僕とヘルニア友人とみゆちゃんと(6)
明菜ちゃんとの衝撃の出会いから28日後。
僕とヘルニア友人ことタカさんは、モトちゃんの家で、奥さんが作ったおでんと紫蘇ワカメおにぎりを食べていた。
帰りは車なので、酒はない。
当時ヘルニア友人は車のディーラーをやっており、モトちゃんに売った、車の定期点検か何かのために代車をもって、引き取りにきたのに僕はつきあったのだった。
来る途中怖いことがあった。
高速を走っているとき、いきなり天井にどかん!!という何かが衝突したような音がしたのだった。
もちろん陸橋などはなかった。
「今、なんかぶつかった音しなかった?」
ヘルニア友人が僕の顔を見た。
心なしかその顔は青ざめている。
「した。上から人が飛び降りて、屋根に激突したようなすごい音がした」
僕がそういうと、ヘルニア友人は、車をとめて確認するどころか、スピードをあげた。
「屋根確認しなくていいの?」
「人を跳ねたりはしていない。陸橋があって、上から何かを落とされるような場所でもない。天井に穴は空いてない。では、ぶつかったのは何?」
「い、隕石?」
僕が真面目にいうと、ヘルニア友人は青ざめた顔で僕を見ながら言った
「だったらいいな。本当に」
僕はヘルニア友人がオカルトが大嫌いなことを思い出した。
「よくあるんだよ。こういうあり得ない事がさ・・・」
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
煮玉子をつつきながら、ヘルニア友人が言った。
「で、明菜ちゃんど~よ?」
僕はくわえていたちくわぶを、思わず詰まらせた。
28日前。
明菜ちゃんを男慣れさせる為の焼き肉会は、9時半には終わったが、僕はヘルニア友人に電話はしなかった。
そして、来る時の車のなかでは、僕の所有する通称「呪いのミュージックテープ」が出てきた話をしていたので、明菜ちゃんの話をするのは忘れていた。
「大丈夫ですか?」
モトちゃんの奥さんが冷たいウーロン茶をくれた。
モトちゃんより六歳年下のおとなしい感じの奥さんだ。
「やっぱり・・・・」ヘルニア友人が哀れな奴め!!という顔で僕を見て言った。
「みゆちゃんの事もおこらせたんだろ?」
それは心外だ。僕は紳士なのである
「そりゃあ、明菜ちゃんは、やっぱりだったさあ。でもみゆちゃんは喜んでいたから。翌日電話をかけてきて、『ああ、やっぱり円君に頼んでよかった。明菜ちゃん、すっごく喜んでいたわよ。多分これで自信がついたと思うの。』って言ってたし。」
みゆちゃんがその時、「最初は彼女の行動問題ありだったかもしれないけど」と言ったことは伏せておいた。
僕は28日前の事を思い出していた
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
その日、明菜ちゃんは僕と同じ事を考えていた。
一生懸命肉を焼くということで、せめてもの好印象を残そうと考えたのだった。
しかし一点だけ僕とは違う点があった。
僕の焼き肉焼いちゃうぞ作戦は、話がはずまない時の最後の手段だが、明菜ちゃんは最初からその策をとったのだった。
しかも都合の悪い事に、何故かタン塩より先に、特上カルビが来た。
明菜ちゃんはあつく焼けた網の上に、ぎっしりとカルビをのせた。
当然一気に並べられた特上カルビが、一気に焼けていく。
僕はみゆちゃんの顔を見た。
「喰え」と表情が言っている。
「今は文句を言わずに、とりあえず喰え!!」と。
確かにそうだ。
明菜ちゃんは一生懸命肉を焼いてくれているのだ。
それに出会い頭に、いきなり「焼きすぎ(>_<)」とか言ったら、明菜ちゃんは余計に萎縮してしまう。
僕とみゆちゃんは、肉が焦げる前にすごい勢いで、網の上のカルビを食い始めた。
すると僕等が肉をとって、空いた場所に、明菜ちゃんがまた肉をのせた。
僕はカルビをくわえながらみゆちゃんを見た。
150センチ台なのに、僕よりも喰うみゆちゃんも、カルビをくわえながら明菜ちゃんが肉をおいているのを横目で見た。
そして僕の顔を見る。
「食べて!!ともかく今は食べて!!この子の気持ちを無にしないで!!」
その表情は語っている。
そのうち肉が焦げてきた。
見事なサシが入った特上カルビが黒こげになっていく・・・
僕はあわてて二枚をまとめてとると、口に入れた。
みゆちゃんもすごい勢いで口にした。
そこに明菜ちゃんがまたカルビを・・・・
わんこ蕎麦ならぬ、わんこカルビとなり、食事をはじめてから10分足らずで、僕とみゆちゃんで、計7000円を超える特上カルビを食べ終えてしまった。
裏側が真っ黒になった一枚を僕が取り上げた時に、タン塩がやってきた。
僕が最後の一枚を「ガンになるかも・・・」と思いながら口にいれ、みゆちゃんがビールをごくごくと飲み干していると、また明菜ちゃんが網の上にタン塩をおきはじめた。
僕はみゆちゃんを見た。
みゆちゃんも、明菜ちゃんの手元をギョッとしたように見ている。
「言え!!言うんだみゆ!!」
僕はみゆちゃんに表情で伝えた。
みゆちゃんは泣きそうな顔をして、「お願い。食べてあげて」と同じように表情で伝えた。
僕は明菜ちゃんの視線が網の上のタン塩に集中しているのを確認した上で、みゆちゃんに思いっきり激怒の表情をみせた。
そのうちに明菜ちゃんが「や、やけてます!!」と言った。
タン塩はカルビより火の通りが早い。
僕はみゆちゃんをにらみながらも、タン塩をくわえた。
みゆちゃんもくわえた。
すかさず明菜ちゃんが、空いたスペースにタン塩をおいた。
僕とみゆちゃんが同時に、「うっ!!」と小さくつぶやいた。
タン塩ではなくなっっている。
タンたれになっている・・・・
僕の大好きな上タン塩が、上タン塩たれになっている・・・
明菜ちゃんのせいで・・・
コノウラミ・・・・
僕の瞳は、黒から金色に変わろうとしていた
コノウラミハラサデオク「明菜ちゃん!!」
僕の瞳が金色に変わろうとしているのを見てみゆちゃんが明菜ちゃんに声をかけた。
「私が焼いてあげるから、今度は明菜ちゃん食べなさい。すいません。網替えてもらえますか?」
そういって網を替えてもらうと「あったまるまでちょっと待たないとね」とみゆちゃんは言ってビールを飲んだ。
僕はカクテキをつまんだ。
みゆちゃんが僕を見ながら言った。
「とってもおいしい上カルビだけど、タン塩より先にもってくるのはどうかしら?従業員の教育が悪すぎよ。この店。さってと。あたしはミノもらおっかな」
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
グツグツグツグツ
おでんがテーブルの上で煮えている。
モトちゃんの奥さんが席を外した隙に僕はモトちゃんに言った。
「くえるじゃん。おでんもおにぎりも」
「おしえたんさ~。俺が」
モトちゃんは得意げに言った。
おくさんが、別の鍋をもってきて、おでんの鍋にどぼどぼと入れた。
(-_-;)
おでんが強制的に追加された。
ぼくらはお腹一杯だった。
「あの~。サキちゃん。これは誰が食べるのかな?」
僕はモトちゃんの奥さんに聞いてみた
「円さんとタカさんでしょ」
お腹一杯なのに・・・・
「いや~。もうちょっと早く来るかとおもったからさ~。4人で食べようと、いっぱいつくらしたんだけど、おそいからさっき俺らカップ麺たべちゃったんだよね」
だから余っているわけか。
実は僕も、タカさんが二時間もおくれてきたので、我慢できずカップ麺を自宅で食べてしまっているのだが。
タカさんが、僕とモトちゃんの視線を感じて言った。
「あまったら円がもってかえるよ。円は一人暮らしが長いから、ここに来て手料理喰うの楽しみだっていってたもん。」
え?
確かにそれは言ったけど。
「そう?じゃあ、余ったら帰るとき、タッパーにいれてあげる」
サキちゃんの顔は笑っていたが、内心がどうであるか考えるのは怖かった。
なんといっても僕等は、いや、タカさんは「8時にはつくっしょ」とモトちゃんにいっといて、ついたのは10時ちょっと前だ。
そんな時間に飯を食いにやってくる(代車をもってきたとはいえ)旦那の友達が良い扱いをうける訳がない。
食べ物を出してもらっただけでありがたいと思わねば。
「で、明菜ちゃんはどうだったんよ?」
モトちゃんがニヤニヤしながら聞いた。
ここでサキちゃんを怒らせると、後で厄介になるのはモトちゃんなのだ。
「いや~。まあ一言でいうと、一生懸命本を読んでいる女の子かな。『私たいていの事は本で学んだ』って言ってたから」
確かに僕も焼き肉はタン塩から焼け。タレものは後と書いた本を読んだ記憶がない。
だから明菜ちゃんの言ったことは事実なのだろう。
「そうじゃなくて、容姿だろ。が・い・け・ん」
薩摩揚げを食べながらヘルニア友人が言った。
「それは・・・地味目な・・・」
「地味っていっても色々あるっしょ。芸能人でいうとどんな感じ?」
芸能人でいうと?
困った。
「こ、こけし?」
ヘルニア友人が口をぽかんとあけて、「おまえ大丈夫か?」という顔をした。
「円。こけしは芸能人ではない」
そんな事はわかっている。
だが、あえて例えるならこけし。
「髪の毛がおかっぱとかなんですか?」
おでんを総て出し終えて、ようやく座ったサキちゃんが言った。
「いや。ショートだけどおかっぱではない」
「じゃあ、浴衣来て下駄かい?」
モトちゃんが言う。
「会社の帰りだから、そんな格好はしてないよ!!家では知らないけど・・」
「じゃあ、こけしじゃないじゃん」
昆布を囓りながらヘルニア友人が言った。
「うるさいなあ~!!こけしって言ったらこけしなんだよっ!!明菜ちゃんはそんじょそこいらの女の子とは違うの!!完全にオリジナルなんだよっ!!誰にも似てない明菜テイストな女の子なんだよ!!」
「なんじゃそれ?」
ヘルニア友人が紫蘇わかめおにぎりを食べながら言う。
その時僕の頭の中に、良い考えがひらめいた。
携帯を取り出して、電話をかけた。
「もしもし。みゆちゃん?今大丈夫?」
「円君。どうしたの?子供は寝たから大丈夫だけど」
「いまさあ、タカさんとモトちゃんの家にいるんだけど、こいつら俺が明菜ちゃんを丁寧にもてなして、本人も大満足だってこと信じないんだよ。ちょっと言ってやってよ」
僕はモトちゃんに携帯を渡した。
タカさんは鉄朗メーテルの事をまだ根にもっているらしく、そっぽを向いたからだ。
「おひさしぶりです。おげんきですか?」
モトちゃんの声はすごく魅力的だ。さすがは元パンクバンド。ドラマーだけど。
「そう?円君が。人間かわるもんだね。うん。そう?で、こけしに似ているっていいはるんだけど。マジ?どこが?全体的に?本当にこけしなの?浴衣も着てないしおかっぱでもないのに?」
モトちゃんとサキちゃん、それにヘルニア友人が顔を合わせて不思議そうな顔をした。
「貸して!!」僕はモトちゃんから携帯をひったくった。
「みゆちゃん。俺は思うんだけどさ、前回で明菜ちゃんがどれくらい男に慣れたか、ここはやはり確認するべきだと思うんだ。シュガケンがトラットリアはじめてるじゃん?そこで食事しようよ。俺と、タカさんとみゆちゃん。それにモトちゃんとサキちゃんと明菜ちゃんで」
「はあ?」
「おいっ!!」
「私もですか・・・・」
三人はそれぞれ僕の顔を見て言った。
「そうねえ~。イタリアンなら焼きすぎる事もないから、いいかもね」
みゆちゃんは乗り気だった。
「明菜ちゃんに話してみるわ」
電話が切れると、ヘルニア友人が言った。
「円。なんで俺がこけしみたいな女の子を見にいかなければいかんのだ?」
「だって、見たことがないんでしょ?おかっぱでもなく、浴衣も着てないのに、こけしな女の子。」
「それを言ったのはオレじゃない。モトちゃんだ」
「い、い、いや、僕は・・・・」
「言った」
「言った」
僕とヘルニア友人の声がハモった。
「言いましたね」
サキちゃんがとどめをさした。
「いいじゃん。5人の中に、一人新顔が入るくらい。パンクロッカーに車のディーラーでしょ?何を小娘の一人や二人にびびってる訳?」
「私、イタリアンは1年くらい食べてない」
サキちゃんも言った。
えらいぞサキちゃん。シェフに言ってスペシャルなデザートつくってもらうからな。
こうして、僕等全員は、僕のダイビング生活におけるリーダー的存在、シュガケンの店で明菜ちゃんと対面することになった。
11時ちょいまえ、代車をひきとるモトちゃんとヘルニア友人につづいて僕が部屋をでようとするとサキちゃんが、僕を引き留めた。
「はいこれ。」
ホーローの洗面器のような大きさのタッパーにはいったおでんと、紫蘇わかめのおにぎりが三個。
つまり今日の残りの総てだった。
「あのさあ、サキちゃん。俺一人暮らしなんだよね。これ、どう考えても4人分はあると思うけど」
「ん?」サキちゃんは僕の顔を見た。
「明日の朝、明日の昼、明日の夜、明日の夜食で丁度終わりますよ。」
僕はサキちゃんの顔を見た。
まじまじと見た。
彼女は真顔だ。
「もしかしてオレ等が遅れてきたこと怒ってる?」
「全然」
「俺の事キライ?」
「いいえ」
「タカさんの事は?」
「嫌いじゃないですよ」
彼女はとくにこれと言った表情を見せずに言った。
「因みに血液型は何型?」
「Bですよ。悪いですか?」
「いや、俺もB。同じだね!!ハハハハハ」
僕はサキちゃんの瞳が金色になる前に外に出て、玄関のドアを閉めたのだった。
To be continue.
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
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