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2007.06.25

憂鬱なダックちゃん(4)

突如両腕を痙攣させて倒れたダックちゃんだが・・・

まあ、心臓発作ならば、「うっ!!」とかいって、胸を抱えるようにうずくまる気がする。

もっともドラマや漫画でしかみたことないのでわからないけど。

でも、現実はそんなことを考えている場合ではなく、ダックちゃんはいきなり倒れてしまっているので、僕はあわてて、首に手をあてて、脈拍を見た。

心臓は動いているし、胸も上下しているので、これは心臓発作などではなく驚いて気絶してしまったらしい。

僕はダックちゃんのほっぺを思いっきりつねって「ダック!!おきろっ!!」と言った。

「ひいっ!!」と変な声を出してダックちゃんが起きあがった。

「お前は狸かっ!!」内心ほっとしながら突っ込みをいれると、ダックちゃんは机につっぷしてオイオイと泣き出した。

品質管理課の課長もチョビも「あ~あ・・・」と言った顔で見ている。

「チョビ。ダックちゃんは今日はもういいから寮につれていけ。神聖な社内でオイオイ泣きやがって」

「神聖な社内?」チョビが何いってんの?みたいな顔をして言った。

「なんでもいいからここから連れだせ。で、ベットに寝かして、これ飲ませておけ!!」

僕は自分用にもっているカルシウム錠剤を一粒渡した。

この時期工場では、毎日一千万近い原料を仕入れ、加工する。

入荷した原料を返品するか、加工するかの最終判断は僕がしなければならない。

原料の品質が悪ければ、2.3級品率が高くなり、一日で100万を超える損失が出るし、外見は正常に見えても、中身が不良だったりすると、仕入れた原料でつくった製品すべてが不良在庫になる。

返品したらしたで、納品業者から「てめえおぼえてろっ!!」とか言われることもあるし、ダックちゃんや、チョビをからかってばかりいるように見えて、実は僕も大変なのだ。

そのストレスを処理するためには、カルシウム錠剤はかかせない。

30分ほどして、ダックちゃんを寝かせたチョビが会社に戻ってきた。

「あの薬は何よ!!麻薬でしょ?飲んだ途端、ダックちゃん寝ちゃったわよっ!!」

まだ20そこらのチョビは、外国人が持っている薬はすべて麻薬だと思っているらしい。

でも、この疑惑はしっかり晴らさないと、変な噂が拡がり、それを聞きつけた公安が僕の部屋のガサ入れをしかねない。

それをしたところで麻薬なんかはでてこないが、香港で仕入れた、ノーカットの『プレイボーイ』や『ペントハウス』が見つかってしまうのは格好悪すぎだ。

僕はダックちゃんの机の上においてある日中辞典をめくり。カルシウムを探し出すと、チョビに見せてやった。

「カルシウム?」

チョビはなんだかわからないみたいだったが、品質管理課の課長は、大学の生物学課卒なのでチョビに説明してくれた。

「な~んだ。それにしてはよく効くわね。ダックちゃん、本当にすぐ寝ちゃったわよ。」

「日本のカルシウムは君達の国の粗悪品とは違うのだよ。チョビ」

チョビはイヤそうな顔をした。

チョビの話では、先週からダックちゃんのお姉さん二人が来て、ダックちゃんになにやら頼んでおり、それが原因でダックちゃんはここのところあまり寝ていないらしい。

「なんだ。単に寝不足じゃん。」

「寝不足だって、あんな紙パック爆発させるからでしょっ!!」

「爆発なんてさせてません。踏んで破裂させただけですっ」

「一緒じゃない!!」

「いっしょじゃありません。火薬使ってないし。」

「中国語がちょっとしゃべれるようになって、なんか生意気になった気がする。」

チョビが品質管理課の課長の顔を見て言った。

「お前も日本語しゃべれるようになれよ。」

僕はチョビの顔を見てせせら笑いながら言った。

「う・る・さ・いっ!!い・じ・め・っ・こ!!」

チョビが日本語で僕に言った。

彼女が考えるに、僕と会話するのに、「うるさい」と「いじめっ子」は必須なのだった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

翌日会社にいくと、工員達の態度がなにやら妙だった。

工員の間では、僕の新しい噂が拡がっていたのだった。

『昨日の夜、退屈していた日本人が、あまりにうるさい新しく来た通訳に「エイッ」と気功をかけると、通訳は全身をふるわせて、昏倒してしまった。』

ヨシさんまでが一階事務所におりて来たときに「円さんそんなすごい技もってたのかい?」と聞きに来た。

「んな訳ないですよ。でもダックちゃんが全身ふるわせて気絶しちゃったのは本当です。僕が後ろで紙パックふくらませてぱんっ!!って割ったからですけど。」

「なんだそりゃ。ダックの奴、さかってるのに男っ気がないから、大きな音しただけでイっちゃったんじゃねえのか?感じやすいアヒルちゃんだなっ!!」

そういうとヨシさんはゲラゲラ笑った。

このとき、僕とヨシさんは、この事件のおかげで、ちょっとした損害を受ける事になるとは思ってもいなかったのだが。

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


2007.06.18

憂鬱なダックちゃん(3)

通訳も工場付となると、僕が教育しなければならない。

まずは一階、二階の工場の全行程の作業を3日づつ経験させた。

同時に日本語でかかれた作業工程マニュアルを渡し、中国語に翻訳させる。

すでに社長室の秘書兼通訳が中国語に翻訳したものがあるのだが、翻訳させることで専門用語もおぼえるし、作業全体の流れが理解できる。

中国側のスタッフにしても、日本側のスタッフにしても、工程の順序や、おこりうる問題といったことは、お互い理解できていることが当然として、会議や打ち合わせはすすんでいく。

その当然の部分は、通訳としての仕事をはじめる前に、きっちり理解しておいてもらわないと、わからない部分をすっとばして通訳したりして、話がどんどんずれていったりする。

ダックちゃんはきわめてマジメな働きぶりで、現場の班長のウケもよく、翻訳された内容も、僕がパラパラと見る分には問題なさそうだった。

だが一つ問題があった。

ともかく良く喋るのだ。

あまりうるさいので、からかうと、よりハイテンションになる。

まあ、陰気だったり、陰険だったりするよりは、好奇心一杯に目をキラキラさせてぺらぺらしゃべっててもらったほうがいいが、僕にしても、工場長にしても、人事やら、原料のスケジュールやら、工員の給与の査定やら、静かにしていて欲しいという時もあるのだ。

ある日、僕と工場長が二階の工場事務所にいると、ヨシさんが二階工場からでてきた。

「なんだよ。珍しいじゃないか二人そろってこっちで仕事かい?」

「うるさいね~」工場長が目をでっかく見開いて口の前で手を広げたりとじたりした。

「なんだ。ダックか?」

『そうなんですよ。まあ元気があっていいんですけど、ともかく四六時中話しているんです。ダックうるせ~よっ!!とかいっても、「ダックじゃないですよお~。ちゃんと名前を呼んでくださいよお~」とかいって、益々うるさくなるし。あれだけしゃべりつづけられると、給与の査定なんてできやしない。』

「あれは、いままで日本語しゃべる相手がいなかったから、嬉しくてしょうがないんですよ。」

工場長が中国語で言った。

「でも、中国語でもしゃべってるじゃん。」

「それもそうですねえ。じゃあやっぱりおしゃべりが好きなんでしょうか?」

「本当にアヒルみたいにガアガア言いっぱなしだからなあ。」

「アヒルだってあんなに一日中しゃべってません。」

「円さん。何はなしてんだい?」

中国語を話せないヨシさんがきいた。

「いや、工場長が日本語を話す相手がいなかったから、ここではいつでも日本人と話せるので嬉しくてしょうがないっていうんで、いや、中国人とだって死ぬほどしゃべっているだろうと。」

「まあ管理スタッフはチョビ以外は男ばっかしだからなあ。男にかこまれてサカってんじゃね~のか?ダックの野郎は。」

ヨシさんが言ったことを僕が工場長に訳してあげると、工場長は大笑いしたあとでいった。

「そうかもしれませんねえ。まあ美人とは言い難いし、兄弟は姉が二人だっていうから、これだけ男にかこまれて一日の大半を過ごした経験はないかもしれません。」

「なんだ、ムチムチぷりんの秘書探すつもりで、なんだか逆に中国のブスにハーレムくれてやったみたいなもんじゃね~かっ」

苦笑いしながらそういうヨシさんに僕も工場長も笑うしかなかった。

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
そして数ヶ月。

一日19時間稼働の11月(やっと話が戻った・・・)

管理事務所では、妻帯者の工場長が朝から7時まで、そして僕が昼の12時から、終業までを担当することになった。

部下の事はきちんと思いやるというのは表向きで、僕は夜は遅くてもかまわないが、朝はできれば10時とかの出勤にしてほしいタイプだ。

しかし、日本との時差が1時間あるので、会社の始業は日本時間9時。すなわち中国時間8時。

つらくてしょうがなかったので、渡りに船。

会社では夜の9時に夜食が出る。

まあ、中国なので、おかゆに塩漬けのゆで卵とか、ビーフンとか、チマキといったものだ。

もちろん僕が頼めば特注で別のものをつくってもらえるが、そういう事をすると、「あいつだけいいもの食いやがって」と言い出す工員がでてくるので、僕はできるだけ工員と同じモノを食べた。

夜食を食べ終わってから、外の店で、ブリックパックのような紙箱入りのオレンジジュースを買って帰った。

事務所に戻ると、チョビとダックちゃん、それに品質管理科の課長がいた。

いつもうるさいダックちゃんだが、今週に入ってから何故か静かだった。

僕は添付のストローを紙パックのジュースに差すと、子供の頃飲んだ果汁0%のオレンジジュースのような、確信をもって体に悪いといえそうな飲み物をのみはじめた。

ダックちゃんは、僕に背を向けて机に向かい、なにやら書類を一心不乱に見ていた。

僕はストローを加えながらチョビの顔を見た。

「何よ。」

チョビが中国語で言った。

「別に。」

僕は答えた。

ダックちゃんを見ると、ダックちゃんは相変わらず何かを一心不乱に見ている。

僕は再びチョビの顔を見た。

じ~っと見ていると、チョビが僕の顔を見て、「な・ん・で・す・かっ!!」と日本語で言った。

「別に」と僕は答えた。

チョビは「チッチッチッ」と生意気にシュラッグすると「うざったいわね~」と中国語で言った。

それを聞いて、雑誌を読んでいた品質管理科の課長が顔をあげて僕の顔を見た。

ジュースを飲み終わった僕は、ストローから息をふきこみ、ジュースの紙箱をパンパンに膨らませた。

そしてパンパンにふくれたまま、紙箱を床においた。

僕の意を察した品質管理課長がニヤリと笑った。

「ダックちゃん。」

僕はそういって、ダックちゃんが振り向いた瞬間、思いっきり紙箱を踏みつけた。

バーンッ!!

僕も驚くようなでっかい音がして、パンパンの紙箱が破裂した。

ダックちゃんの目が、ありえないほどでっかく見開かれた。

そして動きをとめると・・・・

いきなり両手をプルプルと小刻みにふるわせ出した。

そして、後ろに向けて、静かに倒れた・・・・・

ありゃりゃ?

流石に僕もあせった。

え~っ!!なんだこれ?入社前に健康診断受けた結果みたけど、心臓病なんてなかったぞ!!

To be continue.

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2007.06.11

憂鬱なダックちゃん(2)

ガラス張りの応接室には二代目社長がいて、女の子と話しをしていた。

女の子は後ろ姿で、顔は見えない。

ヨシさんはなぜか「よお~しっ!!」とはりきり、応接室に飛び込んでいった。

僕はそのあとから部屋に入り、ようやく本人の顔をみることができた。

おっきな瞳はキラキラと輝いていて、東京ではめったに見ることができないような代物だった。

身長は150センチちょいくらいだろうか?

肌は白くなく、ムチムチぷりんではない。

っていうか洗濯板だ。

中国人というより、東南アジアの人みたいだ(>_<)

今で言うなら、顔をよこに伸ばしたサカナ君みたいな顔だ。

愛嬌のある顔だとは言える。

ヨシさんの顔をこっそり見ると、さきほどまでの張り切りぶりはどこへやら。

顔から表情そのものがなくなっていた。

だから希望はもたないほうが・・・・

二代目社長から履歴書のコピーがまわってきた。

「ふ~ん。師範大学出てるんだ。」

何も言わないヨシさんにかわって僕がきいた。

「はい。」

女の子は目をキラキラさせて答えた。まるで小学生みたいだ。

「出身はXX市?これってどこら辺にあるの。」

省内の沿海部の市は出張でもまわるので大抵頭にはいっているが、ここはきいたことがなかった。

「えっと山の方です。△△は知ってますか?」

彼女は内陸の観光地として有名な場所を言った。

「うん。」

「そこの近くです。」

なるほど。内陸の田舎の方で高校まで育ったから、あまりスレてないんだな。

「じゃあ、子供の頃はパンダと相撲とって遊んだんだ。」

「え?パンダですか?いませんよお~。」

彼女は面白そうな顔でいった。

田舎の子にありがちなおっきな声だ。

「知ってるけど言ってみただけ。じゃあクマと相撲取った?」

「クマはいますけど、食べるだけですよお~。面白いことききますねえ~。」

食べるのかっ!!クマを!!

「社長。いいんじゃないでしょうか?クマを食うそうですから。」

「円さん。マジメに面接してくださいよ。」

「いや、一緒に働くなら、ボケたときにしっかりツッコミ入れてくれないとイライラしますから。そうでしょ?ヨシさん。」

「まあな。」

ヨシさんは履歴書をうつむいてみながら答えた。

二代目社長はヨシさんの性格をよくわかっているので、それを見て笑っていた。

「うちは幹部じゃなくて、工場スタッフを募集しているんだけどいいのかな?」

二代目社長がきいた。

「はい。大丈夫ですよお~」

幹部として雇うと、仕事もできないくせに、すぐ課長にしろとかうるさいのである。

「専門用語が多くて、大学で学んだ日本語だけでは役にたたないけど、勉強できる?」

僕がきいた。

「勉強は大好きですよお~。できると思いますよお~。」

まあ、ど田舎から省都の大学に進学したくらいだから、勉強は好きなんだろう。

「工場に入ってもらうよ。労働はする必要ないけど。」

「日本の会社は最初はみな工場だときいてますよお~。」

日本語の感じは悪くないし、気取ったところもないので、工場付の通訳としては悪くないかもしれない。

語尾が「よお~。」となるのがちょっと気になるが。

僕は二代目社長の顔を見て、もういいですと合図をした。

「ヨシ。お前はないのか?」

「はあ。ないっす。」

「いいんですか?色々きかなくて?」

「何きくんだよっ!!」

「熊の毛皮のはがしかたとか。」

「円さん!!そんなの聞いてどうするんだっ!!」

「いや、熊の毛皮もらって、コートとかしつらえればいいじゃないですか。そういうのヨシさん好きでしょ?」

「ん?それはいいかもな・・・・」

ヨシさんは洒落モノなのである。

僕等の話を目をキラキラさせて見ていた彼女が、微塵の悪意もない顔でヨシさんの顔を見ながらいった。

「クマはおっきいから、コートの他に帽子もつくれると思いますよお~」

ヨシさんはごま塩頭だが、頭頂部がかなり薄くなっていたのだった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

昼飯時。

今日はワタリガニを焼いたものに、野菜の炒め物、イカの唐揚げ、スープ、それにご飯といったメニューだった。

「どうする?あの子でいいのか?」

二代目社長が僕とヨシさんにきいた。

「前の通訳みたいに目が死んでないからいいんじゃないですかねえ。あれだけキラキラしてればいろんなことの吸収は早いと思いますよ。それに一応女性だし。」

僕はそういってヨシさんの顔を見た。

通訳というのは、単に能力だけでなく、相性なんかも大いに関係するのでむずかしい。

ヨシさんはさっぱりした性格で、それほど相手を選ばないが、それだけに前任のちょっとじめっとした通訳とは相性が悪く、内心ストレスがたまっていたのは僕も知っていた。

男に男の通訳をつけて、両者の相性が悪いと、何かミスがあったときに使う方が思わず怒鳴りつけてしまい、やめるやめないのトラブルに発展しやすい。

それが女性の通訳だと、とりあえず怒鳴るのだけは思いとどまれたりする。

僕としては、女性でしかもセクハラ問題などがおこりそうもない、ああいうタイプは管理が楽だ。

「ヨシはどうなんだ?」

「そおっすねえ・・・・日本語は問題ないとおもいますけど・・・」

まあ、ムチムチぷりんを期待してたヨシさんからするとちょっと酷な感じだ。

「なんなら今決めないで、他に応募があるかどうかもう少し様子をみたらどうですか?」

僕はヨシさんに助け船を出してあげることにした。

「円さんとヨシがそれでもいいならオレはいいけどね。」

二代目社長が焼きワタリガニを食べながら言う。

「僕は別にかまわないですよ。」

「ヨシはどうなんだ?」

「はあ、やはり一人だけ面接して決めちゃうのはどうかと。もう少し様子みれるなら見た方が・・・」

「じゃ、総務課に頼んで、もう一度新聞に募集広告出すように言うわ。」

  

翌々日の新聞に広告が出され、二週間に4人の応募があった。

しかし、どれも日本に2年いて働いていましたみたいな出稼ぎ組で、日常会話はできても仕事の通訳ができるようなレベルではなかった。

「円さん。あれだな。やっぱあの東南アジアでいいな。」

ムチムチぷりんどころか、男ばかりの応募者の面接につかれたヨシさんが僕に言った。

「そうですか?僕は別にもう少し待ってもいいですよ。」

「いや、やっぱここいらにはムチムチぷりんはいないわ。そっちは夜のカラオケで探すからもういいよ。」

こうしてサカナ君に良く似たダックちゃんが、工場付通訳として採用されることとなった。

 

 
To be continue.

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