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2007.05.28

憂鬱なダックちゃん(1)

その年の11月。

僕等の工場は1日19時間稼働でまわっていた。

工員も、管理スタッフも1.5交代で働きつづけ、すでに20日間休まずに工場を稼働させていた。

まあ、中国では人件費が生産コストに占める割合は低いので、二交代にするという手もあったのだが、そうすると熟練工の比率がさがり、普段はおこさなくていいトラブルがおきたりした。

だいたい臨時工(パート)を頼むと、中国人の副社長が、自分の親戚をとんでもない田舎から呼んできて職につける。

で、中国のとんでもない田舎から呼ばれた人間というと、流石に文字が読めないことはないが、輸出産業で働くための必要最小限の知識がないのだった。

実際台湾人や、韓国人がやっている他の工場では、手や指を切断する人間が週一人くらいのペースで出たりした。

工作機械を扱うことの怖さを理解するだけの想像力が欠如しているのだった。

僕等の工場でも前の年に女の子が、日本人の感覚からするとあり得ないミスをして、左腕と背中が火だるまになるという事故をおこした。

その後、僕はシーズンがオフになったタイミングを見て、臨時工を全員解雇した。

もちろん中国側の副社長がぐだぐだ言ってきたのだが、そんなのは関係ない。

死傷事故が出れば、とりあえず最初の責任は僕がとらなければならないからだ。

ぐだぐだいう中国側の副社長に僕は言った。

「今回の事故は雇われた人間の一般常識が、この工場で働くレベルに達していなかったのが最大の原因でしょう?今回は私の方で、処理できたが、以降同じような原因で事故がおこったときには、あなたが責任をとってくれるんですかね?一筆いれてくれるなら、従来通り臨時工の雇用は任せますよ。入れられないならこれまで雇ったなかから、工場の方で使えるのを選んで雇いますから。中国に親戚がいない私が選ぶ分には、情実が混ざるってこともないでしょうからね。」

最後の一言は100人近い臨時工の80%が自分の親戚筋という、とんでもないことをしてくれた中国側の副社長へのイヤミだった。

中国側の副社長はそれで黙ったが、僕は市政府筋に情報ルートを持っている工員やらスタッフのなかで、彼に対して不満を持っている連中に対して、彼がおこなっている不正情報をナニゲに流してやった。

その情報は当然の如く、社内にある複数の情報ルートから市政府の局長やら委員会主任、副主任、中国側の出資会社にまで上がっていった。

半年後、中国側の副社長は更迭された。

100人近い親戚を外資の入った合弁会社に押し込んだ彼は、故郷に錦を飾ったのであり、それを一瞬でぶっつぶした僕は彼の面子を潰したのである。

僕に対する任命権は日本側の出資会社にあるので、彼があることないことを中国側の出資会社や市政府筋に吹きまくっても、僕を解雇することはできない。

だが、やらなければ彼の気は晴れないし、解雇にいたらなくても、敵が増えるとなると僕の仕事がやりにくくなるのは確かなのだった。

殺られるまえに殺れ。

上層部がいつまでもガタガタしていれば、その下まで両派にわかれて対立し、もっとも大事な工場の運営がうまくいかなくなくなる。

対立が避けられないとはっきりした時点で、その対立を未然に防ぎ、工場を問題なく動かすのは僕の重要な仕事なのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

3ヶ月ほど前

前任の工場部通訳がやめてしまい、急遽募集したところ一人の女性が応募してきた。

市内の韓国系企業に配属されたのだが、日本語が専門なので、日系企業が募集しているなら移りたいということだった。

女性が応募してきたというので、総工程師として来ているヨシさんははりきった。

「どんな子かなあ~。かわいいといいなあ~」

「そうですね~。でもなんとなくですが、中国でもかわいい子は英語専攻して、日本語専攻する子はあまり期待できないんじゃないですかね?容姿に関しては。」

「そうかな~。確かに地元の女はダメだけどな~。省都だろ?かわいいんじゃないかな~」

確かに地元の女の子でかわいい子というのは見たことがない。

みな色黒で、ちっちゃい。

たまにきれいな子だなあと思うと、親が北のほうだったりする。

数百キロ離れるが、広東の北側だと、肌もきれいで色白の女の子がおおいのになあ。

「まあ、あまり期待しないほうがいいと思いますけどね。」

「色気のない職場だからな~。ムチムチぷりんなおねーちゃんとか来てくれね~かなあ~」

50歳を過ぎたヨシさんはそういうと天井を見上げた。

「ムチムチぷりんが来たら、仕事にならないでしょ?」

「仕事なんて本社からきたテクニシャンにやらせておきゃあいいよ。ムチムチぷりんなおねーちゃんにお茶入れてもらいて~よなあ。チョビじゃなくて。」

ヨシさんの天井を見上げる目は、妙に幸せそうだった。

きっと脳内では凄まじい妄想が繰り広げられているに違いない。

「やっぱりさ~。男の会社での夢は美人秘書だよな。仕事もできて、ムチムチぷりんな秘書。時々肩とかも揉んでくれてよお~」

やっぱり・・・・

「はあ」

「気のない答えだなあ。オレまで悲しくなってくらあ。まあ、円さんはオヤジさんの事務所にかわいい秘書がいるからな。」

「まあ、頭はいいですけどね。ムチムチぷりんじゃないですよ。日本語も話せないし。」

「丁度いいよな。かわいいだけでムチムチぷりんじゃなければ変に性欲わかないし。頭がよければイライラしないしな。」

「秘書はイライラしないのが一番重要です。1を言って10を知るまではいかなくても、7くらい言っとけば残りの3は自分で考えてしっかりやってくれないと何のためにやとってるかわからないし。」

「そりゃそうだな。でもよお~やっぱりムチムチぷりんの秘書が欲しいよお~」

「はあ」

「なんだ円さん。若いんだから、もっと望みを持てよ!!」

「いや、望みはもてる方向に高く持ちたいです。もてない方向にもってもがっかりするだけですから。」

「そんなこと言うなよ。最終決定権はあんたにあるんだからよお~。」

「いや、僕は通訳いなくても、スタッフとなら大体通じるので、ヨシさんがよければ、それでいいですよ。でも、工場たてるなら、もっと美人の多い土地にするんだったとは思いますけど。」

「ははは。そりゃいえてるな。」

ヨシさんはガハハと笑った。

「通訳が来てますよ」

部屋に入ってきた工場長がいった。

「どんなこ?」

「とってもかわいいねえ~」工場長がニヤニヤしながら日本語で言った。

「本当かよ!!円さん面接しにいこうぜ!!」

ヨシさんが立ち上がった。

僕は工場長が日本語で言ったので、これは絶対期待できないと確信した。

「先行って下さいよ。僕は後でいいです。」

そういった時に内線電話がなり、工場長が受けた。

「面接です。二人とも上にあがって下さい。」

「よっしゃ!!」

気合いをかけてヨシさんが部屋を出て行った。

いや、絶対期待しないほうがいいと思うよ(^_^;)

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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