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2004.11.22

老人ボケの直し方(5)

悪魔系老人ボケ回復術で、食欲生命体ババリンとなってよみがえった祖母は・・・

一週間後の土曜日。

ほぼすべての準備がそろい、僕は新たに自分の借りたマンションへと引っ越しをしていた。

しかし若干足りないモノがあったので、実家近くのスーパーを回り、いったん実家に戻った。

実家には誰もいず、僕はカギをかけると、居間のとなりにある妹の部屋のベットで昼寝をすることにした。

するとしばらくして、玄関のドアが開き、誰かが入ってくる気配がした。すぐに襖が開く音がしたので、祖母が帰ってきたのがわかる。

靴を見れば、だれかいるのはわかるが、そこまでは気がまわらないのだろう。

僕がいるのには気づいていないようだ。

そのまま昼寝をしてると、一時間くらいして、チャイムがなった。

襖があいて祖母が出る気配がした。

やってきたのは叔父の一人だった。

一番良識のあるタイプの叔父で、流石に祖母をオヤジに預けてあるのが悪いと思っているらしく、様子を見に来たらしかった。

僕は面倒だし、「犬の母親」とまで言われた祖母がどんな反応をするのか確認したかったので、そのまま、妹のベットで息を潜めていた。

すると・・・・・

祖母は、すっごい勢いで、叔父にむかってしゃべり出したのである。

ついこの間まで、一言もしゃべらず、テレビと食事とトイレ以外は何もしなかった祖母が、叔父相手に昔のようにべらべらとしゃべりまくっている。

叔父も凄まじく驚いていた。

「お、おふくろ・・・・どうしたんだ?こないだ来たときは、何にもしゃべれなかったのに、すごいじゃないか・・・・」

やばい。

これは、やばすぎる(>_<)

せいぜい、ゾンビ+知能くらいに復活すればいいと思っていたのに、これでは正常人とまったく変わりない。

祖母の体の中で、メラメラと燃えていた憎しみの炎は、そのまま癒しの炎となって、彼女を完全復活させてしまったらしい。

えらいぞ!!俺!!

でいいのか???????


(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)


復活した祖母は以前のやかましさをとりもどした。

「あのばばあ、うるさくてしょうがない」

父親までがそう言い出した。

母親と妹に関しては、すでに祖母との激突が生じていた。

そんなある日、僕が実家でお中元でもらったそうめんをもらいにいくと、祖母以外は誰もいなかった。

しかも居間でテレビを見ている。

誰もいないときは、居間のおっきなテレビを見るようになったらしい。

すでに7時で、祖母は夕食もすませている。

僕は、途中で買ってきた、ケンタッキーフライドチキン6ピースを食べ出した。

部屋中に立ちこめるケンタッキーの匂い。

最近三年くらい食べていないケンタッキーフライドチキンだが、当時は月に一度はたべずにはいられなかった。

なんといってもケンタッキーフライドチキンは骨付である。

男たるモノ、野生を失わない為には、月に一度の骨付き肉摂取はかかせないのだ。

僕が背骨の所を丹念にかじっていると、視線を感じた。

その方向に目を向けると、一瞬祖母と目が合った。

僕は肋骨のあたりは好きなのだが、おしりの所とモモのところはそれほど好きではない。

そして5ピースまではなんとか食べられるが、6ピースは多い。

祖母にあげようかと思ったが、70歳過ぎた老婆が、夕食のあとこんなに脂っこいフライドチキンを食べるだろうか?

「おばあちゃん、食べる?」

僕は一応きいてみた。

目があったとたん、視線をそらし、黙ってテレビを見ていた祖母が言った。

「ん?そうだね。もらおうかね」

喰うのかよっ!!(>_<)

僕は尻のところと、モモのところを上げた。

ホットビスケット付きのセットを買ったので、それでもお腹一杯って感じだったのだ。

僕があばらの骨をカジカジしながらそっと見ていると、祖母はすごい勢いで、ケンタッキーフライドチキンを食べ始めた。

ムシャムシャ。

ムシャムシャ。

べろんゴックン。

食べ終えた(-_-)

祖母が僕の残ったチキンを見ているのに気づき、僕はあわてて残りのチキンをくわえた。

僕が食べるのを、ねっとりとした視線で見つめる祖母。

その視線は、まさに餓鬼道におちた餓鬼のごとき視線である。

これは・・・

これは・・・

これはすでに祖母ではないっ!!

そう、あえていうならばっ!!

これは・・・

食欲生命体ババリン!!(>_<)

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

食欲生命体ババリンと化した祖母の食欲は凄まじかった。

母がいうことには、ゴミ捨ての際、しばしば大量の鳥の骨が見つかるということだった。

僕は、ケンタッキーフライドチキンの話をしてあげた。

「イヤだわ。じゃあ、昼に自分でこっそりケンタッキーフライドチキンに買いにいってるのかしら・・・・一個とか二個の骨の量じゃないわよ・・」

70歳過ぎて、ケンタッキーフライドチキンにはまる老婆。

恐るべし食欲生命体ババリン!!

それから1ヶ月くらいして母が言った。

「最近おばあちゃんが、朝ご飯を自分でつくるって言い出したのだけど、何食べているのかと思ったら、毎日トースト二枚にたっぷりマーガリンつけたのと、でっかいソーセージを朝から五本も食べてるのよ!!」

朝から肉食。

しかも、30年前のグラハム・カーの「世界の料理ショー」のごとき大量の油脂類付!!

おそるべし70代!!

しかも老人ボケした、死にそうな老人から、食欲生命体ババリンになった祖母にはさらに恐ろしい変化がおこったのである。

35キロしかなかった体重がみるみるうちにふえつづけ、2年後には50キロ3年後には60キロ寸前まで回復(?)したのだ!!

まさに昭和の所得倍増計画ならぬ、平成の体重倍増計画!!

恐るべき、悪魔系老人ボケ復活術!!

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

だが、勢いを盛り返すに従い、家族からの祖母に対する苦情も増えて言った。

まさに逆渡鬼状態!!

「ババリンがさあ」

「ババリンの奴」

「ババリンたら」

呼び名も本人がいないところでは「ババリン」に統一されてしまった。

そんなある日、僕は、知り合いから大量の柿をもらった。

僕は柿はやわらかく、グジュグジュしたくらいなのが好きである。

もらった柿は恐ろしく甘かったが、堅めだった。

それでもおいしいので、3コ一度に食べたら、思いっきり下痢をした。

ん?

おいしい柿。

思いっきりな下痢。

おいしい柿。

思いっきりな下痢。

僕の中のランちゃん回路に灯がともった。

両親と妹はアメリカ旅行中で、あさって帰国の予定である。

フフフフ。

僕は翌日が休みなのをいいことに、朝からババリンだけがいる実家に8個の柿をもってでかけた。

「おばあちゃん、おばあちゃん。柿もらったから食べれば?一人じゃたべきれないからさ。」

「柿かい?」

「うん。ちょっと堅いのだけど、すごく甘いよ。俺なんか一度に三個も食べちゃった」

もちろん下痢したことは黙っていた。

「そうかい。悪いねえ」

ババリンは柿を受け取った。

「オヤジ達は帰ってくるの明日だっけ?」

僕はナニゲに聞いてみた

「うん?そうだったかねえ?」

ババリンの目が「ギラリ」と光った気がした。

僕は心のなかでニヤリとすると自分の家に帰った。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

翌々日、顔を合わせた母はキレていた。

「アメリカど~よ?」

「アメリカなんてどうでもいいわよ!!」

そう言った母の腕に、かなり高価と思われる見慣れない時計がはまっているのを、僕は見逃さなかった。

母はつづけた。

「私たちが帰ってきて、ゴミすてようとして見たのはなんだったと思う?」

「またケンタッキーの骨?」

僕はとぼけて言った。

「違うわよ!!ベランダに出したゴミ袋からなんか妙な匂いがするんで、またなんかとんでもないモノ食べていたのかと思って、捨てるまえに見たら、おばあちゃんのXXXまみれのパンツがはいっていたのよっ(>_<)」

はははは・・・・・

「まったく、そんなもの、自分で捨ててきなさいよ!!って言いたいわよ。」

「で、またなんで?トシで、おしりの締まりが悪くなったのかな?」

「柿よ柿!!すっごい量の柿の皮が一緒にはいっていたわよ。いったいいくつ食べたかしらないけど、柿食べ過ぎて、お腹が冷えてトイレ行く前にもらしちゃったんでしょっ!!」

僕はいきなり催した便意に、あわててトイレにかけこもうとするも、間に合わずに漏らしてしまった祖母のあわてぶりを想像して笑いそうになったが、こらえた。

「柿?ああ、一昨日そっちにもっていったんだ。一人に2コくらいかなと思って8コもっていったけど・・・」

僕は素知らぬ顔をして母に言った。

「8個?」

僕はうなずいた。

「家には一個もなかったわよ。あの人、もしかして一晩で8個全部食べたのかしら・・」

僕でさえ3個食べてしまった柿だから、食欲にセーブのきかないババリンなら一度に8個はありえるかもしれない。

そして3個でも、あれだけの下痢なら8個ともなると、確かにトイレまで間に合わなかったかも。

それにしても70半ば過ぎた老婆が一晩で柿を8個。

恐るべし食欲生命体ババリン!!


(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

その祖母も3年前に息をひきとった。

朝、おきて、トイレにいこうとして、いきなりバタン!!とトイレの前で倒れたら死んでいたのである。

結婚して妹の二度目の出産の為、名古屋に一月ほど泊まりがけでいっていたとき、ババリンは毎日肉を食い、母が帰ってきた翌日、すでにドロドロ血になっていたババリンは、トイレを目前にして逝ってしまったのだった。

母親は「寝たきりなんかにならなくてよかった。きっとおじいちゃんが、これ以上迷惑をかけないように連れて行ってくれたんだね」と言った。

ババリン化してからは、テレビみながら昔のように大声で笑い、肉をムシャムシャと喰い、区の老人施設に週二度通い、一緒の人達の悪口を言って、本人的には楽しく過ごせたのだと(多分だけど)思う。

憎まれっ子世にはばかる。

81歳だった。

80過ぎてからも、毎朝食パン二枚にマーガリンをたっぷり塗って、ソーセージ5本食べていた食欲生命体ババリン。

業の深い人故、地獄の鬼の責め苦もきびしかろうと、僕は病院から戻ってきて、実家に安置された祖母の枕もとに、正宗の居合刀(もちろん模造)をおいてあげた。

鬼に襲われたら、この刀で鬼切って、くっちまいな。

居合刀で刃ははいってないけど、根性があればきれると思うよん(-_-)

祖母が元僕の部屋から出て行ったあと、この部屋に祖母がすむようになってから一度もこなかった人達がやってきて、そこらじゅうをひっくり返して、祖母の通帳を探していた。

僕はその姿を、冷たい目でみていた。

人間にとって必要なもの。

祖母は、最後にそれを僕に教えてくれたのだった。

The End

NEXT 「円海@日本鬼子裏天使」

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


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