2007.08.06

憂鬱なダックちゃん(9)

「これみてくれよ」

ヨシさんがよこしたのは、日本の新聞の国際政治欄だった。

何々?

中国で地方政府が市民の戸籍を限定で販売したが、農民からの応募が予想以上で、これを許可すると農政に響く可能性もあると北京政府が戸籍の販売を禁止した・・・・

「これってダックちゃんの言ってた奴ですね。」

「だろうな。」

「やっぱ農民は農民のままなんですね。」

「ま、農民は農民でいいんじゃねえか。」

「円さんとヨシの善意も政府の前には無に帰したか。」

二代目社長が笑いながら言った。

「ダックの奴はもうしってるんでしょうか?」

「知ってるだろ?日本の新聞にのってるくらいだから。」

「じゃあ、お金返ってくるんですかね?」

「そりゃ帰ってくるだろ。」

ヨシさんは心なしか嬉しそうだ。

ダックちゃんにあげたつもりの5000元が返ってきたら、そのお金できれいなお姉ちゃんと仲良くするつもりに違いない。

しっかし中国語もたいして話せるわけではないのに、よくもまあ・・・・

それはともかく、一階におりると、チョビと工場長がいた。

「チョビ~。夕方ピザハット行ってピザ買ってきて。」

しばらく前に、この街にも初めて外資系のチェーン店ができた。

それがピザハットだ。

マクドナルドや、ケンタッキーも進出を考えているという噂があったが、実際にやってきたのは一年後で、ピザハットが一番早かった。

もっとも中国人は伸びるチーズが苦手らしく、あまり好評ではなかったが、ピザ好きの僕からすれば、ここでの生活が格段にしやすくなった。

「なんであたしがっ!!」

「いいじゃん。夜勤の工員の分も買ってきていいから。10枚くらい買ってきてよ。運転手に車出すようにいっておくからさ。」

「えっ?10枚も?なんで今日はそんなに気前がいいの?」

「なんで今日はって、ジュースでもなんでも、月に一度くらいは工員全員にご馳走してやってるだろうがっ!!」

もちろん自腹だ。

でも原料の規格がちがったりすると、6時間で終わる作業が、12時間かかったりすることもあるから、そんなときには細かくケアしなければならない。

こういうのは気分の問題で、現場が大変なのを上はきちんと認識しているという事を伝える事に意味がある。

合弁会社の運営というのは、結構気を使うのだ。

まあ、会社に領収書渡せば、ちゃんとお金は返ってくるのだが、ピザハットのピザとなると話は別で、ぐちゃぐちゃと言われる可能性もある。

数千円のお金でぐちゃぐちゃ言われて、オマケに「自分が食べたいからといって、贅沢な外国のチェーン店のものを夜食に注文している」なんて上の方に報告されるのも面白くない。

というのは表向きの話で、実際の所、5000元が返ってきても、僕にはピザハットのピザを食べるくらいしか、お金の使い道がなかったのだった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

一週間が過ぎたが、ダックちゃんの方からは何もいってこず、僕やヨシさんからもダックちゃんに尋ねる事はしなかった。

っていうか、尋ねるヒマもないくらい仕事が忙しくなってきたのだった。

そんなある日、帰宅するまえの引き継ぎで、生産管理課長を待って新聞を読んでいた工場長が、「あっ」といった。

「これ、見ました?」

工場長から渡された地元紙を読むと、上海近郊の村で、市民の戸籍を売り出したが、おしかける農民でパニック状態になったので、中央政府が地方政府が勝手に戸籍を販売することを禁止することにしたと書いてあった。

「ああ、同じような内容の記事、一週間くらい前に日本の新聞で読んだよ。」

「ダックちゃんの甥、農民のままですね。」

「いいんじゃない?農民は農民で。」

しばらくして、生産管理課長とダックちゃんが一緒に事務所に入ってきた。

工場長がダックちゃんに新聞を渡した。

「知ってますよ。」

ダックちゃんは明るく言った。

どうやら知らなかった訳ではないらしい。

なんだ?だったら早く返せよ!!それともお姉さんが田舎から現金を持ってくるので、時間がかかるのだろうか?

引き継ぎが終わった生産管理課長がトイレに行き、事務所でダックちゃんと二人きりになったとき、僕はダックちゃんに聞いてみた。

「で、市民権が買えなくなって、お金はど~なるのよ?」

ダックちゃんは驚いたような顔をしていった。

「あのお金は豚をかっちゃいましたよぉ~っ」

「え?」

「子豚を買ったんです。子豚が大人になればまた子豚を産んで、それを売れば円さんにもヨシさんにもちゃんと期限通りにお金返せますから。」

「子豚・・・・」

「はい。甥っ子達も可愛いと喜んでいます。」

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

「というわけで、僕等が渡したお金は、子豚になったそうです。」

翌日、僕とヨシさんと二代目社長がお昼を食べている時に、僕はヨシさんに言った。

「う~ん。まあ、オレらの気持からするとあくまで、子供の戸籍を買う為に貸した金だけどな。確かにそういうことは借用書には書いてはなかったよな。」

「すいません。」

「いや、そういう意味じゃないって。」

「はあ。わかってはいますけど、一応いっとかないとまずいかなって。」

「でもいいじゃないか。戸籍になったら金が返ってくるかどうかわからないけど、子豚になったら死なない限り戻ってくるだろ?」

二代目社長が鯛の丸焼きをつつきながらいった。

ここいらではタイは高級魚ということはなく、日本向けに養殖してたりするので、値段も安い。

「でもオレ等の気持としては、金をそのまま返して欲しいよなあ。一年後じゃなくて今。」

「そうですねえ。別にダックの家族を豊かにするために貸した金じゃないですから。」

「なんか考えると腹がたつな。」

「生まれた子豚が売れなくて、5000元を子豚で返されたらどうします?」

僕はヨシさんに聞いてみた。

「よしてくれ。えさ代やらなんやらで、余計金がかかるって。」

「でもカラオケのお姉ちゃんにあげたら喜ぶかもですよ?」

「料理してから持ってきてくれって言われるだろっ。」

「毎日子豚の丸焼き食べられますね。あれ、皮の所おいしいですよねえ~。」

「いや、円さんそんな事言ってる場合じゃないって。」

「でももう僕等のお金は子豚になっちゃてるんだから、今から金返せ!!って言ったところで子豚しか返ってこないわけですよ。5000元分の子豚。つまり5000コブタです。」

「社長!!なんか言ってやってくださいよ!!円さんおかしくなってるってっ!!絶対!!」

「私の5000元が5000コブタにい~っ。」

「こわれてるって。社長!!円さんが壊れてるっ!!」

「まあ、なんだな。本人に金がなくても、そいつの周りに金持ちがいれば、そいつが頭おかしくなるくらいせっつく事で、周りのお人好しの金持ちが、金出してくれると。」

二代目社長が、ほぐした鯛の身をご飯の上にのせて、烏龍茶をかけながら言った。

この烏龍茶漬けがなかなか旨いのだ。

「くっそ~。ダックの姉貴のやつ、最初から俺ら日本人の金が狙いだったのかっ!!」

「まあ、そう怒るなよヨシ。貧しい中国人に子豚長者になるチャンスあげたと思えばいいじゃないか。」

「そうですよ。子豚長者になったら、きっと子豚を100匹くらいヨシさんにくれますよ」

「いや、子豚なんていいって!!金返せよ金!!一年後でいいからちゃんと金返せってダックにいっとけっ!!」

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

一年後、ダックちゃんは5000元きっかりを、僕とヨシさんに返してくれた。

もちろん借用書に書いたとおり、金利はなしだ。

お金は5000元返ってきたが、その時には貸した時より、為替レートが20%ほど変わっていたので、日本円換算にすると、その分だけ、ぼくらは損をした。

「あいつの姉には気持ってもんがないのか?金利つけなくても、自分とこでとれた野菜もってくるとかよお。」

「共産圏ですから。お金持ちからとった金にそんなものは必要ないんでしょ。それに野菜っていったって子豚のうんこで育てた野菜ですよ?きっと」

「いらね。そんな野菜いらね。もうオレは日本に帰りたい!!生涯化学肥料で育てた野菜以外食べない!!」

ヨシさんはその半年後に日本に戻った。

僕はその一ヶ月後に、契約を五年できりあげて日本に戻った。

ダックちゃんは僕がやめると同時に、別会社にうつった。

三年ほど後、出張で中国にいったときに、空港で偶然ダックちゃんと出会った。

「そういえばさ、甥っ子達どうしてる?」

「元気ですよお。今は学校休みの時には、姉たちの手伝いして豚を育てています。うちは今では村一番の豚持ちです!!」

今頃、中国の田舎のどこかには、僕等の善意のお金で、市民にこそなれなかったが、子豚長者になった若者が約2名いるに違いない。

 

 

see you (^_-)

次回は9月から。でもゆんたくアクマちゃんはやります。多分・・・


2007.07.23

憂鬱なダックちゃん(8)

「犯罪者?誰もそんな事いってね~だろ?」

僕はうつむいて泣きじゃくるダックちゃんを見て言った。

「だって、だって、中国じゃ拇印を押すのは逮捕された時だけですっ!!」

顔をあげたダックちゃんは、目から涙、鼻からは鼻水がたれまくっていた。

誰か鏡を見せてやってくれ(^_^;)

「そんなの知るか!!日本人に金借りるのに、中国でなんたらかたらなんて話はつうじね~だろうがっ!!」

流石に僕もこの訳のわからない非難にはカチンときた。

「だって!!だって!!」

「だっても糞もね~んだ!!大体何ヶ月か前に知り合ったばかりの外国人から無利子で金借りるのに、お前が借用書に押す判子ももってこねえからこういう事になるんだろうがっ!!」

ヒーッ ヒーッ

ダックちゃんは硬く硬く目をつぶって変な声を出して泣き出した。

もちろん顔は前にもましてぐちゃぐちゃだ。

まあ、日本でも警察に捕まれば拇印は押させられるだろうが、なんだこの非難は?

僕も声を荒げているうちに段々エキサイトしてきた。

「なんだ!!私は犯罪者じゃないって!!誰も犯罪者だなんて言ってねえだろうが!!日本じゃ犯罪おかした人間は警察に指紋とられるが、普通に借用書書くときだって、判子もってなきゃ拇印おすんだ!!日本人が金貸すのに、日本の常識にしたがって書類を処理するのが、そんなに酷いことかっ!!それも元々は自分の年収以上の金を無利子、無担保で借りるのに判子一つもってこねえお前が悪いんだろうがっ!!」

ヒーッ ヒーッ

「だいたいなあ~。それくらいの事で、オレを悪く言えるほど、お前の周囲はいい人だらけなのか?お前が夜も寝られないで困っているときに、金貸してくれるっていった中国人がいるのか?」

ヒーッ ヒーッ

「ヒーッじゃねえよっ!!いるのかいないのかきいてるんだよっ!!」

「いませんよお~(>_<)」

「いねえだろうがボケ~っ!!同じ同胞の中国人がしてくれないこと、してくれる日本人が、酷い人間なのかどうか答えてみろやっ!!」

ヒーッ ヒーッ

『じゃあ、お前の姉ちゃん達はどうなんだ?てめえの息子の問題だろ?お前がどれほど姉ちゃん達に世話になったかしらんけど、だからといって、月給600元で働きはじめた妹に、いきなり一ヶ月で1万元つくれって毎日押しかけてくる姉が俺らより優しいのかっ!!てめえの息子の問題なら、まずてめえが努力して、その上で「困ってるんで余裕あったら少しお金貸して」というのが普通だろっ!!』

ヒーッ ヒーッ

「ヒーッじゃねえよっ!!そういう非常識なお前の姉どもとくらべて、困ったのみかねて、3ヶ月前に働きだしたお前に何の恩もねえのに、ポンと金貸してくれる俺らは、お前がそうやって泣いて抗議するほど酷い、鬼のような人間か?日本鬼子とでもいうんかいっ!!」

ヒーッ ヒーッ

「お前は姉に恩があるから、なんとか金をつくりたい。俺らはお前に何の恩もないのに、お前が困っててかわいそうだから金つくって貸してやる。お前と俺らとどっちがいい人なんじゃボケ~っ!!」

ヒック ヒック ヒック。

「大体お前の事を犯罪者だと私が思っているとしてだなあ~。犯罪者に金貸す奴がどこにおるんじゃ!!」

ダックちゃんは次第に泣きやんだ。

そして4枚の借用書に黙って拇印を押した。

押した後、またなきじゃくり、泣きやむと1万元を抱えて帰っていった。

ドアを閉めて秘書がいった。

「なんで担保も利子もなしでお金借りられるのに、ああやって泣いて騒がなきゃならないんでしょうねえ?拇印おすのがイヤなら、一端帰って判子もってくればいいのに」

知るか!!そんなこと。

私がききたい。

 

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

翌日。

僕はヨシさんに、ダックちゃんが拇印を押した借用書を渡すついでに昨日の事をそのまま話した。

「ぎゃはははは。ダックの奴、そんなことで大泣きしたのかよっ。きっと汚ねえ泣き顔だったんだろうな。」

「せっかくいいことしたつもりなのに、すっごくイヤな気分になりましたよ。」

「しょがねえな。かっペのやることは。」

「でもあれだけの金貸すのに、判子もなしって訳にはいかないでしょ。」

「そりゃそうだ。判子なきゃ拇印おさせるのは当然だわな。っていうか日本人なら判子忘れたから拇印でいいですか?って自分から聞くけどな。」

「でしょ?それが犯罪者扱いされたって大泣きですよ?いくら習慣が違うっていったってそりゃないでしょ?」

「まあ大体あいつは日本のお客さんにホテルでの食事に俺らと一緒に来るようにいわれて、ピンクのスエット上下で行こうとする人間だからな。」

先月日本からバイヤーがきたときに、生産部の方々も一緒にどうですか?と工場長と生産管理課長、品質管理課長が誘われたのだが、通訳ということで、ダックちゃんも誘われたのだった。

出発する前に工場にきたダックちゃんはピンクのスエット上下に運動靴だった。

「お前、なんで普通の服きてないの?」

この格好でもレストランで断られることはないが、いくらなんでも日本から来たお客さんに失礼だと僕は思ったので注意した。

「普通ですよお~。大学ではみんなこれですよお~。」

「ここは大学じゃないし、日本ではスエットなんて部屋着か運動着だ。こちらが接待するときならまだしも、日本のお客様に招待されてその格好は失礼だろ。着替えろ。」

このときもすったもんだのあげく、日本にいったことのある工場長がダックちゃんに説明して普通の服に着替えさせて事なきをえたのだった。

『昔、香港の友達と食事したんですよ。で、明日中国に戻るっていったら、彼が「円はモンキーハウスに帰るのか?」って笑うんです。で、モンキーハウスってどういうこと?って彼にきいたら、お前だって中国の農村いくだろ?あんな連中モンキーと同じだろ?食って寝て糞して、為替がどうなっているかも、世界情勢がどうなってるかも全然わからないし関心もない。モンキーに毛の生えたようなもんだろ?って言われたんですけど、なんかそれが理解できるような気がしてきましたよ。』

「ははは。モンキーハウスはすげえな。香港人だから言えることで、俺ら日本人には口にできねえけどな。それにしても大学出たダックでその調子じゃ、姉ちゃん達、金はかえさねえだろうな。そうなるとまたダックの奴泣くんだろうな。」

『一応ダックちゃんが帰る時に、お姉さん達に拇印押した借用書見せて、「あたしがここまでして借りてきたんだからちゃんと返してっていっておけ!!」って言ったんですけどね。やっぱ返せないと言いだした時の相手はヨシさんお願いしますよ。僕はもうイヤですよ。』

「勘弁してくれよ!!まあ、あれだな。常識のレベルが違う連中とやっていくのは面倒だってことだな。オレは、円さんや前の社長が工場長やら生産課、品管課の連中に日本の常識教えておいてくれたから楽だけどね。」

「あ~っ!!貸さなくてもいい金貸してやって、なんでこんなにムカムカしなきゃならないんだろっ」

「そりゃ 円さんがまだ若いからさ。年食えば、世の中そんなもんだってわかってくるって。」

「そうですかねえ~。」

「そうさ。女と友達に渡した金は戻ってこないし、感謝より逆恨みをかうもんなのさ。」

戻ってこないのはまだしも、逆恨みだけは勘弁してほしいな・・・

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

一方で、姉に1万元をポン!!とだしてやったダックちゃんは、これまでのしょげぶりがウソのように元気になった。

仕事も極めて熱心で、本来なら元気なダックちゃんの姿を見て、「ああ、お金貸してあげてよかった」と思うところなのだが、そんな気分にもなりずらい。

そんなある日、ヨシさんが内線で「円さんちょっとこれねえか?」と言ってきた。

めずらしいなと思いながら二階の工場事務所にいくと、応接ソファに二代目社長が座り、ヨシさんは自分のデスクで、二代目社長からもらった日本の新聞を見ていた。

何があったんだ?

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


2007.07.16

憂鬱なダックちゃん(7)

翌日。

僕は、親父の事務所の秘書に書かせた借用書を、二階工場の事務所にヨシさんが一人でいるときをみはからって持っていった。

この秘書は上海の大学を出ていて非常に賢い。

僕がおよその事情を話すと、すぐに僕とヨシさんの分の借用書の下書きをもってきて、僕の確認をとってからタイプしてくれた。

「まあ、利子なんかはないので返済の期限だけですけど。1年です。期限内に返せなかった時のペナルティはかかないでおきました。なんなら追記しますけど。」

「金も美貌もない女に借金返せないときのペナルティをつけても意味ね~よ。ちゃんと返せるまでは一生懸命通訳しろってオレが言ってたって言ってくれよ。」

そういうとヨシさんは借用書にサインして、鞄から厚みのある封筒を出した。

「円さんが一緒にわたしといてくれ。」

「預かり書きましょうか?」

「いるわけね~だろ」

ヨシさんは格好良く笑いながらそういうと、工場内に入っていった。

遊びなれた男って粋だな~

 

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

僕の方は馴染みの両替屋のポケベルを鳴らして、今日の両替レートを確認すると、会社の手前まできてもらった。

「悪いね」

原チャリで乗り付けた両替屋は20代後半の男で、非常に精悍な顔つきをしている。

僕がはじめて中国に来たときに、ホテルの前で声をかけてきた両替屋のうちの一人だ。

どいつもきわめていかがわしい雰囲気だったのだが、彼だけがまっとうな雰囲気だったうえ、レートもふっかけてこないので、こちらに住むようになってからはずっと彼に両替を頼んでいた。

「バイクがあるからかまわないよ。いつでも連絡くれよな。」

「最近ホテルの前いないもんね。」

「今は建築内装の仕事はじめたんだ。そっちが忙しくてホテルの前で客待ちしているヒマがなくてさ。でもあんたなら連絡してくれればいつでもこっちからいくからさ。」

「助かるよ。」

そう言って僕は封筒に入った外貨券4000元を渡した。

彼は封筒の中の札をパラパラとめくり、すべて100元札なのを確認すると、電話で言ったとおりのレートで両替して人民元をよこした。

「そんなパラパラとやっただけで数も確認できんの?」

「いや。でもあんた相手にそんな細かい数確認する必要ないしさ。今まで足りなかった事は一度もないしな。」

「ま、お互い様ってとこだね。」

「それよりさ、こんど食事でもご馳走しようか?」

僕はちょっと考えた。

「悪くないね。でも、内装の仕事が儲かってからでいいよ。」

両替屋は、はははと笑った。

「んじゃ、そういうことで。」

「うん。今度は月の半ばくらいに又両替頼むから。」

両替屋が原チャリで市内に戻っていくと、僕はタクシーを拾い、親父の事務所があるホテルに向かった。

いくらなんでも年収以上の金額をダックちゃんに貸すのに、社内でという訳にはいかない。

 

  
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

  

ホテルにある親父の会社の事務所で秘書に入れてもらったお茶を飲んでいると、ダックちゃんがやってきた。

僕は机の上に、ヨシさんの5000元と僕の5000元、計10000元をつみあげた。

「じゃあ、これがお金。ヨシさんとオレとで5000づつあるから数えて確認して。」

ダックちゃんは一枚ずつ丁寧に数えた。

僕等日本人の感覚からすると、大学出たての子がいきなり目の前に500万ほど積まれるのと一緒だ。

僕等側からすると、ちょっとした買い物しちゃったという金額だけれども、農村育ちのダックちゃんにしてみれば、いままで見たこともない大金なのかもしれない。

そう考えると、これでよかったのだろうか?という気がしてきた。

僕が外資系の会社に大学出て勤めたとして、自分の事ならともかく、自分の兄弟の事で困っているからといって、会社のエロい人が、500万ポン!!と貸してくれるだろうかと考えるとそんなことは絶対ありえない気がする。

しかも僕にしてもヨシさんにしても、最初から返してくれればめっけもんくらいの気持なのだ。

自分の事ながら、日本人って気前が良すぎないか?

「はい。確かに10000元あります。」

「じゃあ、この借用書の内容確認してサインして。金利はいいから、返済期日は守るように」

ダックちゃんは内容を確認して嬉しそうな顔をしてサインした。

「あとハンコ。」

「あっ。忘れちゃいましたぁ~」

「あ?じゃあ、拇印押して。親指で。」

僕は秘書に朱肉をもってこさせた。

ダックちゃんは、4枚の借用書を前にうつむいた。

「早くおしちゃって。それで終わりだから」

「・・・・・・・」

ダックちゃんは金と借用書を前にうなだれたままだった。

そして、いきなりシクシクと泣き始めた。

なんだ?

僕とヨシさんの優しさに感激して泣きだしたのか?

ダックちゃんのシクシクは泣きじゃくりにかわってきた。

僕は秘書の顔を見た。

秘書も僕の顔を見た。

やはり何故泣いているのかわからないらしい。

「何泣いてんだ?」

僕は仕方なく、泣きじゃくるダックちゃんに聞いてみた。

「だって、だって・・・・・」

ヒック・・ヒック・・・

「こんな事・・・こんな事・・・・」

ヒック・・・ヒック・・・

「私、犯罪者じゃないですよぉ~っ(>_<)」

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


2007.07.09

憂鬱なダックちゃん(6)

一週間が過ぎた夜。

ダックちゃんは目の下にクマをつくり、机にうづくまってなにやら翻訳をしていた。

チョビの話では、少しでも金をかせごうと、友人経由で翻訳を引き受けたらしい。

もちろん、ウチの会社的にはまずいのだが、うるさい事をいう連中がいない深夜の勤務だし、理由はわかっているので夜間に限り、僕も工場長も黙認していた。

「ね~ね~ダックちゃん。」

僕はダックちゃんの背中に声をかけた。

「なんですかあ~。」

目の下にクマつくりながらも、ダックちゃんは明るい声で振り向いた。

カラ元気というよりも、このテンションは変わらないものらしい。

「お姉さん達帰った?」

「え?」

「二人で、きてるんでしょ?」

「なんでしってるんですかあ~」

「私は社内の事は何でも知っているのだ。工員の誰と誰が付き合っていて、誰が誰を好きなのかまですべて知っている。」

「はははは。」

「で、一万元つくれたの?」

僕はさらっといった。

「えっ?」

「お姉さん達は子供に市内の戸籍買ってあげるのに金かせってきてるんでしょ?」

「なんでしってるんですかっ」

さすがにダックちゃんはびっくりしたようだった。

「私はなんでも知っている。キミの今日はいているパンツの色が白だということも。」

「ななな、なんでそんなことまで!!」

「簡単だ。中国の露天パンツ屋さんで白以外のパンツを見たことがないからだ(当時の話しです)」

「そ、そうですか・・そうですね・・」

「で、お金払う期限は月末までだろ?もう時間ないんじゃね~の?」

「はい・・・姉は合弁会社につとめているんだから、お金持ちだろうって言うんですけど、私のお給料は500元ちょっとだし、まだ働きはじめて数ヶ月だし、お金なんてないのに毎晩できたかできたかって・・」

すごい国だな。

家族がヤクザの取り立てより厳しく・・・

「ひどい姉だな」

「違うんです。姉たちが苦労して、私を勉強させて大学にいけるようにしてくれたんで、悪い姉じゃないんです。私は自分の甥の事なのに、頼まれても何もできないのが悔しくて・・」

そういうとダックちゃんはシクシクと泣き出した。

その時、三階の倉庫に行っていたチョビが戻ってきた。

ドアのところで、泣いているダックちゃんに気がつき僕の顔をみた。

僕が目であっちいってろと合図すると、引き返して洗濯室の方にいった。

「ヨシさんとも話したんだけど、私とヨシさんとで半分づつ出してあげてもいいぞ。」

「えっ?」

ダックちゃんが泣きやんだ。

「まあ、返す見通しがたつならだが。私はともかく、ヨシさんはあと一年くらいだからな。ここにいるのは。」

「ほ、本当ですか?」

「返せるならだ。あくまで」

「だ、大丈夫です。姉たちもがんばれば1年でなんとか・・・」

「二人で一万元でいいんだな?」

「はい。お願いしますっ!!」

「あと、他の人間には言うな。会社でこんな噂が拡がったら、社内だけでなく、管轄局でも話題になって、日本側から派遣されてる私やヨシさんは関係ないけど、お前はここにいずらくなるぞ。」

「は、はい」

「それから返済期限入れた借用書はとるからな。金利はタダにしておいてやるけど。」

「は、はい。わかりました!!」

そのときチョビが戻って来た。

「今日は早退していいから。お姉ちゃん達に言ってこい。そうしないとまた今晩も寝させてもらえないぞ。」

ダックちゃんは事務所に入ってきたチョビに早退する旨を告げると、走って出て行った。

「お金出してあげることにしたんだ。」

チョビが僕の顔を見て言った。

「ヨシさんと半分づつ貸してあげることにした。」

僕はちょっと考えてからチョビに言った。

この話は、多分ここだけの話で終わらない。

僕だって社内の事は従業員の恋愛沙汰から幹部職員の不倫まで把握しているが、中国側は僕以上の情報網で社内の動きを追っている。

ダックちゃんが口を割らなくても、あれだけ憂鬱な顔をして、毎日お姉さんに金なんとかしろと言われてたのが急に元気になったりすれば、当然寮住まいの連中は気付く。

ダックちゃんにしてみれば、ここは地元ではないから、一万元ものお金をなんとかしてくれるのは日本人くらいしかいないのだった。

だとすると何人もの人間を経由して、変な話しになって局長に報告がいくより、チョビから直接に情報が行っていた方が良い。

18の時から洗濯室で働いていたチョビを、中国側の要請で工場管理事務所に移すことには僕はあまりいい顔をしなかったのだが、局長に対してダイレクトに情報を送り込むルートとして確保しておくのは悪くないと判断して移動を認めたのだった。

「いい人ね~」

チョビは嬉しそうな顔をして言った。

「そう思うか?」

「思う。」

「じゃあ、ダックちゃんがお金返せなかった時は、チョビが体で返してくれてもいいから。」

チョビの顔が真っ赤になった。

「な、何いってんのよっ!!」

「返せなかったらの話だよ。それにダックちゃんとは友達じゃん。友達の為に一肌脱ごう!!大丈夫。私はいい人だから優しくしてあげるよ。」

「バ・カ・ヤ・ロ!!」

真っ赤な顔で僕をみながらチョビは日本語で言った。

その時工場の見回りを終えた、生産管理課の課長が事務所に入ってきた。

品質管理課の課長は大学を出て3年だが、生産管理課の課長は大学の助教授だった人物で、頭もいいし、大学助教授だったにしては豪放磊落な性格で、僕のお気に入りだ。

「チョビ。何赤くなってんの?」

真っ赤な顔をしているチョビを見て、ひやかすように彼がいった。

僕は彼と交代で工場を見回るべく席をたった。

生産管理課の課長にダックちゃんの早退をつげ、部屋を出る時にチョビに投げキスをした。

「大・バ・カ・ヤ・ロ!!」

チョビの日本語をききながら、僕は工場の中に入った。

生産管理課長がチョビをひやかす声がかすかに聞こえてきた。

これで早退したダックちゃんの話題より、何故か赤面していたチョビの話に、皆の関心が集まる。

一応エロい人である僕も、色々(エロエロではない)と気をつかわなければならないのだ。

 

To be continue.

Uploads on coming monday!!

see you (^_-)


2007.07.02

憂鬱なダックちゃん(5)

翌日。

相変わらず浮かぬ顔をしてダックちゃんが出社してきた。

「おはようございます」と、元気のない声で挨拶すると工場の中に入っていく。

「まだダックちゃんは元気でね~の?」

僕がチョビにきくと、チョビは工場長に「あの話、ききました?」と尋ねた。

工場長がきいたきいたと言ったので、僕は再度チョビに「なんの話?」と聞いてみた。

「ダックちゃんはねえ~、お姉さんが二人いて、それぞれに子供がいるんだけど、今、そのお姉さんが二人でやってきて大変な事になっているのよ。」

「どんな?」

「ダックちゃんの故郷の市政府が、市内の戸籍を5000元で売ることになったの。で、お姉さん達がダックちゃんに、お前は大学でて合弁会社に勤めているんだから子供二人分くらいなんとかなるだろう?なんとかしてくれって毎日おしかけてきてるの。」

「なんで戸籍かわなきゃならないんだよ?子供は一人なら戸籍あるじゃん。」

「だって農村の子供は農民戸籍でしょ!!」

「農民戸籍だとなんか問題あるの?」

「え~とですねえ。」工場長が説明した。

「農民戸籍は、農民しかできないんです。もちろん市内に働きに出ることはできるけど、市内の会社で正社員にはなれません。あくまで臨時雇いのバイト。」

「え~!?マジ?ってことは中国では農民に生まれたら農民って事?」

「農民がみんな市内にでてきたら、食料つくる人がいなくなるじゃない!!」

「いや、そういう問題じゃなくてさあ、中国は共産主義だろ?みんな平等なんじゃないの?農民には職業選択の自由とかないわけ?」

「まあ。」

(-_-;)

そんな話ははじめてきいた。

それじゃ、江戸時代の日本か、カースト制度のインドみたいだ。

あきれてものが言えない。

「だからお姉さん達も必死なんですよ。この機会に市内の戸籍を買えなければ、子供は一生農民かもしれないし。」

「はあ。でもダックちゃんはうちの正社員じゃん。ダックちゃんは農民じゃないの?」

「ダックちゃんは大学でてるでしょ!!」チョビが何言ってんだ!!という顔をした。

「農民でも頭の良い子は大学にすすみます。大学でたら市民ですよ。」

「つまり頭の良い子は都会に住んでもいいけど、バカは農業やってろということ?」

「いや、それはちょっと・・・・」

共産党の幹部でもある工場長は言葉を濁した。

「でもそうやって戸籍売ってるなら、今回ダメでもまた売るんじゃない?」

「さあ、どうでしょう?大体農民に市内の戸籍売るって事自体、今回はじめてですし。」

「多分今回きりよねえ?そんなことしたら、中国から農民なんていなくなっちゃうし。」

「でもさあ、農村でも万元戸とか億元戸とかでてるじゃん。別に農民でもいいじゃん。」

「いや、お金の問題では・・・」

「チョビがお金持ちの農民と結婚したら、チョビも農民になるの?」

「し・ま・せ・ん!!」

「お金持ちの農民より、貧乏な市民なのか?」

「面子がないし、子供が農民にされちゃうでしょうがっ!!」

そっか。

やっぱ蔑視とまではいかなくても、単なる田舎モンというよりも、自分たちより、やや下の身分みたいな感じなんだな。

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
僕は二階工場の事務所にいくと、ヨシさんに聞いたことを話した。

「なんだ。それでダックの野郎元気ねえのか?」

「はあ。」

「農民は農民でいいじゃね~か。戸籍買うなんてせこいことしないで、勉強してダックの奴みたいに大学でりゃあ市民だろうが?」

「ま、それもそうですけどね。でも、姉二人のやってることからして、頭の程度はあまりよくないから、その子供って事は・・・」

「しかも農民旦那の血も混じっているしな。」

ヨシさんはゲラゲラ笑った。

「でもな、ダックの奴は今年大学出たばっかりだろ?今だって見習い扱いだろ?給料いくら?」

「今月から正社員ですよ。でも600元くらいでしょ。」

「1万元貯めるのには飲まず食わずでも2年くらいかかるな。」

「期間限定だから、今月中にお金つくらないとダメだそうです。」

「日本語しゃべれるんだから、奴がムチムチぷりんでもうちょっとマシな顔してりゃあ、20日もあれば稼げるけどな。」

「え~。それはつまり体を使うお仕事ですね?処女だから日本人相手なら3人相手すればいいかもですよ。」

「高い金とれるのは最初だけだろうがっ!!」

「そうでした。でもお弁当用の調味料入れ日本からもってきてケチャップつめて終わったあとばらまけば・・」

「そりゃいい考えだ。って円さん。あんた金だしてダックとやるか?」

「絶対やりません。タダでもやりません!!」

「そうだろ?ダメだ。奴が処女だとしても、女としての価値はない。」

「女としては売り物になりませんね。ダックだし。」

「しょうがねえなあ。1万元て日本円でいくら?」

「今のレートだと14万かけるくらいです。」

「出せねえ金じゃねえよなあ。」

「そうなんですよねえ。僕もそう思うのですけど、社員と金の貸し借りするのもどうかと。それに返せないとなるともっと気まずくなっちゃうし。何年も勤めていればまだしも、先月見習い期間が終わったばかりですからねえ。」

「まあな。でもオレ、半分なら出してもいいよ。」

ヨシさんが笑いながら言った。

「でも中国の農民が5000元かせぐのにどれくらい時間かかるかわかりませんよ?」

「ま、その時はしょうがねえだろ?女買ったと思ってあきらめるわ。」

そういう割り切り方があったかっ(^_^;)

「じゃあ、もう少し様子見て、ダックちゃんがお金工面できないようなら、私も半分出してあげることにします。」

「おうっ!!宜しく頼むわ!!」

「オヤジの事務所の秘書に言って、ヨシさんの分の借用書も準備させます。」

「宜しく!!」

そういうとヨシさんは帽子をかぶり二階の工場に入っていこうとして、つぶやいた。

「はあ~。ブスでやれねえ上に金はかかる。どうしょうもない通訳雇っちまったなあ~」

え?これって僕のせい?????

 

To be continue.

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2007.06.25

憂鬱なダックちゃん(4)

突如両腕を痙攣させて倒れたダックちゃんだが・・・

まあ、心臓発作ならば、「うっ!!」とかいって、胸を抱えるようにうずくまる気がする。

もっともドラマや漫画でしかみたことないのでわからないけど。

でも、現実はそんなことを考えている場合ではなく、ダックちゃんはいきなり倒れてしまっているので、僕はあわてて、首に手をあてて、脈拍を見た。

心臓は動いているし、胸も上下しているので、これは心臓発作などではなく驚いて気絶してしまったらしい。

僕はダックちゃんのほっぺを思いっきりつねって「ダック!!おきろっ!!」と言った。

「ひいっ!!」と変な声を出してダックちゃんが起きあがった。

「お前は狸かっ!!」内心ほっとしながら突っ込みをいれると、ダックちゃんは机につっぷしてオイオイと泣き出した。

品質管理課の課長もチョビも「あ~あ・・・」と言った顔で見ている。

「チョビ。ダックちゃんは今日はもういいから寮につれていけ。神聖な社内でオイオイ泣きやがって」

「神聖な社内?」チョビが何いってんの?みたいな顔をして言った。

「なんでもいいからここから連れだせ。で、ベットに寝かして、これ飲ませておけ!!」

僕は自分用にもっているカルシウム錠剤を一粒渡した。

この時期工場では、毎日一千万近い原料を仕入れ、加工する。

入荷した原料を返品するか、加工するかの最終判断は僕がしなければならない。

原料の品質が悪ければ、2.3級品率が高くなり、一日で100万を超える損失が出るし、外見は正常に見えても、中身が不良だったりすると、仕入れた原料でつくった製品すべてが不良在庫になる。

返品したらしたで、納品業者から「てめえおぼえてろっ!!」とか言われることもあるし、ダックちゃんや、チョビをからかってばかりいるように見えて、実は僕も大変なのだ。

そのストレスを処理するためには、カルシウム錠剤はかかせない。

30分ほどして、ダックちゃんを寝かせたチョビが会社に戻ってきた。

「あの薬は何よ!!麻薬でしょ?飲んだ途端、ダックちゃん寝ちゃったわよっ!!」

まだ20そこらのチョビは、外国人が持っている薬はすべて麻薬だと思っているらしい。

でも、この疑惑はしっかり晴らさないと、変な噂が拡がり、それを聞きつけた公安が僕の部屋のガサ入れをしかねない。

それをしたところで麻薬なんかはでてこないが、香港で仕入れた、ノーカットの『プレイボーイ』や『ペントハウス』が見つかってしまうのは格好悪すぎだ。

僕はダックちゃんの机の上においてある日中辞典をめくり。カルシウムを探し出すと、チョビに見せてやった。

「カルシウム?」

チョビはなんだかわからないみたいだったが、品質管理課の課長は、大学の生物学課卒なのでチョビに説明してくれた。

「な~んだ。それにしてはよく効くわね。ダックちゃん、本当にすぐ寝ちゃったわよ。」

「日本のカルシウムは君達の国の粗悪品とは違うのだよ。チョビ」

チョビはイヤそうな顔をした。

チョビの話では、先週からダックちゃんのお姉さん二人が来て、ダックちゃんになにやら頼んでおり、それが原因でダックちゃんはここのところあまり寝ていないらしい。

「なんだ。単に寝不足じゃん。」

「寝不足だって、あんな紙パック爆発させるからでしょっ!!」

「爆発なんてさせてません。踏んで破裂させただけですっ」

「一緒じゃない!!」

「いっしょじゃありません。火薬使ってないし。」

「中国語がちょっとしゃべれるようになって、なんか生意気になった気がする。」

チョビが品質管理課の課長の顔を見て言った。

「お前も日本語しゃべれるようになれよ。」

僕はチョビの顔を見てせせら笑いながら言った。

「う・る・さ・いっ!!い・じ・め・っ・こ!!」

チョビが日本語で僕に言った。

彼女が考えるに、僕と会話するのに、「うるさい」と「いじめっ子」は必須なのだった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

翌日会社にいくと、工員達の態度がなにやら妙だった。

工員の間では、僕の新しい噂が拡がっていたのだった。

『昨日の夜、退屈していた日本人が、あまりにうるさい新しく来た通訳に「エイッ」と気功をかけると、通訳は全身をふるわせて、昏倒してしまった。』

ヨシさんまでが一階事務所におりて来たときに「円さんそんなすごい技もってたのかい?」と聞きに来た。

「んな訳ないですよ。でもダックちゃんが全身ふるわせて気絶しちゃったのは本当です。僕が後ろで紙パックふくらませてぱんっ!!って割ったからですけど。」

「なんだそりゃ。ダックの奴、さかってるのに男っ気がないから、大きな音しただけでイっちゃったんじゃねえのか?感じやすいアヒルちゃんだなっ!!」

そういうとヨシさんはゲラゲラ笑った。

このとき、僕とヨシさんは、この事件のおかげで、ちょっとした損害を受ける事になるとは思ってもいなかったのだが。

To be continue.

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2007.06.18

憂鬱なダックちゃん(3)

通訳も工場付となると、僕が教育しなければならない。

まずは一階、二階の工場の全行程の作業を3日づつ経験させた。

同時に日本語でかかれた作業工程マニュアルを渡し、中国語に翻訳させる。

すでに社長室の秘書兼通訳が中国語に翻訳したものがあるのだが、翻訳させることで専門用語もおぼえるし、作業全体の流れが理解できる。

中国側のスタッフにしても、日本側のスタッフにしても、工程の順序や、おこりうる問題といったことは、お互い理解できていることが当然として、会議や打ち合わせはすすんでいく。

その当然の部分は、通訳としての仕事をはじめる前に、きっちり理解しておいてもらわないと、わからない部分をすっとばして通訳したりして、話がどんどんずれていったりする。

ダックちゃんはきわめてマジメな働きぶりで、現場の班長のウケもよく、翻訳された内容も、僕がパラパラと見る分には問題なさそうだった。

だが一つ問題があった。

ともかく良く喋るのだ。

あまりうるさいので、からかうと、よりハイテンションになる。

まあ、陰気だったり、陰険だったりするよりは、好奇心一杯に目をキラキラさせてぺらぺらしゃべっててもらったほうがいいが、僕にしても、工場長にしても、人事やら、原料のスケジュールやら、工員の給与の査定やら、静かにしていて欲しいという時もあるのだ。

ある日、僕と工場長が二階の工場事務所にいると、ヨシさんが二階工場からでてきた。

「なんだよ。珍しいじゃないか二人そろってこっちで仕事かい?」

「うるさいね~」工場長が目をでっかく見開いて口の前で手を広げたりとじたりした。

「なんだ。ダックか?」

『そうなんですよ。まあ元気があっていいんですけど、ともかく四六時中話しているんです。ダックうるせ~よっ!!とかいっても、「ダックじゃないですよお~。ちゃんと名前を呼んでくださいよお~」とかいって、益々うるさくなるし。あれだけしゃべりつづけられると、給与の査定なんてできやしない。』

「あれは、いままで日本語しゃべる相手がいなかったから、嬉しくてしょうがないんですよ。」

工場長が中国語で言った。

「でも、中国語でもしゃべってるじゃん。」

「それもそうですねえ。じゃあやっぱりおしゃべりが好きなんでしょうか?」

「本当にアヒルみたいにガアガア言いっぱなしだからなあ。」

「アヒルだってあんなに一日中しゃべってません。」

「円さん。何はなしてんだい?」

中国語を話せないヨシさんがきいた。

「いや、工場長が日本語を話す相手がいなかったから、ここではいつでも日本人と話せるので嬉しくてしょうがないっていうんで、いや、中国人とだって死ぬほどしゃべっているだろうと。」

「まあ管理スタッフはチョビ以外は男ばっかしだからなあ。男にかこまれてサカってんじゃね~のか?ダックの野郎は。」

ヨシさんが言ったことを僕が工場長に訳してあげると、工場長は大笑いしたあとでいった。

「そうかもしれませんねえ。まあ美人とは言い難いし、兄弟は姉が二人だっていうから、これだけ男にかこまれて一日の大半を過ごした経験はないかもしれません。」

「なんだ、ムチムチぷりんの秘書探すつもりで、なんだか逆に中国のブスにハーレムくれてやったみたいなもんじゃね~かっ」

苦笑いしながらそういうヨシさんに僕も工場長も笑うしかなかった。

 
(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 
そして数ヶ月。

一日19時間稼働の11月(やっと話が戻った・・・)

管理事務所では、妻帯者の工場長が朝から7時まで、そして僕が昼の12時から、終業までを担当することになった。

部下の事はきちんと思いやるというのは表向きで、僕は夜は遅くてもかまわないが、朝はできれば10時とかの出勤にしてほしいタイプだ。

しかし、日本との時差が1時間あるので、会社の始業は日本時間9時。すなわち中国時間8時。

つらくてしょうがなかったので、渡りに船。

会社では夜の9時に夜食が出る。

まあ、中国なので、おかゆに塩漬けのゆで卵とか、ビーフンとか、チマキといったものだ。

もちろん僕が頼めば特注で別のものをつくってもらえるが、そういう事をすると、「あいつだけいいもの食いやがって」と言い出す工員がでてくるので、僕はできるだけ工員と同じモノを食べた。

夜食を食べ終わってから、外の店で、ブリックパックのような紙箱入りのオレンジジュースを買って帰った。

事務所に戻ると、チョビとダックちゃん、それに品質管理科の課長がいた。

いつもうるさいダックちゃんだが、今週に入ってから何故か静かだった。

僕は添付のストローを紙パックのジュースに差すと、子供の頃飲んだ果汁0%のオレンジジュースのような、確信をもって体に悪いといえそうな飲み物をのみはじめた。

ダックちゃんは、僕に背を向けて机に向かい、なにやら書類を一心不乱に見ていた。

僕はストローを加えながらチョビの顔を見た。

「何よ。」

チョビが中国語で言った。

「別に。」

僕は答えた。

ダックちゃんを見ると、ダックちゃんは相変わらず何かを一心不乱に見ている。

僕は再びチョビの顔を見た。

じ~っと見ていると、チョビが僕の顔を見て、「な・ん・で・す・かっ!!」と日本語で言った。

「別に」と僕は答えた。

チョビは「チッチッチッ」と生意気にシュラッグすると「うざったいわね~」と中国語で言った。

それを聞いて、雑誌を読んでいた品質管理科の課長が顔をあげて僕の顔を見た。

ジュースを飲み終わった僕は、ストローから息をふきこみ、ジュースの紙箱をパンパンに膨らませた。

そしてパンパンにふくれたまま、紙箱を床においた。

僕の意を察した品質管理課長がニヤリと笑った。

「ダックちゃん。」

僕はそういって、ダックちゃんが振り向いた瞬間、思いっきり紙箱を踏みつけた。

バーンッ!!

僕も驚くようなでっかい音がして、パンパンの紙箱が破裂した。

ダックちゃんの目が、ありえないほどでっかく見開かれた。

そして動きをとめると・・・・

いきなり両手をプルプルと小刻みにふるわせ出した。

そして、後ろに向けて、静かに倒れた・・・・・

ありゃりゃ?

流石に僕もあせった。

え~っ!!なんだこれ?入社前に健康診断受けた結果みたけど、心臓病なんてなかったぞ!!

To be continue.

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2007.06.11

憂鬱なダックちゃん(2)

ガラス張りの応接室には二代目社長がいて、女の子と話しをしていた。

女の子は後ろ姿で、顔は見えない。

ヨシさんはなぜか「よお~しっ!!」とはりきり、応接室に飛び込んでいった。

僕はそのあとから部屋に入り、ようやく本人の顔をみることができた。

おっきな瞳はキラキラと輝いていて、東京ではめったに見ることができないような代物だった。

身長は150センチちょいくらいだろうか?

肌は白くなく、ムチムチぷりんではない。

っていうか洗濯板だ。

中国人というより、東南アジアの人みたいだ(>_<)

今で言うなら、顔をよこに伸ばしたサカナ君みたいな顔だ。

愛嬌のある顔だとは言える。

ヨシさんの顔をこっそり見ると、さきほどまでの張り切りぶりはどこへやら。

顔から表情そのものがなくなっていた。

だから希望はもたないほうが・・・・

二代目社長から履歴書のコピーがまわってきた。

「ふ~ん。師範大学出てるんだ。」

何も言わないヨシさんにかわって僕がきいた。

「はい。」

女の子は目をキラキラさせて答えた。まるで小学生みたいだ。

「出身はXX市?これってどこら辺にあるの。」

省内の沿海部の市は出張でもまわるので大抵頭にはいっているが、ここはきいたことがなかった。

「えっと山の方です。△△は知ってますか?」

彼女は内陸の観光地として有名な場所を言った。

「うん。」

「そこの近くです。」

なるほど。内陸の田舎の方で高校まで育ったから、あまりスレてないんだな。

「じゃあ、子供の頃はパンダと相撲とって遊んだんだ。」

「え?パンダですか?いませんよお~。」

彼女は面白そうな顔でいった。

田舎の子にありがちなおっきな声だ。

「知ってるけど言ってみただけ。じゃあクマと相撲取った?」

「クマはいますけど、食べるだけですよお~。面白いことききますねえ~。」

食べるのかっ!!クマを!!

「社長。いいんじゃないでしょうか?クマを食うそうですから。」

「円さん。マジメに面接してくださいよ。」

「いや、一緒に働くなら、ボケたときにしっかりツッコミ入れてくれないとイライラしますから。そうでしょ?ヨシさん。」

「まあな。」

ヨシさんは履歴書をうつむいてみながら答えた。

二代目社長はヨシさんの性格をよくわかっているので、それを見て笑っていた。

「うちは幹部じゃなくて、工場スタッフを募集しているんだけどいいのかな?」

二代目社長がきいた。

「はい。大丈夫ですよお~」

幹部として雇うと、仕事もできないくせに、すぐ課長にしろとかうるさいのである。

「専門用語が多くて、大学で学んだ日本語だけでは役にたたないけど、勉強できる?」

僕がきいた。

「勉強は大好きですよお~。できると思いますよお~。」

まあ、ど田舎から省都の大学に進学したくらいだから、勉強は好きなんだろう。

「工場に入ってもらうよ。労働はする必要ないけど。」

「日本の会社は最初はみな工場だときいてますよお~。」

日本語の感じは悪くないし、気取ったところもないので、工場付の通訳としては悪くないかもしれない。

語尾が「よお~。」となるのがちょっと気になるが。

僕は二代目社長の顔を見て、もういいですと合図をした。

「ヨシ。お前はないのか?」

「はあ。ないっす。」

「いいんですか?色々きかなくて?」

「何きくんだよっ!!」

「熊の毛皮のはがしかたとか。」

「円さん!!そんなの聞いてどうするんだっ!!」

「いや、熊の毛皮もらって、コートとかしつらえればいいじゃないですか。そういうのヨシさん好きでしょ?」

「ん?それはいいかもな・・・・」

ヨシさんは洒落モノなのである。

僕等の話を目をキラキラさせて見ていた彼女が、微塵の悪意もない顔でヨシさんの顔を見ながらいった。

「クマはおっきいから、コートの他に帽子もつくれると思いますよお~」

ヨシさんはごま塩頭だが、頭頂部がかなり薄くなっていたのだった。

 

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

 

昼飯時。

今日はワタリガニを焼いたものに、野菜の炒め物、イカの唐揚げ、スープ、それにご飯といったメニューだった。

「どうする?あの子でいいのか?」

二代目社長が僕とヨシさんにきいた。

「前の通訳みたいに目が死んでないからいいんじゃないですかねえ。あれだけキラキラしてればいろんなことの吸収は早いと思いますよ。それに一応女性だし。」

僕はそういってヨシさんの顔を見た。

通訳というのは、単に能力だけでなく、相性なんかも大いに関係するのでむずかしい。

ヨシさんはさっぱりした性格で、それほど相手を選ばないが、それだけに前任のちょっとじめっとした通訳とは相性が悪く、内心ストレスがたまっていたのは僕も知っていた。

男に男の通訳をつけて、両者の相性が悪いと、何かミスがあったときに使う方が思わず怒鳴りつけてしまい、やめるやめないのトラブルに発展しやすい。

それが女性の通訳だと、とりあえず怒鳴るのだけは思いとどまれたりする。

僕としては、女性でしかもセクハラ問題などがおこりそうもない、ああいうタイプは管理が楽だ。

「ヨシはどうなんだ?」

「そおっすねえ・・・・日本語は問題ないとおもいますけど・・・」

まあ、ムチムチぷりんを期待してたヨシさんからするとちょっと酷な感じだ。

「なんなら今決めないで、他に応募があるかどうかもう少し様子をみたらどうですか?」

僕はヨシさんに助け船を出してあげることにした。

「円さんとヨシがそれでもいいならオレはいいけどね。」

二代目社長が焼きワタリガニを食べながら言う。

「僕は別にかまわないですよ。」

「ヨシはどうなんだ?」

「はあ、やはり一人だけ面接して決めちゃうのはどうかと。もう少し様子みれるなら見た方が・・・」

「じゃ、総務課に頼んで、もう一度新聞に募集広告出すように言うわ。」

  

翌々日の新聞に広告が出され、二週間に4人の応募があった。

しかし、どれも日本に2年いて働いていましたみたいな出稼ぎ組で、日常会話はできても仕事の通訳ができるようなレベルではなかった。

「円さん。あれだな。やっぱあの東南アジアでいいな。」

ムチムチぷりんどころか、男ばかりの応募者の面接につかれたヨシさんが僕に言った。

「そうですか?僕は別にもう少し待ってもいいですよ。」

「いや、やっぱここいらにはムチムチぷりんはいないわ。そっちは夜のカラオケで探すからもういいよ。」

こうしてサカナ君に良く似たダックちゃんが、工場付通訳として採用されることとなった。

 

 
To be continue.

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2007.05.28

憂鬱なダックちゃん(1)

その年の11月。

僕等の工場は1日19時間稼働でまわっていた。

工員も、管理スタッフも1.5交代で働きつづけ、すでに20日間休まずに工場を稼働させていた。

まあ、中国では人件費が生産コストに占める割合は低いので、二交代にするという手もあったのだが、そうすると熟練工の比率がさがり、普段はおこさなくていいトラブルがおきたりした。

だいたい臨時工(パート)を頼むと、中国人の副社長が、自分の親戚をとんでもない田舎から呼んできて職につける。

で、中国のとんでもない田舎から呼ばれた人間というと、流石に文字が読めないことはないが、輸出産業で働くための必要最小限の知識がないのだった。

実際台湾人や、韓国人がやっている他の工場では、手や指を切断する人間が週一人くらいのペースで出たりした。

工作機械を扱うことの怖さを理解するだけの想像力が欠如しているのだった。

僕等の工場でも前の年に女の子が、日本人の感覚からするとあり得ないミスをして、左腕と背中が火だるまになるという事故をおこした。

その後、僕はシーズンがオフになったタイミングを見て、臨時工を全員解雇した。

もちろん中国側の副社長がぐだぐだ言ってきたのだが、そんなのは関係ない。

死傷事故が出れば、とりあえず最初の責任は僕がとらなければならないからだ。

ぐだぐだいう中国側の副社長に僕は言った。

「今回の事故は雇われた人間の一般常識が、この工場で働くレベルに達していなかったのが最大の原因でしょう?今回は私の方で、処理できたが、以降同じような原因で事故がおこったときには、あなたが責任をとってくれるんですかね?一筆いれてくれるなら、従来通り臨時工の雇用は任せますよ。入れられないならこれまで雇ったなかから、工場の方で使えるのを選んで雇いますから。中国に親戚がいない私が選ぶ分には、情実が混ざるってこともないでしょうからね。」

最後の一言は100人近い臨時工の80%が自分の親戚筋という、とんでもないことをしてくれた中国側の副社長へのイヤミだった。

中国側の副社長はそれで黙ったが、僕は市政府筋に情報ルートを持っている工員やらスタッフのなかで、彼に対して不満を持っている連中に対して、彼がおこなっている不正情報をナニゲに流してやった。

その情報は当然の如く、社内にある複数の情報ルートから市政府の局長やら委員会主任、副主任、中国側の出資会社にまで上がっていった。

半年後、中国側の副社長は更迭された。

100人近い親戚を外資の入った合弁会社に押し込んだ彼は、故郷に錦を飾ったのであり、それを一瞬でぶっつぶした僕は彼の面子を潰したのである。

僕に対する任命権は日本側の出資会社にあるので、彼があることないことを中国側の出資会社や市政府筋に吹きまくっても、僕を解雇することはできない。

だが、やらなければ彼の気は晴れないし、解雇にいたらなくても、敵が増えるとなると僕の仕事がやりにくくなるのは確かなのだった。

殺られるまえに殺れ。

上層部がいつまでもガタガタしていれば、その下まで両派にわかれて対立し、もっとも大事な工場の運営がうまくいかなくなくなる。

対立が避けられないとはっきりした時点で、その対立を未然に防ぎ、工場を問題なく動かすのは僕の重要な仕事なのだった。

(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)(-_-)

3ヶ月ほど前

前任の工場部通訳がやめてしまい、急遽募集したところ一人の女性が応募してきた。

市内の韓国系企業に配属されたのだが、日本語が専門なので、日系企業が募集しているなら移りたいということだった。

女性が応募してきたというので、総工程師として来ているヨシさんははりきった。

「どんな子かなあ~。かわいいといいなあ~」

「そうですね~。でもなんとなくですが、中国でもかわいい子は英語専攻して、日本語専攻する子はあまり期待できないんじゃないですかね?容姿に関しては。」

「そうかな~。確かに地元の女はダメだけどな~。省都だろ?かわいいんじゃないかな~」

確かに地元の女の子でかわいい子というのは見たことがない。

みな色黒で、ちっちゃい。

たまにきれいな子だなあと思うと、親が北のほうだったりする。

数百キロ離れるが、広東の北側だと、肌もきれいで色白の女の子がおおいのになあ。

「まあ、あまり期待しないほうがいいと思いますけどね。」

「色気のない職場だからな~。ムチムチぷりんなおねーちゃんとか来てくれね~かなあ~」

50歳を過ぎたヨシさんはそういうと天井を見上げた。

「ムチムチぷりんが来たら、仕事にならないでしょ?」

「仕事なんて本社からきたテクニシャンにやらせておきゃあいいよ。ムチムチぷりんなおねーちゃんにお茶入れてもらいて~よなあ。チョビじゃなくて。」

ヨシさんの天井を見上げる目は、妙に幸せそうだった。

きっと脳内では凄まじい妄想が繰り広げられているに違いない。

「やっぱりさ~。男の会社での夢は美人秘書だよな。仕事もできて、ムチムチぷりんな秘書。時々肩とかも揉んでくれてよお~」

やっぱり・・・・

「はあ」

「気のない答えだなあ。オレまで悲しくなってくらあ。まあ、円さんはオヤジさんの事務所にかわいい秘書がいるからな。」

「まあ、頭はいいですけどね。ムチムチぷりんじゃないですよ。日本語も話せないし。」

「丁度いいよな。かわいいだけでムチムチぷりんじゃなければ変に性欲わかないし。頭がよければイライラしないしな。」

「秘書はイライラしないのが一番重要です。1を言って10を知るまではいかなくても、7くらい言っとけば残りの3は自分で考えてしっかりやってくれないと何のためにやとってるかわからないし。」

「そりゃそうだな。でもよお~やっぱりムチムチぷりんの秘書が欲しいよお~」

「はあ」

「なんだ円さん。若いんだから、もっと望みを持てよ!!」

「いや、望みはもてる方向に高く持ちたいです。もてない方向にもってもがっかりするだけですから。」

「そんなこと言うなよ。最終決定権はあんたにあるんだからよお~。」

「いや、僕は通訳いなくても、スタッフとなら大体通じるので、ヨシさんがよければ、それでいいですよ。でも、工場たてるなら、もっと美人の多い土地にするんだったとは思いますけど。」

「ははは。そりゃいえてるな。」

ヨシさんはガハハと笑った。

「通訳が来てますよ」

部屋に入ってきた工場長がいった。

「どんなこ?」

「とってもかわいいねえ~」工場長がニヤニヤしながら日本語で言った。

「本当かよ!!円さん面接しにいこうぜ!!」

ヨシさんが立ち上がった。

僕は工場長が日本語で言ったので、これは絶対期待できないと確信した。

「先行って下さいよ。僕は後でいいです。」

そういった時に内線電話がなり、工場長が受けた。

「面接です。二人とも上にあがって下さい。」

「よっしゃ!!」

気合いをかけてヨシさんが部屋を出て行った。

いや、絶対期待しないほうがいいと思うよ(^_^;)

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