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2005.12.25

中国に真実の愛はあったか?(3)

一年後。

僕とだんじり君は一週間にわたる、原料の実地調査を終えて以前僕が住んでいた街へと戻るところだった。

だんじり君は大阪のだんじり祭で有名な所出身の僕の取引相手である。

僕等がやっている商売は、原料も製品も基本的に相場モノだ。

本格的な生産シーズンに入る前に、僕は情報を集め、今期加工可能な原料がどの程度あるのか確認する。

もちろん一発で正確な数字は出てこない。

色々なところから情報を取り、実際に原料の状態もチェック。ダブルチェック、トリプルチェックをかけて、情報をふるいにかけていく。

場合によっては生産業者と麻雀仲間の、関連業界や違う業界の中国人から情報を取る事もあった。

同じ業界の人間には警戒心が働いて本音を出さないが、まったく別の業界の人間相手にはぽろりと本音が出ることがある。

麻雀で一人勝ちしているような時にはなおさらだ。

もちろん僕は具体的にこれこれの情報が欲しいなどと言うことはいわない。

一緒に食事をして、「そういえばあそこの親方元気?」などと話をふる。

そうすると「この前麻雀したけど・・・」と話がはじまる。

僕が知りたいのは、ずばりその親方がどれくらいの原料を持っているという情報ではなかった。

相場をつくるのは中国全体での原料の量だから、一生産者がどれだけもっているかにさしたる意味はない。

そういうコアな情報は仕入れるにも高くつく。

また裏切られた場合、こちらの正体がはっきりわかってしまう。

故意に間違った情報をリークされ、ひっかかる可能性も高い。

僕が求めているのは、周辺情報だった。

いくつもの間接的な情報をあつめていくと、相手がこちらにむけて書いているシナリオと、現実の原料状況の両方が浮き上がってくる。

どちらが彼らの書いたシナリオで、どちらが現実の原料状況なのか見分けるのに親方達の麻雀仲間の情報が必要な事があるのだ。

どちらが彼らの書いたシナリオか目処がついたら、僕等はそのシナリオをもって各地をまわる。

そして「自分たちが産地をまわって調べた結果だが・・」といって、中国側の書いたシナリオを喋る。もちろんごく一部だけ真実と思われることを混ぜこんでだ。

すべての相手が大筋でそれを認めれば、間違いなくそちらが彼らが書いたシナリオだ。

そして僕等が帰ったあと、彼らは「うまく日本人をだませた」と喜ぶ。

一方で日本のマーケットの状況に関しては僕は正直に説明した。

そうすることで、中国人達に、僕は日本のマーケット情報を正確に伝えてくれる日本人であると同時に、自分たちのシナリオを信じ込むたやすい相手という印象を与えるのだった。

その結果、翌年も彼らは僕の訪問を喜ぶ上、そのガードは下がる。

そして僕はより一層正確な情報を得ることができるようになるのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

「しんどかったなあ~」

車のなかでだんじり君が言った。

僕等は朝に隣街から出て、100キロ先の産地へ向かい、そのまま僕が以前住んでいた経済特区の街へと戻るところだった。

往復200キロだが、高速道路があるわけではないのでけっこうきつい。

しかも一週間にわたりコーヒーといえばインスタントしかないような情けないホテルにとまりつづけた後なのだった。

「でも、もう1時間もすれば、美味しいコーヒーと和食が食べられますよ。」

僕はげっそりとした、だんじり君の顔を見ながら言った。

「和食か。一週間たべてないわ。」

中国南部の料理はほとんどが海鮮で、シンプルな料理が多いから胃に脂がもたれるということはない。

だが毎日宴会料理ではイヤになってしまう。

中国がはじめてというようなお客さんだと、僕も気をつかってふりかけやらインスタントの味噌汁などをもっていくのだが、だんじり君は僕と同じ年だし、なにしろ今回は移動につぐ移動で、服を洗濯に出す時間がない。

荷物には着替えがつめこまれることになり、食品を入れておくスペースはなかった。

僕は仕事の出張に関しては、基本的に機内持ち込みの可能なアルミケース一つですます主義だ。

ぼおっとしているだんじり君を見ていると携帯がなった。

サクちゃんからだった。

「円さん。今どのあたりですか?」

サクちゃんの懐かしい声がした。半年ぶりぐらいだった。

副原料の会社の副社長であるサクちゃんは当然様々な情報を持っている。

今向かっている街で、僕等は落ち合う約束をしていた。

「あと40分くらいでホテルにつきますよ」

僕は切れ切れになる電波を気にしながらサクちゃんに言った。

「よかった。ほとんど一緒ですね。」

「はい。コーヒーショップで待ち合わせて、コーヒー飲んでからチェックインしましょう。エスプレッソが死ぬほど飲みたいんです。」

「わかりました。ついたらコーヒーショップに行きます。」

「夕食は日本食にしましょう。」

「はははは。円さんも堕落しましたね。昔は毎日中華でも音をあげなかったのに。」

「堕落じゃないですよ。日本食喰えるところがなかったから我慢してただけです。僕は便利をあえて拒否して、不便を楽しむほどマゾじゃないんで」

「わかりました。うちの会社でおごりますよ。じゃあ後で。」

携帯をしまうとだんじり君が僕の顔をみつめながらぼそりと言った。

「もう中華たべんでいいんやな?」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

ホテルが見えてくるとだんじり君は俄然元気が出てきた。

「おおっ!!すごいやんけ!!」

現地調査の仕事の時は、最初にせこいホテルに泊まらせてしまう。

大抵は中国のホテルはこんなもんなんだとあきらめるからだ。

もちろん中国にも日本以上に快適なホテルはあるが、いきなりそんな所に泊まらせたら、早く帰ろう早く帰ろうとうるさくてしょうがない。

僕等が今夜泊まるホテルは4つ星だった。

それも本来5つ星なのだが、街の真ん中にたてたので5つ星にするには敷地面積が足りずに4つ星になったホテルだから、サービスも設備も行き届いて、素晴らしく快適だ。

もちろん日本のBS放送も見ることができる。

一階にはビュッフェと日本食レストラン、ちゃんとしたコーヒーを飲ませるコーヒーショップ。それにショットバーがあった。

僕とだんじり君はホテルに入るとベルボーイに予約があることと、コーヒーショップでお茶してからチェックインすることを伝えて荷物をあずかってもらった。

コーヒーショップにいくとすでにサクちゃんとウチの会社の現地スタッフである鄭君が一緒にお茶をしていた。

僕とだんじり君がふかふかした椅子にすわると、深くスリットのはいったドレスを着たウエイトレスが注文を取りに来た。

僕はエスプレッソのダブルを頼み、だんじり君はアイスコーヒーを頼んだ。

「疲れてるじゃないですか」

サクちゃんがぼくらに言った。

「当然でしょ。佐久間さんのように、毎日ハーレム暮らししてた訳じゃないんですから。お湯がちょぼちょぼしか出ないホテルでカラオケもサウナもいかず、毎晩二時まで会議しながらここまでたどりついたんですからね。」

「そやそや。まあ、円ちゃんはようけ知らん女と時々中国語で電話しとったけどな。」

だんじり君が言うのを聞いて、サクちゃんがにやりと笑った。

「経理から手紙預かってますよ」

封筒を差し出した。

「何それ?」

「円さんの彼女からのラブレターですよ。」

「電話の女か?」

「そうです。」

「ゆうたろ。ゆうたろ。オヤジさんにゆうたろっ!!」

「いいですよ別に。僕はオヤジのように不純な付き合いはしてないですから。普通に仲良く友達しているだけですから。」

愛民とは日本に戻ってからも電話で話したりしていて、仕事で彼女のホテルにとまれば、一緒に食事をしたりしていたが、それ以上の関係へと進む気は僕にはなかった。

彼女の方は誘えばいつでも落ちてあげるのにという雰囲気だったが、自分の方からは、やはりそれ以上積極的になる気配は見せなかった。

それでますますこれは普通ではないと感じたので、現状のままの付き合いをつづける事にしたのだった。

まあ、知り合いもいない中国の田舎をまわっているときに、寝る前に電話で話す女性がいるのは悪くはない。

「そうかなあ~。その封筒あけてみ。ラブレターやないか?」

僕は封筒をあけた。手紙と一緒に写真がはいっていた。

「これかっ!!」

だんじり君が写真を取り上げるとサクちゃんに見せていった。

「そうです。」

とサクちゃん

「きれいやんけ!!」

「大連の女性ですからね。背も高いですよ。」

「ホテルのマネージャーなんか?」

「前は客房部だけだったんですが、今はゼネラルマネージャーになったんですよ。客室だけでなく、フロント、レストラン部門、全部仕切ってます。円さん知ってました?」

「知ってますよ。」

「ええなあ~。こんな美人で背が高くて頭のいい彼女がいて。」

「彼女じゃないって(^_^;)」

「は~。わしなんかな、女房7つ上なんよ。」

「7つ?なんでまた?」

「しらんかったん。結婚式のその日まで。」

「はあ?」

「結婚式で昭和何年生まれてって言うやろ?それきいてわかったんや。」

「ウソでしょ?」

「ほんまやて。」

「なんで?結婚するまで年きかんかったの?」

僕もだんじり君につられて段々関西弁のようになってきてしまった。

『いきつけの食堂でしりあったんけどな。付き合いはじめたとき、きいたんや。「いくつにみえるん?」っていうから「同じくらいかなあ」といったら「そうやね」っていうから、上でも1つ2つやと思ってた。』

「7つ年上だったら普通わかるでしょ?いったいいくつの時結婚したんです?」

「23」

「じゃ、奥さん三十路じゃないですか?」

「おう。式始まってから指折り数えてびっくりしたわ。」

「いや、そういう事ではなくて・・・離婚しなかったんですか?」

「でけへんわ。そのかわり結婚式終わってからいうたったわ。」

「なんて?」

「ふざけんなっ!!お前三十路やんかっ!!いたいけな23歳の若者騙しておもしろいんかっ!!って」

「結婚式上げてからいってもねえ。でも奥さんなんて答えたんですか?」

「私はあんたが勝手におなじくらいかなあ?っていうからそうやねっていっただけや。別に24とも25ともいうとらんわアホって。」

「完全に負けじゃないですか。」

『負けやないわ。ワシいうたったもん。「ええかっ!!お前はワシのこと騙したんやからな。離婚はせんでおいたるけど、浮気はさせてもらうで」ってな。』

「はあ。それで奥さんはなんて?」

「浮気ぐらいええわ。そのかわりしっかり生活費いれいやって。」

「負けてるじゃん!!」

「負けとらんわ!!浮気自由の権利を勝ちとったんや。独身の円ちゃんには既婚者が浮気自由の権利を勝ち取ることがどれだけ大変やかわからんやろうけどな。ワシは結婚式が終わると同時に勝ちとったんや。」

「はあ。それで浮気はやり放題なんですか?」

「いや・・・・」

「権利勝ちとったんでしょ?」

「うん。だけどな、収入全部握られて小遣いもろうとるから、女みつかってもホテル代ないねん。」

「お子さんいましたよね。」

「うん。」

「何人?」

「4人。」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

僕もサクちゃんも思わず絶句した。

「浮気自由の権利とっても意味ないじゃん・・・・」

「ほっとけっ!!」

だんじり君の大きな声に、ウエイトレスがこちらを見た。

「まあまあおちついて。」

「おちついとるわっ!!」

だんじり君は愛民の写真を見ると僕に聞いた。

「この子円ちゃんより年下やろ?」

「はあ。」

「いくつ下?」

「え?7つだったかな?」

「なんでやねん!!なんで俺と円ちゃんは同級生なのに、俺は7つ上の女房で、円ちゃんは7つ下の彼女とつきおうとるねん!!年の差が14もあるやんけっ。女房が中学二年の時生まれた子やんかっ!!」

雲行きがヤバくなってきたぞ。

「はははは。僕なんか全然たいしたことないですよ。ここにいる佐久間副社長なんか20歳は年の違う彼女がいるんですよ」

それまで楽しそうに僕とだんじり君の話を聞いていたサクちゃんが思わず、げほっ!!げほっ!!とコーヒーにむせた。

「しかも毎晩カラオケのおねーちゃんが出勤前に佐久間さんの部屋に麻雀しにきてて、それはもう酒池肉林で有名な殷の王様も真っ青ってくらいの爛れた生活を・・」

「な、何いってるんですか!!円さん!!やめてくださいよ!!」

「いや、私は見たままの事を言っているだけですが。」

僕がしれっとして言うと、だんじり君が酒も飲んでいないのに据わった目であとをついだ。

「その話、おもしろそうやんけ。」

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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