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2004.03.01

いい年した男が三人でーその4-

結局の所、僕は病室で点滴につながれ、二日間、
一切のものを口にすることを禁じられた。

病名は急性膵炎。

僕は昔、アレルギー性鼻炎の治療のため、
体質改善をすべく、2~5日の断食に何度か
取り組んだことがある。
だから食べ物が食べられないのは、どおって
ことないのだが、飲み物もダメというのはキツイ。
いくら24時間点滴いれてもらっててもだ。

一日目ですでに力石徹のごとく、喉は水を求め、
二日目には、もう何か飲むことしか、考えられなく
なった。

そしてその夜

僕はひらめいてしまったのだ・・・・・・

この病院のどこかのフロアには、出産する人の
為のフロアがある・・・

そこでは、これから出産する妊婦や、出産を終えた
人妻がすやすやと眠っているに違いない。

そしてその乳房には、まさにあふれんばかりの母乳がっ!!

「苦しむ事なんてないぜベイビー!!」僕の中に眠る悪魔が、心の中で金色の瞳を開いてささやいた。

「本当に喉が渇いたら、点滴をはずして、階段つかって産婦人科病棟にいき、すやすやと眠っている妊婦の豊満な胸にかぶりつき、赤子のごとく、母乳をすいまくればいいのさ~。食欲と性欲、まとめて処理できるぜえ」

それは、この世に現れた、吸血鬼の新バージョン!!

妊婦ばかりねらい、母乳があふれんばかりのおっぱいにむしゃぶりつき、母乳を飲んではいずこともなくさっていく悪魔!!

21世紀、日本の妊婦の間に広がるミルク色のホラー伝説!!

その名も吸乳鬼!!

やばい、やばすぎるぞ・・・・・
三日目の朝、早朝の検温にきた親切な看護婦さんに、
自分が吸乳鬼になってしまうのでは?という妄想に怯える
僕は「なんとか飲み物だけでも・・・・」といってみた。

『う~ん。検査の数値自体は悪くないんですが、どうでしょうか・・
多分飲み物というと、ダメといわれるから、ここは「氷だけ
でもなめさせてもらいませんか?」と先生に聞いてみる
というのは。もしかすると、それくらいは許可されるかも』

僕は朝食前にやってきた、レジデントの先生に言ってみた。
「う~ん、氷を口に含んだだけでも、膵臓や肝臓が刺激されて
消化液を分泌するので、もう少し我慢していただかないと」

しかし、その後、回診に来た担当医は、検査の数値を確認
すると「うん。いいね。飲料だけでもいってみるかい?
その代わり、痛みが再発するような事があれば止めるけど」

「いや、痛みに耐えてまで飲もうとは思わないので、痛んだら
すぐに止めます」
もはや心の60%が吸乳鬼に変化してる僕は、すぐさま答えた。

「じゃあ、お茶とか水とか軽いものから。少しずつ口に
するように。ごくごく飲むのはダメだからね」
こうして僕は、三日目の午後から、飲み物だけ口にすることが
許された。

「普通、膵炎の患者さんは、一週間は何も口にいれさせて
もらえないんですよ。早くても五日間は点滴だけです。
飲み物だけとはいえ、三日目で許可されたなんて、私、
はじめてです」午後の検温のとき、無糖の紅茶をちびちび
飲む僕をみながら、看護婦さんがいった。

あぶない・・・マジで吸乳鬼になってしまうとこだった。

翌日は重湯が許可され、それが数日つづいたあと五分粥。
そして全粥。
経過は順調にすすんだと思われた。

しかし、最終検査の結果、僕の胆道には狭窄部分が
あることが判明した。順調な経過に、ニコニコしていた先生が、
いきなり深刻な顔で現れて言った。

「この狭窄は石がつまっているとかではなく、外側から
圧迫されているようです。胆石が十二指腸に落ちるときに、
傷つけた部分が、炎症おこしたのかもしれませんが、
腫瘍の可能性もあります。明日かあさって、内視鏡を入れて、
造影剤を投入して詳しくしらべると同時に、組織をとって、
検査にまわしますから」

そして二日後、検査のために、服を着替えた僕の前に
運んでこられたのは、キャスター付きのストレッチャーだった!!

「あの~。歩いて検査室までいけますけど」
「ストレッチャーでという指示ですから」
イヤな予感がした(--)

しかもストレッチャーで運ばれたのは、二階の内視鏡室では
なく、一階の鉄の扉の部屋だ。

検査室の看護婦に、患者受け渡しの手続きを終えて帰ろうと
する顔なじみの看護婦さんに、僕はいった。
「あの~まさか出てきた時は、ショッカーの怪人に改造
されてるなんて事はないですよね」

無視された。

検査室はまるで手術室のような物々しさだ。
「あの~時間的にどのくらいかかるんでしょうか?」

「それは人それぞれで。この前の人は一時間くらいでしたけど」
でも、2時の検査といわれて、絶食してた僕が呼び出されたのが、
すでに4時。
一時間で終わってるなら、2時間もおくれないのでは??

内視鏡を一時間以上つっこんだままにされるなんて、想像
しただけで死にそうだ。去年十二指腸潰瘍で、何回かのんだが、
20分くらいだってつらいのに。

いきなり黙り込んだ僕に、看護婦さんが「でも、眠くなるお薬を投与
しますから、想像するほどつらくないと思いますよ」と優しくいった。

のどの麻酔を口にふくまされ、それが終わると看護婦さんが
「じゃあ、これから眠くなる薬を点滴からいれますからねえ~」

担当医がやってきて、「じゃあ円くんはじめるから」と内視鏡を
噛みちぎったりしないように、口をダッチワイフのように広げる
マウスピース(僕は密かにエロピースと呼んでいる)を
かまされた僕の口に、内視鏡を入れだした

すみません。全然眠くならないんですけど・・・

作業はどんどん進む。確かに以前よりつらくない

でも全然眠くならないんですけど・・・・

ヨガの呼吸法を使って、精神と肉体を安定させていた僕にも
ついに限界が訪れた!!

全然眠くはならないですよ!!くるしいですっ!!

同時に僕はゲフッ!!と空えづきをはじめた。もちろん故意にではない。体がえづいたのだ。医師があわただしく反応する!!そして・・・・

それから10分。検査は終わった。
僕はぼろぼろに犯された女性のような気分(多分)で
検査室を出た。
吸乳鬼(ただし幼生。進化せず)は内視鏡をあやつる触手系医師に敗北したようだった。

確かにストレッチャーは必要だった

帰るときにはねっ

(To be continue)

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