悪夢の香港癬→彼の失敗、彼女の島(8)
とりあえず僕は総経理室(社長室)にあがり、社長に聞いてみた。
「え~と今年は年末年始日本に戻ってもいいですかね?」
社長は書類から顔をあげ、僕の顔を見た。
「ああ、今、その件で相談しようと思ったんですよ。円君は去年も帰ってないし、僕は女房がこっちくるって言うんで、今年は帰らないつもりだから、円君が日本戻るなら年末の本社への報告に顔出してもらおうと思って。」
まあ、この時期の社長の本社への報告は、生産も販売もシーズンオフなせいもあって形式的なものである。
というか、社長が帰ると会議というよりは尋問に近い会議がおこなわれるのだが、合弁パートナーの社員である僕は、社長の本社の連中にとっては外様大名みたいなもので、本社内の出世競争には無縁の存在である。
したがい、問題が起こっていない限りきわめて外交的なフレンドリーな会議になるのが普通だ。
「え~と、クリスマス前後は失踪する予定なんで、その前後なら大丈夫です。」
「こちらの会社は12月31から翌年の7日まで休みにします。だから帰国は7日でいいし、帰国休暇も残っているからそれつかってお正月ゆっくりしててもいいですよ。」
「いや、正月の日本いてもヒマなんで7日に戻ります。多分22日くらいから失踪するんで、本社の会議はその前に。」
「確認しましょう。」
休暇は簡単にとることができた。
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
会社を出たところでタクシーを拾うと、夕食を何にするかかんがえるのが面倒なので、市内のモスクに併設されている西北拉麺を食べにいった。
西北拉麺は手打ちの一本麺をゆで、トマト味ではなく塩味のミートソースをかけて食べるシルクロードのモスレム食だ。
マルコポーロが伝えたスパゲッティの元祖はこれではないか?と思えるような麺料理で、僕はこれが病的に好きだった。
ただ本当に美味しかったのはオープンしてから1年ほどで、そのあとはミートソースをつくる香辛料のいくつかが入らなくなったのか、味が少し落ちた。
とっても粗末なテーブルに他の中国人と相席をして、3元の大盆を食べ、丸いナンのようなパンとミートソースだけを持ち帰りにしてもらった。
家に帰ると日本からおくられてきたビデオをつけて、紅茶を入れ、外資系ホテルのデリカテッセンで買ったチーズをつまみながら、ナンのようなパンにミートソースをつけて食べた。
風呂に入り、現地時間の10時きっかりに僕は我が友チヒロに電話をかけた。
時差は1時間あるから、日本は丁度11時のハズだ。
ホテルからとなると話は別だが、一般家庭用の電話から日本に電話をかけても、30分で3000円くらいだ。
「お~っ 手紙ついたか?」
我が友はのんきな声を出した。
「そういう挨拶はいいからさっさと話せ!!国際電話なんだからなっ!!」
「話すのはいいが、休みは取れたのだろうな?」
僕が多分問題ないだろうというと我が友は説明をはじめた。
僕等は3年ほど前スキューバダイビングをはじめたのだが、中国にいて潜る事ができない僕をよそに、我が友は一人で沖縄にいき、一人の女の子とであったのだった。
「それがさ~ 京都の子なんだよ。しかもボートの上ではウエットスーツ恥ずかしがって脱がないような古風な子でさあ~。」
それはお前がエロい目で彼女を見つめていたからではないか?と言おうとしたのだが、やめた。
そんなことを一々言ってたら今月の国際電話代が上がるだけだ。
「で、去年友達とクリスマスパーティーやったときに、彼女も誘ったんだ。」
「来たのか?京都から。」
「来たんだ。」
「やったのか?」
「やってたら二人でパラオにいくだろっ!!」
つまり我が友は、パラオに彼女を連れ出して、なんとかクリスマスに決めたい。
で、私に一緒に来て、協力しろというのだった。
「まあ、いいけどなあ・・・でも何故オレがお前の恋路を成就させるためにパラオまでいかなければいけないのだ?っていうか、お前が落とせたとして、オレは何をすればいいのだ?」
「心配するな。お前にもちゃんと相手は用意してある。」
「な、なにっ?京都の女の子といったよな?ってことはアレか?京都の女の子と、パラオでダイビングダブルデートか?」
「そうだ。PDDだ。」
「PDD・・・・・」
「彼女が会社の後輩をつれてくるそうだ。」
「京都産なんだな?」
「後輩は純粋な京都産だそうだ。」
「PDD・・・・」
「そうだ円!!PDDだ!!海外でダイビングをしながら、京都の女の子とPDD!!」
「おおっ!!流石は我が友!!すばらしい企画だ!!それのった!!絶対のった!!オレをつれていってくれ!!オレをパラオにつれていってくれっ!!」
「よっしっ!!約束だ!!二人でPDDしにいこう!!」
「PDD!!」
「PDD!!」
「PDD!!」
「PDD!!」
「わ~いっ!!クリスマスはPDDして、正月はそのまま京都にいって彼女としっぽりすごすぞ~っ!!」
「その調子だ!!円!!今年のクリスマスは俺達の為にある!!」
「おうっ!!ばっちり決めてやるぜ!!」
東京都民の男子が京都の女の子という存在に対して、どれくらいの憧れをもっているかは東京以外で生まれた男にはわからないかもしれない。
個人的には、スッチーより、ナースより、女医より「京都の女」のステータスは高い。
「京都の女」それはやすらぎの里。
「京都の女」それは紅葉に赤く染まった柔肌。
「京都の女」それは「どすえ」をはじめとした柔らかすぎる日本語のハニーポット。
その京都の女の子と南の島でクリスマスにデートなのだ!!
我が友よ!!でかしたぞ!!
お前こそ真の友だっ!!
今から思うと、異常なまでのテンションで僕は我が友とパラオにいくスケジュールに関して相談し、電話を切った。
ベットに入っても興奮はさめず、僕は我が友に心の底から感謝をした。
やっぱり持つべきモノは友達だな・・・・・
幸せな顔で僕は寝返りをうったが、布団の下では右足が左足をボリボリと掻いていたのだった。
To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
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