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2005.11.21

恐怖!!生鹿角酒・・・・(その3)

そして1年が過ぎた。

その間に及川さんは結婚して、きわめて平凡な名字になったが、会社ではそのまま及川さんで呼ばれていた。

僕は心臓のトラブルで入院を余儀なくされ、さらに退院してから十二指腸の動脈が潰瘍でぶちきれ、あと数時間病院に来るのがおそければ間違いなく出血大量で死んでいたといわれるような状態に陥り、さらに2週間入院した。

退院して2週間を自宅療養ですごし、ようやく会社にも出られるようになった。

十二指腸潰瘍は入院したときにふさいでもらったが、薬をとめて2~3日するとまた痛み出す。

そんな訳で、結婚してから帰りの電車が途中まで一緒になった及川さんに、しばらく一緒に帰ってもらうことになった。

いつどこで貧血を起こし、倒れるかわからないからである(^_^;)

そんなある日。

「そういえばさ~」

僕は及川さんに言った。

「あの鹿角酒どうなった?」

及川さんは、はっとした顔をすると僕の顔を見た。

「円さんおぼえてましたか?」

「うん。」

「あれは1年前、私が4階の冷蔵庫にもっていったまま、あそこにあるはずです。」

僕と及川さんは見つめ合った。

不倫をするためではない。

あの血まみれの生鹿角酒がどうなったか見てみたいという気持が、お互いの心のなかにあるか確認するためだ。

幸い(?)にも親父は、中国にでかけていていない。

「見に行ってみようか?」

僕が及川さんにいうと、及川さんも「はい」とうなずいた。

僕たち二人は4階の社長室に上がっていった。

奥にある小さな冷蔵庫の前に立ち、二人でしゃがんで冷蔵庫をあけた。

そこには・・・・

ひたすら真っ黒な液体がつまった広口瓶が・・・・

僕と及川さんは顔を見合わせた。

「匂いかいでみる?」

僕は及川さんに尋ねた。

及川さんはブンブンと顔を振った。

「イヤですよお~」

「でも及川さん、なんでも食べる前に匂いかぐじゃん」

及川さんは、初めてのモノはなんでも匂いをかいでからではないと口にしないのだった。

何度か注意してあげているのだが、なおらない。

「それとこれとは別ですっ!!」

僕たちは再び瓶を見た。

透明度のある黒さならまだしも、真っ黒だ。

中にある鹿角は見えない。

この黒い液体のなかで、角の表面に生えていた剛毛はどうなっているのだろうか?

「開けて見る?」

「い、いや。やめておいたほうがいいですよ。円さん退院してきたばっかりじゃないですか。ショックで死ぬかもしれませんよ?」

う~ん。

10日間の検査入院をして、退院後一週間で再入院しただけでも、看護婦からは「どうしたんですか?こないだ退院したばかりじゃないですか!!」と言われたのに、流石にそれから2週間で再々入院はやばい。

僕たちは冷蔵庫のドアを閉めると、4階から出て行った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

帰りの電車の中。

「よく考えて見ると、会社の冷蔵庫に血まみれっていうか、血がどす黒く変色したものがはいっているって不気味ですね。なんかレクター博士の家みたいで。」

及川さんが言った。

確かに怖い。

っていうか、あの剛毛がとれていたら、鹿の角も骨みたいに見えて、知らない人があれを開けたら、人体の一部をそのままお酒に漬けたと思うかも。

人肉酒?

「いったいあのお酒、誰が飲むんでしょうか?いっぱいありますよ?」

「う~ん。一番あぶないのは沢さんだな」

沢さんはスーパーのバイヤーでうちの取引先だが、関東から東北に移動になっていた。

「東北からの出張で寄ったついでにのまされそうだ」

「こ、怖すぎです~。」

『うん。怖すぎる。多分「いらんわ!!そんなもん!!」とか言って飲まないだろうな』

「はい」

「で、そこにお茶をもっていった及川さんが現れる訳だ」

「え?」

『それを見た腐れ親父が言うわけだ。「そうだ!!及川さん旦那に飲ませろ!!精がついて、良い子が生まれるぞ!!」とか・・・・』

「・・・・・・・・・(-_-)」

「イヤですよ。そんなもん旦那に飲ませるなんて」

及川さんが電車の窓から外を見つめながらいった。

だがその口元は微妙に笑っているように見える。

「今、イヤだけど、ちょっと飲ませてみようと思ったでしょ?」

僕はその口元の笑いを見逃さなかった。

「いえ!!そんなこと思うわけないじゃないですかっ!!」

「でも毎日ちょっとずつ食事に混ぜてみようとかおもったでしょ?一瞬。」

「そ、それはまあ、ちょっとだけ・・・・もしかしたらDash村の子ヤギみたいなかわいいでっぱりが頭にできたらちょっとかわいいかな?とか思って」

「ほら!!やっぱり思っていたじゃん!!でも絶対旦那の母親に、うちの息子になんてもの飲ませるの!!って怒られるよ」

「おこられちゃいますよ~!!絶対。それよりも、つのがおっきくなって、おこった旦那に襲撃されたらどうしたらいいんですかあ~」

及川さんの旦那は、現時点でさえ、身長が195センチもある人外の生命体だ。

それに成長した鹿の角が生えたら、楽々と身長2mを越える、鹿獣人になってしまう。

「新妻 角の生えた旦那に殺される!!怪奇!!鹿獣人!!」

「いや~っ(>_<)!!鹿の角の生えた鹿獣人の旦那もイヤだけど、その角で刺されて死んだりするのはもっとイヤですう~」

気がつくと僕等の声はけっこう大きくなっており、乗客の視線は僕等二人に集中していた。

その時電車は僕の降りる駅に!!

「じゃあ明日ね!!」

僕は速攻で電車を降りた。ドアが閉まり、その向こうで及川さんが恨めしげな顔をして僕を睨みながら、遠ざかっていった。

翌日。

僕のところに及川さんがコーヒーをもってきてくれた。

「円さん。昨日私があのあと一人っきりでどれだけ恥ずかしい思いをしたかわかりますか?」

「さあ~。」

『前も電車に乗る前に「及川ザウルスっていうから、ガウガウって答えて。」とか言い出して、冗談だとばっかり思っていたら本当に「及川ザウルス!!及川ザウルス!!」って呼びつづけましたよね?』

「さあ~」

とはいったもののそれは事実で、何度もしつこく僕に呼びかけられて、及川さんはちっさな声で「ガウガウ」と言ったのだった。

「コーヒー飲まないんですか?」

「ん?」

僕は及川さんの入れてくれたコーヒーを一口飲んだ。

「美味しいですか?」

「普通」

「変な味しないですか?」

「特に」

「ふ~ん。頭がむずむずしたりもしませんか?」

僕はコーヒーを見た。

当然だが黒い。

「及川さん!!まさかっ!!」

及川さんはフフフと笑うと背を向けた。

「鹿角酒いれてないだろうなっ!!」

「さあ、どうでしょう。」

階段をおりていきながら及川さんが小さな声でつぶやくのが聞こえた。

「コノウラミハラサデオクベキカ・・・・・・・・」

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

僕の頭に鹿の角が生えてくることはなかったが、2週間後の採血検査の結果、僕のヘモグロビン値は成人男子の正常値に戻ったのだった。

二ヶ月後、妊娠していることがわかった及川さんは、さらに4ヶ月勤めて、退職した。

生まれた子供はかわいい男の子だったが、鹿の角は生えていなかったという。

The End.

NEXT 「中国に真実の愛はあったか?」

次回の更新は12月5日の予定です。水泳教室は今月いっぱいなので、12月からは従来通りの毎週更新に戻る予定。まあ、年末年始は休むと思いますが(^_^;)

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2005.11.07

恐怖!!生鹿角酒・・・・・(その2)

風邪ひいたっす。更新は来週の予定。申し訳ござりませぬ(11.15)

階下で聞こえる異様な音。降りるとそこには血に染まったバカ親父が・・・

それから一週間後。

一階の店舗で、ガン!!ガン!!ガン!!と異様な物音がしだした。

僕が降りていってみると、親父が出刃包丁をもち、何かを一心不乱に叩ききっているではないかっ!!

な、なにを・・・・

そう思い近寄ってみると、件の鹿角である。

従業員に捨てるよういっておいたのだが、捨ててなかったのか・・・

親父はまるで刀を鍛える刀工のように、脇見もせず、異様な集中力で鹿角を出刃包丁でたたき割っているのだった。

丁度店は激しく忙しい時期で、何もこの時期にやらんでもと、誰もが思っていた。

邪魔な事この上ない。

しかし、当然の如く今だに血まみれの鹿角をたたき割りつづける親父の顔は真剣そのもので、僕でさえ口をはさめる代物ではない。

しかもYシャツには角から飛び跳ねた血がぽつぽつとついているし。

一体何が、この執念を生み出しているのであろうか?

勃起にかける男の執念?

一心不乱に角をたたき割っている親父をとめようかと考えた僕だが、結局やめにした。

まあ、30分もあれば終わるだろうし、何よりも血まみれの物体を、出刃包丁でたたき割っているおっさんに余計な口出しをするほど、僕はチャレンジャーではない。

なんといっても、この男は、若き頃、「蒲田のキ〇ガイ」といわれ、素人衆でありながらも、蒲田の8933の間でアンタッチャブル扱いされていた男なのである。

大体訳のわからない殺人事件が多い21世紀の日本。

「父親の鹿角きざみを注意した息子、鹿角とともに父親に刻まれる!!」などという新聞の見出しにでもなったら洒落にならない。

僕は血まみれになって出刃包丁を振り回す親父をほっておいて、三階での仕事に戻った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

30分どころか2時間後。

及川さんがやってきた。

彼女は僕と入れ違いに下に呼ばれ、そのあとずっと鹿角きざみの助手をやらされていたらしい。

「社長が一階で呼んでいます。」

僕は階段をおりていった。

そこには梅干しをつけるような広口瓶にはいった鹿角と、満面の笑みを浮かべる親父が・・・・

「わはははは!!どうだ!!これはうちの家宝にしよう!!」

瓶の底には、2センチほどの大きさにきざまれた鹿の角がたまっている。

どうやら砕いて焼酎の瓶にいれようとしたのだが、そこまで小さくはできずに結局及川さんに広口瓶を買いにいかせたらしい。

そして当然の如く、焼酎で一杯の瓶の底の方は、すでに鹿の角からでてきた赤い血がしみ出してきており、うっすらとピンクになっている。

もうこれは鹿角酒ではない。

鹿の血の焼酎割りだ。

吸血鬼の家でなら家宝になるのかもしれないが、人間の家の家宝には絶対にならん!!

いるかっ!!そんなもん!!何が家宝じゃ!!

「血が出て赤くなってるだろ~が!!だからちゃんと血を抜けといったろ~がっ!!こんなモン、家宝になる前に腐るだろっ!!」

僕がそういうとバカ親父は薄ら笑いを浮かべながら言い返した。

「バカたれ!!この血が効くんじゃね~かっ!!オレは現地のヤツに聞いてきたんだ。血がいいんだ!!わかんねえヤツは黙ってろ!!及川さん四階の冷蔵庫にしまっておけっ!!」

え?わたし?という顔をしたものの、焼酎の入った瓶を持ち上げて運ぶ及川さん。

重いのと、なかに血まみれの鹿角がはいっているのとの両方でイヤな顔をしている。

まあ、もっとも血まみれの方はあまり気にしていないかとも思うが。

それにしても、あんなグロいもん誰が飲むのだろうか?

どれぐらい漬けておく気かわからんが、絶対腹壊しそうだぞ。

そう思っている僕を尻目に、血まみれ親父は「さっ!!かえろっ!!」とのたまうのであった。

こうしてワイヤーのような産毛が生えた鹿の角は、鹿角酒というか鹿血酒となって社長室の冷蔵庫に家宝(?)として収容されることになったのだった。

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)

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