金持ちだろうって言うんですけど、私のお給料は500元ちょっとだし、まだ働きはじめて数ヶ月だし、お金なんてないのに毎晩できたかできたかって・・」

すごい国だな。

家族がヤクザの取り立てより厳しく・・・

「ひどい姉だな」

「違うんです。姉たちが苦労して、私を勉強させて大学にいけるようにしてくれたんで、悪い姉じゃないんです。私は自分の甥の事なのに、頼まれても何もできないのが悔しくて・・」

そういうとダックちゃんはシクシクと泣き出した。

その時、三階の倉庫に行っていたチョビが戻ってきた。

ドアのところで、泣いているダックちゃんに気がつき僕の顔をみた。

僕が目であっちいってろと合図すると、引き返して洗濯室の方にいった。

「ヨシさんとも話したんだけど、私とヨシさんとで半分づつ出してあげてもいいぞ。」

「えっ?」

ダックちゃんが泣きやんだ。

「まあ、返す見通しがたつならだが。私はともかく、ヨシさんはあと一年くらいだからな。ここにいるのは。」

「ほ、本当ですか?」

「返せるならだ。あくまで」

「だ、大丈夫です。姉たちもがんばれば1年でなんとか・・・」

「二人で一万元でいいんだな?」

「はい。お願いしますっ!!」

「あと、他の人間には言うな。会社でこんな噂が拡がったら、社内だけでなく、管轄局でも話題になって、日本側から派遣されてる私やヨシさんは関係ないけど、お前はここにいずらくなるぞ。」

「は、はい」

「それから返済期限入れた借用書はとるからな。金利はタダにしておいてやるけど。」

「は、はい。わかりました!!」

そのときチョビが戻って来た。

「今日は早退していいから。お姉ちゃん達に言ってこい。そうしないとまた今晩も寝させてもらえないぞ。」

ダックちゃんは事務所に入ってきたチョビに早退する旨を告げると、走って出て行った。

「お金出してあげることにしたんだ。」

チョビが僕の顔を見て言った。

「ヨシさんと半分づつ貸してあげることにした。」

僕はちょっと考えてからチョビに言った。

この話は、多分ここだけの話で終わらない。

僕だって社内の事は従業員の恋愛沙汰から幹部職員の不倫まで把握しているが、中国側は僕以上の情報網で社内の動きを追っている。

ダックちゃんが口を割らなくても、あれだけ憂鬱な顔をして、毎日お姉さんに金なんとかしろと言われてたのが急に元気になったりすれば、当然寮住まいの連中は気付く。

ダックちゃんにしてみれば、ここは地元ではないから、一万元ものお金をなんとかしてくれるのは日本人くらいしかいないのだった。

だとすると何人もの人間を経由して、変な話しになって局長に報告がいくより、チョビから直接に情報が行っていた方が良い。

18の時から洗濯室で働いていたチョビを、中国側の要請で工場管理事務所に移すことには僕はあまりいい顔をしなかったのだが、局長に対してダイレクトに情報を送り込むルートとして確保しておくのは悪くないと判断して移動を認めたのだった。

「いい人ね~」

チョビは嬉しそうな顔をして言った。

「そう思うか?」

「思う。」

「じゃあ、ダックちゃんがお金返せなかった時は、チョビが体で返してくれてもいいから。」

チョビの顔が真っ赤になった。

「な、何いってんのよっ!!」

「返せなかったらの話だよ。それにダックちゃんとは友達じゃん。友達の為に一肌脱ごう!!大丈夫。私はいい人だから優しくしてあげるよ。」

「バ・カ・ヤ・ロ!!」

真っ赤な顔で僕をみながらチョビは日本語で言った。

その時工場の見回りを終えた、生産管理課の課長が事務所に入ってきた。

品質管理課の課長は大学を出て3年だが、生産管理課の課長は大学の助教授だった人物で、頭もいいし、大学助教授だったにしては豪放磊落な性格で、僕のお気に入りだ。

「チョビ。何赤くなってんの?」

真っ赤な顔をしているチョビを見て、ひやかすように彼がいった。

僕は彼と交代で工場を見回るべく席をたった。

生産管理課の課長にダックちゃんの早退をつげ、部屋を出る時にチョビに投げキスをした。

「大・バ・カ・ヤ・ロ!!」

チョビの日本語をききながら、僕は工場の中に入った。

生産管理課長がチョビをひやかす声がかすかに聞こえてきた。

これで早退したダックちゃんの話題より、何故か赤面していたチョビの話に、皆の関心が集まる。

一応エロい人である僕も、色々(エロエロではない)と気をつかわなければならないのだ。

 

To be continue.

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2007.07.02

憂鬱なダックちゃん(5)

翌日。

相変わらず浮かぬ顔をしてダックちゃんが出社してきた。

「おはようございます」と、元気のない声で挨拶すると工場の中に入っていく。

「まだダックちゃんは元気でね~の?」

僕がチョビにきくと、チョビは工場長に「あの話、ききました?」と尋ねた。

工場長がきいたきいたと言ったので、僕は再度チョビに「なんの話?」と聞いてみた。

「ダックちゃんはねえ~、お姉さんが二人いて、それぞれに子供がいるんだけど、今、そのお姉さんが二人でやってきて大変な事になっているのよ。」

「どんな?」

「ダックちゃんの故郷の市政府が、市内の戸籍を5000元で売ることになったの。で、お姉さん達がダックちゃんに、お前は大学でて合弁会社に勤めているんだから子供二人分くらいなんとかなるだろう?なんとかしてくれって毎日おしかけてきてるの。」

「なんで戸籍かわなきゃならないんだよ?子供は一人なら戸籍あるじゃん。」

「だって農村の子供は農民戸籍でしょ!!」

「農民戸籍だとなんか問題あるの?」

「え~とですねえ。」工場長が説明した。

「農民戸籍は、農民しかできないんです。もちろん市内に働きに出ることはできるけど、市内の会社で正社員にはなれません。あくまで臨時雇いのバイト。」

「え~!?マジ?ってことは中国では農民に生まれたら農民って事?」

「農民がみんな市内にでてきたら、食料つくる人がいなくなるじゃない!!」

「いや、そういう問題じゃなくてさあ、中国は共産主義だろ?みんな平等なんじゃないの?農民には職業選択の自由とかないわけ?」

「まあ。」

(-_-;)

そんな話ははじめてきいた。

それじゃ、江戸時代の日本か、カースト制度のインドみたいだ。

あきれてものが言えない。

「だからお姉さん達も必死なんですよ。この機会に市内の戸籍を買えなければ、子供は一生農民かもしれないし。」

「はあ。でもダックちゃんはうちの正社員じゃん。ダックちゃんは農民じゃないの?」

「ダックちゃんは大学でてるでしょ!!」チョビが何言ってんだ!!という顔をした。

「農民でも頭の良い子は大学にすすみます。大学でたら市民ですよ。」

「つまり頭の良い子は都会に住んでもいいけど、バカは農業やってろということ?」

「いや、それはちょっと・・・・」

共産党の幹部でもある工場長は言葉を濁した。

「でもそうやって戸籍売ってるなら、今回ダメでもまた売るんじゃない?」

「さあ、どうでしょう?大体農民に市内の戸籍売るって事自体、今回はじめてですし。」

「多分今回きりよねえ?そんなことしたら、中国から農民なんていなくなっちゃうし。」

「でもさあ、農村でも万元戸とか億元戸とかでてるじゃん。別に農民でもいいじゃん。」

「いや、お金の問題では・・・」

「チョビがお金持ちの農民と結婚したら、チョビも農民になるの?」

「し・ま・せ・ん!!」

「お金持ちの農民より、貧乏な市民なのか?」

「面子がないし、子供が農民にされちゃうでしょうがっ!!」

そっか。

やっぱ蔑視とまではいかなくても、単なる田舎モンというよりも、自分たちより、やや下の身分みたいな感じなんだな。

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
僕は二階工場の事務所にいくと、ヨシさんに聞いたことを話した。

「なんだ。それでダックの野郎元気ねえのか?」

「はあ。」

「農民は農民でいいじゃね~か。戸籍買うなんてせこいことしないで、勉強してダックの奴みたいに大学でりゃあ市民だろうが?」

「ま、それもそうですけどね。でも、姉二人のやってることからして、頭の程度はあまりよくないから、その子供って事は・・・」

「しかも農民旦那の血も混じっているしな。」

ヨシさんはゲラゲラ笑った。

「でもな、ダックの奴は今年大学出たばっかりだろ?今だって見習い扱いだろ?給料いくら?」

「今月から正社員ですよ。でも600元くらいでしょ。」

「1万元貯めるのには飲まず食わずでも2年くらいかかるな。」

「期間限定だから、今月中にお金つくらないとダメだそうです。」

「日本語しゃべれるんだから、奴がムチムチぷりんでもうちょっとマシな顔してりゃあ、20日もあれば稼げるけどな。」

「え~。それはつまり体を使うお仕事ですね?処女だから日本人相手なら3人相手すればいいかもですよ。」

「高い金とれるのは最初だけだろうがっ!!」

「そうでした。でもお弁当用の調味料入れ日本からもってきてケチャップつめて終わったあとばらまけば・・」

「そりゃいい考えだ。って円さん。あんた金だしてダックとやるか?」

「絶対やりません。タダでもやりません!!」

「そうだろ?ダメだ。奴が処女だとしても、女としての価値はない。」

「女としては売り物になりませんね。ダックだし。」

「しょうがねえなあ。1万元て日本円でいくら?」

「今のレートだと14万かけるくらいです。」

「出せねえ金じゃねえよなあ。」

「そうなんですよねえ。僕もそう思うのですけど、社員と金の貸し借りするのもどうかと。それに返せないとなるともっと気まずくなっちゃうし。何年も勤めていればまだしも、先月見習い期間が終わったばかりですからねえ。」

「まあな。でもオレ、半分なら出してもいいよ。」

ヨシさんが笑いながら言った。

「でも中国の農民が5000元かせぐのにどれくらい時間かかるかわかりませんよ?」

「ま、その時はしょうがねえだろ?女買ったと思ってあきらめるわ。」

そういう割り切り方があったかっ(^_^;)

「じゃあ、もう少し様子見て、ダックちゃんがお金工面できないようなら、私も半分出してあげることにします。」

「おうっ!!宜しく頼むわ!!」

「オヤジの事務所の秘書に言って、ヨシさんの分の借用書も準備させます。」

「宜しく!!」

そういうとヨシさんは帽子をかぶり二階の工場に入っていこうとして、つぶやいた。

「はあ~。ブスでやれねえ上に金はかかる。どうしょうもない通訳雇っちまったなあ~」

え?これって僕のせい?????

 

To be continue.

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