老人ボケのなおしかた(1)
B型悪魔系、祖母の老人ボケを治す(?)
僕の祖母は(母方)上州女である。
気が強い事で有名だが、祖父が薩摩なので、祖父が生きている間はそうでもなかったらしい。
子供の頃の祖母に関する記憶というと、でっかい声で犬ころを呼ぶように(あまり愛情を感じられない呼びつけ方でという意味だ)「円~」と呼びつけられた記憶しかない。
僕は初孫なので、祖父には大層可愛がられたそうだが、祖母に可愛がられたという記憶は、まったくといっていいほどない。
善人は早死にする。
これは世の習わしである。
その道理により、僕の祖父は僕が10代にはいったかはいらないかでなくなった。
祖母は、当時独身だった伯母と二人で住むことになった。
当然のごとく数年して喧嘩になり、伯母も結婚して一人で自分の妹の近所のアパートに住むことになった。
そして自分の妹とも喧嘩した。
本当に一人になった。
わがままな人間なので友達は一人もいない。
毎日テレビを見て過ごす日々がつづいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中国に仕事で住み始めて四年。
母親から電話が来た。
「今度おばあちゃんを引き取るからね。あんたの部屋使うよ」
二ヶ月くらいまえに、一人では暮らせなくなり入院したという話は聞いていた。
母は長女だが、上に兄がいる。
下にも三人ほど弟がいて、妹も一人いる。
だが、祖父が死ぬとき、僕の父に「女房は頼む」といったという話はきいていた。
父の家は東京のK田というところである。
今はそんなこともないだろうが、父がガキのころは、とってもガラが悪いところだった。
まあ、ぶっちゃけ8933の街って感じである。
しかし、その8933達にも、アンタッチャブルに関するお達しが出ていた。
「甘納豆屋の一族には関わるな。奴らはKICHIGAIだから」
事の顛末はこうである。
甘納豆屋の息子である父と、その兄は、ある日街をぶらぶらしていた。
4人の下級8933に絡まれた。
父の兄は笑った。
空手の段持ちで、8933相手の喧嘩は楽しくてしょうがないのである。
空手を喧嘩に使ってはいけない。
師匠はそういった。
しかし、8933などの職業的暴力屋さんを相手に、使ってはいけないとはいわなかったのである。
父も笑った。
空手は無段だが、血の気が多い上に、当時で言えばKICHIGAI、今風にかっちょよく言えば、ベルセルク(狂戦士)だからである。
4人の下級8933は、二倍の数なのに、あっという間に血だらけにされてしまった。
だけど、ここからがすごい。
なんたって、当時8933の人口密度が異常に高いK田。
あっという間に30人からの中級、下級8933に二人は囲まれた。
父の兄は、ちょっとヤバイなという顔をした。
空手は有段者でも、頭はまともである。
この状況で勝ちを拾うには、宮本武蔵でもない限り無理なのはわかってる。
それに宮本武蔵だって、刀をもった上での話である。
一度でも敵をかすめれば、相手の戦闘力がなくなる剣での戦いと、最低でも二、三発ぶち込まなければ相手の戦闘力がなくならない素手での格闘では、多人数を相手にする上で大きな差がある。
中級8933の方もニヤニヤと笑っている。
「てめえらなめたマネしやがって、覚悟しやがれ!!」
その時、兄を横にした父は8933に向かって叫んだ。
「馬鹿野郎!!てめえらこそ皆殺しだ!!」
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)
30対2で、真面目な顔をして「皆殺しだ!!」と叫ぶ脳みそ。
父の兄はその時、はじめて実の弟を怖いと思ったという。
「俺はただの喧嘩好きだけど、こいつはKICHIGAIだ」と。
「こんなKICHIGAIとこの8933の街でつるんでいたら命がいくつあってもたりない」と。
この戦い、始まる前に警察が来て解散となった。
中級8933の方から話をきいた親分さんは、大層おもしろがった。
「これから甘納豆屋のガキにはこっちから手をだしちゃなんねえ。KICHIGAIだからしょうがないだろ?」
任侠道がまだ生きていた時代の話である。
一方、我が母は同じK田で父の小学校の同級生だったが、町工場のお嬢様である。
しかも病弱。
その二人が結婚すると言い出したので、周囲は大騒ぎになった。
実は母は蕎麦屋と結婚することになっていたのだが、そこに我が父が「ちょっと待った!!」と一世一代のラブレターを書いたのである。
処女で、病弱で、本ばっかし読んでた母はそれにクラリと来てしまった。
優等生は不良に弱い・・・・
だが、父は不良なだけではない。
KICHIGAIなのである。
まあ、よく言えばベルセルクな訳だが。
もちろん母の兄弟は皆それを知っている。
「よりによってK田一のKICHIGAIが身内になるなんて・・・」
兄弟全員が、この結婚に反対した。
それでも母の気持ちはかわらない。
なんたって、K田一のKICHIGAIが思いのたけをつづった恋文が手元にある
(今でも母はどっかに隠している。小学生の時、私は見た)
母の周囲の友達も、もちろん皆反対。
「他なら誰でもいいから。奴だけはやめとけ」
だってK田一のKICHIGAIだもん・・・・・
全員がこの結婚に反対するなか、祖父が決断することになった。
家族会議のなか、祖父は考えた。
「自分の息子達はどうも物足りない。肝心の長男に至っては「画家になりたい」などといいやがる。なんの為に上州の女を嫁にもらったと思ってるんだ。薩摩隼人の気風をすたらせない為だろうが。なのに「画家」。それにひきかえ、奴は面白い男じゃ。問題なのはKICHIGAIな事じゃが・・・・」
そして口を開いた。
「あいつの噂はワシもようしっとる。じゃがな、あいつが弱いモノ虐めしとるという噂を聞いたことあるもんはいるか?おらんじゃろ。あいつはKICHIGAIじゃが、弱いモノ虐めて喜ぶような男ではなか。XX(母の名)はくれてやる。あいつをつれてこい」
祖父は薩摩隼人。
家長の言うことは絶対である。
母方の家族は何も言わず引き下がった。
KICHIGAIの父は、思いもかけず結婚の許しをもらい、喜んだ。
喜んだどころか「俺はあの人を見て、本当にこの世に仏様はいるんだと思った」という。
K田一のKICHIGAIは生き仏を見て、(ちょっとだけ)まともな人間になった。
それから十年ちょいの月日がながれた。
肺ガンで、見る影もなくなった祖父が父に言った。
「すまんが、ワシが死んだあと、嫁の面倒をみてくれんかのお。おまえだけが頼りじゃ」
(おまえにゃ昔、貸しがあったよな。しっかり返すつもりはあるだろうな?)
父はうなずいた。
それから約20年。
退院した祖母が、僕と弟が出て行き、両親と妹が住む家にやってきたのである。
Uploads on coming monday!!
see you (^_-)
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