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2007.04.09

悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(21)

恒例の四月鬱が(-_-;)・・・・・更新はGW明けになります・・・多分 4/23記

翌朝。

生ぬるい空気のなかで目覚めた僕は、すぐにシャワーを浴びた。

今日はダイビングはなく、10時の飛行機でグァムに向かうので、食事はレストランで食べる事になっていた。

例により念入りにドライヤーをかけている我が友チヒロをおいて、僕は先にレストランに向かい、あれこれと並んでいる料理の中からオレンジジュースとエッグベネディクト、ベーコンをとってテーブルについた。

入り口のところにチヨが見え、手をふると一人でやってきて僕の向かいにすわった。

「おはようさん。」

「おはようでおじゃる。」

「なに?それ?」

チヨが顔をしかめて言った。

「公家言葉だろ?」

「まろやんかっ!!」

「さようでおじゃるか?」

「・・・・・」

ウケてなさそうなのでやめた。

「円さん、何それ?」

チヨがエッグベネディクトを差してきいたので、僕は得意になって説明した。

「これはエッグベネディクトといってな~。イングリッシュマフィンにベーコンとポーチドエッグをのせてオランデーズソースをかけた、私の大好きな朝ご飯だ。でもそこいらのホテルにはおいてないのでめったに食べられないんだけどな。食べておきなさい。」

「おいしそ~やなあ。もらってこよ。」

チヨが席を立つと、入れ替わりにサワムラさんが入ってきて席についた。

なんだか朝のホテルのレストランで女性と二人で座ってるとドキドキするな。

「おはようでおじゃる」

「はあ。おはようございます。」

「よく寝られたでおじゃるか?」

「な、なんですか?それは?」

「公家言葉でおじゃるよ。」

「そ、そうですか・・・でも私は実家熊本だし、公家言葉でなくていいですよ(^_^;)」

「そっか。さっきチヨにも使ったんだけど全然ウケないな。東京ではウケるんだけど。」

「ウケるんですか?」

「いや、やったことないんだけど。」

丁度いいタイミングでチヨが戻ってきた。

「う~ん流石はモンチッチ。二皿で、一皿はフルーツが盛りだくさんですか。」

「誰がモンチッチや!!」

「なんでバナナがないの?ああ、日本でも食べられるもんなバナナは。」

「関係あるかっ!!」

「チヨちゃんそれ何?」

サワムラさんも、チヨと僕のお皿にのっているエッグベネディクトを見て、チヨにきいた。

「これですか?これはエッグベネディクトといって、高級な卵料理です。めったに食べられないんです」

「ずいぶんはしょったな。チヨ。」

「詳しくは円さんに聞いて下さい。」

そういうとチヨはエッグベネディクトにナイフを入れ、一口食べた。

「おいし~い。」

「でっしょ?エッグベネディクトおいしいでしょ?」

それをきいてサワムラさんもビュッフェに向かった。

三人でエッグベネディクトを食べて、そのおいしさとソースについて語り合っていると我が友チヒロがカメラを肩に提げてやってきた。

僕等の姿を認めると、先に料理をとってからテーブルにやってきた。

「何食べてるの?」

「エッグベネディクト!!」三人が同時に言った。

「なんだ?それ。」

「食えばわかる。」

「円さんつめたいなあ~。」

「じゃ、チヨが教えてやれ。」

「おいしい卵料理です。」

あまりかわらない。っていうか、エッグベネディクトに夢中なので話したくない。

「オレもとってこよ。」

我が友チヒロは再び席を立ち、お皿にエッグベネディクトとサラダをきれいに盛り合わせてきた。

そしてカメラを取り出すとカシャカシャと写真をとりはじめた。

「見ろチヨ。マニアは目で味わうよりさきに、カメラで味わうのだ。」

「なんのマニアかわからんわあ。」

「フィルムが余ったからな。」

我が友チヒロが言った。

ブルーコーナーで写真が撮れなかったからフィルムが余ってしまったらしい。

魚の替わりにお料理カメラマンになってしまった。

僕はデザートをとるためにたちあがり、チヨもジュースをとるために席を離れた。

僕等はビュッフェテーブルのところで、こっそり二人を見ていた。

我が友チヒロが望遠レンズのついたカメラを、サワムラさんの顔に向け、シャッターを押した。

カシャカシャカシャ・・・

「やめてください。」

サワムラさんのきっぱりとした、しかもかなり怒っている感じの声が、レストラン中に響いた。

僕とチヨは、すかさず二人に背をむけた。

「うわっ!!チヒロはカメラでサワムラさんを味わおうとして、怒られてしまったぞ!!」

「まずいデスね~ あれはっ!!」チヨも標準語になった。

「なんかあれだな。10代の女の子の前でいうのもなんだが、あのカメラは、その、男のナニみたいであり、朝から至近距離でいきなりむけられるとちょっと怒りたくなるかもな。」

「なんか成田離婚するカップルと同席した気分や~」

「いや、成田離婚するんであっても、1度はカップルになれたならチヒロ君には問題ないと思うぞ。金かけて外国まで来て、カップルにもなれず、険悪な雰囲気だから問題なんだろう?」

「どないしたらええんやろか?」

「しらんぷりだ!!今の事は気がつかなかった事にしよう。」

「そうやなあ~。サワムラさんも火の国の女やからなあ~(^_^;)」

「チヒロは京都のおっとりした女の子だと思ってるからな。」

「まあ見てくれはそうやけど。丙午やし。」

「え?ひのえうま?男を食いつぶすといわれる丙午女?」

「そうや。」

そっか。それじゃしょうがない。

  

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

荷物をもって、誰よりも早くレセプションでチェックアウトをすませていると、ヨシタニさんが迎えの車でやってきた。

ヨシタニさんは、僕以外誰もいないとみると、視線は彼らがやってくる方向に向けながら僕に尋ねてきた。

「で、どうでした?チヒロさんは?」

「はあ。バットを振って振って振りまくったけど、全打席空振りの三振だったようです。」

「振りまくってしまいましたか・・・」

「はあ。海外遠征までしての企画だったので、一度の空振り三振ではあきらめきれずに、追って追っておいつめたら相手が爆発みたいな。」

「ははは。怪傑ズバットならぬ、恋愛ズバットですね。」

「ズバット参上、ズバット解決なら良かったんですが。ズバット惨状、ズバット怪決なんで気の毒です。」

「でもまあ男はそれを繰り返してようやく打率を上げられるようになるんですよ。いきなり三割バッターにはなれませんから。」

「はあ。師匠がいうと説得力がありますね。まあ、私としては胸にZの傷跡が残らないことを祈ります。」

空港に向かう車の中ではサワムラさんはチヨと隣同士ですわり、楽しそうに話していた。

我が友は黙って外を見ていた。

助手席に座る僕と運転するヨシタニ師匠は、バックミラーでチラチラとその様子をながめていた。

せつなすぎるな・・・・

空港でチェックインをすませると、僕等はグァムに向かった。

グァムでは乗り換えだけだ。

僕は四人のチケットをまとめて受け取ると、ビジネスファーストのカウンターにいき、自分の分と三人の分のグァムー成田間のチケットを手にいれた。

Yクラスの席は、2人を隣同士に。1人を後ろの席にしてもらい、3人分まとめて我が友に渡した。

最後のチャンスだ。がんばれ。

トランジットルームに入ると、チヨとサワムラさんは免税店に買い物にでかけた。

僕と我が友チヒロは女の子達の荷物をみながら、高校生のバイトが売っているアイスラテを買って飲んだ。

「なんてことだ・・・オレのクリスマスが・・・」

僕は黙ってアイスラテをすすった。

「ブルーコーナーも流れていて、写真も撮れなかったし。」

でもお前には、お弁当食った島で撮った、青い海とサワムラさんの写真があるではないか。後ろ姿だけど・・・と言おうと思ったがやめた。

よく考えると、今朝だって怒られたものの、写真は撮れていたはずだ。

魚の写真はとれなくても、サワムラさんの写真はいっぱいある。

「昨日のゲームは負けっ放しだし。」

はあ。

「旅行費用や、カメラのハウジングで50万近くかけたのに、何もいいことがなかった!!」

で、あるか。

「大体お前がきてから変な流れになったんだ!!初日はいい感じだったのにっ!!」

って、初日も一人で部屋を真っ暗にして寝てたじゃん!!

「大失敗だ!!お前なんかさそわなけりゃよかった(>_<)!!」

これには流石の僕もキレた。

クリスマスのテーブルをチップ払ってとったのも僕だ。

三人のフィリピンバンド(?)に歌わせたチップも僕の負担だ。

ついでにドンペリも僕の負担になった。

チヨのお守りもずっとやった。

なのにこれかいっ!!

「あのな~。キミはトロすぎる。大体南の島で、ドンペリ飲んで、彼女の後ろでラストクリスマス演奏してやって、これ以上ないってくらいに盛り上げてやったのに、何故落とせない?まあチヨがいるからベットまではいけなくても、帰ってから改めてデートするくらいは約束できるだろ?普通。」

我が友チヒロがその瞬間、異常なテンションになったのがわかった。

「オレはトロくなんかない!!サワムラが硬すぎるんだ!!ウソだと思うならお前が落としてみろっ!!」

そう吐き捨てるようにいうと、我が友チヒロは席を立ち、免税店へと向かった。

ほ~っ そうですか。いいんですか。

入れ替わりにサワムラさんが帰ってきた。

「なんかいいものありました?」

僕はサワムラさんに聞いた。

「特には。会社の人へのお土産だけかってきました。」

よく見るとサワムラさんはかわいい。

きちんとしているし、派手派手しさがないし、女というよりは、素朴で育ちの良い少女のような雰囲気だ。

僕はキチンとした女の子というのは苦手なほうなのだが、サワムラさんの場合、少女のような雰囲気が、キチンとした女性特有のかたっくるしさを感じさせず、なかなか好感がもてた。

でもだ。

よく考えてみると、ここ数年、僕は自分と似たりよったりの年齢の日本女性と話したことがない(-_-;)

みゆちゃんとは日本に帰ったときに一緒にご飯を食べたりするが、すでに結婚しているし、もともとが友達の彼女だったので、口説くことを念頭において会話しているわけではないし。

さて、何を話したらよかろう?

日本の音楽も、日本のテレビの事もしらないしなあ~。

だが僕等には仕事で微妙に共通する部分があった。

僕にしてもサワムラさんにしても扱っているのは生物である。

で、生存している場所からして全く違うし、サワムラさんは一番上流の育てる方で、僕は下流の加工の方だ。

ただ、天然のモノではなく、人工的に育てたものを扱うのは同じ。

で、僕は餌に関する話を振ってみた。

僕たちはいつの間にか、お互いの扱っている生物を病気をさせずに早く大きくするのにどんな栄養素が必要とされるかについて、ありえないほど熱心に語り合っていた。

正直育てる側にいるサワムラさんの話はとても興味深かった。

熱中して話していてふと気がつくと・・・・

我が友チヒロが熱心に語り合っている僕とサワムラさんを、免税店を出てきたところで呆然としてみているのが目に入った。

その姿はまるでゾンビのようだった。

いや、極めて学術的な会話だったんですけど・・・・

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

飛行機がグァムの空港を飛び立ちしばらくしてから、僕はYクラスの方をのぞいてみた。

三人の席の番号を探して飛行機の後ろへと歩いていく。

サワムラさんが僕に気がつき、手をふった。

で、その隣にいるのは我が友ではなく、チヨ・・・・・

我が友はその後ろにちょこんとすわっていた。

ダメだったか・・・・

しかも目がイッてしまっている。

僕の姿も目に入っていないのか、僕が声をかけるまで、瞬きもせずにただ正面を向いて座っていた。

大丈夫なのか?我が友よ!!

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

成田からはスカイライナーで東京駅に向かった。

チヨとサワムラさんは、今夜は東京駅近くのホテルに泊まり、明日京都に戻る。

僕とチヒロは成田で荷物を宅急便に預けてきていた。

二人は荷物をもったままなので、スーツケースをゴロゴロ引きずりながらホテルへと4人で向かった。

二人がチェックインをすませると、僕は「じゃあちょっと早いけど、良いお年を」といった。

チヨとサワムラさんも「良いお年を!!」といい、エレベーターを上がっていった。

こうしてPDD大作戦は終わった。

僕等二人はホテルから出た。

朝は南の島にいたのに、今は師走の東京の夜10時だ。

僕はここ数日の楽しさと、東京の凍える年末の空気のギャップにどうしょうもない寂しさを感じた。

正月を東京で過ごしたあとは、また中国に戻らなければならない。

僕は中国の空港に降りる飛行機の窓から見えるであろう、光がまばらにしかない暗い大陸の大地の光景を思い出した。

気がつくと吐く息が白い。

僕は思わず両手を摺り合わせた。

その時。

「パラオなんてだいっきらいだ(>_<)!!ワムのラスト・クリスマスなんて、二度ときかねえっ!!ワア~ッ」

視線も定まらず、ゾンビのように歩いていた我が友チヒロがいきなり叫ぶと走り出した。

まるで青春ドラマの1シーンのようなセリフと行動だった。

20代最後の師走の街を、我が友チヒロは走り、小さくなると消えた。

僕は摺り合わせていた両手に白い息をふきかけた。

手を開いてみると、南の島の太陽と海水にあてられたせいか、手のひらの香港癬は跡形もなく消えていた。

僕は香港癬の消えた手をあげタクシーを拾うと、そのまま家へと帰った。

 

 

The end.

NEXT「ダックちゃんの憂鬱」

see you (^_-)

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